Palliative Care Research
Online ISSN : 1880-5302
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症例報告
痛みの原因となった腫瘍消失後も遷延する痛みをもつ患者に,オピオイド鎮痛薬の薬物関連異常行動を認めた悪性リンパ腫の1例
谷口 彩乃権 哲山代 亜紀子細川 豊史
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2016 年 11 巻 3 号 p. 548-552

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抄録

がんの早期診断や治療法の発達により,がんと診断された後の長期生存者は増加しており,彼らの慢性疼痛が問題となっている.とくに慢性疼痛に対するオピオイド鎮痛薬の長期使用は,乱用・依存などが問題となるため注意を要する.今回,痛みの原因となった腫瘍消失後も遷延する痛みをもつ患者に,鎮痛以外の目的でオピオイド鎮痛薬を使用する薬物関連異常行動を認めた悪性リンパ腫の1例を経験した.鎮痛目的ではなく,精神的な苦痛に対してオピオイド鎮痛薬を使用することはケミカルコーピングと定義され,乱用や依存の前段階と考えられている.オピオイド鎮痛薬の内服が長期にわたると見込まれる患者には,オピオイド治療を安全に管理するために,慢性疼痛治療に準じた薬物療法の知識と適切な患者評価が重要である.

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© 2016日本緩和医療学会
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