2024 年 15 巻 6 号 p. 979-984
はじめに:腰椎分離症は発育期のスポーツ選手に好発する腰部疾患の一つである事が知られている.サッカー競技は腰椎分離症発生が多い競技の一つである.今回の研究の目的は,ジュニアサッカー選手の腰椎分離症を早期発見するためのスポーツ現場で活用可能なスクリーニングツールとなる指標を得る事とした.
対象と方法:中学生サッカー選手37名を対象にアンケート調査と下肢柔軟性評価を実施し,アンケート調査から分離症治療歴のある選手(分離群)と一度も腰痛の経験がない選手(コントロール群)の2群に分類し比較を行った.
結果:下肢柔軟性評価9項目中,股関節伸展可動域は分離群で陽性6名,陰性2名,コントロール群で陽性2名,陰性27名と2群で有意差を認めた(P=0.0003).その他8項目では2群で有意差は認めなかった.
結語:中学生サッカー選手で腰椎分離症治療歴のある選手は,腰痛を経験した事のない選手に比べて股関節伸展可動域が不十分な身体的特徴が認められ,スポーツ現場での腰椎分離症予防のスクリーニングとしては,股関節伸展可動域をチェックする事も大切である.腰椎部へのストレスを軽減させるためには股関節伸展可動域15度以上獲得を目指したセルフケア指導が重要であると考えられた.