Journal of Spine Research
Online ISSN : 2435-1563
Print ISSN : 1884-7137
14 巻, 6 号
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Editorial
総説
  • 佐藤 洋一, 山本 乃利男, 稲垣 直哉, 家崎 雄介, 朝本 学宗, 本田 聖和, 鈴木 朋浩, 牧 聡, 高原 俊介
    2023 年 14 巻 6 号 p. 818-823
    発行日: 2023/06/20
    公開日: 2023/06/20
    ジャーナル フリー

    超高齢化社会に突入した本邦では,骨粗鬆症を罹患する患者が増加しているが,未だ治療介入率は高くない.効率的かつ効果的な介入のために,骨粗鬆症の評価を(1)特別な検査機器を必要とせずに(2)従来の診療の流れを変えない形で行うことで,この社会課題を解決する一助になると考えた.そこで我々は,一般的かつ撮影頻度が高い胸部X線写真に着目し,胸部X線写真から骨粗鬆症を評価する2つのAI(artificial intelligence)を開発した.1つ目のAIが,椎体骨折を有する患者の早期発見を目的とした,胸部X線写真から椎体骨折を予測するAIである.5,791枚の医療画像から開発したこのAIは,AUC(Area Under the Curve)=0.98で胸部X線写真内の椎体骨折の有無を予測した.2つ目のAIは,骨量の評価を目的とした,胸部X線写真から骨密度を予測するAIである.17,899件の胸部X線写真および骨密度計測結果から開発したこのAIは,相関係数(R)=0.75で骨密度を予測した.本研究で開発したAIは,骨粗鬆症の治療介入の際に重要な要素となる椎体骨折や骨密度を,胸部X線写真から高い精度で予測することができた.

原著
  • 向畑 智仁, 牧 聡, 江口 和, 大鳥 精司
    2023 年 14 巻 6 号 p. 824-830
    発行日: 2023/06/20
    公開日: 2023/06/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:本研究の目的は人工知能の手法である畳み込みニューラルネットワーク(CNN)が化膿性脊椎炎とModic変性のMRI鑑別能を評価することである.

    対象と方法:化膿性脊椎炎とModic変性の患者50名ずつのMRI矢状面T1WI,T2WI,STIRを使用した.CNNには深層学習フレームワークTensorflow,転移学習にEfficientNetB4を用いた.ROC曲線をプロットし,AUCを算出した.CNNと医師4名による診断の正確度,感度,特異度を算出した.

    結果:T1WI,T2WI,STIRに基づくCNNのROC曲線のAUCは,それぞれ0.95,0.94,0.95であった.正確度はT1WIとSTIRで医師4名より,T2WIでは1名より有意に良好であった.感度はT1WIとSTIRにおいて4名より,T2WIで1名より有意に良好であった.特異度はT2WIでは1名より,STIRで2名より有意に良好であった.

    結論:CNNは医師に匹敵,もしくはそれ以上の高い鑑別能で化膿性脊椎炎とModic変性を識別することができた.

  • 村田 寿馬, 遠藤 健司, 粟飯原 孝人, 鈴木 秀和, 澤地 恭昇, 松岡 佑嗣, 西村 浩輔, 髙松 太一郎, 小西 隆允, 山内 英也 ...
    2023 年 14 巻 6 号 p. 831-837
    発行日: 2023/06/20
    公開日: 2023/06/20
    ジャーナル フリー

    脊椎疾患の画像診断において,まず行われることが多い単純X線画像の読影は重要であるが,非専門医による読影は精度が高くないことが知られる.しかしながら,臨床では救急医療やへき地医療など,必ずしも脊椎疾患の画像診断に精通した医師による診察を受けられるわけではなく,需給のミスマッチが生じる場合がある.人工知能(AI)を用いた画像診断はこうしたミスマッチを是正する可能性のある新規医療技術であるが,脊椎疾患の画像診断精度は不明である.椎体骨折患者および頸椎後縦靭帯骨化症患者の単純X線を用いて,AIに画像診断を学習させ,それぞれ正診率86.0%および98.9%であり,脊椎疾患の画像診断にAIが有用である可能性が示唆された.

総説
  • 山下 一太, 手束 文威, 杉浦 宏祐, 中島 大生, 鶴尾 吉宏, 西良 浩一
    2023 年 14 巻 6 号 p. 838-847
    発行日: 2023/06/20
    公開日: 2023/06/20
    ジャーナル フリー

    低侵襲医療の発展により,X線透視の使用量は増大傾向にある.それに伴って,医療者の職業被曝量も増加しており,その手技内容上,特に脊椎外科領域では目や手への被曝量は多く,被曝による悪影響が懸念されている.目に見えない放射線を「見える化」することにより,診療中の各身体部位への被曝量を推察することができるようになってきた.照射線源の位置や照射条件によって,散乱線の量は大きく異なり,特に側面透視時は大きくなる.脊椎外科医は,脊椎外科治療のリーダーとして,自分および医療チームへの職業被曝を意識し,被曝量低減に努める必要がある.

  • 大野 和子, 和田 簡一郎
    2023 年 14 巻 6 号 p. 848-852
    発行日: 2023/06/20
    公開日: 2023/06/20
    ジャーナル フリー

    エックス線透視・撮影によるガイド下の治療は患者への低侵襲の治療として急速に発展した.しかし,その一方でこの数年間に複数の術者の放射線障害が報告されるようになった.患者に有益なエックス線透視下の治療を継続的に発展させるためには,医師が,日常診療で常に放射線被曝に配慮する習慣を付ける必要がある.まずは,防護衣を着用し必ず線量計を装着すること,術者の被曝低下と患者の被曝低下はほぼ同義であることを認識すること,画像を絞ること,術者の手が写る手技のシミュレーションをして画質を落としてみること,の4点から実行してほしい.

原著
総説
  • 松平 浩, 笠原 諭, 酒井 美枝, 井上 真輔, 鉄永 倫子, 高橋 紀代, 高槻 梢, 二瓶 健司, 矢吹 省司, 髙橋 直人
    2023 年 14 巻 6 号 p. 858-868
    発行日: 2023/06/20
    公開日: 2023/06/20
    ジャーナル フリー

    慢性非特異的腰痛患者には,心理社会的要因が関与している症例が多く,その場合はそれらの要因を的確に評価し,それに応じた適切かつ合理的な認知行動的アプローチが求められる.就労に支障をきたしている患者に対しては,社会的支援も必要である.これらと運動療法を併せることが主軸といえる慢性腰痛に対する集学的治療は,本邦の慢性疼痛診療ガイドラインにおいて最高位の“施行することを強く推奨する”1A判定である.一方,筋骨格系疼痛に対する「心理社会的フラッグシステム」が,世界の有識者による会議を経て英国で開発され,欧州では各国の診療ガイドラインで推奨されている.我々は,令和3年度厚生労働省慢性の痛み政策研究事業(慢性の痛み患者への就労支援/仕事と治療の両立支援および労働生産性の向上に寄与するマニュアルの開発と普及・啓発)の中で,意欲ある治療者のOperation Systemとなる合理的な手法を目指した「新心理社会的フラッグシステム日本版」を開発した.本稿では,心理社会的要因であるイエローフラッグ(認知行動療法の選択・実施に向けた心理社会的要因と具体的なアプローチ)を中心に解説する.

  • 藤谷 順三, 西良 浩一
    2023 年 14 巻 6 号 p. 869-877
    発行日: 2023/06/20
    公開日: 2023/06/20
    ジャーナル フリー

    腰痛診療ガイドライン2019(改訂第2版)に示されたように,腰痛治療の選択肢として運動療法は重要である.近年,Motor Controlの概念に基づくピラティスの有効性が注目されている.ピラティスのコンセプトは,Joint by Joint Theoryに基づき,低可動な胸椎・股関節は可動性(mobility)を,過可動な頸椎・腰椎は安定性(stability)を向上させることで,脊椎へのメカニカルストレスを低減・分散させることである.

    ピラティスによる運動療法を行う際は,呼吸に伴う体幹筋群のdraw-in & bracing,脊柱や四肢の長軸方向の伸長,脊柱の分節的な動き,四肢の分離運動,全身の統合を常に意識させる.また,疾患によってアプローチが異なり,例えば,腰椎後弯症の場合は,胸椎のmobilityを向上させた上で,腰椎・骨盤(コア)のstabilityを図る.一方,腰椎椎間板ヘルニア術後の場合は,まずコアの安定を図り再発予防につなげる.

    現在,当院を拠点に関連病院と連携し,ピラティスによる運動療法を推進している.今後,ピラティスが腰痛患者の運動療法のゴールドスタンダードとなるべく,検討を重ねたい.

原著
  • 黒澤 大輔, 村上 栄一, 西舘 周平, 佐藤 和司, 星 由紀子
    2023 年 14 巻 6 号 p. 878-883
    発行日: 2023/06/20
    公開日: 2023/06/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:仙腸関節障害の診断には後方靭帯ブロックが優先されるが重症例では関節腔内ブロックを要す.関節腔内ブロックは通常透視下で行うが施行者の手指の被ばくが問題になるため,諸家の報告をもとにCT下での施行を試みた.当院での成功率と課題について報告する.

    対象と方法:2021.6~2022.10でCTガイド下関節腔内ブロックを試みた入院症例50例(男性13,女性37,平均44±18歳),59関節を対象とした.腔内造影成功率と1回のブロックでのCT撮影回数,一連のブロック手技時間(針刺入~ブロック終了),総被ばく量(DLP)を調査した.

    結果:34/59関節(57.6%)で関節腔内の造影が確認された.平均のCT撮影回数は4.9±1.0回,時間は6分49秒(409±145秒),総被ばく量(DLP)は9.06±2.91[mGy・cm]であった.

    結語:成功率が高くはなかった要因として,画像上の計測角度を針刺入時に正確に再現できなかったこと,透視下のように針先の微妙な位置調整を頻回にできなかったことが考えられた.CTでは極わずかな被ばく線量でコントラストの高い骨構造の描出が可能で,本ブロックでの患者の総被ばく量は少なく,施行者の手指被ばくが皆無であることが本方法の利点である.

  • 酒井 義人, 若尾 典充, 松井 寛樹, 長田 直祥, 渡邉 剛, 金子 怜奈, 渡辺 研
    2023 年 14 巻 6 号 p. 884-890
    発行日: 2023/06/20
    公開日: 2023/06/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:高齢者における慢性腰痛の予後と経過については医学的エビデンスに乏しい.本研究では高齢者慢性疼痛の病態解明と治療法の開発を目的としたプロジェクトから慢性腰痛に関する縦断データを利用し,非特異的慢性腰痛患者における難治性に寄与する因子を解析した.

    対象と方法:65歳以上の3ヶ月以上持続する慢性腰痛患者341例(平均78.5歳,男133例,女208例)に対して,1年間の縦断的評価を行った.外来診療で運動療法,薬物療法など行い,Visual analogue scale(VAS)が3 cm未満に改善したものを改善群とし,多変量解析を行い腰痛改善に影響する因子について評価した.

    結果:1年以内にVASが3 cm未満となった改善群は141例(41.3%)であり,非改善群では有意に罹病期間が長く,薬物投与の割合が多く認められ,治療前のVASが高値であり,四肢骨格筋量が有意に低値であり,赤血球容積分布幅(RDW)が有意に高値であった.2群間の比較でp<0.1であった因子に年齢,性別を加えて説明変数としたロジスティック回帰分析では,VAS,RDW,L4/5高位の体幹筋断面積が有意な因子であった.

    結語:慢性腰痛では体幹筋を維持することで腰痛の改善が期待できる一方で,非改善群で老化を反映するとされるRDWが高値であったことは,高齢者の慢性腰痛における非可逆的な側面が示唆される結果であった.

  • 平井 高志, 榊 経平, 加藤 剛, 富澤 將司, 湯浅 将人, 高橋 拓也, 江川 聡, 松倉 遊, 猪瀬 弘之, 吉井 俊貴, 大川 淳
    2023 年 14 巻 6 号 p. 891-896
    発行日: 2023/06/20
    公開日: 2023/06/20
    ジャーナル フリー

    腰椎椎間板ヘルニアに対するコンドリアーゼ注入療法は手術と保存的治療の中間治療として期待されている.東京医科歯科大学整形外科協力関連施設の5施設で2018年9月より神経根症性疼痛を主体とした腰椎椎間板ヘルニアに対してコンドリアーゼを用いて椎間板内酵素注入療法を積極的に行ってきた.投与後半年以上フォローが可能であった124例を調査したところ,97例(78.2%)において下肢痛が半減し,6ヶ月以内に6例(5%)がヘルニア摘出術を受けた.8例に軽度の急性期合併症が見られた.下肢痛半減までの期間は,1ヶ月以下が41.5%,1~3ヶ月が36.9%,3~6ヶ月が15.4%,6~12ヶ月が6.2%であり多くは3ヶ月以内に改善することが分かった.

  • 山浦 鉄人, 圓尾 圭史, 岡田 文明, 有住 文博, 岩倉 亮, 橘 俊哉
    2023 年 14 巻 6 号 p. 897-902
    発行日: 2023/06/20
    公開日: 2023/06/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:Vertebral Bone Quality(VBQ)scoreはmagnetic resonance imaging(MRI)T1強調像を用いた骨質評価方法として近年報告された.本研究はVBQ scoreとdual energy x-ray absorptiometry(DEXA)との関係,また骨粗鬆症性椎体骨折(OVF)発症との関連を検討することを目的とした.

    対象と方法:2021年1月から2022年12月までで当院でDEXAを施行した257例のうち,3ヶ月以内に腰椎MRIを撮影し,感染性疾患,腫瘍性病変,腰椎固定術後症例を除外した99例を対象とした.T1強調像矢状面正中スライスでL1~L4椎体海面骨とL3椎体背側の脳脊髄液(CSF)のsignal intensity(SI)を測定し,L1~L4椎体海面骨のSIの中央値をCSFのSIで除した値をVBQ scoreとした.またMRIで既存骨折も含めたOVFを認めるものをOVFあり群(45例),それ以外をなし群(54例)とし,比較検討した.

    結果:平均年齢は78歳(女性73%),平均VBQ scoreは3.7±0.6であった.VBQ scoreはlowest T-score,腰椎bone mineral density(BMD),大腿骨近位部BMDと負の相関を認め,OVFあり群では有意に年齢,VBQ scoreが高く,T-score,BMDは有意に低値であった.目的変数をOVFの有無,説明変数を年齢,性別,lowest T-score,body mass index(BMI),VBQ scoreとした多変量ロジスティック回帰分析ではVBQ scoreが独立した関連因子となった.

    結語:本研究ではVBQ scoreはT-score,BMDと相関関係を認め,有用なOVF予測因子となる可能性が示唆された.

  • 大下 優介, 江守 永, 岡野 市郎, 瀬上 和之, 工藤 理史, 白旗 敏之, 神崎 浩二, 豊根 知明
    2023 年 14 巻 6 号 p. 903-908
    発行日: 2023/06/20
    公開日: 2023/06/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:化膿性脊椎炎では低栄養の病態が影響するとの報告があるが,その詳細は充分に検討されていない.今回我々は感染を発症した症例の初診時栄養評価と膿瘍の形態の関連性を検討したので報告する.

    対象と方法:2020年1月から2022年5月まで当院で経験した化膿性脊椎炎26例(男性15例,女性11例)についてカルテを用いて後ろ向きに検討した.栄養の評価はCOUNT変法の基準を用いた.

    結果:平均年齢は71(Range:23~89)歳であった.軽度栄養不良が6人(23.1%),中等度栄養不良が9人(34.6%),重度栄養不良が11人(42.3%)であった.

    軽度栄養不良群6例の初診時MRIでは化膿性椎間板炎のみを認めるものが4例(66.7%),化膿性椎間板炎と硬膜外膿瘍の合併が2例(33.3%)であった.重度栄養障害群11例では化膿性椎間板炎のみを認めるものが5例(45.5%),化膿性椎間板炎と硬膜外膿瘍の合併が1例(9.1%),化膿性椎間板炎と腸腰筋膿瘍の合併が2例(18.2%),化膿性椎間板炎と硬膜外膿瘍と腸腰筋膿瘍の合併が3例(27.3%)であり,栄養状態の悪化に伴ない感染の広がる傾向であった.

    結語:化膿性脊椎炎では低栄養が膿瘍の波及にも影響している可能性が示唆された.

  • 田中 悟, 井口 哲弘, 木下 恵祐, 貞光 隆志, 若松 亮太, 船田 菜津子, 市橋 さなえ, 左右田 裕生, 林 睦美, 前野 耕一郎
    2023 年 14 巻 6 号 p. 909-914
    発行日: 2023/06/20
    公開日: 2023/06/20
    ジャーナル フリー

    産後腰背部痛と母乳授乳との関連を骨密度低下との観点から調査した.当院で出産した297名に産後4ヶ月経過した時点で腰背部痛と授乳形態についてアンケート調査を行い回答の得られた215名を対象とした.調査項目は,年齢,妊娠前BMI,出産回数,超音波骨密度,腰背部痛の有無と重症度,母乳授乳率と授乳姿勢で,腰背部痛は産後各月の疼痛程度をVASで評価してもらい,4以上を腰痛ありとし,各月の平均値で重症度を算定した.骨密度は超音波で出産直後に測定し,母乳授乳率は100,75,50,25,0%(ミルクのみ)の5段階で評価した.結果は腰背部痛有りが134名(62.3%)と多かった.母乳授乳との関連では母乳授乳率100%群は,腰背部痛を訴える頻度と重症度が高い傾向があった.骨密度との関連では母乳授乳100%の119名の中で低骨密度と高密度の2群間で,腰背部痛の割合と重症度に差はなかった.授乳中に姿勢異常がある人では,有意に腰背部痛の割合が高かった(p<0.05).近年,産後腰背部痛の原因に低骨密度を指摘した論文もあるが,今回の調査では,母乳授乳や低骨密度よりも姿勢異常のほうが関与していた.

  • 中谷 友洋, 峯玉 賢和, 寺口 真年, 延與 良夫, 前田 孝浩, 原田 悌志, 玉井 英伸, 中川 雅文, 山本 義男, 松尾 咲愛, ...
    2023 年 14 巻 6 号 p. 915-922
    発行日: 2023/06/20
    公開日: 2023/06/20
    ジャーナル フリー

    経皮的椎体形成術(以下BKP)後に理学療法士監視下で運動療法を継続することで続発性椎体骨折と後弯変形を予防できるかどうかを後ろ向きに検討した.退院後にも3ヶ月以上運動療法を行ったPT群50例,入院中のみ運動療法を行ったControl群80例が対象となった.術後3ヶ月,最終観察時の続発性椎体骨折の発生率はPT群で有意に低かった.さらに,術後3ヶ月の体幹伸展筋力,EuroQol 5 dimension 5 level,最終観察時のOswestry disability indexはPT群で有意に改善した.脊柱アライメントに有意差は認められなかった.本研究では,BKP術後にも理学療法士監視下で運動療法を継続することは続発性椎体骨折予防に有効であることを示唆した.

  • 望月 江梨子, 安宅 洋美, 志田 菜都美, 野邊 和泉, 丹野 隆明
    2023 年 14 巻 6 号 p. 923-930
    発行日: 2023/06/20
    公開日: 2023/06/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:腰背部痛を伴う脊柱後弯症患者に対する理学療法有効性の報告は散見されるが,身体的特徴に則した具体的な方法は明らかにされていない.当院では立位で行う体幹伸張運動を中心とした独自の運動療法を導入し,脊柱可動性の有無による比較から,その効果について検討した.

    対象と方法:対象は腰背部痛を有し3ヶ月間理学療法介入した脊柱後弯症患者111名とした.後頭部が接地した背臥位可能(flexible群;F群)と,不可(rigid群;R群)の2群に分け,介入前と介入3ヶ月で歩行速度・JOABPEQ・腰痛VAS・矢状面アライメントを比較した.

    結果:両群とも介入3ヶ月で歩行速度が有意に増大した.介入前JOABPEQ疼痛関連障害スコアはR群で有意に低値を示したが,介入後スコアおよび有効率には両群に有意差はなかった.腰痛VAS有効率はF群40%,R群50%であった.矢状面アライメントに有意な変化はなかった.

    結語:当院独自の運動療法により,脊柱可動性が低下し介入前腰痛が強いR群においてもF群と同等の歩行速度の改善と疼痛軽減効果を認め,姿勢異常を有する高齢患者に対する本運動療法の有用性が示唆された.

  • 鳥飼 英久, 榎本 圭吾, 井上 雅俊
    2023 年 14 巻 6 号 p. 931-937
    発行日: 2023/06/20
    公開日: 2023/06/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:腰部脊柱管狭窄症(LSS)に対して神経障害性疼痛治療薬が登場し10年余りが経過した.上記治療薬が使用可能となる前後の保存治療の効果を比較した.

    対象と方法:診療録より6ヶ月以上情報収集が可能であったLSS 533例を対象とした.2008年から1.5年の上記治療薬使用前の症例264例をA群,2019年から2.75年の上記治療薬が使用可能な症例269例をP群とした.診療ガイドラインの診断基準に準じ,臀部下肢痛,下肢のしびれ,間欠跛行等の症状があり,SLRは陰性で,MRIで脊柱管狭窄を認めた症例をLSSと診断した.症状の推移を改善,不変,悪化,不明と手術に分類した.

    結果:使用薬は,PGE1製剤がA群55.3%,P群54.9%,NSAIDsはA群45.5%,P群50.2%と両群で差はなかった.P群で抗てんかん薬が63.1%,弱オピオイド19.5%,デュロキセチンが8.5%に使用された.症状はA群:改善54.2%,不変28.8%,悪化2.8%,手術12.9%.P群:改善46.1%,不変23.2%,悪化3.3%,手術26.2%で手術が有意に増加したが,1年間の手術数に換算すると両群で差はなかった.P群において抗てんかん薬の使用の有無で手術の割合に差はなかった.

    結語:神経障害性疼痛治療薬の登場後も手術の割合は減少せず,重症例には限界があった.

  • 東迎 高貴, 井口 哲弘, 左右田 裕生, 木下 恵祐, 貞光 隆志, 山下 仁司, 葛原 啓, 安田 義, 大谷 卓弘, 前野 耕一郎
    2023 年 14 巻 6 号 p. 938-944
    発行日: 2023/06/20
    公開日: 2023/06/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:兵庫県の整形外科医を対象に妊娠授乳関連骨粗鬆症(PLO)による脊椎骨折の経験と認知度に関する調査を行った.

    対象と方法:対象は兵庫県整形外科医会の会員436名および県内分娩取り扱い施設で整形外科の標榜がある38施設の整形外科責任者である.調査はアンケートで行い最終的な調査対象は317名(回答率73%)であった.また年齢別,就業別の調査も行った.

    結果:対象者は開業医177名(60.1歳),勤務医117名(59.9歳),教職員11名(52.5歳),その他12名(69.9歳)であった.脊椎骨折経験者は32名(10.1%)49件で,過去1年以内の経験が5件(開業3,勤務2),2~5年は11件(開業3,勤務8),6~10年18件(開業8,勤務7,その他3),11~20年12件(開業9,勤務3),21年以上3件(開業1,その他2)であった.疾患認知度で「PLOを知らなかった」は,開業医57.6%,勤務医59.0%,教職員36.4%,その他33.3%であった.

    結語:1年以内のPLO経験例が5件あり,兵庫県の年間出産数から試算すると0.014%の発生率である.全例調査ではないため,実際はこれ以上の発生率と推定している.

  • 神田 賢, 北村 拓也, 古西 勇, 渡辺 慶, 佐藤 成登志
    2023 年 14 巻 6 号 p. 945-952
    発行日: 2023/06/20
    公開日: 2023/06/20
    ジャーナル フリー

    成人女性腰痛有群12名(平均年齢21.2±0.4),腰痛無群18名(平均年齢21.1±0.3)に対し,近赤外線組織血液酸素モニター装置(NIRS)を用い,腰部多裂筋の血液循環動態の測定を行った.対象者に,直立位から体幹伸展動作もしくはこれだけ体操を行わせ,その際の腰部多裂筋のOxy-Hb,Deoxy-HbおよびTotal-Hbの変化を,それぞれ直立位,動作10秒後で測定し,比較検証を行った.結果,体幹伸展動作においては,腰痛の有無において,Oxy-Hb,Deoxy-Hb,Total-Hb全てにおいて,有意な交互作用および腰痛有無の主効果を認めなかった.しかしながら,姿勢の変化による経時的変化においては,Deoxy-Hb,Total-Hbに有意な増加を認めた.これだけ体操においては,腰痛の有無において,Oxy-Hb,Total-Hbにおいて,有意な交互作用および腰痛有無の主効果を認めなかった.しかしながら,姿勢の変化による経時的変化においては,有意な増加を認めた.Deoxy-Hbにおいては,有意な交互作用を認め,腰痛無群で動作による経時的変化で有意な増加を認めた.以上のことから,立位での体幹伸展動作でも,腰痛の有無にかかわらず血流循環動態が増加を示し,これだけ体操では,腰痛の有無にかかわらず,血流循環動態がより増加を示すことが示唆された.

  • 小林 洋, 二階堂 琢也, 渡邉 和之, 加藤 欽志, 小林 良浩, 大谷 晃司, 矢吹 省司, 紺野 愼一
    2023 年 14 巻 6 号 p. 953-958
    発行日: 2023/06/20
    公開日: 2023/06/20
    ジャーナル フリー

    目的:本研究の目的は,脊椎疾患と夜間転倒に注目して当科の入院患者の転倒を調査し,その特徴を明らかにすることである.

    方法:検討①:2019年4月から2021年11月の期間に当科に入院中,転倒を生じた患者を対象とした.転倒発生数,年齢,性,発生時間帯,疾患の部位,手術の有無,睡眠薬の内服,BMIを調査した.検討②:夜間転倒群と,同時期に入院した症例で性・年齢をマッチングさせた非転倒群を設定し,群間で疾患部位,睡眠薬の内服,BMIを比較した.

    結果:検討①:2,372例中,転倒は71例(3.0%,平均年齢68.6歳,男性32例,女性39例)に認められた.夜間転倒は39.4%,疾患部位は脊椎が49.3%で,術後転倒は69.0%であった.検討②:脊椎疾患は夜間転倒で53.6%と多かった.睡眠薬の内服率は,夜間転倒群では57.1%と,非転倒群の14.3%と比較して有意に高かった.

    考察:転倒は入院患者の3.0%で生じ,脊椎疾患が約半数を占め,約4割が夜間転倒であった.夜間転倒患者は脊椎患者に多く睡眠薬の内服率が高かった.本結果をふまえた転倒予防のアプローチが有効である可能性がある.

  • 寺門 淳, 中村 俊文, 三橋 彩乃, 岡地 光士郎, 大鳥 精司
    2023 年 14 巻 6 号 p. 959-965
    発行日: 2023/06/20
    公開日: 2023/06/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:成長期の腰椎分離症の骨癒合率は分離の病期(形態),使用するコルセットによって変化する.今回,対象を中高生の片側腰椎分離症患者に限定し,全例半硬性コルセットを使用し,病期(形態)分類別にみた骨癒合率を調査した.

    対象と方法:2015年6月~2019年11月の間に当院を外来受診した中高生のうち,片側のみに腰椎分離症が認められ半硬性コルセットにて治療を行った127名134ヶ所を対象とした.骨癒合の判定は患者の伸展時腰痛が消失した後にCTを施行して行った.

    結果:超初期(Ia-型)の癒合率は100%,初期はIa型で95.2%,Ib型で87.5%,進行期(II型)は40%,終末期(III型)の癒合率は0%であった.

    結語:成長期の腰椎分離症は中高生,片側例,超初期~初期であれば,半硬性コルセットで骨癒合を得られる可能性が高い.

  • 古高 慎司, 藤原 靖, 當天 賢子, 大田 亮, 岩佐 和俊, 福井 博喜, 安達 伸生
    2023 年 14 巻 6 号 p. 966-972
    発行日: 2023/06/20
    公開日: 2023/06/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:本研究の目的は,腰痛を主訴とした腰部脊柱管狭窄症に対する脊椎固定術を併用しない後方除圧術による腰痛の変化について検討することである.

    対象と方法:当施設にて腰痛を主訴とした腰部脊柱管狭窄症に対し脊椎固定術を併用しない顕微鏡視下後方除圧術を行った51例を対象とした.調査項目は,術前後の腰痛,下肢痛,下肢のしびれ感,JOABPEQ,腰椎前弯角とその可動域,椎間関節水腫,椎体終板のModic change,棘突起kissing,椎体すべりとし,腰痛VASが改善した症例(改善群)と,改善しなかった症例(非改善群)で各項目の比較を行った.

    結果:改善群37例,非改善例14例であり,72.5%で腰痛が改善した.改善群で術前の腰痛VASと術後のJOABPEQの重症度スコアである疼痛関連障害と歩行機能障害,社会生活障害,心理的障害と,術前腰椎可動域が有意に大きく,有意にModic changeが少なかった.

    結語:術前に腰痛が強く,腰椎の椎体終板障害が少ない症例で腰痛が改善することが示唆された.椎体終板障害を伴った症例では腰痛が残存する可能があり,脊椎固定術などの追加治療も考慮する必要がある.

  • 桝本 悠輔, 友利 正樹, 新井 嘉容, 坂井 顕一郎, 鳥越 一郎, 榊 経平, 小沼 博明, 小林 裕
    2023 年 14 巻 6 号 p. 973-977
    発行日: 2023/06/20
    公開日: 2023/06/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:腰椎椎間板ヘルニア(LDH)は日常診療で接する機会の多い疾患であるが,その代表的な神経根障害徴候である下垂足に対する早期手術の有効性に関しては,種々の報告があり一定の見解が得られていない.本研究の目的は,LDHによる下垂足に対する7日以内の早期手術の有効性を検討することである.

    対象と方法:当施設で2017年9月1日から2021年11月31日までの期間に,LDHによる下垂足に対して7日以内の早期手術を実施した15例と,8日以降の後期手術を実施した16例の2群間で,術後のMRC gradeに関する比較検討を実施した.

    結果:術後6ヶ月時点でTA MMT≧3となった症例は,早期手術群が11例(73.3%),後期手術群が10例(62.5%)(P=0.704),術後1年時点では,早期手術群が12例(80.0%),後期手術群が12例(75.0%)(P>0.999)と,いずれも両群間に有意な差はみられなかった.術後6ヶ月間でのTA MMT平均改善点数は,早期手術群が2.07,後期手術群が1.56(P=0.317),術後1年間では,早期手術群が2.47,後期手術群が1.88(P=0.107)と,こちらも両群間に有意な差はみられなかった.

    結語:本研究からは,LDHによる下垂足に対する7日以内の早期手術の有効性は示されなかった.

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