2024 年 15 巻 9 号 p. 1157-1164
はじめに:脊椎固定術は腰痛や下肢症状の改善をもたらす一方で,必然的に可動椎間減少によるADL障害を伴う.本研究は固定椎間数と術後の脊柱可動性減少(不撓性)によるADL障害との関係を調査した.
対象と方法:対象は脊椎椎固定術を施行し術後1年以上経過した189例で,固定椎間数,術前後のLSDI,ODIを検討した.
結果:腰椎固定1椎間(A群)は45例,2椎間(B群)33例,3椎間(C群)38例,4~5椎間(D群)34例,胸椎から骨盤までのlong-segment fusion(E群)39例であった.ODIはE群を含むすべての群において術後有意に改善した.一方,LSDIはE以外の群ではいずれも術後有意に改善したが,E群では有意に悪化した.
結語:A~D群では固定術本来のADL改善効果が脊柱不撓性によるADL障害を相殺し,むしろそれを上回るが,E群ではその相殺効果が不十分となり得ると考えられる.従って,ASDに対してlong-segment fusionを行う際には,術後,脊柱不撓性によるADL障害がより明確に自覚される可能性があり,術前のインフォームドコンセントにその点を含めることが重要であると考えられる.