Palliative Care Research
Online ISSN : 1880-5302
ISSN-L : 1880-5302
原著
都道府県がん診療連携拠点病院1施設のがん看護外来における相談内容に関連する要因
塚越 徳子 角田 明美渡辺 恵京田 亜由美瀬沼 麻衣子近藤 由香北田 陽子廣河原 陽子一場 慶金子 結花関根 宏美宮澤 純江橋本 智美
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2023 年 18 巻 2 号 p. 95-103

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Abstract

【目的】群馬大学医学部附属病院のがん看護外来における相談内容に関連する要因を明らかにする.【方法】2019年度の相談1308件から欠損値を除く1084件を対象に後ろ向きに調査した.調査項目は年代,性別,相談者,利用回数,がんの治療状況,相談内容などとした.相談内容と利用者の属性とのχ2検定,二項ロジスティック回帰分析を実施した.【結果】治療に関する内容は,70歳代以上,家族・親族のみ,再発・転移あり,初めての利用,治療前,泌尿器,子宮・卵巣,原発不明と関連した.身体的な内容は,治療中,治療後,再発・転移なし,消化器と関連した.心理的な内容は,30歳代以下,40~60歳代,患者のみ,2回目以上の利用と関連した.社会的な内容は,患者のみ,家族・親族のみ,再発・転移なし,乳房と関連した.【結論】相談内容によって関連要因は異なり,関連要因に応じて相談の準備を整えることに活用することができる.

Translated Abstract

Purpose: The purpose of this study is to clarify the factors related to the content of consultation in the cancer nursing outpatient department of Gunma University Hospital. Method: A retrospective survey was conducted with 1084 cases, excluding the unknown cases, from 1308 consultations in FY2019. Survey items included age, gender, consulter, number of uses, treatment status, consultation content, etc. We conducted χ2 tests, and binomial logistic regression analysis between the content of the consultation and the attributes of the user. Results: The treatment-related content was associated with the following factors: 70s or older, family/relatives only, presence of recurrence/metastasis, first use, pre-treatment, urinary organs, uterine/ovary, and unknown primary. The body-related content was associated with the following factors: under treatment, post-treatment, no recurrence/metastasis, and digestive organs. The mental health-related content was associated with 30s or younger, 40s–60s, patient only, and second time or more. The social aspects-related content was associated with the following factors: patient only, family/relatives only, no recurrence/metastasis, and breast. Conclusion: The results reveal that associated factors differ by consultation content. These findings can be used to prepare for consultation based on the relevant associated factors.

緒言

がん治療の複雑化や長期化に伴い,がん患者・家族の心配や悩みごとは治療だけでなく,仕事や家事,周囲の人との関わり,医療費など多岐にわたる1.2018年のがん診療連携拠点病院等の整備に関する指針2では,がん相談支援センターの業務にがんゲノム医療やがん治療に伴う生殖機能の温存に関する相談などが加わり,がん患者や家族への相談支援のさらなる充実が期待されている.

がん患者・家族の相談ニーズが高まる一方で,がんに関する情報環境の変化や社会が求める相談内容の多様化から,がん相談支援センターだけでは相談者のニーズに十分に対応できないことが指摘されている3.また,医療の専門化や複雑化によって,限られた診療時間では自分の病状や治療内容を十分に理解することは難しく,医師とともに必要な情報を補い,サポートする存在が求められている4.これらの課題を補う連携先の一つにがん看護外来がある.

がん看護外来は,現在,多くのがん診療連携拠点病院に設置されており,がん看護専門看護師や認定看護師が相談対応・指導・ケアを行っている5.がん看護外来での相談支援には,強い精神的苦痛など複雑な問題を抱える患者を対象とすること6,真のニーズを探りながら意思決定支援を行うこと7,8などの特徴がある.しかし,全国的に実態を明らかにした調査はなく,外来の運営は個々の施設に委ねられている.

がん看護外来の先行研究では,実践報告9,10や,看護管理者のがん看護外来に対する認識調査7,がん患者指導管理料算定の分析11などに限られており,がん看護外来の相談内容に関連する要因を明らかにした研究はみられない.がん医療を取り巻く社会制度は日々変化しており,がん看護外来での相談内容に関連する要因を把握することで,より充実した相談機能を確立していくための資料となると考える.そこで,本研究は都道府県がん診療連携拠点病院1施設のがん看護外来における相談内容に関連する要因を明らかにすることを目的とする.

方法

研究デザイン

量的記述的研究デザイン

対象病院のがん看護外来(調査時点)

群馬大学医学部附属病院(以下,A病院)は,都道府県がん診療連携拠点病院であり,複数の看護外来を有している.がん看護外来のほかにも,乳がん看護専門外来,リンパ浮腫外来などがある.がん看護外来は,2005年4月に開設され,平日の8時30分~17時に,相談員14名(がん看護専門看護師4名,認定看護師5名,大学のがん看護学教員5名)が対応している.他施設に通院・入院中の方も,患者だけでなく,家族や医療従事者も無料で利用できる.

がん看護外来は,病院のホームページや掲示物をはじめ,各診療科の診察室や病棟に紹介カードを設置し,広報している.利用方法は,電話相談と相談室や病室などでの対面相談がある.A病院に入院・通院中の方は,院内の医療従事者を介して相談依頼ができる.がん治療を入院・通院で受ける方には,入院案内や治療開始の際にがん看護外来への相談希望調査を行っている.

また,A病院はがん相談支援センターを有し,看護師1名と複数名の医療ソーシャルワーカーが相談支援を行っている.がん相談支援センターの利用者のうち,複雑な病態・生活背景を持つ場合や,より専門的ながん治療・ケアについての相談を希望する場合などにがん看護外来に紹介するなどの連携をとっている.

研究対象

対象は,A病院がん看護外来における2019年4月1日から2020年3月31日の相談1308件とした.

A病院のがん看護外来では,「相談記録のための基本形式」12を用いて相談記録を行っている.相談記録は,相談員によって電子カルテシステムに入力され,がん看護外来の責任者が集計・管理している.本研究の実施にあたり,A病院の倫理審査委員会からの承認を得て,がん看護外来の責任者が対象期間の相談記録データを複製し,研究代表者が調査項目を転記した.本研究の調査項目は,利用者の年齢,性別,相談者,相談方法,利用回数,受診状況,がんの治療状況,がんの進展,最も比重の高いがんの部位(以下,がんの部位),最も比重の高い相談内容(以下,相談内容)とした.すべての調査項目は,単一回答であった.

分析方法

相談1308件のうち,調査項目に欠損値のない1084件について分析した.調査項目のうち,相談内容,相談者,受診状況,がんの治療状況についてはカテゴリ化した.相談内容は,がん患者のニーズ調査13,14を参考に「治療に関する内容」「身体的な内容」「心理的な内容」「社会的な内容」の4区分に統合した.年代は「30歳代以下」「40–60歳代」「70歳代以上」の3区分,相談者は「患者のみ」「患者と付き添い」「家族・親族のみ」の3区分,受診状況は「A病院利用中」「他施設利用中」の2区分,がんの治療状況は「治療前」「治療中」「治療後」の3区分,がんの部位は国際統計分類の新生物15を参考に11区分に統合した.

まず,調査項目ごとに件数と割合を算出した.その後,相談内容の4区分ごとに相談あり群・相談なし群に分けて,年代,性別,相談者,利用回数,相談方法,受診状況,がんの治療状況,がんの進展,がんの部位とのχ2検定を行った.

次に,相談内容の4区分ごとに二項ロジスティック回帰分析を行い,調整オッズ比(Adjusted Odds Ratio: OR)と95%信頼区間を算出した.独立変数は,χ2検定を参考に,共同研究者間で臨床上特に重要と考えられる調査項目に絞り込み,年代,相談者,利用回数,がんの治療状況,がんの進展,がんの部位とした.また,回帰式の適合度は,Hosmer-Lemeshowの適合度検定およびC統計量を確認した.なお,多重共線性を考慮するために独立変数間のVariance Inflation Factorを算出し,10未満であることを確認した.

統計解析ソフトは,IBM SPSS Statistic ver.28を用いた.すべての検定での有意水準は5%とした.

倫理的配慮

本研究に用いるがん看護外来の集計表は,個人が特定される情報はなく,すでに匿名化されており,研究対象者にインフォームド・コンセントを得ることは困難である.「人を対象とする医学系研究倫理審査委員会_情報公開・通知文書」を用いて,A病院のホームページ上に研究内容の詳細を記載した.なお,本研究は,群馬大学人を対象とする医学系研究倫理審査委員会の承認(HS2020-093)を得て行った.

結果

がん看護外来利用者の背景(表1
表1 がん看護外来利用者の背景(n=1084)

年代は「40–60歳代」が587件(54.2%),相談者は「患者のみ」が742件(68.5%)であった.

がんの治療状況は「治療中」が668件(61.6%),がんの進展は「再発・転移なし」が555件(51.2%),がんの部位は「消化器」が287件(26.5%)であった.

相談方法は「対面」が963件(88.8%),利用回数は「2回目以上」が688件(63.5%),受診状況は「A病院利用中」が1026件(94.6%)と多かった.

相談内容

相談内容は「心理的な内容」が572件(52.8%),「治療に関する内容」が227件(20.9%),「身体的な内容」が171件(15.8%),「社会的な内容」が114件(10.5%)であった.

相談内容と利用者の属性との関連(表2
表2 相談内容と利用者の属性との関連(χ2検定)(n=1084)

「治療に関する内容」は年代,性別,相談者,相談方法,利用回数,受診状況,がんの治療状況,がんの進展,がんの部位と関連があった.「身体的な内容」は年代,相談者,がんの治療状況,がんの部位と関連があった.「心理的な内容」は年代,性別,相談者,相談方法,利用回数,受診状況,がんの治療状況,がんの部位と関連があった.「社会的な内容」は相談者,がんの進展,がんの部位と関連があった.

相談内容に関連する要因(表3
表3 相談内容に関連する要因(4区分ごとの二項ロジスティック回帰分析)

「治療に関する内容」の相談ありに関連した変数は,家族・親族のみ(OR: 1.659),再発・転移あり(OR: 2.511),泌尿器(OR: 2.541),子宮・卵巣(OR: 3.974),原発不明(OR: 6.777)であった.相談なしに関連した変数は,30歳代以下(OR: 0.195),40–60歳代(OR: 0.575),患者のみ(OR: 0.348),2回目以上(OR: 0.435),治療中(OR: 0.323),治療後(OR: 0.543)であった.

「身体的な内容」の相談ありに関連した変数は,治療中(OR: 4.585),治療後(OR: 4.138),消化器(OR: 2.202)であった.相談なしに関連した変数は,30歳代以下(OR: 0.357),再発・転移あり(OR: 0.530)であった.

「心理的な内容」の相談ありに関連した変数は,30歳代以下(OR: 2.157),40–60歳代(OR: 1.508),患者のみ(OR: 1.457),2回目以上(OR: 2.005)であった.相談なしに関連した変数は,治療後(OR: 0.559),消化器(OR: 0.572),泌尿器(OR: 0.345),子宮・卵巣(OR: 0.273)であった.

「社会的な内容」の相談ありに有意に関連した変数は,患者のみ(OR: 2.593),家族・親族のみ(OR: 3.118),乳房(OR: 3.700)であった.相談なしに関連した変数は,再発・転移あり(OR: 0.535)であった.

C統計量は「社会的な内容」が0.672で,モデルの適合として望ましい0.7以上16とはならなかった.

考察

がん看護外来利用者の特徴

本結果から,がん看護外来の相談内容で最も多かったのは心理的な内容であり,次いで治療に関する内容であった.がん相談支援センターに関する報告1719では,治療に関する相談が最も多く,次いで社会的な相談が多い.本研究のがん看護外来の特徴として,心理的な相談が多いことが挙げられる.また,社会的な相談は,本結果で最も少ない相談内容であり,これはがん相談支援センターでは医療ソーシャルワーカーが相談員に含まれるのに対し,がん看護外来では看護師のみであることが影響していると考える.

また,がんの部位は,他施設のがん相談支援センター19やがん看護外来8では,乳房が上位となる場合が多いが,本結果では7番目に多かった.A病院は,乳がん看護専門外来を有しているため,利用者に違いがあると考える.

がん看護外来における相談内容に関連する要因

1. 治療に関する内容の相談

治療に関する内容の相談は,70歳代以上,家族・親族のみ,再発・転移ありと関連した.長岡の調査20では,70歳以上のがん患者・家族の相談上位は,退院,転院,在宅医療,受診方法・入院に関してであった.これらは本研究での治療に関する内容に含まれており,同様の傾向が考えられる.高齢者はがん治療による有害事象を生じやすく21,加齢に加えて治療によるQuality of Life(QOL)低下も考慮したがん治療内容や治療場所の選択が必要であるため,治療に関する相談ニーズが高い可能性がある.

家族・親族のみが関連したことは,患者と比べ医療者と関わる機会の少ない家族が治療に関する情報を求めていることや,治療選択に際し患者がいないところでの相談を求めていることが考えられる.

先行研究では,がんが進行している人ががん相談支援センターを利用する22ことや,がん相談支援センターでは治療に関する内容の相談が最も多い傾向にある17,18ことが示されている.本結果から,がん看護外来においてもがん相談支援センターと同様に,がんの再発・転移のある人が治療に関する内容を相談する傾向が示された.再発・転移によって治療の選択肢が狭まったり,機能障害や有害反応の発現リスクが高まったりすることで,治療選択支援のニーズが高まる可能性がある.

さらに,治療前,初めての利用と関連したことは,がん患者の心理状態が影響していると考える.治療前のがん患者は,看護師に対してがんや検査に対する不安や苦痛を理解してケアしてほしいと感じ,自己決定を尊重した治療選択支援を求めている23.そのため,がん看護外来では治療内容・場所などの情報提供のみならず,患者や家族が納得して選択ができるような意思決定支援を行うことが重要である.

がんの部位では,泌尿器,子宮・卵巣,原発不明と関連していた.生殖器のがんは,妊孕性を温存するための治療法を治療前から考慮する必要があるため,治療に関する内容の相談と関連したと考える.また,原発不明のがんは,治療に関する情報が乏しいことが予測され,セカンドオピニオンやがんの治療に関する情報を求めている可能性がある.

2. 身体的な内容の相談

身体的な内容の相談は,治療中,治療後と関連した.がんの治療はがん病変の切除や縮小,生存期間の延長やQOLの改善といったメリットがある一方で,治療に伴う有害反応や機能障害といったデメリットも存在する.本結果では治療中だけでなく治療後にも身体的な内容の相談と関連していた.治療中と比べると治療後は医療者との関わりが少なくなる.このような中で晩期の有害反応や機能障害が出現することが影響したと考えられ,どの治療過程でも利用できるよう,がん看護外来を周知することが必要である.

また,消化器と関連があった.消化器がんは食物の消化・吸収機能が変化する場合があり,機能障害に対する情報や対策についての相談ニーズが高い可能性がある.

3. 心理的な内容の相談

心理的な内容の相談は,30歳代以下,40–60歳代と関連した.この年代は,家庭でも社会でも中核となる存在として活躍し,次の世代をつくり育てる時期でもあり,社会的な責任も重く,ストレスの多い年代でもある24.とくに関連の強かった30歳代以下は,周りにがん患者が少なく,心の内を吐露しにくいと考える.小児・Adolescent and Young Adult(AYA)世代のがん医療・支援のあり方検討会の報告書25によると,AYA世代がん患者が相談したくてもできない内容は,生き方・死に方,結婚,恋愛,自分の将来といった患者の人生に関わる重大な悩みであった.これらは,日頃の診療場面やがん相談支援センターでは十分に対応することが困難な場合があると考えられ,より専門的な相談ニーズに応じることができるがん看護外来での対応が求められている可能性がある.

また,患者のみと関連した.がん患者の中には,親しい人にも理解してもらえない孤独感を抱え,家族や親しい人だからこそ対話しがたい経験を有する人もいる26.そのため,日頃の診療に直接的なかかわりの少ないがん看護外来が,心理的な内容に関する相談先の一つになっていると考える.

さらに,2回目以上の利用と関連した.これは,当初の相談ニーズが満たされたことで心理的な内容の相談ニーズが表面化したことや,複数回の相談によって相談員との関係性が構築されたことで,初回では言えなかった心理的な内容の相談に至った可能性がある.がん看護外来の相談員であるがん看護専門看護師や認定看護師は,俯瞰的視点で対象の問題を捉え,病態生理や薬理,生活背景などの多角的な情報を関連させて実践につなげる能力27を有している.これらの能力によって,2回目以上の利用を促進し,心理的な内容の相談につながったと考える.

4. 社会的な内容の相談

社会的な内容の相談は,患者のみ,家族・親族のみと関連した.これは,社会的な内容に,治療と仕事の両立などの社会生活,患者–家族間や医療者との関係が含まれていることが影響したと考える.とくに家族間の関係では,家族員の誰かが,がんになったとき,治療費などの経済的な問題や闘病を支える介護者としての役割が家族員の負担になる場合がある28.社会的な内容の相談は,患者や家族がお互いを気にせずに,単独で相談したい可能性があることを理解して相談に応じる必要がある.

また,再発・転移なしと関連がみられた.これは,治療と仕事との両立についての相談が影響した可能性がある.患者体験調査29によると,がん診断を受けて初回治療までに退職・廃業した人は56.8%に上り,今後もがん相談支援センターと連携しながら,診断時からがん治療と仕事の両立支援を推進していくことが必要である.

さらに,乳がんとの関連が示された.乳がんは,30歳代以降に増加し,集学的治療に加えて,再発リスクを考慮して5年以上の経過観察が必要である30.そのため,治療と仕事の両立31や,子どもへのがんの伝え方32に困難を生じやすい.A病院は乳がん看護外来も有しているため,連携を強化しながら,患者の仕事内容や家族関係など個別性に配慮した相談支援が重要と考える.

がん看護外来への示唆

がん相談支援センターでの相談内容1719と比べ,本結果では心理的な内容の相談件数が多かった.がん相談支援センターの役割機能の強化が進められている一方で,相談者の多様化や相談者を取り巻く環境の複雑化によってニーズへの対応が難しくなっており,連携窓口の充実が課題である33.がん看護外来では,がん相談支援センターと相談ニーズが異なる可能性を踏まえ,心理的な内容の相談支援をより充実させていく必要がある.

さらに,心理的な内容の相談は,唯一2回目以上の利用と関連があった.2014年よりがん患者の精神的なケアや,治療による有害反応等の管理を充実するためにがん患者指導管理料イ・ロが設定されている34.がん看護外来を担うがん看護専門看護師や認定看護師は,これらの指導管理料の算定が可能であるため,利用者の希望に合わせながら継続的な相談支援を提案し,心理的な苦痛を軽減していくことが重要と考える.また,30歳代以下と関連があったが,A病院の地域には小児がん拠点病院はないため,小児・AYA世代への相談に十分に対応できるよう相談員の自己研鑽が必要である.

研究の限界と今後の課題

本研究は,相談員による回答から得られた既存のデータを用いており,相談員によって回答が異なる可能性がある.また,調査項目のカテゴリ化が結果に影響を及ぼした可能性がある.とくに心理的な内容の相談では,具体的ながんの種類との関連が明確にならず,参照カテゴリの設定が影響した可能性がある.本研究で用いた集計表は,個人の特定が困難なため,同一者による複数回の利用を考慮した解析を行えていないことが限界である.

今後は,利用者の主観的なニーズを踏まえたがん看護外来の相談に対する評価が必要である.

結論

本研究では,都道府県がん診療連携拠点病院1施設のがん看護外来における相談内容に関連する要因を明らかにした.相談内容は,心理的な内容が最も多かった.治療に関する内容は,70歳代以上,家族・親族のみ,再発・転移あり,初めての利用,治療前,泌尿器,子宮・卵巣,原発不明と関連した.身体的な内容は,治療中,治療後,再発・転移なし,消化器と関連した.心理的な内容は,30歳代以下,40–60歳代,患者のみ,2回目以上の利用と関連した.社会的な内容は,患者のみ,家族・親族のみ,再発・転移なし,乳房と関連した.相談内容によって関連要因が異なることが明らかとなった.これらの関連要因は,限られた相談時間の中で真のニーズを引き出すためのガイドとなり,相談の準備を整えることに活用することができる.

謝辞

分析方法についてご指導いただいた群馬大学医学部附属病院地域医療研究・教育センターの皆様,データ分析にご協力をいただいた関根由香様に御礼申し上げます.

利益相反

すべての著者の申告すべき利益相反なし

著者貢献

塚越は研究の構想およびデザイン,研究データの収集・分析・解釈,原稿の起草に貢献した.角田,渡辺,京田,瀬沼,近藤は研究データの分析・解釈,原稿の重要な知的内容に関わる批判的な推敲に貢献した.北田,廣河原,一場,金子,宮澤,関根,橋本は研究データの収集,原稿の重要な知的内容に関わる批判的な推敲に貢献した.すべての著者は投稿論文ならびに出版原稿の最終承認,および研究の説明責任に同意した.

References
 
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