2025 年 62 巻 3 号 p. 185-190
小児脳腫瘍は,小児がんの中でも白血病に次いで症例数が多く,近年は遺伝子診断の導入によって分類そのものに大きな変化がみられ,また一部には分子標的治療が有効である腫瘍も存在する.一方で,残念ながら既存の集学的治療では予後不良であるにもかかわらず,有効な分子標的治療が開発されていない小児脳腫瘍も存在するのが現状である.
近年,白血病,特にCD19陽性急性リンパ性白血病に対するCAR-T細胞療法が実臨床でも用いられることとなり,その有効性はよく知られている.一方で,その他の小児がんに対するCAR-T細胞療法は現時点で実臨床での応用レベルには達しておらず,特に脳腫瘍では治療ターゲットとして適切な表面抗原も確立していないのが現状である.
白血病の診療においては,表面抗原の確認のためフローサイトメトリが従来より行われていたが,脳腫瘍の診療における抗原発現確認は病理組織に依存するところが大きく,また治療標的となるかどうかというよりは,むしろ診断的意義が大きかった.このため,今回脳腫瘍手術検体に対して組織分離を行った上で表面抗原解析を行い,腫瘍の分類にかかわらず広く発現する表面抗原の同定を試みた.
また,得られた小児脳腫瘍の中には非常に稀なタイプも少数ながら含まれており,これらについては細胞株の樹立やマウスでのin vivoモデルの作成を試みた.