はじめに:2椎体に及ぶ腰椎硬膜管背側への巨大脱出ヘルニアの1例を報告する.
症例:65歳男性.誘引なく腰痛,両下肢痛,筋力低下を自覚し,歩行困難となり前医受診.腰椎単純MRIで脊髄硬膜外血腫または腫瘍の疑いで,当院へ転院.MRI上,L2頭側終板からL3尾側終板に及ぶ硬膜外腔背側にT1でlowからiso,T2でやや不均一にhighの信号強度を呈する紡錘形腫瘤があり,硬膜管は腹側に圧排されていた.硬膜外血腫を第一に疑い,緊急でL1~3の片側椎弓切除を行った.しかし,硬膜外腔には血腫ではなく,淡黄色の髄核様組織が存在し,ほぼ一塊にして摘出した.術後病理による最終診断は椎間板ヘルニアであった.術後,症状は速やかに改善した.硬膜管背側に脱出する腰椎椎間板ヘルニアは,高齢者の上位腰椎に発生することが多いと報告されている.極めて稀な発生頻度と特徴的な画像所見が乏しいことより,術前診断は困難であり術中に診断がつくことがほとんどである.本症例は2椎体に及ぶ巨大ヘルニアであり,血腫や腫瘍との鑑別が困難であった.
結語:上位腰椎の硬膜外背側腫瘤は,鑑別として脱出型の椎間板ヘルニアである可能性も考慮して,精査加療すべきである.