急性骨髄性白血病(AML)の治療では,多くの白血病細胞が抗がん剤により死滅する一方で,一部の細胞は代謝リプログラミングを通じて治療抵抗性を獲得する.特に白血病幹細胞(LSC)は,ミトコンドリアでの酸化的リン酸化(OXPHOS)を利用してエネルギーを維持し,治療抵抗性を示すことが近年の研究で明らかになっている.このような背景から,ミトコンドリア代謝はAMLにおける有望な治療標的として注目されており,酸化的リン酸化,電子伝達系,アポトーシス,マイトファジー,ミトコンドリアDNAなどを標的とした創薬開発が進められている.実際に,2021年にAML治療薬として承認されたベネトクラクスとアザシチジンの併用療法(Venetoclax/Azacitidine, Ven/Aza)は,アポトーシス誘導に加えてアミノ酸代謝やOXPHOSを阻害し,治療成績の向上に寄与している.筆者らは新たな治療戦略として,1)ミトコンドリア代謝を阻害する新規キナーゼ阻害剤の開発,2)ミトコンドリア分裂を制御する遺伝子(DNM1L,MFF)を標的とする治療戦略,3)グルコース代謝と競合するマンノースを用いた代謝阻害療法の研究を進めている.本項では,AML治療抵抗性の克服を目指したミトコンドリア代謝の最新知見と治療標的ならびに筆者らの新規治療法の展望について概説する.