Palliative Care Research
Online ISSN : 1880-5302
ISSN-L : 1880-5302
10 巻, 1 号
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原著
  • 山本 亮, 木澤 義之, 坂下 明大, 中澤 葉宇子
    2015 年 10 巻 1 号 p. 101-106
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/01/08
    ジャーナル フリー
    【目的】がん対策基本法に基づき,がん医療に携わるすべての医師を対象とした基本的な緩和ケアに関する研修が行われている.本研究の目的は,緩和ケア研修会が,受講した医師の臨床実践にどのように役立っているかを明らかにすることである.【対象と方法】緩和ケア研修会を受講した医師12名に対し,研修会を受講して臨床実践に生じた変化や役に立ったこと,今後の課題についてフォーカスグループ・インタビューを行い,その内容を質的に分析した.【結果】役立った点として,緩和ケアの知識,緩和ケアの技能,苦痛に目を向ける,在宅の視点,知識の共有・共通化の5つのカテゴリーが抽出された.今後の課題としては,研修会の内容,研修会の構成,研修会の制度の3つのカテゴリーが抽出された.【結論】緩和ケア研修会を受講することは,緩和ケアを系統的に学ぶことができ,他の医師の実践を知ったり,ネットワークの構築に役立つ可能性があることが示された.
  • 原 伸輔, 前田 一石, 松田 陽一, 大野 由美子, 谷向 仁, 恒藤 暁, 門脇 裕子, 竹上 学, 三輪 芳弘
    2015 年 10 巻 1 号 p. 107-112
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/02/03
    ジャーナル フリー
    フェンタニル口腔粘膜吸収剤(transmucosal immediate-release fentanyl;以下,TIRF)は突出痛への有効性が期待されるが,不適切な使用による有害事象も懸念されるため,適正使用モニタリングが重要である.当院でTIRFが処方された31例を対象に,TIRF使用の適切性,逸脱の原因,有害事象を評価するために後方視的カルテ調査を実施した.評価のため,持続痛のコントロール,他のオピオイドの使用状況からなる2段階のアルゴリズムを作成した.TIRF使用が適切と判断された症例は6例(19.4%)であった.不適切な症例では,突出痛の評価が不十分で,定時オピオイド鎮痛薬と同一成分という理由のみで処方された症例が19例,他のオピオイドがより適切である症例が12例であった.全例でTIRFが最小用量から開始され,重篤な有害事象はなかった.突出痛の十分な評価に基づく適切な薬剤選択が望まれる.
  • 永井 純子, 植沢 芳広, 加賀谷 肇
    2015 年 10 巻 1 号 p. 113-119
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/02/03
    ジャーナル フリー
    強オピオイドは,がん疼痛などの高度な痛みに適用される鎮痛薬である.強オピオイドを用いた疼痛緩和療法には多様な副作用が付随することから,適切な副作用管理を達成するための客観的根拠に基づくデータの解析が望まれる.そこで,本邦の副作用データベース(JADER)から,モルヒネ,フェンタニル,およびオキシコドンにおける副作用発現傾向を解析した.JADERから疼痛治療に用いた強オピオイドにより生じた副作用症例を抽出し,副作用の種類とその発現頻度を解析した.強オピオイドに共通する副作用の発現頻度は,薬物間で大きな相違が認められた.さらに,これらのオピオイドの副作用発現傾向を俯瞰する目的で主成分分析を行った結果,モルヒネはフェンタニルとオキシコドンの中間的な副作用の発現傾向を示すことが示された.以上の知見は,患者の副作用に応じた適切な薬剤選択による安全な薬物治療の確立に有用であると考えられる.
  • 森本 有里, 新城 拓也, 関本 雅子, 東川 俊昭, 新國 雅史, 大石 麻利子, 石川 朗宏, 槇村 博之, 置塩 隆, 岡田 泰長, ...
    2015 年 10 巻 1 号 p. 120-124
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/02/05
    ジャーナル フリー
    【目的】高齢者福祉施設の看取りと終末期ケアの現状把握をするために実態調査を行った.【方法】神戸市内の高齢者福祉施設350施設を対象に質問紙調査を実施した.【結果】350施設のうち314施設(回収率89.7%)から回答を得た.看取りを実施している121施設(39%),看取りに対して取り組む意思がある151施設(48%),胃瘻造設した入居者がいる152施設(48%),点滴可能183施設(58%),医療用麻薬使用可能72施設(23%)であった.【結論】高齢者福祉施設のうち看取りを実施している所は半数に満たないことが分かった.また医療的処置として胃瘻,点滴は半数程度の施設で対応可能だが,医療用麻薬を使える施設は少ないことが分かった.
  • 畑(冨嵜) ゆかり, 原田 三奈子, 高岡 智子, 松本 由梨, 新城 拓也
    2015 年 10 巻 1 号 p. 125-133
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/02/06
    ジャーナル フリー
    在宅療養を体験した家族のつらさ,看護師に対する改善の必要性について明らかにし,効果的な看護介入方法を検討することとした.
    当訪問看護ステーションで,2012年8月~2013年12月の間に看取りに関わった遺族61人を対象に,2013年12月に質問紙調査を実施し,32人からの返答を得た.
    在宅療養のできごとについて,遺族は「とてもつらかった」(13%),看護師の対応は「改善の必要はない」(84%)と返答した.「在宅療養開始時,夜眠れていなかった」(P=0.049),「食べることを手伝ったら,むせてしまった」(P=0.018)と返答した家族は,つらさの度合いが高く,「どんな時に看護師に連絡したらよいか迷うことがあった」(P=0.017)と返答した家族は,改善の必要度が高かった.
    本研究の結果から,家族の健康状態のアセスメント,不眠の対処,介護指導の中では食事に関することが重要であることが分かった.
  • 阿部 泰之, 堀籠 淳之, 内島 みのり, 森田 達也
    2014 年 10 巻 1 号 p. 134-140
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/02/17
    ジャーナル フリー
    【目的】本研究の目的は,医療介護福祉間の,特に現場においてのバリアをなくす取り組みであるケア・カフェ®を地域に適用することにより,地域の連携がどのように変化するか調査することである.【方法】ケア・カフェ®の参加者を対象とした質問紙による前後比較研究を行った.医療介護福祉の地域連携尺度の点数変化の解析,質問紙の自由記載の内容分析をあわせて検討する混合研究法を用いた.【結果】地域連携尺度の点数は,合計点数および4つの下位尺度において有意に上昇し,その効果量は0.32~0.36であった.自由記載の内容分析において,参加者はケア・カフェ®に参加することにより,多職種の顔の見える関係をつくるという本来の目的以外にも,癒しの場,コミュニケ-ション上の気づき,社会関係資本など,多様な成果を得ていることが分かった.【結論】ケア・カフェ®は,地域における医療介護福祉の連携を改善する有用なツ-ルである.
  • 新城 拓也, 石川 朗宏, 五島 正裕
    2015 年 10 巻 1 号 p. 141-146
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/02/25
    ジャーナル フリー
    終末期がん患者の治療困難な苦痛に鎮静が必要なことがある.日本の在宅療養中の患者に対する鎮静についての報告は,ほとんどない.本研究の目的は,在宅療養中のがん患者に対する鎮静の状況を調査することである.しんじょう医院で,在宅で緩和ケアを提供された,2012年8月から2014年7月までに診療が終了した117例のがん患者のカルテを後方視的に調査した.死亡したがん患者は98例で,自宅で鎮静が行われたのは自宅で死亡した73名のうちの24名(33%),平均期間は,4.4±6.0日,投与薬剤はすべてミダゾラムであった.ミダゾラムの初期投与量は,12.8±6.2 mg/日,最終投与量は,12.4±6.5 mg/日であった.鎮静の対象となった症状は,せん妄が22例であった.在宅療養中のがん患者に,鎮静は必要な治療で,在宅チームが治療,ケアを常時討議することで,適切かつ安全に実施できることが分かった.
  • 角甲 純, 關本 翌子, 小川 朝生, 宮下 光令
    2015 年 10 巻 1 号 p. 147-152
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/03/05
    ジャーナル フリー
    【目的】呼吸困難に対する扇風機を用いて顔へ送風する支援は臨床ではよく行われているが,終末期がん患者に対する科学的なエビデンスは明らかではない.本研究では,終末期がん患者の呼吸困難に対する支援の有効性を後方視的に検討した.【方法】2013年7月~2014年1月に,当院の緩和ケア病棟に入院している終末期がん患者のうち,呼吸困難に対して扇風機を用いた支援を受けた9名の患者を分析の対象とした.効果の評価には,支援の実施前後で収集されていた呼吸困難VAS値の変化を用いた.【結果】扇風機を用いた支援実施前の呼吸困難VAS値は40.2±11.8,実施後VAS値は15.6±14.9で,実施前後で有意に減少していた(P=0.004).【考察】扇風機を用いた支援は,終末期がん患者の呼吸困難に対して効果がある可能性がある.今後は,介入研究を行い,前向きに有効性を検証していく必要がある.
  • 橋本 孝太郎, 佐藤 一樹, 内海 純子, 出水 明, 藤本 肇, 森井 正智, 佐々木 琴美, 宮下 光令, 鈴木 雅夫
    2015 年 10 巻 1 号 p. 153-161
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/03/05
    ジャーナル フリー
    【目的】在宅緩和ケアを受けた終末期がん患者の現状と診療実態を調査すること.【方法】在宅緩和ケアを専門的に提供する6診療所(在宅特化型診療所)から在宅診療を受け,2012年1~6月に死亡または診療中止したがん患者352名を対象として,診療録調査を実施した.【結果】対がん治療終了後に在宅診療を開始した290名の有効回答が得られた.男性165名(57%),年齢は平均72±13歳.訪問看護を238名(98%),訪問介護を95名(39%)が利用し,死亡または診療中止前1カ月間に,輸液療法を72名(30%),強オピオイド鎮痛薬投与を127名(52%)の患者が受けていた.転帰は自宅死亡242名(83%),在宅診療中止48名(17%)であり,中止の理由は,患者の身体的問題と並んで,家族の精神的・身体的な問題が多かった.【結論】在宅特化型診療所における在宅緩和ケアの現状と診療実態が明らかとなった.
  • 佐藤 友亮, 新城 拓也, 石川 朗宏, 五島 正裕, 関本 雅子, 森本 有里
    2015 年 10 巻 1 号 p. 162-167
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/03/06
    ジャーナル フリー
    在宅療養をしていた終末期がん患者の,食事と補完代替療法の現状調査を行った.神戸の5診療所で治療され,自宅で死亡した200名を対象に,患者遺族に質問紙を2014年2月に発送した.回収率は66%,患者の平均年齢は74歳だった.食事や食品の情報入手先を問う質問では,書籍・雑誌・新聞(48%),医療者(46%)という回答が多かった.積極的に摂取した食材は,お茶(64%),乳製品(62%),大豆食品(60%),制限した食材は,アルコール(49%),脂質(31%),塩分(31%)という回答が多かった.補完代替療法を43名(32%)の患者が取り入れており,サプリメント,ビタミン剤(28%)が多かった.がん患者は,一般的に健康に良いと考えられているものを摂取していた.終末期がん患者の食事,補完代替療法には科学的根拠が乏しいため,今後の研究が必要である.
  • 児玉 佳之, 小西 徹夫, 長岡 康裕, 北井 宏哉, 青木 景資
    2015 年 10 巻 1 号 p. 168-173
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/03/27
    ジャーナル フリー
    【目的】アンモニアは高度の肝障害や門脈副血行路の発達などにより高値を示すが,がん終末期におけるアンモニアに関する報告はほとんどない.今回,がん終末期患者に対してアンモニアを測定し,後ろ向きに検討した.【方法】緩和ケア目的に入院した患者のうち80例に対し,入院時アンモニアを測定し,高値群,正常群でがん腫,性別,年齢,生存期間,HbA1c,アルブミン,AST,ALT,総ビリルビン,ALP,BUN,プロトロンビン活性値,eGFR,CRP,ヘマトクリット,肝転移の有無,麻薬・便秘薬使用の有無,L3レベル大腰筋面積について検討した.【結果】平均生存期間41.6日のがん終末期患者において高アンモニア血症は21.3%に認めた.単変量解析では性別と肝転移で有意差を認め,ロジスティック回帰では肝転移が抽出された.【結論】肝転移を有するがん終末期患者は,高アンモニア血症を呈することが有意に多かった.
短報
  • 清水 政克, 新城 拓也, 小林 重行, 濱野 聖二, 岡野 亨, 中村 宏臣, 石川 朗宏, 関本 雅子, 槇村 博之, 本庄 昭, 神戸 ...
    2015 年 10 巻 1 号 p. 301-305
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/01/10
    ジャーナル フリー
    【目的】本研究では神戸市医師会による市内医療機関の在宅医療の実態調査を行った.【方法】2013年7月に市内全医療機関を対象に質問紙を発送した.【結果】1,589施設に発送し899施設(回収率57%)から回答を得た.訪問診療および往診を実施している医療機関は,それぞれ50%,65%であった.在宅または介護療養施設での看取りに対応可能な医療機関は,それぞれ35%,18%であった.1週間のうち平均2.3±1.7日を在宅医療に費やしていた.がん患者に対応している医療機関は23%で,緩和ケア研修会(PEACE)を受講した医師がいる医療機関は7.0%,退院前カンファレンスに参加している医療機関は6.9%であった.【結論】本研究で,過半数の医療機関が在宅医療を提供していることが分かった.しかし,看取りの対応,緩和ケア研修,退院前カンファレンスの参加の対応はまだ少数であることが分かった.
  • 清水 佐智子
    2015 年 10 巻 1 号 p. 306-311
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/01/16
    ジャーナル フリー
    この研究の目的は,①看護学生の終末期患者に対する態度は,講義によって向上するか,②身近な死の経験や看取り経験がある学生は,そうでない学生よりも終末期患者へ対する態度が前向きか,を明らかにすることである.FATCOD(Frommelt Attitude Toward Care of Dying Scale)-FormB-Jを用いて調査を行い,得点を緩和ケアの講義前後,死別や看取り経験ごとに比較した.69名から回答が得られ,「Ⅰ.死にゆく患者へのケアの前向きさ」「Ⅱ.患者・家族を中心とするケアの認識」の両者で,講義後の点数が有意に高かった(p<0.0001).死別・看取り経験の比較では,有意差がなかった.看取り経験がある学生は,点数が高い傾向にあった.終末期ケアの内容を含む緩和ケアの講義は,看護学生の終末期患者に対する態度向上に有用であることが示唆された.
  • 平澤 宏卓, 安藤 詳子, 光行 多佳子, 山本 陽子, 黒田 宏美, 山田 和正, 大日方 五郎
    2015 年 10 巻 1 号 p. 312-317
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/01/28
    ジャーナル フリー
    本研究は,がん性疼痛アセスメントツールとして先に発表した「痛み計」の痛みレベルの経時的かつ即時的な記録機能に加え,グラフ表示を可能にした「ペインメモリー」を開発し,入院がん患者における有用性を検討した.鎮痛薬使用中のがん患者12名は2週間,随時「ペインメモリー」に痛みレベルを記録し,グラフ化された痛みレベルを患者と医療者が共有した.その後,患者と医療者に質問紙調査を行った.結果,1日の入力回数は中央値5.25回で,「痛み計」よりも増えた.デザイン・機能に対し,患者と医療者の評価は,5段階評価のほぼ4以上であった.患者は“痛みの変化が分かった”,医療スタッフは“患者は痛みの治療に参加している”と高く評価した.以上から,ペインメモリーの使用により,入院がん患者の痛みレベルを把握する機会が増え,痛みレベルのグラフを活用することで,疼痛アセスメントに役立つ可能性を示唆した.
  • 菅野 雄介, 佐藤 一樹, 早川 陽子, 瀧田 好恵, 我妻 崇史, 千葉 友子, 本田 和子, 柴田 弘子, 山内 かず子, 高橋 信, ...
    2015 年 10 巻 1 号 p. 318-323
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/02/24
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,Liverpool Care Pathway(LCP)日本語版を導入するための課題を明らかにすることである.LCP日本語版の導入期間中に死亡した患者の診療記録調査と,医師2名と看護師8名を対象としたインタビュー調査を行った.LCP日本語版を使用した患者は22名(38%)であり,使用しなかった患者との死亡前48時間以内の輸液,強オピオイド鎮痛薬と鎮静薬の投与に有意な差はなかった.LCP日本語版を導入して良かったことは,【医療者間で看取りのケアの方針を再確認できた】【看取りのケアを体系的に学べた】であり,導入して難しいと感じたことは,【LCP日本語版の開始の判断が難しかった】【医療者の負担が大きかった】【看取りの基礎知識や経験がないと使えない】であった.一般病棟でLCP日本語版を導入していくためには,看取りのケアの教育と緩和ケアの専門家によるバックアップ体制の構築の必要性が示唆された.
  • 渡邊 紘章, 小島 美保, 奥村 佳美, 加藤 由貴, 出口 裕子, 平野 茂樹
    2015 年 10 巻 1 号 p. 324-328
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/03/06
    ジャーナル フリー
    【目的】これまで地域がん診療連携拠点病院の緩和ケア外来での意思決定支援に関する報告は少ない.本研究の目的は,緩和ケア外来でのがん患者と家族に対する意思決定支援内容について明らかにすることである.【方法】2012年4月から2014年3月までに在宅患者を対象とした緩和ケア外来へ依頼のあった全110例の診療内容を後ろ向きに検討した.【結果】緩和ケア外来受診期間中央値23日(最短1日,最長492日),平均受診回数4.7回(最短1回,最長29回)であった.緩和ケア外来での意思決定支援の必要例は89例(80%)で,その中で抗がん治療方針の意思決定支援は33例(30%)であった.33例の治療状況は,診断時から抗がん治療中の症例が26例(78%)であった.【結論】地域がん診療連携拠点病院の緩和ケア外来では,より早期からの意思決定支援が重要な役割の1つとなることが示唆された.
  • 高梨 知揚, 西村 桂一, 前田 樹海, 辻内 琢也
    2015 年 10 巻 1 号 p. 329-333
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/03/06
    ジャーナル フリー
    【目的】緩和ケア病棟を有する医療機関における鍼灸治療の実態を明らかにすることを目的とした.【方法】緩和ケア病棟入院料加算を受けている医療機関244施設の病棟長ないし看護師長を対象に,自記式質問紙調査を行った.【結果】回答が得られた98施設中6施設(6.1%)において,鍼灸治療が実施されていることが明らかとなった.治療対象となる愁訴については「疼痛」「倦怠感」「便秘」などが挙げられていた.緩和ケア領域において鍼灸師が関わることは,ケアの多様性の1つとしての意義があると指摘されていた.その一方で,鍼灸治療を病院で行う困難さが指摘されており,鍼灸治療が同領域において実践されるうえでの課題が明らかとなった.【結語】ケアの多様性の1つとして鍼灸治療が緩和ケアに関わる意義があると考えられる一方で,医療機関で鍼灸治療が実践されるための方法を検討していく必要がある.
症例報告
  • 藤原 正博, 金子 睦志, 水島 美由紀
    2015 年 10 巻 1 号 p. 501-504
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/01/08
    ジャーナル フリー
    治療抵抗性の三叉神経痛に対してNMDA受容体拮抗作用を有するイフェンプロジルが有効であった3例を経験した.【症例1】原発性マクログロブリン血症で当院通院中の70歳,女性.60歳頃から三叉神経痛を自覚.カルバマゼピンは無効で,イフェンプロジルを投与したところ,2~4週間で痛みがほぼ消失した.休薬により症状が再燃したが,イフェンプロジルの再開により痛みが消失した.しかし,1年半ほどでイフェンプロジルの効果が減弱したため,プレガバリンに変更して経過観察中.【症例2】骨髄異形成症候群で当院通院中の89歳,男性.以前より三叉神経痛を訴えていたが,カルバマゼピン,神経ブロックは無効で,イフェンプロジルを投与したところ,2カ月程度で痛みが消失した.【症例3】62歳,女性.50歳代の頃から三叉神経痛を自覚.カルバマゼピンが無効で,イフェンプロジルの投与により,約1カ月で痛みが軽減した.
  • 根岸 美由紀, 麻生 一郎, 伊藤 博
    2015 年 10 巻 1 号 p. 505-509
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/01/10
    ジャーナル フリー
    通院が困難な終末期がん患者(69歳男性:肺がん)に対し,緩和ケアチーム(以下,PCT)薬剤師による在宅患者訪問薬剤管理指導を行った症例を経験した.【結果】在宅で疼痛や服薬状況を直接詳細に把握し,適切な服薬指導が行えたことで疼痛軽減が得られた.加えて良好なコミュニケーションが築かれ,精神的な安心感にもつながった.また訪問看護師との連携できめ細やかな在宅支援を行うことができ,薬剤師による他覚的な評価を医師へフィードバックすることで,外来診療に貢献できた.さらに状態の悪化や急変で入院となった際にも,在宅での状況がおおむね把握されているためスムーズな入院移行が可能であった.【まとめ】PCT薬剤師による在宅患者訪問薬剤管理指導は,通院が困難ながん患者の疼痛軽減を含む在宅生活状況改善と,在宅から入院へのスムーズな連携に有用であった.そのため,症例によっては病院薬剤師が在宅で関わる必要性があると考えられた.
  • 佐藤 哲観, 伊藤 磨矢, 浅利 三和子, 島田 恵子
    2015 年 10 巻 1 号 p. 510-514
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/02/19
    ジャーナル フリー
    【緒言】悪性腸腰筋症候群(以下,MPS)は,悪性腫瘍によって腰神経叢が障害されて生じる腰下肢の痛み,知覚障害,脱力によって特徴づけられ,典型的な神経障害性疼痛を伴い,痛みの緩和に難渋する場合も少なくない.【症例】患者は67歳の女性.左側傍腰椎の悪性リンパ腫により左MPSを生じた.オキシコドンからタペンタドールへのオピオイドスイッチと鎮痛補助薬による薬物療法と腰神経叢ブロックを行って良好な除痛効果を得た.【考察】MPSによる痛みは強く,患者のQOLを著しく低下させるため,迅速な診断と適切な症状マネジメントが求められるがん関連症候群の1つである.タペンタドールはオピオイド受容体への作用と中枢神経系内でのノルアドレナリン再取込阻害作用を有し,神経障害性疼痛への有用性が報告されている.【結論】タペンタドール投与と腰神経叢ブロックの併用により,MPSに伴う腰下肢痛が良好にコントロールできた.
  • 小島 美保, 渡辺 紘章, 奥村 佳美, 村路 留美子, 公文 章子, 出口 裕子, 平野 茂樹
    2015 年 10 巻 1 号 p. 515-518
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/02/19
    ジャーナル フリー
    【目的】慢性咳嗽は不眠,体力低下など生活の質の低下を招く症状の1つである.転移性肺腫瘍による慢性咳嗽に対し,プレガバリンを使用後,症状の軽減を認めた1例を経験したので報告する.【症例】症例は75歳男性.直腸がんにて腹会陰式直腸切断術施行.補助化学療法施行,手術後1年多発肺転移出現.化学療法継続するも多発肺転移増悪,手術後2年4カ月抗がん治療終了の方針となる.その後,咳嗽増悪,症状緩和目的にて緩和ケア科紹介.器質的疾患による気道刺激亢進と考え,プレガバリン50 mg/日より開始,日中の眠気等副作用に注意しながら25~50 mgずつ増量.125 mg/日にて咳嗽は軽減,夜間睡眠も確保可能となった.【結論】神経障害性疼痛に効果のあるプレガバリンは,その薬理作用である神経細胞の過剰興奮の抑制により,慢性咳嗽への効果も期待される.オピオイドとは作用機序の異なる鎮咳薬の選択肢となりうると考えられる.
  • 松沼 亮, 早稲田 優子, 武田 仁浩, 村上 眞也, 川浦 幸光, 笠原 寿郎
    2015 年 10 巻 1 号 p. 519-523
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/02/21
    ジャーナル フリー
    【緒言】終末期に非侵襲的陽圧換気(NIV)を継続した状態でさまざまな活動が可能であった症例を経験したため報告する.【症例】57歳,男性.気腫合併間質性肺線維症の診断で外来経過観察中に肺がんと臨床診断され在宅酸素療法,NIVを導入されていたが,安静時呼吸困難が増悪し入院した.日中もNIVが必要となり,いったん食事摂取を中止され,緩和病棟へ転棟した.緩和ケア病棟でNIV継続した状態で食事摂取を再開し,入浴も行えた.ボランティアによる民謡鑑賞も行えた.合併症は移動時の低酸素血症,呼吸困難のみで,皮膚に発赤,潰瘍形成はみられなかった.【結語】NIVは終末期の活動を行う際に有用なデバイスの1つである可能性がある.
  • 春日 真由美, 京坂 紅, 黒澤 永, 余宮 きのみ
    2015 年 10 巻 1 号 p. 524-528
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/02/27
    ジャーナル フリー
    【症例1】81歳,女性.噴門部胃がん.消化管内に空気が溜まってくると心窩部の重苦感が増強していたが,曖気にて症状軽減を認めていた.曖気がすっきり出ない苦しさが続いていたため,メトクロプラミドの持続皮下注を開始したところ,曖気が出やすくなり,上腹部の膨満感は緩和された.【症例2】57歳,男性.膵頭部がんにて消化管通過障害を認めていた.腹部膨満感を伴った上腹部の不快感を訴えており,曖気にて改善を認めていた.メトクロプラミドの持続皮下注を開始したところ曖気がスムーズに出るようになり,上腹部の不快感が軽減した.【考察】がんによる消化管通過障害に伴った曖気がすっきり出ない苦痛症状に対して,メトクロプラミドの持続投与が有用な選択肢の1つであることが示唆された.消化管通過障害がある場合,メトクロプラミドによる蠕動亢進作用により胃に溜まっていたガスが上昇逆流し,曖気が促進されやすくなることが推測された.
総説
活動報告
  • 柴田 和彦, 浦上 裕美, 川上 範子, 高瀬 美咲枝, 石倉 恵美, 前田 誉子, 赤江 郁子
    2015 年 10 巻 1 号 p. 901-905
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/01/08
    ジャーナル フリー
    当医療圏では,在宅医主導で,PCA(patient-controlled analgesia)ポンプを使用して疼痛緩和を行うための連携システムが構築されておらず,在宅でオピオイド持続注射を実施することが困難であった.在宅緩和ケア中に内服困難となった乳がん患者に対して,病院緩和ケアチームが協力しオピオイド持続皮下注を開始した症例の経験と,医師会在宅医グループ勉強会での討論を踏まえ,システムの検討を行った.その結果,1)オピオイドは在宅医が処方,2)がん性疼痛看護認定看護師が訪問看護師に同行し,患者宅でアセスメントし,薬液を交換,3)ポンプレンタルは在宅医,消耗品は病院が負担,4)在宅医が在宅悪性腫瘍患者指導管理料,病院が共同指導管理料・訪問看護指導料をそれぞれ算定,というシステム「在宅PCAらくらくパック」を構築した.約2年間で6例の患者にこのシステムを適用した.システムを利用した在宅医,訪問看護ステーションにアンケート調査を行い,おおむね有益であるとの評価を得た.
  • 伊藤 浩明, 熊坂 隆行, 道添 敏隆
    2015 年 10 巻 1 号 p. 906-912
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/01/28
    ジャーナル フリー
    【緒言】アニマルセラピー(以下,AAT)を一般病院の緩和ケア病棟(以下,PCU)で行うにはさまざまな問題があり,実施するためのマニュアルが必要となる.【方法】当院PCUでは,行政機関である保健所と研究機関である大学,院内感染対策チームの協力を得て,実施マニュアルを作成した.【結果】2011年2月に第1回を開催し,その後2013年3月まで毎月1回計35回行った.開催時は,セラピードッグ・ハンドラー・医師・看護師・病棟ボランティア・保健所獣医師が1つのチームとなって,おのおのの役割を果たした.開催後の振り返りでは,参加者の反応や評価とともに手順の遵守や環境衛生の評価も行い,実施報告書を保健所に提出した.【考察】PCUでAATを行うには,感染・環境・衛生の問題が考えられる.実施にあたりおのおのの専門家に相談し,協力を得て,多施設・多部門の視点による実施マニュアルが作成できた.各施設でのAAT開催の参考になるかと思われる.
  • 河端 秀明, 柿原 直樹, 多賀 千明, 西川 正典, 西谷 葉子, 浅野 耕太, 能勢 真梨子, 佐久間 美和, 神田 英一郎, 西村 暢 ...
    2015 年 10 巻 1 号 p. 913-916
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/02/25
    ジャーナル フリー
    緩和ケアチーム(PCT),栄養サポートチーム(NST),栄養課が連携して,「スープ食」を開発し,がん終末期入院患者10例に提供した.提供時はPCT,NST,調理師でベッドサイドまで配膳した.全例経口摂取不良であったが,9例はスープを嘔吐なく口にすることができ,良好な満足度を得ることができた.最終摂取日から永眠あるいは転院までの日数は3~20日(平均12.5日)であり,摂取回数は1~3回(平均2.0回)であった.スープを味わえた喜びが生きる力の支えとなり,精神的なQOLの改善をもたらすことが期待される.
  • 木元 道雄, 岸本 寛文, 西 ひろみ
    2015 年 10 巻 1 号 p. 917-921
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/02/27
    ジャーナル フリー
    がんによる死亡数が年々増加する中,ホスピス・緩和ケア病棟(以下,PCU)のベッド数は未だに不足しておりPCU を医療資源として有効に活用するためには適切で公正な入院判定が重要となる.厚生労働省の緩和ケア病棟入院料の施設基準や病院評価機構の緩和ケア機能の評価項目でも入院判定を適切に行うことを求めている.多くのPCU では入院判定会議が設置されているものの,入院の優先順位を決める明確な基準を公表している施設はない.今回,当科では独自の「緩和病棟入院チェックリスト」を作成し,入院の必要性をスコア化して入院判定に利用した.2013 年度は年間51 回の入院判定会議を開催し,延べ403 例(1 回平均7.9 例)の判定を行い入院の優先順位を決定した.2013 年度の実際の入院患者数は187名(平均在院日数は31.6 日)と少なく,優先順位による判定が必要であった.
  • 越智 拓良, 中橋 恒, 坪田 信三, 佐々木 徹, 西久保 直樹, 森 洋二, 吉田 美由紀
    2015 年 10 巻 1 号 p. 922-925
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/02/28
    ジャーナル フリー
    【目的】当法人で経験した在宅緩和ケアにおける併診の現状と意義について明らかにすること.【方法】2012年4月1日より2013年3月31日の間に在宅緩和ケアを受けた患者の中で,化学療法を同時に受けていた患者を対象とし,カルテによる後ろ向き調査を行った.【結果】当法人が行った在宅緩和ケアは192例であり,これらの中で化学療法を受けていた数は14例であった.当院診療日数は平均192日,併診日数は平均89.8日であった.在宅緩和ケアを開始して死亡に至るまでの期間の約半分は,抗がん治療病院への通院が行われていた期間であった.【考察】化学療法中から緩和ケアスタッフが患者・家族と信頼関係を築くことで,抗がん治療が終了した後も無理なく緩和ケアが進められる可能性が示唆される.外来化学療法中からの在宅緩和ケア併診は意義があるものと考えられた.
  • 平 優子, 牧野 智恵, 澤木 英子, 飯田 正代, 碓井 未央, 西嶋 博司, 酒徳 光明
    2015 年 10 巻 1 号 p. 926-930
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/03/21
    ジャーナル フリー
    胃がん術後の食生活のストレスを緩和することを目的に,調理実習を取り入れたがんサロンを,医師・がん看護専門看護師・NST専従管理栄養士・がん相談支援センター看護師・調理師で開催した.胃がん術後患者と家族を対象とし,参加者20名(患者12名,家族8名,男性8名,女性12名,夫婦6組)だった.平均年齢64±13.4歳にがんサロンのアンケート調査を実施した.全員が全項目において「良かった」「まあ良かった」と回答していた.61%(n=11)が楽しかったと回答し,88%(n=15)が「料理教室での料理は今後の参考になる」としていた.調理実習は,調理技術を知るだけでなく,参加者同士が交流する機会になり,その後の意見交換で自由な語り合いを促す機会となった.また同病者が意見交換することは,互いの体験を知ることにより自分との共通性を知り,自分だけの問題ではなく,普遍性があることに気づく機会になった.
  • 木元 道雄, 岸本 寛史, 西 ひろみ
    2015 年 10 巻 1 号 p. E1-E5
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/03/18
    ジャーナル フリー
    p.917 著者氏名
     誤:岸本寛文
     正:岸本寛史
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