抄録
【目的】慢性咳嗽は不眠,体力低下など生活の質の低下を招く症状の1つである.転移性肺腫瘍による慢性咳嗽に対し,プレガバリンを使用後,症状の軽減を認めた1例を経験したので報告する.【症例】症例は75歳男性.直腸がんにて腹会陰式直腸切断術施行.補助化学療法施行,手術後1年多発肺転移出現.化学療法継続するも多発肺転移増悪,手術後2年4カ月抗がん治療終了の方針となる.その後,咳嗽増悪,症状緩和目的にて緩和ケア科紹介.器質的疾患による気道刺激亢進と考え,プレガバリン50 mg/日より開始,日中の眠気等副作用に注意しながら25~50 mgずつ増量.125 mg/日にて咳嗽は軽減,夜間睡眠も確保可能となった.【結論】神経障害性疼痛に効果のあるプレガバリンは,その薬理作用である神経細胞の過剰興奮の抑制により,慢性咳嗽への効果も期待される.オピオイドとは作用機序の異なる鎮咳薬の選択肢となりうると考えられる.