2025 年 16 巻 6 号 p. 932-938
はじめに:腰部脊柱管狭窄症(LSCS)患者の治療は,薬物療法を含む保存療法が第一選択となる.手術療法を施行されたLSCS患者は,薬剤数は減少することが予想されるが,術後薬剤数が増加する患者も散見される.本研究の目的は,手術療法がLSCS患者の薬物療法に与える影響を検討し,術後の薬剤数増加の関連因子を同定することである.
対象と方法:対象は,2020年4月から2021年3月までにLSCSに対して当院で腰椎手術を受けた40歳以上の患者142名(男性84名,女性58名,平均年齢70.1歳)とした.術前および術後6ヶ月,1年における患者情報を後ろ向きに検討し,患者背景,JOABPEQを含む患者立脚型アンケート,術後処方薬について評価した.
結果:LSCS患者に対する腰椎手術は,全体ではLSCS治療薬数を有意に減少させたが,約15%の患者では増加していた.JOABPEQにおける歩行能力および社会生活の術後成績不良が術後の薬剤数の増加と有意に関連していた.
結語:LSCS患者に対する腰椎手術は薬剤数を減少させるが,歩行能力や社会生活の術後成績不良が術後の薬剤数増加に関与している.