2023 年 18 巻 3 号 p. 171-176
【緒言】ロペラミドのみでは難渋する難治性下痢に対して,オクトレオチドやセロトニン受容体拮抗薬の使用が一般に推奨されている.カルチノイド症候群に伴う難治性下痢に対して,オピオイドスイッチングのみで症状が改善した症例を経験した.【症例】28歳,女性.子宮頸がん術後再発に伴い疼痛,水様便を認めるようになった.ロペラミドを内服しても改善しない難治性下痢および骨転移に伴う右下肢痛のため,症状緩和のため緩和ケア病棟に入院となった.下痢の原因は精査の結果,カルチノイド症候群と診断し,増悪していた疼痛への対応も含めてフェンタニル貼付剤からモルヒネにオピオイドスイッチングを行ったところ,疼痛の軽減と下痢回数の明らかな改善を認め,自宅退院となった.【結論】本症例のようにオピオイド鎮痛薬を必要とする症例においては,難治性下痢に対してモルヒネを選択することで,疼痛と下痢の両方に対応できる可能性がある.