【目的】群馬大学医学部附属病院のがん看護外来における相談内容に関連する要因を明らかにする.【方法】2019年度の相談1308件から欠損値を除く1084件を対象に後ろ向きに調査した.調査項目は年代,性別,相談者,利用回数,がんの治療状況,相談内容などとした.相談内容と利用者の属性とのχ2検定,二項ロジスティック回帰分析を実施した.【結果】治療に関する内容は,70歳代以上,家族・親族のみ,再発・転移あり,初めての利用,治療前,泌尿器,子宮・卵巣,原発不明と関連した.身体的な内容は,治療中,治療後,再発・転移なし,消化器と関連した.心理的な内容は,30歳代以下,40~60歳代,患者のみ,2回目以上の利用と関連した.社会的な内容は,患者のみ,家族・親族のみ,再発・転移なし,乳房と関連した.【結論】相談内容によって関連要因は異なり,関連要因に応じて相談の準備を整えることに活用することができる.
【目的】緩和ケアの実践には,現場の医療者の認識や受容性などを考慮することが重要である.本研究の目的は,救急・集中治療領域の医師の緩和ケアに対する認識や緩和ケア実践の障壁を明らかにすることである.【方法】集中治療室および救命救急センターに勤務する医師を対象に緩和ケアに関する質問紙調査を実施し,自由記述データを質的に分析した.【結果】873名に質問紙を送付し,436名から回答を得た(回収率50%).そのうち,自由記述欄に回答した95名(11%)を分析対象とした.【結論】本研究の結果から,わが国における救急・集中治療領域の医師は緩和ケアを自らの役割と捉え,日常的なケアの一部と考えて実践している一方で,緩和ケア実践の難しさや不十分さを感じていることが推察された.実践の障壁として,緩和ケアチームのマンパワー不足と利用可能性,救急・集中治療領域における緩和ケアに対する認識が統一されていないことなどが存在していた.
【目的】がん診療連携拠点病院における入院がんリハビリテーション(リハ)治療の詳細を明らかにし,基礎データを確立することである.【方法】質問紙を用いた調査研究であり,リハ専門職種を対象に,施設概要,入院がんリハ実施の有無,Dietz分類,対象疾患,治療内容を調査した.【結果】Dietz分類の回復で最も関わりが多く,対象疾患は肺,大腸,血液,胃,肝・胆・膵がんの順に多かった.大腸や胃がんでは一般病院,血液がんでは大学病院,骨軟部腫瘍ではがん専門病院,口腔・咽頭・喉頭がんでは大学病院およびがん専門病院での実施割合が有意に高かった.治療内容は歩行練習が最も多く,次いで筋力増強練習,基本動作練習,日常生活動作練習,呼吸リハと続いた.呼吸リハにおいては,大学病院および一般病院での実施割合が有意に高かった.【結論】施設特性に応じて入院がんリハが実施されており,これらの効果検証と発展が課題である.
症例は73歳女性.肺扁平上皮がん(cT3N3M0-Stage IIIC)に対し当科治療中.2022年6月より肺がん進行に伴い後腹膜リンパ節転移による腰背部痛が増強した.疼痛以外に両下肢浮腫による体動困難もあり7月8日に緊急入院し,後腹膜リンパ節転移に対して放射線治療(30 Gy/10 fr)を行った.タペンタドール200 mg/日で疼痛管理を行っていたが入院中にフェンタニル貼付剤1200 µg/日へ変更し腰背部痛は軽減した.また浮腫の原因疾患を鑑別し,理学所見・検査所見や病歴から,後腹膜リンパ節転移に関連したリンパ浮腫と診断した.入院31日目に浮腫は改善し,ベッド周囲のADLが向上し一時退院可能となった.リンパ節転移に関連したリンパ浮腫の治療方法は確立されておらず,放射線治療の有効性が報告されている.リンパ浮腫の診断に至るまでに他の病態を鑑別し,放射線治療によりリンパ浮腫が改善した1例を報告する.
直腸テネスムスとは排便がない,もしくは少量しか出ないにもかかわらず,頻繁に便意を催す不快な感覚である.抗不整脈薬や神経ブロックによる治療の報告があるが確立された治療法はない.患者は68歳の女性.子宮頸がん術後,再発腫瘤による尿管圧排のために水腎症となり,左右の腎瘻が造設されていた.腹膜播種による腸閉塞のために緊急入院後,症状緩和を主体とする方針になった.薬剤では軽快しない直腸テネスムスに対して神経ブロックを計画した.不対神経節ブロックは効果不十分,サドルフェノールブロックは施行困難であった.局所麻酔薬を用いた持続仙骨硬膜外ブロックにて効果を確認した後に,神経破壊薬を用いた仙骨硬膜外ブロックを行ったところ直腸テネスムスは消失した.ブロック後5日目に退院が可能となり,症状の再燃はなくブロック後12日目に自宅で永眠した.神経破壊薬を用いた仙骨硬膜外ブロックは直腸テネスムスに有効と考えられる.
悪性腫瘍に伴う悪性消化管閉塞(malignancy bowel obstruction: MBO)に対する治療としては,手術療法,消化管ステント留置,経鼻胃管や経皮内視鏡的胃瘻造設術,薬物療法などが知られている.酢酸オクトレオチドなどの薬物治療を行う場合は経口摂取ができなくなり,かつ持続点滴静注が必要となることから,患者のQuality of Life(QOL)を著しく低下させる.今回外科および緩和医療科を含めた多職種カンファレンスを行い慎重に検討を重ね,酢酸オクトレオチド持続投与中で低栄養のMBOの患者に対し審査腹腔鏡手術を行い,MBOの重症度や進行状況を把握することで緩和手術として小腸瘻造設術を選択し施行することができた.その結果,一時的に経口摂取が可能となり患者のQOLを改善させることができた.
【目的】急性期総合病院の医療従事者の緩和ケア実践の認識と関連因子を調べ,社会医療法人生長会ベルランド総合病院における緩和ケアの教育支援のあり方を検討する.【方法】急性期総合病院単施設の医療従事者を対象に無記名自記式質問紙調査を行い,個人属性,緩和ケアの実践と理解の実態を調査し,緩和ケア実践への関連因子を同定するために二項ロジスティック解析を行った.【結果】955名中605名(63%)が回答し,緩和ケアを実践していると回答したのは全体の23%であった.緩和ケア実践の関連因子は,緩和ケアの概念の理解,および緩和ケアの機能,基本的・専門的緩和ケアの違い,アドバンスケアプランニングの理解という緩和ケア実践の具体的内容の理解であった.【結論】基本的緩和ケアの実践を促進するために,医療従事者に対し,緩和ケアの理解を深めて自己の役割認識を促進する教育支援が重要である.
筆者らは,終末期がん患者の現状を確認するツールとしてIMADOKOを考案し在宅チームで使用している.今回,IMADOKOが,終末期がん患者と家族のよりよい療養場所の意思決定支援に及ぼす影響について明らかにするため看取りの実態を後方視的に調査した.対象患者はIMADOKO導入前の64名(男性/女性38/26名)と導入後の140名(男性/女性78/62名),平均年齢はいずれも74歳で主な原発巣は,膵臓,呼吸器,消化管であった.IMADOKO導入により在宅看取り率は有意に上昇した.IMADOKO導入後,IMADOKOは108名の患者とすべての家族に使用した.患者へのIMADOKO使用は看取り場所に関連を認めなかったが,患者と家族,患者家族対医療スタッフのコミュニケーションが有意に良好になった.IMADOKOは,よりよい療養場所選択の意思決定支援において有用である可能性がある.
地域全体の緩和ケアの質の向上を図るためには,各施設が緊密につながることが必要であると考え,2017年9月に「京都ホスピス・緩和ケア病棟(PCU)連絡会」を発足させた.個々のPCU施設が抱える問題を気軽に話し合い,共に悩み考え,成長,発展させる場,新規立ち上げ施設を支援する場とした.連絡会では,その時々の話題(緊急入院,輸血,喫煙,遺族会など)をテーマに議論を行った.2020年,COVID-19流行のため連絡会は休会となったが,メール連絡網を用い,感染対策,PCU運営などの意見を交わし,WEB会議システムを用い連絡会を再開させた.日頃より顔の見える関係があることで,COVID-19流行という有事においてもPCU間の連携を維持し,がん治療病院との連携にも発展させることができた.京都府のPCUが一つのチームとなることで,患者,家族がどのような場所においても安心して生活できることを目指している.
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