Palliative Care Research
Online ISSN : 1880-5302
ISSN-L : 1880-5302
13 巻, 1 号
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原著
  • 大久保 欣一, 田辺 公一, 村上 望, 関 宏恭, 中嶋 和仙, 後藤 伸之, 大津 史子
    2018 年 13 巻 1 号 p. 23-29
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/01/31
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    【目的】塩化ストロンチウム(89Sr)の疼痛緩和および骨髄抑制に関連する患者の背景因子の探索を目的とした.【方法】対象は有痛性骨転移のある89Sr投与患者とした.疼痛緩和では89Sr投与前後のNumeric Rating Scale(NRS)より無効/有効に群分けし,骨髄抑制では好中球(Neu),血小板(PLT),ヘモグロビン(Hb),各々の89Sr投与前後の差をアウトカムとし,単変量解析および相関分析を行った.【結果】37名が対象となり,疼痛緩和の関連因子として,89Sr投与量,89Sr投与前NRS,89Sr投与前Ca,骨転移の範囲等が示された.同じくNeu減少では,89Sr投与前Hb,89Sr投与前NRS,89Sr投与前Crで有意な中等度の相関を,PLT減少とは,89Sr投与前PLTで有意な中等度の相関を,Hb減少とは,89Sr投与前Hbで有意な中等度の相関を認めた.【結論】疼痛緩和および骨髄抑制の関連因子を明らかにした.

  • 大坂 巌, 坂下 明大, 木澤 義之, 細川 豊史
    2018 年 13 巻 1 号 p. 31-37
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/02/16
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    【目的】非がん疾患に対する緩和ケアについて実態調査を実施した.【方法】日本緩和医療学会代議員196名を対象にインターネットアンケート調査を行った.非がん疾患の診療経験,緩和ケアに関する考え方,緩和ケアを実践するうえでの困難感,必要な教育内容について選択式の質問で尋ねた.【結果】111名(57%)より回答を得た.回答者の99%は非がん疾患の診療を経験していたが,63%は終末期の累計経験患者数が50人未満であった.回答者の80%は非がん疾患に対する緩和ケアに自信がなく,予後予測の難しさや緩和ケアに関する診療加算が算定できないことなどのために83%が困難感を感じていた.教育において重要なことは,コミュニケーション,多職種チーム医療の順であった.【結論】日本緩和医療学会代議員は,非がん疾患に対する緩和ケアの必要性を認識しているが,経験豊富な代議員は少なく,8割以上が自信のなさと困難感を感じていた.

  • 橋本 孝太郎, 佐藤 一樹, 河原 正典, 鈴木 雅夫
    2018 年 13 巻 1 号 p. 39-48
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/02/20
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    電子付録

    【目的】在宅緩和ケアを受けた終末期独居がん患者の実態と,自宅死亡の関連要因を明らかにすること.【方法】2013年6〜11月末までに在宅特化型診療所17施設の診療を受けたがん患者1032名を対象に診療録調査を実施し独居群・非独居群間で背景や転帰,利用したサービスや医療内容を比較し,独居群の自宅死亡の関連要因を探索した.【結果】独居群は,高齢であり,診療開始時の全身状態が良く,看取りの場所は自宅以外を希望し,社会的問題による入院が多かった.独居群の自宅死亡の関連要因は,別居の家族が自宅死亡を望んでいる(オッズ比(OR)=14.0),診療開始時の全身状態不良(OR=4.0),在宅診療中の入院歴なし(OR=16.6)であった.【結論】終末期独居がん患者の自宅死亡には別居の家族の希望,診療開始時の全身状態,診療中の入院歴が関連していたことが明らかとなった.

  • 照屋 典子, 砂川 洋子, 豊里 竹彦, 伊波 華, 知念 正佳, 木村 安貴, 與古田 孝夫
    2018 年 13 巻 1 号 p. 49-56
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/02/20
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    本研究は,喉頭摘出者の不安・抑うつ傾向と個人属性および日常生活における困難感との関連性を検討することを目的とした. A県患者会に所属する135名を対象に無記名の質問紙調査を行った.調査内容は基本属性,日常生活における困難感,不安・うつ尺度(NAS-J-L 6項目)である.有効回答が得られた43名を対象として重回帰分析を行った結果,年齢(β=-0.369,p=0.004),外出・趣味に関する困難感(β=0.419,p=0.002)は不安・うつ尺度得点と有意な関連性が認められ,若年,中年者および外出・趣味に困難を有する者では不安・抑うつ傾向が高いことが明らかとなった.看護者はこれらの対象者に対し,より注意深く心理状況や生活環境のアセスメントを行い,継続的な心理社会的支援を行う必要性が示唆された.

  • 髙木 健司, 高塚 直能, 佐々木 翼, 森 香津子, 小川 直美, 伊藤 慎二
    2018 年 13 巻 1 号 p. 69-75
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/02/28
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    【目的】当院は精神科医が非常勤であり,患者の精神状態の評価は各医療者の主観的判断となっていた.そこで,抑うつをスクリーニングし専門医への連携に繋げる目的でPatient Health Questionnaire(PHQ)-9を導入したため,後方視的に検討した.【方法】2016年1月1日〜10月31日までに緩和ケア病棟に入院した全患者を対象とした.入院時にPHQ-9を行い,10点以上を抑うつありとした.精神科医の診断(P)と照合した.【結果】対象期間中に延べ83名が入院し,50名に施行し得た.PHQ(−)・P(-)32名,PHQ(+)・P(-)7名,PHQ(-)・P(+)2名,PHQ(+)・P(+)9名であった.P(+)11名であり,PHQ-9の抑うつに対する感度,特異度は81.8%,82.1%であった.【結論】緩和ケア病棟入院時においても,抑うつのスクリーニングとしてPHQ-9の有用性が示唆された.

  • 名古屋 祐子, 宮下 光令, 塩飽 仁
    2018 年 13 巻 1 号 p. 89-98
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/03/15
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    【目的】医師と看護師が終末期の小児がん患者と家族のケアに関する相談を行いやすいと感じる専門職種とその関連要因を明らかにする.【方法】小児がんの終末期ケア経験が1例以上ある医師と看護師を対象に自記式質問紙を用い,緩和ケアチーム,小児看護専門看護師,同じチームの医師や看護師といった15専門職種に対して相談を行いやすいと感じるか質問した.【結果】427名から回答を得た.回答者の7割以上が相談を行いやすいと感じていたのは「同じチームの医師」や「同じチームの看護師」など3つの専門職種であった.相談を行いやすいと感じる専門職種の関連要因として最も多くの専門職種で関連が認められたのは回答者の職種であり,回答者が医師の方が各専門職種に対して相談を行いやすいと感じていた.【考察】各専門職種への相談方法や手順の明示,専門職種連携教育を取り入れるなど相談を行いやすいと感じられる体制を検討する必要性が示唆された.

  • 梶山 倫子, 吉岡 さおり
    2018 年 13 巻 1 号 p. 99-108
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/03/23
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    電子付録

    本研究の目的は,終末期がん患者の在宅療養移行に向けた一般病棟看護師の意思決定支援の特徴とその関連要因を検討することである.本研究で新たに意思決定支援項目(17項目)を作成し,重回帰分析により関連要因を検討した.看護師1,019名を対象に質問紙調査を実施し,有効回答は653であった(有効回答率64.0%).分析の結果,「がん患者の在宅療養移行支援経験(β=0.26)」「看護師の自律性:具体的判断能力(β=0.23)」「看護師の自律性:実践能力(β=0.18)」「在宅看護論履修(β=0.13)」「死後の世界観(β=0.12)」「家族看護に関する学習経験(β=0.07)」が関連要因として特定された.調整済みR2は0.27であった.終末期がん患者の在宅療養移行における看護師の意思決定支援には,経験に基づく看護実践能力,在宅看護や家族看護に関する学習経験,死についての考え方などの関連が示唆された.

  • 木下 里美, 宮下 光令, 佐藤 一樹
    2018 年 13 巻 1 号 p. 121-128
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/03/29
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    米国のIntensive Care Unit版Quality of Dying and Death(ICU-QODD)医療者版の終末期における患者の体験に関する評価15項目から,ICU-QODD看護師評価用の日本語版を作成し,総合評価として使用可能かを検討した.尺度の因子妥当性と内的一貫性の確認のための調査は1372名,再調査信頼性の確認のための調査は39名のICU看護師から回答を得た.探索的因子分析の結果,6項目2ドメインとして確定し,「身体症状」,「尊厳」と命名した.Cronbachʼs α係数は,「身体症状」が0.89,「尊厳」が0.75であった.級内相関係数は,「身体症状」が0.62,「尊厳」が0.72であった.因子妥当性,内的一貫性,再調査信頼性のある尺度であることが確認できた.15項目のうち6項目が総合評価として使用可能であることが示唆された.

短報
総説
  • 山中 政子, 鈴木 久美
    2018 年 13 巻 1 号 p. 7-21
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/01/31
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    【目的】文献レビューによりがん疼痛患者のセルフマネジメントを促進する教育的介入に関する研究の動向と介入内容を明らかにした.【方法】文献検索はMedLine,CINAHL,医学中央雑誌を用いて2000年1月~2017年7月,キーワードはがん疼痛,セルフマネジメント,セルフケアとした.【結果】対象は和文献3と英文献27で,2010年以降が多かった.介入プログラムはメインセッションとフォローアップを組み合わせた構成で,個別介入が多用されていた.教育内容は薬理学的疼痛緩和法,痛みのセルフモニタリングや医師とのコミュニケーションのスキルであった.介入成果は疼痛緩和と知識の改善であった.【結論】日本ではがん疼痛のセルフマネジメントに関する介入研究が少ないことから,本結果で明らかになった介入方法や教育内容を参考に,がん疼痛がある患者へのセルフマネジメントを促進する教育的介入プログラムを開発することが課題である.

症例報告
  • 相木 佐代, 酒井 小百合, 瑞樹 知子, 荒川 輝男, 栗生 正義, 松井 春希, 穴山 良
    2018 年 13 巻 1 号 p. 1-5
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/01/24
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    近年は,がんに対する治療方法も多様化してきており,患者自身や家族により複雑な意思決定が求められる場面が増加している.その中で,意思決定能力がないと判断されたがん患者の治療方針を,どのような手順で,誰が決定するのかについて,本邦で定められた指針はない.殊に,知的能力障害を有するがん患者の終末期医療についての意思決定に関する報告は少ない.今回われわれは,がんに罹患した知的能力障害者の終末期医療についての意思決定に関わったので報告する.本症例では,意思決定能力の有無に関して,信頼性と妥当性が示された尺度等を用いて判断し,海外の報告や指針をもとに,福祉施設と病院が連携し多職種協同で代理意思決定を行い,心肺停止時の蘇生措置は行わず,緩和ケア病棟で療養するとの選択に至った.今後,本邦においても知的能力障害を有しているがん患者の終末期における意思決定支援,および代理意思決定についての指針が示されることが望まれる.

  • 野池 輝匡, 菊池 二郎, 柳田 卓也, 関 浩道, 塩原 麻衣, 三浦 篤史, 髙木 洋明
    2018 年 13 巻 1 号 p. 63-68
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/02/28
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    電子付録

    【目的】主として透析療法中の末期腎不全患者における尿毒症性細小動脈石灰化症 (カルシフィラキシス)の発症頻度は低く,その発症機序や治療についての知見はまだ確立していない.また皮膚潰瘍部の極めて強い疼痛に対する標準的な治療方法も確立されておらず,鎮痛に難渋することも多い.今回,われわれは有痛性潰瘍の鎮痛にブプレノルフィンが著効した症例を経験したため報告する.【症例】75歳,男性.両下腿に強固な有痛性皮膚潰瘍を発症し入院した.非ステロイド性解熱鎮痛薬と持続的左大腿神経ブロックによっても改善しなかった疼痛に対して,慎重にオピオイドの適応を検討し,そのうえでブプレノルフィンを使用したところ,疼痛が著明に改善した.【結論】透析療法中の患者にも投与可能なオピオイドの一つであるブプレノルフィンが,尿毒症性細小動脈石灰化症による下肢皮膚潰瘍の難治性疼痛に対して有効であった1例を報告した.

  • 浅井 泰行, 渡邊 紘章, 小田切 拓也
    2018 年 13 巻 1 号 p. 77-81
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/02/28
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    【緒言】終末期肺がん患者に,稀な気腫性膀胱炎を認めた1例を経験した.【症例】72歳男性.肺がん,骨転移で治療中,がん性髄膜炎と診断され抗がん剤治療終了の方針となり,当院緩和ケア病棟へ転院となった.進行性の意識障害,両下肢麻痺を認め,画像検査で,がん性髄膜炎に伴う髄腔内結節および膀胱壁内気腫像を認めた.気腫性膀胱炎と診断し,膀胱内洗浄ドレナージと抗菌薬治療を行った.膀胱壁内気腫像は改善したが,がん性髄膜炎の進行により転院10日目に死亡した.【考察】気腫性膀胱炎は,悪性腫瘍などの基礎疾患を有する患者に合併しやすい.本症例でも担がん状態に加えて,ステロイド使用歴,がん性髄膜炎による膀胱直腸障害など,リスク要因を多く認めた.終末期がん患者では,ステロイド使用や,中枢神経転移や,排尿障害などを認めることが多く,発症リスクは高い.時に致命的な可能性もあり,がん終末期において注意すべき病態である.

  • 森 尚子, 松村 昌治, 雨宮 馨, 山上 あゆむ
    2018 年 13 巻 1 号 p. 83-87
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/03/15
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    【緒言】G-CSF(granulocyte colony-stimulating factor)産生腫瘍は,高サイトカイン状態により,発熱・倦怠感・体液貯留など終末期に様々な苦痛を引き起こす場合がある.【症例】80歳,女性.食思不振,尿量低下を主訴に受診.精査の結果,十二指腸癌と診断された.高齢で全身状態不良のため抗がん治療は行わない方針となったが,多量の腹水貯留による腹部膨満が強く,大きな苦痛となっていた.末梢血スメアにて正常好中球の著増を認め,G-CSF産生十二指腸癌が疑われたことから,サイトカイン抑制目的でデキサメサゾンの投与を開始した.その結果,腎機能障害が改善し,利尿もつき,腹水除去後の再貯留も認めず,好中球数も減少に転じ,短い期間ではあったが患者は小康状態を得た.【結論】G-CSF産生腫瘍における高サイトカイン状態に対して,ステロイドが苦痛緩和に有用である可能性がある.

  • 岩山 百華, 阿部 泰之, 国沢 卓之, 田﨑 嘉一
    2018 年 13 巻 1 号 p. 109-113
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/03/23
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    患者は68歳男性で,左甲状腺腫瘍未分化転化の診断でレンバチニブを内服中,左鎖骨周囲の腫脹,疼痛がありトラマドールを内服開始した.2日後から下痢,発汗,見当識障害,ミオクローヌスなどが認められたためセロトニン症候群と診断された.さらに手足が動く,体幹をくねらせるなどのジスキネジアがみられた.トラマドールを内服中止したところ,半日でミオクローヌスとジスキネジアは軽快し,翌日には消失した.有害事象発現時における薬剤の時間的関連性から原因はトラマドールであると考えられた.トラマドールはセロトニン再取り込み阻害作用を有するため,セロトニン症候群を引き起こす可能性はあるものの,報告は少なく,ジスキネジア合併の報告はない.トラマドール使用時には,ジスキネジア症状を含む,セロトニン症候群の出現に留意が必要である.

活動報告
  • 角甲 純, 大園 康文, 小林 成光, 關本 翌子
    2018 年 13 巻 1 号 p. 115-120
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/03/23
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    【目的】デスカンファレンスで話し合われた内容を明らかにする.【方法】2012年5月〜2014年11月までの期間に,国立がん研究センター東病院の緩和ケア病棟で行われたデスカンファレンス60件について,診療録およびデスカンファレンス実施時の記録用紙を後ろ向きに調査し,内容分析を行った.【結果】期間中に行われたデスカンファレンスから,170単位のデータを抽出した.最終的に5つのカテゴリーに分類し,[ケア対象としての家族を支える][患者の思いを汲み取り大切にする][症状を緩和し苦痛を取り除く][医療者間における連携の大切さを実感する][患者との関わりに苦慮する]とした.【結論】デスカンファレンスは,さまざまな視点と方向から支援を振り返る有用な機会であることが示唆された.

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