Palliative Care Research
Online ISSN : 1880-5302
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原著
終末期がん患者の在宅療養移行に向けた一般病棟看護師の意思決定支援の実態とその関連要因
梶山 倫子吉岡 さおり
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電子付録

2018 年 13 巻 1 号 p. 99-108

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Abstract

本研究の目的は,終末期がん患者の在宅療養移行に向けた一般病棟看護師の意思決定支援の特徴とその関連要因を検討することである.本研究で新たに意思決定支援項目(17項目)を作成し,重回帰分析により関連要因を検討した.看護師1,019名を対象に質問紙調査を実施し,有効回答は653であった(有効回答率64.0%).分析の結果,「がん患者の在宅療養移行支援経験(β=0.26)」「看護師の自律性:具体的判断能力(β=0.23)」「看護師の自律性:実践能力(β=0.18)」「在宅看護論履修(β=0.13)」「死後の世界観(β=0.12)」「家族看護に関する学習経験(β=0.07)」が関連要因として特定された.調整済みR2は0.27であった.終末期がん患者の在宅療養移行における看護師の意思決定支援には,経験に基づく看護実践能力,在宅看護や家族看護に関する学習経験,死についての考え方などの関連が示唆された.

緒言

がん患者の意思決定は患者の疾病経過と共にあり,治療方法の選択や社会生活の継続等の重要な局面において患者とその家族に判断を迫らなければならない現状がある.がん患者は,がんの診断確定から病名告知を受け治療を開始するが,がんの疾病特性より長期の治療継続を余儀なくされる.患者は,積極的治療優先の時期から終末期まで,回復と悪化を繰り返し長い経過を辿る.一般的に難題な意思決定は,心配,混乱,後悔,損失のリスクを生み出すといわれ1),終末期がん患者は,身体の苦痛,社会からの阻害,経済的負担,価値観の変化など自分自身の存在を問わざるを得ない事態に置かれる.このような状況の中で療養場所を選択する際,患者と家族は,迷いや葛藤,意見の相違など,困難な状況に立たされる.その中で,患者の価値観を反映した選択には患者と家族の心理的負担は大きく,専門職の介入を必要としているといえる.

終末期がん患者に対する国の施策では2012年6月にがん対策基本法の見直しが行われ,がん対策推進基本計画では,がん患者と家族の苦痛の軽減と療養生活の質向上のための支援が目標にあげられた2).2016年12月の改正がん対策基本法には,診断時からの緩和ケア,良質なリハビリテーションの提供が示され,生活の質改善に力が入れられている3)

現在,入院時から退院を視野に入れ調整する退院支援担当者が多くの施設に配置されている.退院調整部門における看護師の平均配置は1.6人で,部門責任者は28%が看護師であり4),1施設当たりの配置人数も増加の傾向にある.その役割は問題解決や社会資源の調整だけではなく患者家族の力を把握する視点が求められている5,6).しかし,全ての患者への対応は難しく,終末期がん患者の療養場所に対する希望を現実につなぐための情報収集とアセスメントは病棟看護師の大きな役割といえる.

近年,がん看護専門看護師,認定看護師が臨床で活躍し,退院支援や地域連携など在宅移行システムも整いつつある.しかし,これら専門職の活動やシステムは,病棟看護師からの依頼や情報提供がない場合機能し難い.つまり,病棟看護師には,入院中の患者の意思を尊重しながら関連する医療従事者と協働する役割が求められているといえる.その一方で,患者の意思決定支援における病棟看護師の役割認識が薄い現状や7),患者家族の意思を明確にするための支援不足が指摘されている8).その背景には,看護師の在宅療養移行支援の経験不足やコミュニケーションスキルの問題,看護師の消極的な態度,在宅療養に関する知識不足など,医療従事者側の課題や在宅療養移行を阻む要因などが報告されている912).先行研究における終末期がん患者の在宅療養移行における意思決定支援は,医療者側の態度や課題抽出に留まっており,その実態を明らかにしたものは見当たらず,実態に基づいた要因の検討もなされていない.

そこで本研究では,終末期がん患者の在宅療養移行に向けた一般病棟看護師の意思決定支援の実態を明らかにし,意思決定支援に関連する要因を検討することを目的とした.

用語の操作的定義

在宅療養移行に向けた意思決定支援

終末期がん患者が在宅療養を視野に入れた療養場所の選択をするための支援であり,そのために必要な情報提供を行い,職種間連携のもと,患者の希望を尊重しながら,患者が自律的に意思決定できるよう症状をマネジメントすることを含む概念とする.

概念枠組み

図1は本研究の概念枠組みを示している.在宅療養移行に向けた意思決定支援4つの側面は,文献検討1336)から抽出した.関連した先行研究の文献検討から,在宅療養移行に向けた意思決定支援に関連すると予測される要因を挙げた.

図1 終末期がん患者の在宅療養移行に向けた意思決定を支援する一般病棟看護師の役割

方法

研究方法

1.研究デザイン

関係探索研究

2.研究対象

全日本病院協会会員URL一覧に2012年8月1日付で掲載された首都圏にある病院で,精神科,小児,産科が主な診療科である病院および療養型を主体とした病院を除き,100床以上の病床を持つ236病院から43病院を無作為抽出した.43病院は内科,外科を含めた診療科を持つ病院であり,主に地域医療支援病院,がん診療連携拠点病院,がん診療連携病院に類する施設であった.

対象者の抽出においては,看護管理者に研究の趣旨に適した終末期がん患者をケアする機会のある病棟の選定を依頼し,選択された病棟に所属する臨床経験3年以上の看護師1,019名を対象とした.なお,病棟管理者,専門看護師や認定看護師などのスペシャリストは対象者から除外した.

調査方法

質問紙の構成

1)終末期がん患者の在宅療養移行に向けた一般病棟看護師の意思決定支援項目 (以下,意思決定支援項目)

上記の項目を本研究で作成した.文献検討において示唆された「患者への情報提供」「職種間連携」「患者の希望の尊重」「症状マネジメント」の視点を基盤に,先行研究1436)や,看護介入分類(Nursing Interventions Classification)の退院調整計画立案13)を参考に項目を検討し,終末期がん看護の研究者と共に項目の修正追加を繰り返した.その結果,「患者への情報提供」4項目,「職種間連携」5項目,「患者の希望の尊重」5項目,「症状マネジメント」3項目の計17項目を抽出した.最後に,訪問看護認定看護師および地域連携担当看護師にスーパーバイズを受け内容妥当性とした.回答方法は4段階リッカートスケールとした.

2)看護師の自律性測定尺度

看護実践能力を測定する尺度として,看護婦の自律性測定尺度37,38)を使用した.在宅療養移行に向けた意思決定支援を担う看護師の患者家族の状況を判断する過程に影響すると考え組み入れた.各因子のCronbach’s α=0.93~0.79であり,構成概念妥当性により妥当性が確認されている.

3)死生観:臨老式死生観尺度

終末期がん患者の意思決定支援には,援助する側の人生に対する価値観や看護観の多様性が必要と考え,臨老式死生観尺度を使用した39).本尺度はCronbach’s α=0.88~0.74により信頼性が確認され,検証的因子分析により高い適合度が得られており,因子的妥当性を持つと示されている.

4)看護師のコミュニケーション能力:Kiss-18 (Kikuchi’s Social Skill Scale 18項目版)

Kiss-18は,社会的スキルを測定する尺度であり,円滑な対人関係に役立つスキルと定義されている40).終末期がん患者の在宅療養移行に向けた意思決定支援には,職種間連携におけるコミュニケーション力や,対人関係を円滑に運ぶスキルが重要と考え質問紙に加えた.尺度の信頼性はCronbach’s α=0.80で確認され,妥当性については構成概念妥当性で確認されている.

5)対象者の基本属性と経験

対象者の基本的属性に加え,がん患者の在宅療養移行支援経験の有無,訪問看護経験の有無,終末期がん看護,在宅看護,家族看護,がん地域連携クリティカルパスの学習経験を項目に入れた.

データ収集方法

研究協力候補施設の看護管理者へ研究協力を依頼し,内諾が得られた後に,協力依頼書,研究計画書,質問紙の見本,研究の意義目的,結果の公表,個人情報の取り扱いを記した文書を送付した.同意書の返送を確認し研究協力の同意とした.

対象者への説明は,質問紙に研究の意義目的,個人情報の保護等を記した説明文書を添付し,質問紙の投函をもって研究参加の同意とした.質問紙は対象者の意思で自由に手に取ることのできる休憩室に回収袋と共に設置し,留置き法により回収した.

データ分析方法

記述統計により,意思決定支援項目,各尺度の平均点と標準偏差を示した.重回帰分析に先だって,Pearson相関分析,t検定,Tukey HSDにより従属変数と独立変数および独立変数間の関係性を検討し,属性などによる従属変数の平均値の比較を行ったうえで,意思決定支援項目を従属変数とする重回帰分析を行った.多重共線性のリスクについては独立変数間の相関(P<0.8)およびVIF統計量(VIF<10)で確認した.有意水準は,P<0.05とし,両側検定とした.データ分析には統計解析ソフトIBM SPSS Statistics 21を使用した.

倫理的配慮

質問紙は無記名とし,研究目的,概要,意義,研究協力と中断の自由,プライバシー保護のための対策,データの取り扱いと廃棄,業務評価との無関係性,研究成果の発表,研究者の連絡先など文書を用いて説明し,質問紙の回答をもって研究参加への同意とみなした.また,研究者の前所属機関である国際医療福祉大学大学院倫理審査会の承認を得た(承認番号12-68).

結果

調査の結果,28病院より協力を得た.回答者数は800名(回収率78.5%)であり,本研究対象者以外の回答や連続した欠損値のある回答等147名を除外した653名を分析対象者とした(有効回答率64.0%).

分析対象者の基本統計

分析対象者653名の平均年齢は35.0±7.9歳,平均臨床経験年数12.0±7.1年であった.がん患者の在宅療養移行支援経験のあるものは377名 (57.7%) と半数を超えていた(表1).

表1 対象者の個人属性(n=653)

終末期がん患者の在宅療養移行に向けた一般病棟看護師の意思決定支援の実態

在宅療養移行に向けた意思決定支援の実態として(表2),得点の高かった項目は,「患者の入院生活において食事,排泄,睡眠などの基本的ニーズを充足している」「在宅療養を選択した場合の中心となる支援者を考えている」「患者の疼痛マネジメントを継続できるようサポートをしている」などであった.得点が低かった項目は,「患者の希望に沿った最期の過ごし方を話し合う」「患者のチームカンファレンスには,患者と家族の状況に応じた医療従事者を選択している」「患者のチームカンファレンスでは,在宅療養移行を検討している」などであった.

表2 終末期がん患者の在宅療養移行に向けた一般病棟看護師の意思決定支援項目の記述統計(n=653)

意思決定支援項目合計得点の平均値は41.6±12.2点であった.得点を合計して分析するにあたり,主成分分析を行った.その結果,第1主成分において,全ての項目が正の主成分負荷量(0.57〜0.69)を示していた.このことから17項目の合成得点を算出して分析することが可能であると判断した.また,意思決定支援項目の信頼性については,Cronbach’s α=0.91およびI-T分析により全ての項目において中等度以上(r>0.58, p<0.01)の関連を示したことから,内的整合性が確認された.

既存尺度の記述統計

既存尺度の記述統計を付表1に示した.本研究における各尺度の信頼性が確認された.

意思決定支援項目の関連要因の検討

1.投入する独立変数の検討

単変量解析(表3)の結果を踏まえ,独立変数として,看護師の自立性測定尺度の各因子,臨老式死生観尺度の死後の世界観,人生における目的意識,KISS-18,がん患者の在宅療養移行支援の経験,終末期看護,在宅医療,家族看護に関する学習経験,在宅看護論履修経験を選出した.対象者の年齢と臨床経験年数については,相関が高く(r=0.83, p<0.01)共線性が予測されるため,年齢を変数から除去した.

表3 終末期がん患者の在宅療養移行に向けた一般病棟看護師の意思決定支援17項目合計点の比較(n=653)

2.意思決定支援17項目の関連要因の重回帰分析

在宅療養移行に向けた意思決定支援の関連要因を検討するために,意思決定支援項目を従属変数とした重回帰分析を実施した.多重共線性のリスクにおいては,高いVIF統計量を示す変数はみられなかった.分析の結果,[がん患者の在宅療養移行経験の有無 (β=0.26, p<0.01)][看護師の自律性測定尺度:具体的判断能力 (β=0.23, p<0.01)][看護師の自律性測定尺度:実践能力 (β=0.18, p<0.05)][看護基礎教育における在宅看護論履修の有無 (β=0.13, p<0.01)][臨老式死生観尺度:死後の世界観 (β=0.12, p<0.01)][家族看護に関する学習経験:病院内 (β=0.07, p<0.05)]の6要因に独立した有意な関連がみられた.調整済みR2は0.27であった(表4).

表4 終末期がん患者の在宅療養移行に向けた意思決定支援17項目に関する要因(n=653)

考察

終末期がん患者の在宅療養移行に向けた一般病棟看護師の意思決定支援の実態と特徴

在宅療養移行に向けた意思決定支援の実態から,看護師は患者の基本的ニーズを満たす日常生活援助や症状マネジメントを積極的に実施しており,患者の意思決定能力を支える援助を重要視していることが示唆された.

また,得点の低かった項目においては,患者の希望に沿った最期の過ごし方について話し合うことや,カンファレンスにおいて他職種を巻き込んだ検討には課題があることが推察された.直成らは41),がん看護に携わる看護師の困難感に関する調査から,患者家族とのコミュニケーション,知識・技術に関する困難感が高かったことを報告している.本研究で示された,最期の過ごし方に関するコミュニケーションはさらに強い困難感があることが推測され,患者の希望や思いが明確でないことにより,必要なリソースを選択し,具体的な検討を進めていく内容の項目が低く評価されていることが示唆された.

さらに,これらの内容は,その人の生き方について本人と周りの人が共に考える取り組みであるAdvance Care Planningに共通する部分であり42),患者と対話する看護師の力量や,リソースナースとの連携が関連していると推察される.職種間連携の強化42,43)や職種の強みを生かした協働を勧めていくことが必要であると考える.

在宅療養移行に向けた意思決定支援に関連する要因

重回帰分析により在宅療養移行に向けた意思決定支援との関連が示唆された6要因について,下記の側面より考察する.

1.がん患者の在宅療養移行支援経験

本研究においては,実際に在宅療養移行まで実現した支援経験の有無について回答を得,分析の結果,最も偏回帰係数が大きい結果となった.実際に在宅療養移行支援を経験することが,看護師の体験知となり次の事例の在宅療養移行に向けた意思決定支援を促進していたことが推測される.大川ら24,25)も同様に,在宅療養移行支援経験の積み重ねにより支援技術が養えると述べており,在宅療養移行支援の体験が在宅療養移行に向けた意思決定支援の向上に結び付つくと考えられることから,事例を振り返り,経験値として積み重ねていくことが重要であると示唆された.

2.看護師の自律性に関する看護実践能力

看護師の自律性尺度から,実践能力と具体的判断能力が関連要因として抽出された.実践能力は的確な看護実践に基づく具体的な行動を意味し,具体的判断能力は手がかりを基にした患者アセスメントを意味する37)

在宅療養を未知な体験と捉える終末期がん患者とその家族は,常に不安を抱きながら意思決定せざるを得ない状況にある.杉44)は,意思決定者の努力と能力が真に必要になるのは,プログラム化された解決法のない非定型的意思決定であると述べており,終末期がん患者と家族の意思決定もこれに該当するものといえる.患者と家族が想定した在宅療養において不確実と感じるものを在宅移行の阻害要因と捉え,個々に応じた支援方法を模索することが,在宅療養移行に向けた意思決定を促進させる方法の一つであり,適切な患者アセスメントとそれに基づく看護実践が関連要因として示唆されたことは妥当な結果であると考える.

3.在宅療養移行に関わる学習経験

在宅療養移行に関わる学習経験として,看護基礎教育における在宅看護論履修経験と家族看護に関する学習経験が抽出された.

看護基礎教育のカリキュラム改正では,1994年に制度化された訪問看護サービスに対応するため,「在宅看護論」が専門領域の一つとなった45).臨床経験が施設内のみの看護師は,地域包括ケアシステムや多職種協働,社会資源の調整などを経験する機会が少なく,終末期がん患者が地域で暮らすことへのイメージが持てないことも少なくない.そのような中,看護基礎教育における在宅看護論の履修経験が在宅療養移行に向けた意思決定支援に影響していた結果は,教育の成果がケアに反映されていたことを示唆し,さらなる教育内容の充実が期待される.

また,家族員は相互に影響し合い,家族と患者の関係性は,患者の認知・身体・精神全ての領域に影響を及ぼすことから46),患者の情緒的な不安定さは家族の不安定さにつながると考えられる.吉岡ら47)は看取りケア尺度開発の際,患者家族の関係と意思疎通や意思決定を組み込み,患者を取り巻く家族の対処能力の重要性を強調している.家族看護に関する知識が豊富なことは,患者の入院生活から自宅での暮らしに視野を広げ,患者と家族をケアユニットとして捉えた在宅療養移行支援において重要な視点である.このことより患者と家族のニーズを統合して今後の方向性を見出すことにつながることが推測され,在宅療養移行に向けた意思決定支援を促進していることがうかがえた.

さらに西脇ら48)は,終末期ケアにおいて,心理的援助や意思決定支援が学習ニーズの上位を示すと述べており,家族看護に関する内容も含まれることが推測される.しかし,本研究における家族看護に関する学習経験が示す偏回帰係数は非常に小さく,具体的な学習内容も把握できていないため,今後さらなる調査分析が必要であると考える.

4.死生観:死後の世界観

死後の世界観は,死後の世界が存在する,死が人の終わりではない等の4項目で構成されている.小和田ら49)は,終末期の看護にその人らしさを取り入れるためには,対象者が今まで培ってきた生活全般のこだわりあるスタイル,対象者の意思,価値観や死生観を捉えることであり,支援の基本であると述べている.また,二渡ら50)は,その人らしい死の全うや,患者との死別経験には,看護師の心的葛藤と死後の世界観が関連していたことを報告している.看護師は在宅療養移行に向けた意思決定支援の中で,死が間近にある患者の生き抜く力を支え,その先にあるその人らしい死,遺された家族にもたらすものを考え支援することを必要とする.これらが死後の世界観として反映されたと推察される.

本研究で抽出された関連要因は,在宅療養移行に関する経験知,看護実践能力,在宅看護や家族看護の学習経験などが含まれており,在宅療養移行に向けた意思決定支援の実態も踏まえ,一般病院の看護師の在宅療養移行に向けた意思決定支援の質を向上させるための教育的示唆が得られたと考える.

本研究の限界と今後の課題

本研究で従属変数とした意思決定支援項目は,本研究で文献検討により作成したものであり,測定ツールとしての妥当性については限界があるといえる.また,調査対象は首都圏に限局した調査であり地域の偏りにより一般化には限界がある.さらに依頼を受けた看護管理者が選択した病棟であることから,選択バイアスがかかることは否めない.今後は尺度開発を視野に入れ,さらなる文献検討による項目の追加および項目分析を詳細に行った上で尺度としての信頼性と妥当性を検討していく必要があると考える.

結論

1.意思決定支援の実態では,基本的ニーズの充足を中心に看護実践していると評価されていた.その一方で患者の希望に沿った最期の過ごし方について話し合うことや,他職種を巻き込んだ検討については課題があることが示唆された.2.終末期がん患者の在宅療養移行に向けた意思決定支援の関連要因として,[がん患者の在宅療養移行経験の有無][看護師の自律性:具体的判断能力][看護師の自律性:実践能力][看護基礎教育における在宅看護論履修の有無][死生観:死後の世界観][家族看護に関する学習経験]が示唆された.

利益相反

著者の申告すべき利益相反なし

著者貢献

梶山および吉岡は,研究の構想およびデザイン,梶山は,原稿の起草に貢献;梶山および吉岡は,研究データの収集,分析,原稿の起草に貢献;研究データの解釈,原稿の重要な知的内容に関わる批判的な推敲に貢献した.全ての著者は投稿論文ならびに出版原稿の最終承認,および研究の説明責任に同意した.

References
 
© 2018日本緩和医療学会
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