2025 年 16 巻 4 号 p. 721-725
頚椎硬膜外膿瘍は比較的稀であり,古典的には頚部痛,発熱,神経脱落症状が3兆候とされているが,一連の症状を呈するのは少ない.麻痺を呈した際には外科的介入も考慮される.今回外科的治療を要した頚椎硬膜外膿瘍2例を経験したため報告する.
症例1:50歳男性,7日前から頚部痛を自覚.炎症反応高値認め当院内科入院.翌日右上肢優位の四肢不全麻痺が出現しMRIで後咽頭膿瘍,C4/5を中心に硬膜外膿瘍を認め同日頚椎椎弓形成術と排膿を施行.術前MMTは上肢近位筋:2/3,手関節掌背屈:1/1,下肢近位筋:2/3であった.最終経過観察時独歩可能まで改善を認めた.
症例2:53歳男性,7日前からの頚部痛.疼痛増悪,体動困難で近医入院.入院翌日に四肢の不全麻痺を認めMRIでC5/6の椎間板炎,C2-Th2高位で髄内輝度変化認め当院へ搬送.同日頚椎椎弓形成術と排膿を施行.術前MMTは上肢近位筋:2/3,下肢:腸腰筋以遠0/0であった.最終経過観察時巧緻運動障害は軽度残存するも独歩可能となった.いずれも後方からの除圧術にて感染の鎮静化が得られ,麻痺の改善も良好だった.