2023 年 14 巻 6 号 p. 966-972
はじめに:本研究の目的は,腰痛を主訴とした腰部脊柱管狭窄症に対する脊椎固定術を併用しない後方除圧術による腰痛の変化について検討することである.
対象と方法:当施設にて腰痛を主訴とした腰部脊柱管狭窄症に対し脊椎固定術を併用しない顕微鏡視下後方除圧術を行った51例を対象とした.調査項目は,術前後の腰痛,下肢痛,下肢のしびれ感,JOABPEQ,腰椎前弯角とその可動域,椎間関節水腫,椎体終板のModic change,棘突起kissing,椎体すべりとし,腰痛VASが改善した症例(改善群)と,改善しなかった症例(非改善群)で各項目の比較を行った.
結果:改善群37例,非改善例14例であり,72.5%で腰痛が改善した.改善群で術前の腰痛VASと術後のJOABPEQの重症度スコアである疼痛関連障害と歩行機能障害,社会生活障害,心理的障害と,術前腰椎可動域が有意に大きく,有意にModic changeが少なかった.
結語:術前に腰痛が強く,腰椎の椎体終板障害が少ない症例で腰痛が改善することが示唆された.椎体終板障害を伴った症例では腰痛が残存する可能があり,脊椎固定術などの追加治療も考慮する必要がある.