Journal of Spine Research
Online ISSN : 2435-1563
Print ISSN : 1884-7137
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Editorial
総説
  • 井出 浩一郎, 大和 雄, 長谷川 智彦, 吉田 剛, 坂野 友啓, 大江 慎, 有馬 秀幸, 山田 智裕, 黒須 健太, 村上 悠介, 松 ...
    2025 年 16 巻 6 号 p. 819-825
    発行日: 2025/06/20
    公開日: 2025/06/20
    ジャーナル フリー

    TOEI studyは,愛知県東栄町で行われる地域住民の運動器コホート研究で,2012年から2年ごとに住民検診の一環として実施されている.X線撮影や骨密度測定,運動機能評価などを行いデータを収集している.自治体や医療施設が協力していること,10年以上にわたる縦断データの蓄積が可能となっている点が特徴である.これまでの多くの研究が横断的な検討に留まる中,TOEI studyは縦断研究の強みを活かし,経時的な変化や因果関係の解明に取り組んでいる.本報告では,縦断研究により加齢に伴う脊椎骨盤アライメントの変化が男性より女性で早期に認められることが判明した.また,腰痛の重症化は脊柱骨盤パラメータや運動機能低下と関連があること,脊柱アライメントの後弯化は上位腰椎で多く見られ,仙骨傾斜角が小さいことやInflection pointが遠位にあることが危険因子であることがわかった.今後も長期的なデータに基づく新たな知見の蓄積を通じて,腰痛や脊柱アライメント悪化の予防・治療に貢献することを目指していく.

  • 上原 将志, 高橋 淳, 池上 章太, 常田 亮介, 西村 輝, 酒井 典子, 加藤 博之
    2025 年 16 巻 6 号 p. 826-830
    発行日: 2025/06/20
    公開日: 2025/06/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:我々は地域住民コホートを立ち上げ,運動器の加齢変化の程度,頻度を明らかにする研究を行ってきた.本研究の目的は脊柱矢状面アライメントを調査し,1)性別および各年代における脊柱アライメントの特徴,2)脊柱矢状面アライメントと運動機能の関連,3)腰痛の頻度と腰痛に関連する因子を明らかにすることである.

    対象と方法:50~89歳の住民5,352名から無作為に選出された413名に対して運動機能検診と全脊柱X線撮影を実施した.脊柱矢状面パラメータを計測し,年代・性別ごとの特徴,運動機能および腰痛との関連について解析を行った.

    結果:脊柱アライメントの変化は,男性においては,60歳以上で頚椎の前方シフトが顕著であった.女性においては,腰椎前弯の減少と骨盤後傾がより若くから発生していた.脊柱アライメントが悪いほど,運動機能テストは低成績であった.対象者のうち12.9%に腰痛を認め,骨盤代償不全が独立した腰痛の関連因子であった.

    結語:脊柱アライメントと身体機能は明確な関連があった.脊柱アライメントへのアプローチは腰痛のみでなく運動機能低下に対しても未病対策になりえるかもしれない.

  • 森本 忠嗣, 平田 寛人, 塚本 正紹
    2025 年 16 巻 6 号 p. 831-836
    発行日: 2025/06/20
    公開日: 2025/06/20
    ジャーナル フリー

    腰痛の頻度は高く,その原因は脊椎・骨盤・股関節病変,内臓病変など多岐にわたる.頻度は低いものの,緊急対応を要する大血管病変や麻痺を伴う疾患もあるため,腰痛外来診療においては正確な鑑別診断が求められる.そのため,注意深い問診から適切な鑑別診断を想起し,診断の裏付けとなる根拠を身体所見から集めることが重要である.本論文では,腰痛外来診療における問診や身体所見,特に,SLRテストに着目して解説する.

  • 本郷 道生, 齊藤 明, 粕川 雄司, 宮腰 尚久
    2025 年 16 巻 6 号 p. 837-842
    発行日: 2025/06/20
    公開日: 2025/06/20
    ジャーナル フリー

    腰痛診療において,運動療法は患者の機能回復や生活の質向上に重要な役割を果たす.整形外科医は診察を通じて腰痛の原因を診断し,適切な運動療法を処方するが,その実践には理学療法士との連携が不可欠である.整形外科医は問診や身体診察,画像検査を用いて腰痛の原因を特定し,適切な治療を決定する.慢性腰痛に対する運動療法の有効性はガイドラインで推奨されている.実際の臨床の現場では,診断に基づいた原因別の運動処方が望ましいが,原因別の運動療法のエビデンスは乏しく今後の課題である.理学療法士は,整形外科医の診断を基に,詳細な評価を行いながら,徒手療法やストレッチ,体幹筋トレーニングなど患者に適した組み合わせの運動療法を提供し,腰痛の改善を図る.また,日常生活指導や職場での教育を通じて,腰痛予防にも関与し,運動との併用により,腰痛の予防に有効とされる.整形外科医と理学療法士の連携には,情報共有の不足や治療の継続性の問題が指摘されており,ICTを活用した情報共有やカンファレンスの開催,多職種連携の研修導入などの対策が必要と考えられる.

原著
  • 大里 倫之, 川上 紀明, 齋藤 敏樹, 川崎 晋睦, 宮下 直人, 大谷 昂平
    2025 年 16 巻 6 号 p. 843-848
    発行日: 2025/06/20
    公開日: 2025/06/20
    ジャーナル フリー

    昨今の高齢者増加により腰痛を伴う脊柱変形患者が増加し,外科的治療と並び保存治療の重要性が高まっている.当院では成人脊柱変形に対し短期入院による体幹ギプス固定と理学療法,退院後の体幹装具治療を施行してきた.対象は成人脊柱変形または変性後側弯症患者19例(平均75.3歳,男性4例,女性15例)で,仰臥位臥床可能な脊柱可動性を有する患者を対象とした.体幹ギプス固定はRisser tableを使用,ギプス施行前後でVICONを用いた三次元歩行動作解析を実施した.Single supportは僅かに低下したが,Cadence,Step length,Stride length,Walking speed,Hip joint angleは改善傾向を示した.VICONによる動作解析では,ギプス施行後および装具装着後に歩行様式の明らかな改善が認められた.体幹ギプスおよび装具は脊柱サポートに有効で,静的及び動的歩行改善に有効であることが示唆された.

  • 河合 慈, 加藤 仁志, 横川 文彬, 田中 由貴, 清水 貴樹, 有藤 賢明, 石野 雄士, 南保 和宏, 出村 諭
    2025 年 16 巻 6 号 p. 849-854
    発行日: 2025/06/20
    公開日: 2025/06/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:超高齢社会の我が国では,脊椎手術を受ける患者も高齢化している.近年,術後合併症予防の観点から,術前の骨粗鬆症評価と介入が重要視されているが,評価と介入は十分とは言い難い.本研究では,腰部脊柱管狭窄症(LSS)症例の骨粗鬆症有病率と治療状況を調査し課題を検討した.

    対象と方法:2016年1月から2023年12月における当院のLSS手術例のうち,2椎間以内の除圧術または単椎間固定術を施行した145例を対象とした.術前に腰椎・大腿骨DEXA法で骨密度を測定し,全脊柱レントゲンで既存椎体骨折の有無を評価し,本邦ガイドラインに基づき骨粗鬆症診断を行い,有病率を算出した.さらに術前後の骨粗鬆症の治療状況を男女間で比較した.

    結果:骨粗鬆症有病率は全体21.4%,男性14.6%,女性28.5%であり腰椎DEXA≦70%の症例は2.1%のみであった.男性では術前・術後とも治療介入率が低かった.

    結語:LSS患者は骨粗鬆症の有病率が一般コホートより高く,腰椎変性により腰椎DEXA法単独では,過小評価をする可能性がある.また男性例では治療が不十分であり,積極的な介入が求められる.

  • 萩原 義信, 蓮江 文男, 寺門 淳
    2025 年 16 巻 6 号 p. 855-859
    発行日: 2025/06/20
    公開日: 2025/06/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:腰痛患者に仙骨硬膜外ブロック(CB)施行し,Pain Detect(PD)の点数で2群に分類し,CBの効果を明らかにすることを目的に検討した.

    対象と方法:2019年5月から2024年7月まで,腰痛患者でCB施行しPDで評価ができた300症例532回を対象とした.これらを,PDの点数で群分けした.非神経障害性疼痛群(No群):PD 19点未満,神経障害性疼痛群(Ne群):PD 19点以上.検討項目は,CB施行前(b)と施行1時間後(1 h)・1日後(1 d)・1週間後(1 w)のVisual Analog Scale(VAS)とCB施行1時間後・1日後・1週間後のVAS改善率とした.

    結果:No群273例(91.0%),Ne群27例(9.0%)であったVASは全経過を通じてNo群がNe群より有意に小さくVAS改善率は全経過を通じてNo群がNe群より有意に大きかった.群内では1 h,1 d,1 wのVASはbより有意に小さかった.

    結語:腰痛に対してのCBは,神経障害性疼痛より非神経障害性疼痛に効果的であるが,治療として施行する意義はあると考えられた.

  • 油川 広太郎, 和田 簡一郎, 熊谷 玄太郎, 武田 温, 石橋 恭之
    2025 年 16 巻 6 号 p. 860-866
    発行日: 2025/06/20
    公開日: 2025/06/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:還納式椎弓形成術後の術後後弯変形の予防効果に関しては不明な点がある.本研究の目的は,腰椎硬膜内腫瘍に対する還納式椎弓形成術と椎弓切除術間で生じる術後後弯変形の違いを明らかにすることである.

    対象と方法:対象は腰椎硬膜内腫瘍と診断され,硬膜切開を伴う手術を行われ術後2年以上経過観察し得た20例(男性9例,女性11例,平均年齢55.3歳)である.椎弓切除術(LN群)7例,還納式椎弓形成術(LP群)13例の2群に分け,術後6ヶ月,術後1年,術後2年での術前からの後弯変形進行について比較検討を行った.

    結果:術後1年,術後2年での後弯変形はLP群で有意に小さく(術後1年:LP群0.6±2.0,LN群7.9±5.5,p=0.008,術後2年:LP群1.3±2.9,LN群7.6±4.8,p=0.037),術後6ヶ月,術後1年,術後2年においてLP群は有意な後弯変形の進行を認めなかった.

    結語:腰椎硬膜内腫瘍手術においてLP群は術後に後弯変形の進行を認めず,LN群に比して術後1年,術後2年での後弯変形が有意に小さかった.還納式椎弓形成術は術後後弯変形を予防できる有用な方法と考える.

  • 浦山 将司, 岡﨑 陽海斗, 古谷 英孝, 星野 雅洋
    2025 年 16 巻 6 号 p. 867-872
    発行日: 2025/06/20
    公開日: 2025/06/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:脊柱矯正固定術後患者の術後腰痛を予測する術前体幹筋量のカットオフ値の作成を検討した.

    対象と方法:成人脊柱変形に対して脊柱矯正固定術を施行した82名を対象とした(平均年齢73.6歳).術前体幹筋量は,生体インピーダンス分析より算出した.術後腰痛の有無は,Visual Analogue Scaleにて30 mm以上を腰痛有と定義した.統計解析は,初めに術後腰痛の有無をアンカーとして術前体幹筋量のカットオフ値をROC曲線にて作成した.次に,作成したカットオフ値が術後腰痛の有無を予測し得るかを検討するため,単変量及び多変量調整モデルを用いて解析を行った(有意水準5%).

    結果:ROC曲線の結果,術前体幹筋量のカットオフ値は6.5 kg/m2であった(AUC面積0.68,感度067,特異度0.64).単変量及び多変量調整モデルの結果,体幹筋量のカットオフ値は全てのモデルにおいて,術後腰痛の有無を予測する要因として抽出された.

    結語:今回,作成した術前体幹筋量のカットオフ値は中等度の精度があり,脊柱矯正術後患者における腰痛の有無を予測できる要因に成り得ることが示された.

  • 浦山 将司, 武田 優子, 古谷 英孝, 星野 雅洋
    2025 年 16 巻 6 号 p. 873-879
    発行日: 2025/06/20
    公開日: 2025/06/20
    ジャーナル フリー
    電子付録

    はじめに:90歳以上の骨粗鬆症性椎体骨折患者に対し手術を行った症例について,調査した.

    対象と方法:2011年から2023年まで,当院で手術を行った90歳以上のOVF患者23椎体(22名)を対象とし,年齢,性別,既往症,骨折椎体,術前骨密度,術前待機日数,手術内容及び手術時間,在院日数,退院時移動能力を後ろ向きに調査した.

    結果:平均年齢91.8歳,男性6名女性16名,既往症は高血圧が大多数で,骨折椎体は第1腰椎が最多.YAM平均は62.14,術前待機日数は最短で5日,最長で1年以上.手術内容はBKP単独,VBS単独,BKPとPPS併用であり,手術時間はBKPやVBS単独では平均24.7分,BKPとPPS併用では平均104.3分.在院日数は平均29.6日で,退院時移動能力は車椅子11名,歩行器5名,独歩3名,杖歩行3名であり,重篤な術後合併症を発症した症例はなかった.

    結語:90歳以上のOVFに対し手術の有用性が報告されてはいるが,そのハードルは低くない.

  • 石原 昌幸, 谷口 愼一郎, 朴 正旭, 谷 陽一, 足立 崇, 川島 康輝, 小野 直登, 中 信裕, 安藤 宗治, 齋藤 貴徳
    2025 年 16 巻 6 号 p. 880-890
    発行日: 2025/06/20
    公開日: 2025/06/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:成人脊柱変形(ASD)に対するMIS short fusionにおける成績不良因子を調査した.

    対象と方法:T12以下でLLIFやACR,PPS等を用いたMIS-short fusionを施行し2年以上経過観察可能であったASD患者82名を対象とした.平均年齢は73.7歳,平均経過観察期間は35.5ヶ月であった.成績不良の定義はfinal-SVA>50 mmもしくはPJF/DJFの発症とした.final SVA≦50 mmのG群とfinal SVA>50 mmのP群で比較検討し,次にJF有り群(JF群)とJFなし群(NJF群)で比較検討した.

    結果:患者背景において有意差は無く,G群で有意に術前後LLが大きく,PI-LLが小さく,術前後SVAが小さかった.目的変数をfinal-SVA>50 mmとした多変量解析にて術前SVAが危険因子として検出された.次にJF群およびNJF群における単変量解析,多変量解析ではJFの危険因子はGAPスコアであった.

    結語:ASDに対するMIS short fusionにおいてfinal SVA悪化因子は術前SVA,JF発生因子はGAPスコアであった.

  • 葉 清規, 松田 陽子, 大石 陽介, 対馬 栄輝, 村瀬 正昭, 土居 克三, 竹内 慶法, 亀島 将士
    2025 年 16 巻 6 号 p. 891-899
    発行日: 2025/06/20
    公開日: 2025/06/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:マッケンジー法(以下,MDT)は症状が改善する運動・姿勢を見つけ出し,それを実施する運動療法である.本研究の目的は,亜急性腰痛患者に対するMDTを併用した運動療法の効果と有効率に影響する因子を分析することである.

    対象と方法:対象は,腰痛発症後4週以上から3ヶ月未満の亜急性腰痛により運動療法を実施した腰椎変性疾患患者210例とした.運動療法でストレッチ,体幹筋強化にMDT併用の有無で群分けした(MDT併用あり:79例,併用なし:131例).初回から1ヶ月,3ヶ月の臨床成績をVAS,ODI,JOABPEQの有効率で比較し,それに影響する因子を解析した.

    結果:両群とも1,3ヶ月後で臨床成績の改善がみられた.MDT併用あり群は1ヶ月のJOABPEQ疼痛関連障害の獲得点数が高く,疼痛関連障害,腰椎機能障害の有効率は有意に高かった.MDT併用あり群のうち有効率の効果あり群は,初回腰椎機能障害が重度であった.

    結語:亜急性腰痛患者に対してMDTを併用した運動療法を実施することは,併用しない場合と比較して短期臨床成績が改善していたことからQOLの改善に有効な可能性がある.

  • 今村 寿宏, 上森 知彦, 吉本 昌人, 田中 宏毅
    2025 年 16 巻 6 号 p. 900-904
    発行日: 2025/06/20
    公開日: 2025/06/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:腰椎椎間板ヘルニアに対する椎間板内酵素注入療法(Condoliase)と内視鏡下椎間板後方摘出術(Microendoscopic Discectomy,MED)後の職場復帰に関する報告は少ない.本研究では,CondoliaseおよびMEDを受けた就労者の復職時期と,年齢・喫煙状況の影響を検討した.

    方法:2019年9月~2024年3月に当院でCondoliaseまたはMEDを施行した就労患者40名のうち,再手術や重篤な神経症状を有する3名を除外し,37名を対象に年齢,性別,職種,喫煙状況,復職時期を調査した.

    結果:Condoliase群13名(平均51.5歳,男性10名),喫煙者33.3%,復職中央値14.0日,平均12.9日,MED群24名(平均44.0歳,男性18名),喫煙者66.7%,復職中央値14.0日,平均16.4日であった.両群とも術前と同じ職種に復帰できた.

    考察:喫煙者は確実な治療を求めMEDを選択し,非喫煙者は低侵襲治療を優先し,効果不十分ならMEDを希望する傾向があった.コロナ禍で短期入院希望者が増え,慎重に復職する例もあった.

    結語:Condoliase,MEDともに復職中央値は14日であった.喫煙者はMEDを選択する傾向があった.

  • 岩田 秀平, 畠山 健次, 小島 敦, 神谷 繁, 辻嶋 直樹, 鈴木 弘仁, 袖山 知典, 大鳥 精司
    2025 年 16 巻 6 号 p. 905-911
    発行日: 2025/06/20
    公開日: 2025/06/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:腰椎分離症は10代のスポーツ選手に多い関節突起間部の疲労骨折であり,保存加療を行っても骨癒合を得られない場合もある.本研究では,骨癒合促進効果のある体外衝撃波治療(ESWT)を腰椎分離症患者に行い,その安全性と有効性を検証した.

    対象と方法:対象は当院で腰椎分離症と診断され研究に同意した46名64例とした(片側28例,両側18例).使用機種はUOLITH SD1(STORZ MEDICAL,Switzerland)で,透視下に分離部をマーキングし照射レベル0.15~0.25 mJ/mm2までの被験者の疼痛の範囲の強度で2週に1度3,000発照射した.合併症の有無と,骨癒合率と骨癒合までの期間を調査した.

    結果:全例で合併症は認めなかった.全体の骨癒合率は78%で骨癒合までの平均期間は2.5ヶ月であった.病期ごとではそれぞれ,超初期18例では癒合率100%と1.7ヶ月,初期15例では100%と2ヶ月,進行期16例では76%と3ヶ月,終末期10例では10%と12ヶ月であった.

    結語:腰椎分離症に対するESWTは安全で有効である可能性がある.

  • 松田 陽子, 対馬 栄輝, 葉 清規, 大石 陽介, 村瀬 正昭
    2025 年 16 巻 6 号 p. 912-918
    発行日: 2025/06/20
    公開日: 2025/06/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:本研究の目的は,産後1年未満と1年以上経過した症例に対する理学療法の臨床成績を明らかにすることである.

    対象と方法:産後腰痛患者50例を,産後1年未満群(18例),1年以上群(32例)に群分けした.理学療法は運動療法と生活指導を実施し,腰痛Visual Analog Scale(VAS)およびOswestry Disability Index(ODI)の障害度と下位尺度を,初回,1ヶ月,3ヶ月時に評価した.各群の治療経過を線形混合モデルで解析した(有意水準5%).

    結果:両群ともにODIの障害度,座ること,立っていること,睡眠,乗り物での移動は,初回時と比較して1ヶ月から3ヶ月時で有意に低値であった(p<0.05).腰痛VAS,ODIの痛みの強さ,身の回りのこと,物を持ち上げること,歩くこと,社会生活に交互作用がみられ,初回時と比較して1年未満群は3ヶ月時,1年以上群は1ヶ月時,3ヶ月時ともに有意に低値であった(p<0.05).

    結語:両群とも静的な日常生活機能の改善がみられ,1年以上群は1ヶ月時から動的な日常生活機能の改善がみられた.

  • 井上 雅俊, 鳥飼 英久, 中田 好則
    2025 年 16 巻 6 号 p. 919-926
    発行日: 2025/06/20
    公開日: 2025/06/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:近年,成人脊柱変形や高度脊柱変形の手術は目覚ましい発展があるが,そのなかで最も難度の高い手術がVertebral Column Resection(VCR)に代表されるThree Column Osteotomyである.今回は成人脊柱変形に対するVCRの成績と合併症について検討した.

    対象:成人脊柱変形に対してVCRを行った症例は14例で,疾患は脊柱側弯症術後悪化例(Revision Surgery)が7例,思春期側弯症遺残が4例,成人後側弯症2例,先天性後弯症が1例であった.全例で腰背部痛を伴っており1例は脊髄完全麻痺,2例は下肢痙性を認めた.術前側弯度は平均71.8度で,矢状面バランス評価はSRS-Schwab分類でのmarked imbalanceを7例に認めた.

    結果:手術は14例中13例で後方から一期的なPosterior VCRを行った.VCRの高位はL1が7例,T12,L2が各2例,T8,10,11が各1例で,固定椎体数は平均9.3椎体であった.術後6ヶ月~1年での側弯度は平均30.8度,平均矯正率は57.2%で,術後矢状面バランスはmarked imbalanceが2例であった.術前自己血を平均1,800 ml貯血したが,術中出血は平均5,129 mlとなりMAP輸血を6例(42.8%)に追加した.周術期合併症は14例中5例(35.7%)に認め,内訳は一過性の神経系合併症2例,呼吸器系合併症2例,創部感染1例であった.

    結語:成人高度脊柱変形に対して,VCRを行い,側弯は57.2%の矯正が得られたが,35.7%に周術期合併症を認めた.特にRevision Surgeryでは矯正が困難で,固定範囲が長く,合併症頻度も多かった.出血対策として高濃度のトラネキサム酸使用は術中出血量を低下させる可能性があるが,Revision Surgeryでの2期的手術の導入など今後課題の多い手術である.

症例報告
  • 辻嶋 直樹, 神谷 繁, 小島 敦, 鈴木 弘仁, 袖山 知典, 畠山 健次
    2025 年 16 巻 6 号 p. 927-931
    発行日: 2025/06/20
    公開日: 2025/06/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:腰椎分離すべり症に対する椎体間固定術での分離症椎体へのCortical Bone Trajectory(CBT)スクリューは固定力の限界が指摘されている.Long CBTであるMidline Cortical(MC)軌道は固定力向上が期待されるが,許容範囲が限定され手術支援デバイスが必要である.分離椎弓への設置の問題から患者適合型ガイドは良い適応ではないとされてきた.

    症例:76歳,男性.主訴は右下肢痛および間欠跛行.L4/5外側陥凹狭窄,L5両側性分離すべり症(Meyerding分類Grade 1)に伴う右L5椎間孔狭窄に対して,L4/5椎弓切除術,L5/S経椎間孔腰椎椎体間固定術を施行した.分離椎弓に患者適合型ガイド(MySpine MC)を使用し,MCスクリューを安全に刺入した.術後症状は軽快し,術後6ヶ月で緩みや脱転はなく,神経症状の再燃を認めていない.

    結語:腰椎分離すべり症において,患者適合型ガイドを用いてMCスクリューを安全に挿入し,良好な臨床経過を得た.分離椎弓の存在下でも同ガイドの有用性が示唆された.

二次出版
  • 今井 貴哉, 永井 聡太, 道川 武紘, 戸邊 里紗, 川端 走野, 伊藤 佳織, 蜂谷 紅, 武田 太樹, 池田 大樹, 山田 成樹, 藤 ...
    2025 年 16 巻 6 号 p. 932-938
    発行日: 2025/06/20
    公開日: 2025/06/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:腰部脊柱管狭窄症(LSCS)患者の治療は,薬物療法を含む保存療法が第一選択となる.手術療法を施行されたLSCS患者は,薬剤数は減少することが予想されるが,術後薬剤数が増加する患者も散見される.本研究の目的は,手術療法がLSCS患者の薬物療法に与える影響を検討し,術後の薬剤数増加の関連因子を同定することである.

    対象と方法:対象は,2020年4月から2021年3月までにLSCSに対して当院で腰椎手術を受けた40歳以上の患者142名(男性84名,女性58名,平均年齢70.1歳)とした.術前および術後6ヶ月,1年における患者情報を後ろ向きに検討し,患者背景,JOABPEQを含む患者立脚型アンケート,術後処方薬について評価した.

    結果:LSCS患者に対する腰椎手術は,全体ではLSCS治療薬数を有意に減少させたが,約15%の患者では増加していた.JOABPEQにおける歩行能力および社会生活の術後成績不良が術後の薬剤数の増加と有意に関連していた.

    結語:LSCS患者に対する腰椎手術は薬剤数を減少させるが,歩行能力や社会生活の術後成績不良が術後の薬剤数増加に関与している.

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