【目的】対象者の属性を調整した場合,乳がん患者である母親の抑うつ・不安と家族機能が子どものQOLに影響を及ぼすかどうかを検討する.【方法】交絡因子となる対象者の属性別にサブグループに分けて,抑うつ・不安と家族機能を独立変数,子どものQOLの合計得点を従属変数とした2要因分散分析を行った.【結果】各属性のサブグループにおいて,母親の抑うつが高い場合は母親の抑うつが低い場合よりも子どものQOLが有意に低いことが示された.きょうだいの有無のサブグループ,母親の化学療法の受療有無のサブグループにおいて,家族機能による子どものQOLに差異がみられた.【結論】今後,子どもを持つ乳がん患者の家庭を支援する際に,子どものきょうだいの有無や乳がん患者の化学療法の受療有無などといった属性も考慮したうえで,母親の心理状態と家族機能にアプローチする必要があると考えられる.
母親が乳がんと診断されることは,親子間の愛着の形成と安定感の維持を阻害し,子どもの発達や精神的健康に長期的で重大な影響を及ぼす可能性がある1).また,このようながん患者の子どもは多様な心理社会的問題を抱える可能性が報告されている2).先行研究では,がん患者の親を持つ子どもの心理社会的問題を包括的に検討する必要が指摘されている1).心理社会的問題を包括する構成概念としてQuality of Life(QOL)がある.子どものQOLは,成人の場合よりも,身体的,精神的,社会的な要素が混ざりあい,明確に分離することが困難である3)とされていることからも,がん患者の親を持つ子どもの心理社会的問題として,QOLを包括的に検討する必要がある.
乳がんの診断やその治療は,母親である乳がん患者の家庭や社会での役割遂行および子育てにさまざまな影響を与える4,5).例えば,乳房切除術を受けた患者の多くは,子どもに手術後に残った傷跡を見せたくないと考え,子どもとのスキンシップが少なくなってしまうことが示されている6).さらに,母親の抑うつや不安が高いと,子どもの心理社会的問題の発症リスクが高くなることが指摘されている7).一般的な母子関係においても,母親の心理的苦痛は,子どもの不適応と正の関連を示す研究が多い8).以上のことから,母親である乳がん患者の心理状態は,その子どものQOLに関連する要因であるといえる.
また,がんの診断は家族全体に影響を及ぼす.家族成員間の感情的関与や,家族が問題に直面する際の問題解決について表す構成概念として,家族機能がある9).乳がん患者とその家族を対象とした研究では,家族機能の構成要素である凝集性の低さは子どもの心理社会的問題と関連していると報告されている10,11).例えば,親はがんと診断されたことをどのように子どもに伝えるかわからず,伝えることを躊躇することによって,子どもは疎外感を抱え孤立していくことがある12).その一方で,感情的関与があり,家族内でよくコミュニケーションを取る健全な家族機能は,子どもの心理的問題を減少させることが示されている13).また,母親が不在または療養中の場合,家事や子どもの世話をすることができなくなり,母親の役割を代替する人がいないなど,家族内での役割遂行の有無は子どもの心理社会的問題に影響を及ぼすと指摘されている10).しかし,家庭内の役割遂行は子どもの心理社会的問題と関連していないと報告している研究もあり11),家族機能の適応性と子どもの心理社会的問題に関する先行研究の知見が一貫していない.したがって,このような家庭環境の変化に適応する能力と子どもの心理社会的問題との関連についてさらなる知見を積み重ねる必要性があるといえる.
Olson9)は家族機能を凝集性と適応性で捉え,円環モデルを提唱した.家族機能の凝集性とは,「家族成員間の情緒的絆」,家族機能の適応性とは,「状況的・発達的ストレスに応じて,勢力構造や役割を変化させる夫婦・家族システムの能力」と定義されている.円環モデルでは,家族機能の凝集性と適応性が極端であると問題を呈しやすくなり,中程度であると家族機能が最も機能すると指摘されている14).また,家族機能の適応性が低すぎる家族の子どもは初対面の人に対して恐怖が生じやすく,凝集性が高すぎる家族(過度の関与または過保護)の子どもは不安を抱え,社会的場面を回避することが多いと報告されている14).上記のように一般家庭での家族機能と子どもの心理社会的問題の関連は指摘されているが,乳がん患者の家庭ではこれまでに検討されていない.また,乳がん患者の家庭では,母親である乳がん患者は治療により家事や子育てに困難感を持つ可能性があり,家庭内の役割構造に混乱をもたらすことが考えられる.
乳がん患者の心理状態が子どもの心理社会的問題に与える影響と,家族機能の下位尺度である凝集性と適応性が子どもの心理社会的問題に与える影響はさまざまな知見が示されており,関連性が明らかにされていない点がある1,5,15).これらのことから,母親の心理的問題に着目するだけでなく,家族全体のつながりや役割構造の仕組みへ介入することにより,子どもは母親の乳がんによる変化に適応できると考えられる.また,対象者の属性が子どもの心理社会的問題に影響する可能性があると指摘されている15,16).きょうだいがいない子どもは自分の考えや感情を表出する相手がいないため,心理的問題が多いと報告されている16).さらに,集中的な化学治療を受けている親の子どもは,手術を受けた親の子どもより心理的問題が多いことも指摘され,子どもは親の具合が悪い様子や外見の変化により,心配や恐怖などの心理社会的問題を呈する.しかし,子どもの心理社会的問題を検討する研究において,親の属性や子どもの属性の影響を考慮した先行研究が少ない.そこで本研究では,きょうだいの有無などの子どもの属性と親の治療内容などの親の属性の影響を調整した場合,乳がん患者である母親の心理状態と家族機能が子どものQOLに影響を及ぼすかどうかを明らかにすることを目的とする.
調査対象者は,調査協力機関に通院している治療中の乳がん患者であり,主治医の許可が得られた18歳未満の子を持つ乳がん患者(35〜53歳)とその子ども(6〜17歳)であった.なお,母親ががんに罹患した際に,年齢が高い子どもは家事を分担したり,下の子どもの面倒をみたりする役割を持つことが多く,心理社会的適応に影響を受けることが指摘されているため17),本研究では第一子を対象として検討する.
調査期間2011年9〜2014年3月に実施された.
調査方法本研究はがん臨床研究事業「がん診療におけるチャイルドサポート」研究の一部のデータを用いた.研究全体は多施設(総合病院1施設,がん専門病院3施設)共同の観察研究として実施され,各施設の研究実施者が子育て中のがん患者に研究の主旨を説明し,同意を得た場合に自己記入式のアンケートを渡した.記入後のアンケートは,対象者から返送された.研究全体において,216名の親にアンケートを配布し,184名の親から返信を得た(回収率85%).また,178名の子どもにアンケートを配布し,138名の子どもから返信を得た(回収率78%).本研究では,研究全体のうち,治療中の乳がん患者60名と第一子60名のデータを抽出した.
調査内容と項目1.フェイスデータ
以下の項目について質問紙により回答を得た:母親の年齢,性別,罹病期間,ステージ,治療内容,婚姻状況,就業状況,教育水準,子どもの数,子どもの性別と年齢,子どもへの告知状況.
2.母親の抑うつ・不安症状
Hospital Anxiety and Depression Scale(HADS)の日本語版を用いた18).HADSは14項目からなり,身体疾患患者の抑うつ・不安を測定する尺度である.抑うつ・不安の二つの下位尺度に分類され,各7項目から構成される.質問項目に対する回答は,4件法であった.カットオフ値は11点である.
3.母親から見た家族機能
Family Adaptability and Cohesion Evaluation Scales III(FACES III)の日本語版を用いた19).FACES IIIは20項目からなり,家族の凝集性と適応性を測定する尺度であり,各10項目より構成される.質問項目に対する回答は,「全くない」,「たまにある」,「ときどきある」,「よくある」,「いつもある」までの5件法であった.FACES IIIでは,得点が高すぎる,または,低すぎるほど家族機能が良好ではないと解釈される.本研究では日本語版の分類基準に基づき,凝集性の得点は38点以上または25点以下を極端群,適応性の得点は34点以上または23点以下を極端群,得点が極端群の中間にあるものをバランス群に分類し,分析を行った.
4.子どものQOL
Pediatric Quality of Life Inventory(Peds-QL)の日本語版を用いた20).三つの年齢区分(6〜7歳児用,8〜12歳児用,13〜18歳児用)がある.Peds-QLは23項目からなっており,体の調子(8項目),心のこと(5項目),社会的なこと(5項目),学校でのこと(5項目)について感じた大変さを尋ねる尺度である.質問項目に対する回答は,6〜7歳児の場合は,「ぜんぜんたいへんでない」,「まあまあたいへん」,「とてもたいへん」の3件法で,8〜12歳児と13〜18歳児の場合は,「全然たいへんでない」から「とてもたいへん」までの5件法であった.尺度作成の論文20)に基づき,いずれの年齢区分についても0〜100点に換算し,総合得点を算出した.
分析方法対象者全体において,母親の心理状態と家族機能が子どものQOLに影響を与えるかどうかを確認するため,母親の抑うつおよび不安の臨床群・健常群と凝集性および適応性のバランス群・極端群を独立変数,子どものQOLの合計得点を従属変数とした2要因分散分析を行った.次に,対象者の属性を調整したうえで,母親の心理状態と家族機能が子どものQOLに与える影響を検討するため,きょうだいの有無,化学療法の有無をサブグループに分けて,抑うつおよび不安の臨床群・健常群と凝集性および適応性のバランス群・極端群を独立変数,子どものQOLの合計得点を従属変数とした2要因分散分析を行った.すべての統計的分析は,IBM SPSS Statistics ver. 25(日本IBM,東京)を使用して行った.
倫理的配慮本研究は,各4研究施設の倫理審査の承認を得て実施された.
対象者の特徴を把握するため記述統計を算出した.対象者の属性を表1に示す.また,母親の抑うつおよび不安を測定するHADSの下位尺度ごとの合計得点をカットオフ値により,抑うつおよび不安それぞれにおいて臨床群・健常群に分けた.母親の抑うつ群は11人,非抑うつ群は49人,不安群は14人,非不安群は46人であった.家族機能を測定するFACES III尺度日本語版の分類基準を基に,凝集性および適応性をそれぞれバランス群・極端群の2水準に分けた.家族機能の凝集性バランス群は22人,凝集性極端群は38人,適応性バランス群は33人,適応性極端群は27人であった.
2. 母親の心理状態と家族機能による子どものQOLの差異対象者全体において,母親の抑うつおよび不安と家族機能の凝集性および適応性が子どものQOLに与える影響を確認した.母親の抑うつと家族機能の凝集性を独立変数とした分散分析の結果,抑うつの主効果のみ認められ(F(1, 56)=4.77, p<0.05),母親の抑うつと家族機能の適応性を独立変数とした分散分析の結果,抑うつの主効果のみ認められた(F(1, 56)=5.72, p<0.05).
3. 属性を調整した母親の心理状態と家族機能による子どものQOLの差異対象者の属性を調整した場合,母親の心理状態と家族機能による子どものQOLに影響を及ぼすかどうかを検討するために,対象者をきょうだいの有無,化学療法の有無の属性別にサブグループに分けて,母親の抑うつおよび不安と家族機能の凝集性・適応性が子どものQOLに与える影響を検討した.
1)きょうだいの有無を調整した場合の母親の心理状態と家族機能が子どものQOLに与える影響
きょうだいの有無別にサブグループに分けて,母親の抑うつおよび不安と家族機能の凝集性および適応性が子どものQOLに与える影響を検討した(表2).まず,きょうだいがいる群において,母親の抑うつと家族機能の凝集性を独立変数とした分析の結果,抑うつの主効果が認められた(F(1, 43)=4.94, p<0.05).次に,母親の抑うつと家族機能の適応性を独立変数とした分析の結果,抑うつの主効果が認められた(F(1, 43)=10.18, p<0.01).また,母親の不安と家族機能の適応性を独立変数とした分析の結果,不安と適応性の主効果がそれぞれ有意であった(F(1, 43)=6.12, p<0.05; F(1, 43)=8.01, p<0.01).きょうだいがいない群において,いずれの交互作用および主効果は認められなかった.
2)母親の化学療法受療の有無を調整した場合の母親の心理状態と家族機能が子どものQOLに与える影響
母親の化学療法受療の有無別にサブグループに分けて,母親の抑うつおよび不安と家族機能の凝集性および適応性が子どものQOLに与える影響を検討した(表3).まず,母親が化学療法を受けた群において,母親の抑うつと家族機能の適応性を独立変数とした分析の結果,抑うつと適応性の主効果がそれぞれ有意であった(順に,F(1, 17)=5.85, p<0.05; F(1, 17)=4.96, p<0.05).次に,母親の不安と家族機能の適応性を独立変数とした分析の結果,不安と適応性の主効果がそれぞれ有意であり(順に,F(1, 17)=19.62, p<0.01; F(1, 17)=19.60, p<0.01),交互作用も認められた(F(1, 17)=7.55, p<0.05).また,母親が化学療法を受けていない群において,抑うつと適応性の主効果は認められなかったが,交互作用が認められた(F(1, 35)=4.16, p<0.05).それ以外はいずれの交互作用および主効果は認められなかった.
本研究の目的は,対象者の属性を調整した場合,乳がん患者である母親の抑うつおよび不安と家族機能の凝集性および適応性が子どものQOLに影響を及ぼすかどうかを検討することであった.
1. 対象者の特徴について対象者の記述統計を見ると,母親の抑うつ得点は臨床群が全体の約18%,健常群が全体の約82%であり,不安得点は臨床群が全体の約23%,健常群は約77%を占めていた.本研究の乳がん患者の抑うつ・不安の臨床群は先行研究と同様の割合を示したといえる9,10).さらに,本研究における対象者の凝集性の平均値は健常者の家庭を対象とした先行研究21)に比べて高かったことから,乳がん患者は,健常者に比べて自分の家族に対してより強い結びつきを感じている可能性がある.なお,家族機能の適応性については,健常者の家庭と同様の値を示した21).
2. 属性を調整した母親の心理状態と家族機能による子どものQOLの差異1)きょうだいの有無を調整した場合の母親の心理状態と家族機能が子どものQOLに与える影響
きょうだいの有無別にサブグループに分けて,母親の抑うつおよび不安と家族機能の凝集性および適応性が子どものQOLに与える影響を検討した.その結果,きょうだいがいるサブグループでは,母親の抑うつと不安が子どものQOLに影響を与えていた.母親の抑うつと不安が子どものQOLに影響を及ぼしていることは,先行研究の結果と一致していた10,22).女性の乳がんは30〜50歳代前半に罹患率が高く,この年代の乳がん患者は家庭や社会でさまざまな役割を担い,治療を受けながら子どもを育てることが多い4,23).母親としての役割が遂行できないことや,子どもに申し訳ない気持ちを抱えていることなど,精神的につらい状況にあると考えられる4).また,きょうだいがいる場合,子どもはきょうだい間での養育態度の差に敏感であると指摘されている24).加えて,乳がんである母親の抑うつと不安が高いと,子どもに対する態度の変化や,子どもとのコミュニケーションが減少することがいわれていることから5),きょうだいがいる乳がん患者の子どもは,きょうだい間の養育態度の差異をより顕著に感じ取りやすくなる可能性が考えられる.したがって,今回の結果から乳がん患者である母親の抑うつと不安が高い場合,きょうだいがいる子どもは母親の心理状態に影響を受けやすいと示唆され,とくにきょうだいがいる家族の子どもの状態には目を向ける必要がある.病院スタッフが子どもに直接対峙できる機会は極めて少ないため,母親の心理状態を把握し支えることが,子どもの心理社会的支援の第一歩といえる.
きょうだいがいる群では,適応性のバランス群は適応性の極端群よりも子どものQOLが有意に高いことが示された.適応性のバランス群は家族全員で相談しあい,柔軟な話し合いができており,このような家庭にいる子どもは情緒の安定がみられ,問題行動が少ないといわれている25).また,家族機能の適応性は家族内の役割遂行が含まれる9).年齢の高い子どもは下の子どもの面倒をみることがあり17),きょうだいがいる場合はきょうだいがいない場合に比べて,子どもが家庭内で担う役割が増加すると推測される.その身体的および心理的負担が子どものQOLに影響を与える可能性が考えられる.つまり,子どもが担っている役割を含めた家庭内の役割の柔軟性が大事であり,きょうだいがいる家庭に対しては,役割についてきょうだい同士や家族で話し合うことを提案するなど,家族内の役割の柔軟性を促進するためのアドバイスが考えられる.
2)母親の化学療法受療の有無を調整した場合の母親の心理状態と家族機能が子どものQOLに与える影響
また,母親が化学療法を受けたサブグループにおいて,母親の抑うつと不安が子どものQOLに影響を与えていた.乳がんの特徴として10年を経過しても再発や転移の可能性があるため,再発と転移に対する不安が高いといわれている26).さらに,先述したように,親の心理状態は子どもの不適応にも関連していると報告されている8).
また,母親が化学療法を受けたサブグループにおいて,適応性の主効果が認められた.適応性のバランス群は極端群よりも子どものQOLが高いことが示された.このことから,家族機能の適応性がバランス群の場合,家庭内で役割交代が柔軟であるためにQOLが高いと推察される.乳がん患者は日常生活を送りながら治療を継続することが可能になった一方で,治療に伴う副作用により日常生活行動が制限されるため,子どもと遊ぶことや学校行事に参加することなど,母親としての役割遂行が困難になることが多い27).家庭内で母親の役割を交代する人がいないと,子どもはその変化に敏感に気づき,母親の状態を心配したり,親を失ってしまうという悪い事態を考えがちであると指摘されている6).つまり,化学療法を受けた乳がん患者の家庭において,家族内で母親の代わりに家事や子どもを世話する人がいない場合は,母親の役割を代替する人がいる家庭に比べて,より子どものQOLの変化に注意すべきであるといえる.
研究の限界本研究の限界点として,属性に関する検討が不十分であることが挙げられる.まず,第一子だけ抽出したことが挙げられる.出生の順位による子どもの心理社会的適応に影響することが考えられるため,第一子だけでなく,下のきょうだいも扱う必要があると考えられる.また,属性について化学療法ときょうだいの有無のみを扱ったことが挙げられる.例えば,きょうだいの性別や年齢などによって,子どもの心理社会的適応は異なる可能性があるため,今後はさらに詳しく検討していく必要がある.
また,母親の心理状態の測定には,HADS尺度を使用した.HADSは身体疾患患者の抑うつと不安を測定できる尺度であるが,がんの再発に伴う苦痛や不安は含まれておらず,今後はがんに特化した不安を含めた母親の心理状態が子どものQOLに与える影響についても検討する必要がある.
最後に,サブグループ解析の限界点として多重性が挙げられる.本研究では事前に検定するグループを絞り込んでおくことや,結果を読み取る際に交互作用の結果を重視した.しかし,今後は多重性を調整するための補正をする必要があると考えられる.
本研究から,母親の心理状態,家族機能と子どものQOLの関連が明らかとなった.母親の心理状態がよくないと,子どものQOLが低下すると示された.また,属性を調整した場合でも,家族機能による子どものQOLに差異がみられたことから,子どものQOLを改善するために,母親としての役割を交代したり,母親以外に子どもの生活を支える人を確保することが大事であると考えられる.さらに,子どものきょうだいがいる場合と母親が化学療法を受けた場合,家族機能と母親の心理状態は子どものQOLに影響を与えていることが示された.今後子どもを持つ乳がん患者の家庭を支援する際に,きょうだいの有無,母親の治療状況といった属性も考慮する必要があると考えられる.
すべての著者の申告すべき利益相反なし
唐,小野は,研究データの分析・解釈,原稿の起草に貢献;小川は,研究データの収集・分析・解釈,原稿の起草に貢献;小澤,田巻,大谷,清藤は研究の構想およびデザイン,研究データの収集・解釈,原稿の重要な知的内容に関わる批判的な推敲に貢献;鈴木は研究データの解釈,原稿の重要な知的内容に関わる批判的な推敲に貢献した.すべての著者は投稿論文ならびに出版原稿の最終確認および研究の説明責任に同意した.