Palliative Care Research
Online ISSN : 1880-5302
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原著
緩和ケア病棟を併設している療養病棟における緩和ケアに対する意識調査:緩和ケア病棟スタッフと療養病棟スタッフへの意識調査
村上 真基大石 恵子綿貫 成明飯野 京子
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2017 年 12 巻 3 号 p. 285-295

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Abstract

【目的】緩和ケア病棟(palliative care units: PCU)と療養病棟スタッフの意識調査を通して,療養病棟における緩和ケアについて検討した.【方法】両病棟の介護職を含むスタッフを対象に無記名自記式質問紙調査を行った.WHO緩和ケア定義の認知度を選択肢で尋ね,療養病棟における緩和ケア全般,PCUとの連携,利点・欠点,非がん緩和ケアへの考えを自由記述で問い,内容分析を行った.【結果】248名から回答を得た.定義を「知っている」割合は医療職69.1%/介護職26.0%,PCU経験者79.6%/非経験者39.3%であった.回答のカテゴリーは,よいことである,利点がある,必要である,課題がある,難しい要件がある,困難である等であり,ケアの難しさと知識・技術の課題,人員不足関連の問題の指摘を認めた.医療職・PCU経験者は緩和ケアの必要性とケア向上への課題の指摘が多かった.【結論】利点や必要性を認める意見と,多くの課題が明らかとなった.

緒言

わが国の緩和ケアは,がん疾患を中心として緩和ケア病棟(palliative care units: PCU)で,次いで一般病棟や在宅診療で発展してきた.その一方で,全国の病院病床数の約20%を占める療養病床・病棟(以下,療養病棟)1)では,緩和ケアの対象となる疾患としてがんのみならず非がん疾患も診療しているが,療養病棟における緩和ケアという視点で報告されたものは限られていた2,3)

われわれは,自施設療養病棟のがん緩和ケアについて報告4)し,次いでPCUを併設している療養病棟の緩和ケアという視点で,多施設を対象に療養病棟の緩和ケアについて実態調査を行って報告した5).その一方で,療養病棟で緩和ケアを積極的に実践している自施設内ですら,療養病棟スタッフの緩和ケアに対する意識づけは温度差があることを実感していた.また,多施設対象の実態調査5)でも,病棟スタッフの緩和ケアに対する意識については明らかとしていなかった.

本研究の目的は,療養病棟とPCUで働くスタッフが,療養病棟における緩和ケアについてどのように考えているかを調査して,両病棟スタッフの意識の共通点や相違点を検討し,療養病棟での緩和ケア提供に対する医療・介護スタッフの認識を明らかにすることである.

方法

日本ホスピス緩和ケア協会会員となっている東京都のPCU:24施設(2015年10月現在)のうち,各病院ホームページより療養病棟の併設を確認できた7病院のPCUスタッフと療養病棟スタッフを対象とした.2015年11月に無記名自記式質問紙調査を行い,調査票の配布・回収は病棟管理責任者(看護師長など)へ依頼した.

調査項目は,回答者の背景・属性として職種,実務経験年数,現在の所属病棟,これまでに経験した病棟を尋ねた.また,「緩和ケア」の認識を統一させるためにWHO緩和ケア定義6)を調査票の表紙へ提示したうえで,この定義の認知度を尋ねた.緩和ケアに対する意識調査の質問内容は,(1)療養病棟で緩和ケアを行うことへの全般的な考え,(2)療養病棟はがん患者を受け入れてPCUと連携(PCUを補うことが)できると思うか,(3)療養病棟でがん緩和ケアを行うことの利点・欠点はあるか(具体的に),(4)療養病棟で非がん疾患の緩和ケアを行うことへの可能性や課題,とした.回答者の背景とWHO定義認知度については選択肢回答とし,意識調査はいずれも自由記述とした.

自由記述は複数のスタッフ(著者全員)で協議して内容分析を行い,記述の意味単位を抽出して内容の類似性・相違性をみながらカテゴリー化した.1人の記述の中で異なる意味単位が含まれる場合は,複数の単位として抽出した.単位化された回答は各々を小カテゴリー「 」としてまとめ,共通性をまとめて大カテゴリー[ ]とした.得られた結果をもとに記述統計を算出し,回答者全体,職種別,経験病棟別に回答の傾向を検討した.WHO緩和ケア定義認知度は,回答者の基礎情報(属性)別に統計学的有意差検定を行った.検定はカイ二乗検定とFisher正確確率検定を用い,片側検定によりp<0.05を統計学的に有意とした.統計解析ソフトにはStatcel-3(オーエムエス出版,埼玉)を用いた.

本研究は,救世軍清瀬病院倫理委員会の承認を得て実施し,集計・分析において施設名や個人が特定されないように配慮した.調査用紙に倫理的配慮を行っていること,調査内容を学術的に発表すること,質問用紙への回答をもって研究参加・学術発表に同意取得とする旨を記して,調査を行った.

結果

回答者背景

7病院の370名へ調査用紙を配布した.257名から回収し,白紙などの無効回答を除いて,248名の回答を分析対象とした(有効回答率67.0%).

分析対象者の背景を表1に示す.職種は,医療職165名,介護職77名,その他6名であった.実務経験年数は4層に分け,3年以下23名,4~10年67名,11~20年92名,21年以上63名であった.

表1 回答者背景(N=248)

現在の所属病棟は,PCU 82名,療養病棟156名,両病棟所属の8名は医師や医療相談員など両病棟に携わっているスタッフであった.現職も含めてこれまでに経験した病棟は,PCU 98名,療養病棟194名,一般病棟154名,その他44名(特殊病棟,介護系施設,訪問看護など)であった.PCU経験者のうち療養病棟も経験あり48名,療養病棟経験なし50名であった.

WHO緩和ケア定義の認知度

WHOの緩和ケア定義の認知度は4段階で尋ね,よく知っている43名(17.3%),少し知っている94名(37.9%),あまり知らない55名(22.2%),まったく知らない24名(9.7%),記載なし32名(12.9%)であった.定義を「よく/少し知っている」割合は医療職69.1%/介護職26.0%,PCU経験者79.6%/非経験者39.3%であった(表1).医療職は介護職より,勤務経験年数の長い人は短い人より,PCU所属者は療養病棟所属者より,PCU経験者は非経験者(すなわち本研究においては,対象の2病棟のうち療養病棟のみの経験者)と比べて,それぞれ有意に認知度が高かった(いずれもp<0.01).

質問(1)療養病棟で緩和ケアを行うことへの全般的な考え

222名(有効回答者全体の89.5%)から回答があり,記載なし26名であった(表2).回答は5つの大カテゴリー,(A)[よいことである],(B)[必要性がある],(C)[実施のための課題がある],(D)[難しい要件がある],(E)[反対である]に分けられた.AからEに進むに従って困難感が強い回答として分類した.同一回答者の意見の中で,記述単位ごとに別々のカテゴリーに分類された場合もあった(他の質問でも同様であった).

表2 療養病棟で緩和ケアを行うことについての考え

[よいことである]は,「療養病棟の緩和ケアはよいことである」という全般的賛成が多く,[必要性がある]として「場所や患者を選ばずに緩和ケアを行う必要性がある」,「療養病棟でも各種苦痛を緩和する必要性がある」などが挙がっていた.[実施のための課題がある]は,「スタッフの知識・技術等の向上が不可欠である」,「療養病棟で緩和ケアを行うことには適応と限界がある」であった.[難しい要件がある]については,「制度や設備に制約があるため解決することが難しい」と「各種ケアに難しい課題がある」はおもに人員配置不足に起因すること,「専門性が高いので難しい」は専門性において,困難感の指摘を受けた.[反対である]の内訳は,おもに「緩和ケアはできない」であった.

医療職165名は介護職と比較して,「全般的な賛成」(43名,26.1%.以下の%表記は各職種・経験病棟の人数に占める割合),「場所や患者を選ばない」(41名,24.8%)の指摘が多くみられた.介護職77名からの指摘で多かったのは,「緩和ケアはできない」(18名,23.4%),「制度・設備の制約がある」(17名,22.1%)などであった.PCU経験者98名とPCU非経験者150名で見ると,経験者は医療職同様に「全般的な賛成」(29名,29.6%),「場所や患者を選ばない」(29名,29.6%)を挙げていた.非経験者の指摘は,「緩和ケアはできない」(36名,24.0%)が多くみられ,具体的なケアについて「苦痛緩和の必要性がある」(20名,13.3%)ものの「ケアが難しい」(17名,11.3%)と感じている傾向もみられた.

質問(2)療養病棟はがん患者を受け入れて緩和ケア病棟(PCU)と連携してPCUの緩和ケア機能を補うことができると思うか

226名(91.1%)から回答があり,記載なし22名であった(表3).回答は(A)[利点がある],(B)[実施のための課題がある],(C)[困難な要件がある],(D)[緩和ケアはできない]に分けられ,AからDへ進むに従って困難感が強い回答となった.[課題がある]と[要件がある]を合わせた問題点の指摘は本項回答者の85%(193名)を占めた.

表3 療養病棟のがん患者受け入れによる緩和ケア病棟の補足・連携の可能性

[利点がある]の内訳では,「療養病棟はPCUを補うことができる」という特別な理由のない全般的利点の指摘が多く,このほかに「場所や疾患を選ばずに緩和ケアを行うことができる」,「緩和ケアを受けられる患者が増える」,「療養病棟で緩和ケアを行うことはむしろ適している」などであった.[実施のための課題がある]は,「スタッフの知識・技術等の向上が不可欠である」と「患者・病状に制約をつける必要がある」といった指摘であった.[困難な要件がある]は,「体制の問題がある」,「難しいケアの課題がある」,「がん患者と他患者の両立は難しい」であり,人員配置不足と,これに関連する問題であった.[緩和ケアはできない]は,いずれも「療養病棟で緩和ケアはやらないほうがよい」という特別な理由のない指摘であった.

医療職は,介護職と比較して[実施のための課題][困難な要件]の指摘が多く,時間のかかるケアなどの「ケアの難しさ」(43名,26.1%)と「知識・技術の向上が不可欠」(51名,30.9%)を指摘し,「患者・病状に制約をつける必要性」(33名,20.0%)という提案もみられた. PCU経験者は,医療職と同様に「ケアの難しさ」(23名,23.5%)とともに「知識・技術の向上」(35名,35.7%)と「患者・病状の制約」(25名,25.5%)という指摘が多くみられた.PCU非経験者は「緩和ケアはやらないほうがよい」(49名,32.7%)という否定的意見が経験者 (19名,19.4%)より多くみられた.

質問(3)療養病棟でがん緩和ケアを行うことの利点・欠点はあるか(具体的に)

212名(85.5%)から回答があり,利点に関する記載は166名,欠点に関しては189名であり,記載なし36名であった(表4).[利点の指摘]129名,[欠点の指摘]170名であり,[その他]として,「利点はない」21名,「欠点はない」5名を認めた.

表4 療養病棟でがん緩和ケアを行う利点・欠点

[利点の指摘]は,「長期療養に向いている」が最も多く,関係性を築いたスタッフと最後まで過ごせる,レクリエーションに参加して気分転換ができるなどであった.「療養病棟の環境がよい」は,多床室やデイルームで過ごすことが多いため他患者との触れ合いができる,PCUに抵抗感のある患者でも入りやすい,病棟の雰囲気が死への不安を和らげる,などであった.また,「病床稼働に貢献する」は,緩和ケアを受けられる対象患者数が増える,PCUへ入れない患者の受け皿になるなどであった.これらの利点は医療職・PCU経験者から多く指摘され,介護職・PCU非経験者からは少なかった.

[欠点の指摘]は,「人員配置に関すること」が回答者全体の5割以上から認め,スタッフ(とくに看護師)配置が少ないことと,その結果として,ケアが行き届かない,麻薬等の管理が難しい,業務量が多い,公平性が保てない,患者と関われる時間が少ない,など多岐にわたる指摘が挙がった.「環境・設備に関すること」は,病室が静かでない,騒がしい患者がいるなど,多床室の問題として指摘された.また,「スタッフの知識・技術に関すること」も指摘があった.介護職からは欠点の指摘が比較的少なかったものの,経験病棟による差は見られなかった.

質問(4)療養病棟で非がん疾患に対して緩和ケアを行うことについて,その可能性や課題についての考え

171名(70.0%)から回答があり,3割(77名)が無回答(記載なし)であった(表5).回答は[必要性がある],[課題がある],[困難である]に分けられた.

表5 療養病棟で非がん疾患に対して緩和ケアを行うことの可能性や課題

[必要性がある]の内訳は,「患者・疾患/場所を選ばずに緩和ケアは必要である」,「非がん疾患でも苦痛緩和や具体的ケアが必要である」などであった.[課題がある]では,「スタッフの課題がある」,「ケアに関する課題がある」,「専門性が必要である」は,教育,指導者,職種間連携などの運営面の課題であり,「体制・設備の問題がある」は,おもに人員配置不足に関連する問題であった.

医療職は[必要性がある]の指摘が多く(68名,41.2%),「患者を選ばない」(45名,27.3%)と「苦痛緩和が必要である」(23名,13.9%)と指摘しつつ,「ケアの課題」(25名,15.2%)や教育・知識不足などの「スタッフの課題」(36名,21.8%)を問題として挙げていた.介護職77名は,記載なし(34名,44.2%)と「わからない」(10名,13.0%)を合わせると5割以上であった. PCU経験者は,医療職と同様に「スタッフの課題」(22名,22.4%)と「ケアの課題」(15名,15.3%)の指摘が多くみられた.

PCU経験者98名のうち,療養病棟経験者48名と療養病棟非経験者50名の回答を比較したところ,どの質問(1~4)に対しても両群間に大きな差は認めなかった.

考察

本研究は,PCUと療養病棟の両方が身近にあるという視点で,PCUと療養病棟を併設している病院の両病棟スタッフを対象として意識調査を行い,がんおよび非がん緩和ケアに対する考えや課題,PCUと療養病棟の連携性も念頭に意見を集約した.療養病棟の緩和ケアについて,PCUも含めたスタッフ意識を調査した報告は,われわれが調べえた範囲では初めてと思われる.

緩和ケアは,WHOが定義6)している通り,終末期・看取り期以外にも提供され,しかも非がんにも提供されるケアであることから,療養病棟もその一翼を担うのは必然と思われる.われわれは,“緩和ケア”が身近にあると思われる「PCUと併設している療養病棟」の緩和ケアの実態について先に報告5)し,今回は現場スタッフの意識を調査した.その結果,療養病棟でも緩和ケアが必要である,あるいは緩和ケアを行うことに利点があると考える意見が半数近いことが明らかとなった.その一方で,課題や困難感を感じていることも明らかとなった.慢性期医療協会の報告7)では,療養病棟において,麻薬処方できる医師が配置されていない施設は3割以上,痛みのあるがん患者がいても技術的に疼痛管理を提供できない施設が8%であるとされている.この数値の評価は難しいが,緩和ケアの中でも大切な要素である麻薬による苦痛緩和に制約があるということは,現場スタッフの困難感の一因であることが本研究でも示唆された.

また,本研究では職種や経験した病棟による意識の違いについても検討したところ,医療職やPCU経験者はWHOの緩和ケア定義の周知度が高く,場所や疾患を選ばない緩和ケアの必要性,苦痛緩和の必要性を理解し,その技術・知識の不足も感じていることが示された.PCU非経験者は,緩和ケアは困難と感じている傾向も明らかとなった.その理由の一つとして,医療職やPCU経験者は緩和ケアに直接的に携わっており,頻繁にWHO定義にも触れ,定義のとおりに緩和ケアの適応範囲が広いことを感じているのと同時に,PCUと療養病棟の体制面や経験値の違いも感じているからであると,本研究結果から推察できる.

スタッフは療養病棟における緩和ケアの困難性を感じていることも明らかとなった.療養病棟の体制を調査した報告5,7,8)では,麻薬を処方しての苦痛緩和が不十分である実態に加えて,人員配置不足や専門的知識・技術の不足が指摘され,今回の調査でも同様の困難感や課題を感じていることが示された.医療療養病棟における看取りについて看護職と介護職の意識を調査した渡邉ら9),同じく多職種の意識を調査した村田10)の報告は,看取り期のみに限定した少人数対象の意識調査であるが,知識の共有化を図る学習の必要性,人員配置不足・人材不足に伴う限界を指摘している.看取りケアと緩和ケアの違いはあっても,課題は共通点が多いことも明らかとなった.

療養病棟の緩和ケアに対する欠点の指摘は解決の難しい点があるものの,その一方で,環境面や長期療養にも適しているという利点は療養病棟の特徴を生かした緩和ケアが存在するということである.PCUとまったく同じ緩和ケアは提供できなくても,何らかの事情でPCUへ入れない・入りたくない患者の受け皿になりうるという指摘と合わせ,PCUと療養病棟が役割分担することによって緩和ケアを受けられる患者の拡大にもつながり,結果的に緩和ケアの普及につながることは,本調査結果からも示唆された.

非がんに対する緩和ケアへの考えについては,患者・疾患・場所を選ばないことと,具体的な苦痛緩和が必要とされているという指摘が多くみられた.療養施設の体制を調査した報告8)によると,療養病棟(医療型・介護型)の入院患者分析で,がん患者の割合は4.8%(医療型)・2.2%(介護型)であったのに対して,痛みのある患者は22.3%(医療型)・19.6%(介護型)であることから非がん患者にも痛みが存在していることが示され,その一方で実際に疼痛治療を受けた患者は6.9%(医療型)・4.5%(介護型)であり,苦痛緩和が不十分であることが示唆されている.本研究(質問4)で指摘された課題はがん緩和ケアと共通することが多く,もはや,がんと非がんを区別して論ずる必要はないと思われる.

一方で,本研究において,調査票にWHO緩和ケア定義を提示しても非がん緩和ケアの質問では約3割の無回答を認め,これは「無関心」と解釈することもできる.各質問に対する「療養病棟で緩和ケアは必要ない・できない」といった意見と合わせて真摯に受け止めなければならない.緩和ケアへ専門的に従事しているわれわれは,WHOの定義通りに「すべての場所ですべての患者が緩和ケアの対象となる」と認識していても,同じ病院内でさえ緩和ケアの認知度・理解度は十分ではないということを本研究結果は示している.

今後,あらゆる医療・看護・介護の場面で緩和ケアが必然となる中で,制度的な整備も望まれるが,療養病棟における緩和ケアを普及・充実させるために,緩和ケアの意識が低く,利点や必要性を感じていない医師や介護職,あるいはPCU非経験者への緩和ケア教育は必要である.そしてPCUと療養病棟の人事交流,すなわち多くのスタッフがPCUを経験し,PCUを経験したスタッフが療養病棟で緩和ケアを担うことは,臨床現場ですぐに実施可能なこととして取り組むことのできる対策であると考えられる.

本研究論文の限界として,(1)療養病棟にも緩和ケアが必然であるという前提で議論したが,その裏付けが不確かである,(2)PCUを併設した施設のみを対象とした調査であり,PCUを併設していない療養病棟での意識は明らかになっていない,(3)自由記述調査の分析から量的検討も試みている,などが挙げられる.今後は,これらの問題を解決することが緩和ケアの普及・発展に役立つものと思われる.とくに(2)に関しては,緩和ケアが身近ではない療養病棟において,その意識や実践に本研究結果との相違も予想される.この問題を解決するために,われわれはPCUを持たない療養病棟の実態・意識について,定量的調査も含めた追加研究を実施中である.

結論

PCUを併設している療養病棟における緩和ケアについて,PCUスタッフと療養病棟スタッフの意識調査を行った.療養病棟の緩和ケアに利点や必要性を認める意見が多い一方で,職種や経験病棟による緩和ケアに対する認知度の違いや意識の差がみられ,人員配置不足や知識・教育の不足など多くの課題が明らかとなった.

付記

本研究論文の要旨は,第40回日本死の臨床研究会年次大会と第24回日本慢性期医療学会で発表した.

References
 
© 2017日本緩和医療学会
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