Journal of Spine Research
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Editorial
総説
  • 小西 宏昭
    2024 年 15 巻 10 号 p. 1210-1223
    発行日: 2024/10/20
    公開日: 2024/10/20
    ジャーナル フリー

    頚椎Instrumentationは目覚ましい発展を遂げてきた.多くの症例で長期経過が追跡できるようになり,長期にわたって安定している例もあれば,新たな問題を引き起こす例にも遭遇する.後頭骨頚椎固定術や上位頚椎固定では,リウマチ頚椎病変の対応でワイヤーやテープによる固定からプレートやロッドシステムに変遷し,screw刺入法の開発で大きく進化した.中下位頚椎では外傷から発展し,変形の矯正や早期の社会復帰を目的に前方プレートや後方ロッドとscrew systemの使用が一般化した.外傷や脊椎腫瘍,ダウン症による頚椎疾患,長期透析に伴う頚椎疾患,先天奇形の治療,そして後弯位頚髄症や頚椎後縦靭帯骨化症,さらには頚椎椎間板ヘルニアなどの変性疾患にもInstrumentは数多く使用されるようになり,材質や形状の点でもより合併症の少ない製品の開発が行われ,頚椎の外科的治療には頚椎Instrumentationは欠かせない存在となってきた.一方でInstrumentの脱転,術後感染や椎骨動脈損傷,アライメント不良に伴う嚥下障害,呼吸障害などの合併症も存在し,その予防や対応にも多くの研究が行われてきた.このような合併症との闘いが,Instrumentation発展の原動力となったと言っても過言ではない.

    本稿では自験例の長期経過を検証するとともにその歴史を振り返り将来への伝承としたい.

原著
  • 三浦 一人, 森田 修, 根津 貴広, 川瀬 大央, 大渓 一孝, 谷 由子
    2024 年 15 巻 10 号 p. 1224-1229
    発行日: 2024/10/20
    公開日: 2024/10/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:頚椎転移における日常生活動作や生活の質の低下は高度であり,それに対する姑息的手術の成績は良いものの合併症が高率であると報告されている.今回,頚椎転移と胸腰椎転移手術の相違について調査した.

    対象と方法:2020年から2023年に行った転移性脊椎腫瘍に対する姑息的手術44例を調査した.頚椎転移9例を頚椎群,胸腰椎転移35例を胸腰椎群とし,原発巣の癌腫,術式,固定椎間数,手術時間,出血量,併存症の有無,術前後のperformance status(PS),新片桐スコア,罹患椎不安定性,Bilsky's gradeについて二群間で比較した.

    結果:頚椎群では胸腰椎群に比べ罹患椎体の不安定性が高く,手術時間,出血量共に多かった.手術合併症の頻度は二群間で有意差はなかったが,胸腰椎群では全身合併症の割合も高かったのに対し頚椎群では手術手技に伴う局所合併症がほとんどであった.

    結語:頚椎転移に対する姑息的手術は胸腰椎転移に比べ侵襲は大きかったが,不安定性が高く固定術の良い適応であった.合併症の頻度に差はなかったが,頚椎転移では近接する臓器の影響や手術手技に伴うものが多い傾向にあった.

  • 佐藤 香織, 鏡味 佑志朗, 小倉 啓介, 新城 龍一
    2024 年 15 巻 10 号 p. 1230-1233
    発行日: 2024/10/20
    公開日: 2024/10/20
    ジャーナル フリー

    C1/2後方固定法として,その強固な固定性からC1 lateral mass screw,C2 pedicle screwによる固定法が本邦で広く用いられている.しかし,椎骨動脈損傷や脊髄損傷,嚥下障害等の合併症があり,その報告の数は限られている.当院でC1/2後方固定術を行った19例(変性疾患 8例,外傷等 11例,平均年齢 64.8歳)に発生した合併症を検討した.術中合併症としては後弓骨折,椎骨動脈損傷,術後合併症では深部感染,後頭骨骨折が認められた.スクリュー逸脱率に関してはC1:10.5%,C2:7.9%で認められた.術前の骨形態の評価や術中の愛護的な手技が合併症予防の一助になると考えられる.

  • 有馬 秀幸, 大和 雄, 長谷川 智彦, 吉田 剛, 坂野 友啓, 大江 慎, 井出 浩一郎, 山田 智裕, 渡邉 悠, 黒須 健太, 松山 ...
    2024 年 15 巻 10 号 p. 1234-1242
    発行日: 2024/10/20
    公開日: 2024/10/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:成人脊柱変形(ASD)の広範囲矯正固定術における,術後中長期の健康関連QOLは,骨粗鬆症の有無で改善度や再手術率に影響を及ぼしている可能性がある.そこで本研究では骨粗鬆症の有無で成人脊柱変形術後の臨床成績と再手術率を比較検討した.

    方法:2010年~2017年に40歳以上のASDに対して胸椎骨盤矯正固定術を施行し,術後5年以上フォローした症例を解析した.手術時時点で大腿骨頚部T-score -2.5以下もしくは脊椎もしくは大腿骨近位部に既存骨折がある群を骨粗鬆症群と定義した.術前,術後5年のSRS-22r,ODI,術後5年以内の再手術を調査し,骨粗鬆症なし群とあり群で比較検討した.

    結果:139例(女性125例,平均年齢67.2歳)を解析した.骨粗鬆症群(n=64例,平均年齢69.4歳)と非骨粗鬆症群(n=75例,平均年齢65.4歳)でSRS-22r Functionは,術前平均2.4/2.7が,術後5年時に3.1/3.5に,Painは術前3.1/3.0が,術後5年時に3.7/4.0に,ODIは術前44.1/40.7が,術後5年時には31.3/23.7と両群の全てのドメインで改善した(P<0.001).骨粗鬆症の有無によりSRS-22r FunctionやODIの変化量に有意差はなかったが(P>0.05),SRS-22r Painの変化量は非骨粗鬆症群で有意に良好であった(1.0/0.6,P=0.046).術後5年間における再手術率は骨粗鬆症群/非骨粗鬆症群で40.6%/22.7%,P=0.018であり,骨粗鬆症群で有意に高率であった.再手術ではロッド折損は骨粗鬆症群/非骨粗鬆症群で32.8%/13.3%,P=0.006と,骨粗鬆症群で有意に高率であった.

    結語:骨粗鬆症をともなったASD患者も矯正固定術により術後5年時点において機能や疼痛は改善した.しかし,骨粗鬆症を伴った患者では広範囲矯正固定術後の疼痛の改善度は低く,ロッド折損等に伴う再手術率が高率であった.

  • 小野 睦, 熊原 遼太郎, 越後谷 直樹
    2024 年 15 巻 10 号 p. 1243-1248
    発行日: 2024/10/20
    公開日: 2024/10/20
    ジャーナル フリー

    腰椎変性すべり症に対するPLIFでMulti-axial Pedicle screw(PS)head間のdorsal compression操作で,どれだけ局所前弯が増加しているかを調査した.L4変性すべり症でL4/5PLIFを施行した50例を対象とした.L4/5椎間の平均局所前弯角は,術前立位中間位;2.6°,術中体位;5.1°,椎間板を掻把しCage挿入後;6.0°,PS head間のdorsal compression後;10.2°,術後6ヶ月;8.7°であった.PS head間のdorsal compression後に局所前弯角は平均4.2°増加していた.L4変性すべり症に対するPLIFでは,術中体位,椎間板を掻把しCage挿入後,PS head間のdorsal compressionの各段階でL4/5椎間の局所前弯は増加していたが,PS head間のdorsal compression操作で最も増加していた.Multi-axial screw headを用いてもPS head間のdorsal compression操作は局所前弯を増加させるのに有用である.

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