2017 年 12 巻 4 号 p. 717-722
がん患者のせん妄改善を目的として,院内でクエチアピン坐剤を製剤し,その有用性について検討した.2011年4月から2014年10月までに,緩和ケア病棟に入院した患者のべ644例のうち,クエチアピン坐剤を使用した108例の,後方視的診療録調査を行った.患者背景・投与状況・せん妄による興奮症状の改善度〔Agitation Distress Scale(以下ADS)による過活動型せん妄の改善度の評価〕・副作用について検討した.全体群・クエチアピン坐剤単独投与群・他剤併用群いずれも,ADS値は坐剤投与前後で有意な低下を認め(p<0.0001),せん妄改善に貢献する可能性が示唆された.副作用についてはクエチアピン内服と同等程度であり,また,坐剤という剤型ゆえの問題も認めず,簡便かつ安全に使用可能と判断した.以上より,がん患者のせん妄に対して,クエチアピン坐剤が有用であると考えられた.