Journal of Spine Research
Online ISSN : 2435-1563
Print ISSN : 1884-7137
総説
高齢者の慢性痛(腰痛を含む)に対する薬物療法のピットフォール
北原 雅樹
著者情報
ジャーナル フリー

2022 年 13 巻 6 号 p. 829-837

詳細
抄録

慢性痛の治療目標は患者のADL/QOLの向上であり,鎮痛は副次的な目的になる.また,急性痛には著効する薬物療法は慢性痛にはあまり効果がない.慢性痛では,運動療法や心理社会的介入が治療の中心となり,薬物療法は補助的方法に位置づけられる.健康な非高齢者と比べて,高齢者の慢性痛を治療する場合には,身体諸機能の低下(腎機能障害,肝機能障害,消化管機能障害,脳機能低下など),様々な合併疾患とその治療薬,社会的因子の問題(経済的問題,独居,老々介護など)について考慮する必要がある.

治療を行う際には,器質的疾患を見逃さないようにしながら,慢性痛の診断名にこだわらず,適切な(現実的な)治療目標を設定することが重要である.特に薬物療法として重要なのは,薬剤の整理である.ほとんどの高齢者は,複数の医療機関から数多くの薬剤を処方されており,他の医療機関から処方された薬の副作用を別の医療機関で治療している場合さえある.薬物の整理だけで状態が改善する患者も多い.その上で,副作用の少ない薬物を少量から漸増していく.その際にも,薬物療法はあくまでも補助的であることを忘れないことが重要である.

Fullsize Image
著者関連情報
© 2022 Journal of Spine Research編集委員会
前の記事 次の記事
feedback
Top