Palliative Care Research
Online ISSN : 1880-5302
ISSN-L : 1880-5302
18 巻, 3 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
原著
  • 前倉 俊也, 相木 佐代, 田宮 裕子, 久田原 郁夫, 櫻井 真知子, 吉金 鮎美
    2023 年18 巻3 号 p. 177-182
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/19
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    【目的】進行がん患者のせん妄に対するアセナピン舌下錠の有用性について評価する.【方法】2019年10月1日から2022年9月30日までに当院に入院し,せん妄に対する治療としてアセナピン舌下錠を投与された進行がん患者を対象に,その有用性に関して電子カルテを用いて後方視的に調査を行った.せん妄による興奮症状の改善度を評価するためにAgitation Distress Scale(ADS)を用いて評価した.【結果】解析対象となった患者は20例であった.対象となった患者の投与前のADS値の平均値(範囲)は12(4–17),投与後の平均値(範囲)は7.9(0–18),p値<0.001であり投与前後で有意な低下が認められた.【結論】アセナピン舌下錠はせん妄に対する薬物治療の選択肢の一つとして有用な可能性が示唆された.

  • 平井 啓, 山村 麻予, 鈴木 那納実, 小川 朝生
    2023 年18 巻3 号 p. 183-191
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/31
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    【目的】今日の医療現場において,患者の意思決定の重要性や支援のためのスキルを認識し,実行することはスタッフに不可欠の資質能力である.医療従事者を対象とした意思決定支援に関する研修を構築し,その効果検討をすることを目的とした.【方法】開発した研修を医療機関で実施し,研修の前後の2時点でアンケート調査を行った.調査は無記名で,匿名化のためのIDを使用した.【結果】意思決定支援に必要な知識とスキルを軸に3時間の研修を開発した.アンケート調査の結果,研修の前後で知識や効力感の向上がみられた.【考察】研修により,意思決定支援に関する理解度が深まり,それによる日常業務への効力感も高まることが確認できた.自由記述からは学び直しの意義や困難場面への応用可能性への言及がみられた.今後は,多職種での共同が不可欠となる医療現場において,連携しながらの意思決定支援について検討する必要がある.

短報
  • 田口 菜月, 升川 研人, 青山 真帆, 森田 達也, 木澤 義之, 恒藤 暁, 志真 泰夫, 宮下 光令
    2023 年18 巻3 号 p. 193-200
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/08/30
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    【目的】緩和ケア病棟の質改善活動の実態と遺族調査のアウトカムとの関連を明らかにする.【方法】J-HOPE4に参加した187施設にアンケート調査を実施し,質改善活動実施状況と,施設を利用した遺族の全般的満足度,ケアの構造・プロセスの評価(CES),望ましい死の達成度(GDI),複雑性悲嘆(BGQ),抑うつ(PHQ-9)との関連を検討した.【結果】日本ホスピス緩和ケア協会の自施設評価共有プログラムへの参加,多職種カンファレンスの開催頻度・カンファレンス参加職種数が多い施設で全般的満足度やGDIが有意に高かった.遺族ケアを実施している施設で全般的満足度,CESが有意に高かった.遺族への電話を実施している施設でBGQが有意に低く,葬儀や通夜への参列を実施している施設でPHQ-9が有意に低かった.【結論】質改善活動を積極的に実施している施設では,緩和ケアの質が高く遺族の悲嘆や抑うつを軽減する可能性がある.

症例報告
  • 石川 彩夏, 荒川 さやか, 石木 寛人, 天野 晃滋, 鈴木 由華, 池長 奈美, 山本 駿, 柏原 大朗, 吉田 哲彦, 里見 絵理子
    2023 年18 巻3 号 p. 159-163
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/08
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    【緒言】緩和的放射線療法などによりがん疼痛が緩和されオピオイドを中止する際,身体依存による興奮,不眠,下痢などの離脱症候群を起こす場合があるため,適切に対処する必要がある.【症例】72歳男性.食道がん術後.経過中,仙骨,右腸骨転移による腰痛,右下肢痛が出現.オキシコドン(以下,OXC)を開始したが緩和せず,メサドン(以下,MDN)に切り替え,並行して緩和的放射線療法を施行した.疼痛は徐々に緩和し,MDNを漸減,OXCに切り替え後20 mg/日で患者の強い希望にて終了した.内服中止後から静座不能,不安,下痢が出現し離脱症候群と診断.OXC速放製剤,フェンタニル貼付剤,スボレキサントを併用し離脱症状の治療を行った.【考察】オピオイド中止時は10%/週より遅い減量が望ましく,最小用量に減量した後の中止が推奨される.離脱症状にはオピオイド速放製剤を用い,症状コントロールと並行して漸減を試みるとよい.

  • 餅原 弘樹, 山本 泰大, 川村 幸子, 木下 寛也, 古賀 友之
    2023 年18 巻3 号 p. 165-170
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/19
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    電子付録

    Mohsペースト(以下,MP)は,悪性腫瘍による皮膚自壊創の症状を緩和させる.MPの使用は患者のQOLを改善させる一方でさまざまな使用障壁が報告され,とくに在宅医療での使用報告は少ない.われわれはガーゼを支持体としてMPを厚さ約1 mmにシート化する工夫により,在宅医療でMP処置を実践している.本報ではその具体例を,訪問診療を受ける乳がん患者への使用を通して報告する.患者の主な症状は滲出液による痒み,臭気,自壊創そのものによる左上腕の動かしにくさであったが,週1回の処置を3回実施した後,いずれの症状も改善した.MPのシート化により,物性変化や正常皮膚への組織障害リスク,処置時間や人員配置といった使用障壁が下がり,MP処置を在宅医療にて開始できた.MPはシート化により,居宅でも初回導入が可能であり,既存の報告と同様に症状を抑える効果が得られる可能性が示唆された.

  • 伊藤 まどか, 松沼 亮, 原納 遥, 田崎 潤一, 山口 崇
    2023 年18 巻3 号 p. 171-176
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/21
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    【緒言】ロペラミドのみでは難渋する難治性下痢に対して,オクトレオチドやセロトニン受容体拮抗薬の使用が一般に推奨されている.カルチノイド症候群に伴う難治性下痢に対して,オピオイドスイッチングのみで症状が改善した症例を経験した.【症例】28歳,女性.子宮頸がん術後再発に伴い疼痛,水様便を認めるようになった.ロペラミドを内服しても改善しない難治性下痢および骨転移に伴う右下肢痛のため,症状緩和のため緩和ケア病棟に入院となった.下痢の原因は精査の結果,カルチノイド症候群と診断し,増悪していた疼痛への対応も含めてフェンタニル貼付剤からモルヒネにオピオイドスイッチングを行ったところ,疼痛の軽減と下痢回数の明らかな改善を認め,自宅退院となった.【結論】本症例のようにオピオイド鎮痛薬を必要とする症例においては,難治性下痢に対してモルヒネを選択することで,疼痛と下痢の両方に対応できる可能性がある.

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