Palliative Care Research
Online ISSN : 1880-5302
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原著
「もしも」のときの医療・ケアにおける話し合い行動意図尺度:Web調査による信頼性と妥当性の検討
山口 乃生子 山岸 直子會田 みゆき畔上 光代河村 ちひろ星野 純子浅川 泰宏佐瀬 恵理子島田 千穂
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電子付録

2023 年 18 巻 4 号 p. 213-223

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Abstract

【目的】「もしも」のときの医療・ケアにおける話し合い行動意図尺度の信頼性と妥当性を検討した.【方法】計画的行動理論を参考に項目を作成した.Item-Level Content Validity Index(I-CVI)による内容的妥当性の検討,予備テストを経て原案とした.関東地方の20~79歳の一般人(n=860)を対象に横断的調査および1週間後の再テスト(n=665)をWebにて実施した.尺度の項目分析および信頼性係数(級内相関係数,クロンバックα係数)の算出,構成概念妥当性,併存妥当性を検討した.【結果】探索的因子分析にて6因子(結果評価,影響感,コントロール信念,遵守意思,規範信念,行動信念)が確認された.尺度全体のα係数は0.96,既知集団妥当性による効果量,併存妥当性による相関係数は中程度であった.【結論】本尺度の信頼性と妥当性は概ね確認された.

Translated Abstract

Purpose: The purpose of this study was to examine the reliability and validity of the behavioral intention scale for end-of-life discussions. Methods: The scale items were developed according to the Theory of Planned Behavior. The drafts of the scale were created by Item-Level Content Validity Index (I-CVI) and a preliminary test. In the main study, we administered a cross-sectional questionnaire on the web to the participants 20–79 years of age (n=860), living in Tokyo and six surrounding prefectures, and a retest one week later (n=665). We examined item analysis, calculation of a reliability coefficient (intraclass correlation coefficient, Cronbach's alpha coefficient), construct validity, and concurrent validity of the scale. Results: Six factors identified by an exploratory factor analysis were; outcome evaluation, perceived power, control beliefs, motivation to comply, normative beliefs, and behavioral beliefs. The alpha coefficient of the overall scale was .96. The effect size that was determined based on known-groups validity and the correlation coefficient determined on the basis of concurrent validity were moderate. Conclusions: The reliability and validity of the scale were generally confirmed.

緒言

厚生労働省は,Advance Care Planning(ACP)の概念と普及の必要性を国民に示しており 1,「もしものときのために,あなたが望む医療やケアについて,前もって考え,繰り返し話し合い,共有する取組」 2として広く周知している.しかし,高齢の親とその子では家族間での直接的・言語的コミュニケーションの少なさ 3もあり,ACPの実践は容易でない現状がある.

終末期の医療・ケアの意思決定に関する態度を評価する方法として,邦訳版Advance Directive(AD)知識度尺度およびAD態度尺度がある 4.ADは医療やケアの選択に関する困難な決定について家族の負担を軽減し,医療従事者が本人の治療方針を立てる際の指針となるが,本人が自身の将来の健康状態を予測することは難しく,国内では法的拘束力がないため,その内容をめぐり家族と意見が対立することがある 5

ACP Engagement Survey(ACPES)は,社会的認知理論や行動変容理論に基づいて作成された 6.その短縮版 7はOkadaら 8によって翻訳され,日本人のACPのプロセスに対する自己効力感や心構えを測定する尺度として開発された.ほかにもACPの準備性に関する尺度では,婦人科系がん患者を対象としたACP Readiness Scale(ACPRS) 9,国内の一般人を対象としたReadiness for ACP(RACP)Scale 10がある.これらは,ACPを実施するうえで本人の考えや思いを理解する有用な情報となる.先行研究では,ACPに関する話し合いの実施に影響する要因として「介護経験」 11や「死への関心や話し合いの意識の高まり」 12が示唆されているが,ACPの基盤となる話し合いを実行しようとする意思に関する要因について数値化して測定する尺度はない.

Ajzen 13が構築した計画的行動理論は,「態度」,「主観的規範」,「行動コントロール感」によって行動意図を予測する(図1).計画的行動理論を用いたACP実践の関連要因を検討した研究 14では,ACPの行動意図は個人の態度や主観的規範と相関があることが示された.本理論を用いた測定ツールによって,「もしも」のときの医療・ケアの話し合いの行動意図の先行要因を明らかにでき,具体的な介入方法を検討する有用な情報となると考えた.そこで,本研究は行動意図に影響する要因を明らかにするため,「もしも」のときの医療・ケアの話し合い行動意図尺度(以下,話し合い行動意図尺度)を作成し,信頼性および妥当性を検討することを目的とする.

図1 計画的行動理論

方法

研究デザイン

本研究は尺度の信頼性および妥当性を明らかにする横断的研究である.

用語の定義

「もしも」のときとは,「事故や病気などで死が近い時,あるいは自分の意思を誰かに伝えることができなくなった時」と定義し 2,「話し合い」は,「『もしも』のときの医療・ケアについての自分の考えを家族や親しい人に伝え,共有し合うこと」と定義した.また,その行動を実行する意思(意欲)を「行動意図」とした.

話し合い行動意図尺度原案のプロセス

1. アイテムプールの作成

著者らは,行動意図に影響を与える要因の構成概念について先行研究 13,1517で示された内容に加え,話し合い経験に関する住民調査 18の結果を参考に尺度項目を検討した.計画的行動理論は,「行動信念」と「結果評価」によって『態度』が,「規範信念」と「遵守意思」によって大部分の人がその行動を容認するかについての思いである『主観的規範』が,「コントロール信念」と「影響感」によってその行動を実行するかどうかをコントロールできる感覚である『行動コントロール感』が説明される.「行動信念」と「結果評価」は実行により生じると思われる結果ごとに評価され,同様に「規範信念」と「遵守意思」は重要他者ごと,「コントロール信念」と「影響感」は要因ごとに評価されるため対の項目となる.行動意図を全体に評価する項目として全体評価項目を1項目,『態度』,『主観的規範』,『行動コントロール感』の3側面の直接評価項目として4項目作成した.そのうち,『行動コントロール感』は,行動の実行について促進または阻害する要因の有無に関する思い(行動コントロール信念)とそれらの要因の影響の強さへの思い(影響感)によって評価されるため,促進要因と阻害要因の2項目を作成した.次いで,「行動信念」と「結果評価」,「規範信念」と「遵守意思」,「コントロール信念」と「影響感」に関連する項目を間接評価項目とする33項目を作成した.回答は,「とてもそう思う」~「まったくそう思わない」の5件法とした.本尺度では,「医療・ケア」は,どの年代にも理解しやすい「医療や介護」の表現を用いた.

全体評価項目はACPES日本語版 8を参考にし,行動基準(考えたことがなくするつもりもない・考えたことはあるがするつもりがない・するつもりであるが時期は決めていない・30日以内にするつもり・6カ月以内にするつもり)を設けた.ACPES日本語版は自己効力感とレディネスの2要因15項目で評価する5件法で作成され,得点が高いほどACPの準備性が高いことを示す 8

2. 内容的妥当性の検討

終末期医療やケアの専門家(医師1名,緩和ケア認定看護師2名,研究者4名)によるItem-Level Content Validity Index(I-CVI)を実施した.各項目の4段階評価(妥当である,ほぼ妥当である,やや妥当性に欠ける,妥当でない)のうち,「妥当である」および「ほぼ妥当である」の回答割合を算出し,78%未満 19の項目は削除した.各専門家からの意見を検討し,類似項目の除外および統合を行い,37項目を採用した.その後,20~70代の6名に予備テストを実施し,実行可能性の検討,理解度,回答時間を確認し,原案とした.

本調査

1. 調査方法および対象者

調査は2021年10月~11月に実施した.Web調査を専門とするマイボイスコム株式会社に登録済みの20~79歳の成人(各年齢層男女50名ずつ)を対象にWeb調査を実施した(n=860).再現性の確認のため,1週間後に再テストを実施した(n=665).当調査会社を選択した理由は,倫理的配慮を含むすべての書類について対象者がWeb上で閲覧し,同意を得て回答することができたためである.調査地域は,国勢調査の回答者割合とほぼ同等の値 20が期待できる関東地方(1都6県)とした.

2. 調査内容

質問項目は,基本属性(性別,年代,世帯状況),主観的健康観(健康である~健康でない,の4件法),かかりつけ医の有無,「死」を考えた経験,「もしも」のときの医療・ケアについての話し合いの経験(以下,話し合い経験)の有無,代理意思決定者の選定の有無,「もしも」のときの医療・ケアについての書面への記載の有無,話し合い行動意図尺度とし,外的基準はACPES日本語版を開発者の許諾を得て用いた.

3. 分析方法

データは統計ソフト(IBM SPSS Statistics 27.0)に入力し,有意水準は5%とした.使用した尺度の欠損値は全項目にて10未満であったため,中央値を代入した.分析は記述統計量を算出し,天井効果,床効果,Item-Total(I-T)相関分析とした.I-T相関分析では0.3未満の項目は削除した 21.信頼性検討は,項目削除後のクロンバックα係数(以下,α係数),再テスト法による級内相関係数(Intraclass Correlation Coefficients: ICC)と95%信頼区間を算出した.

構成概念妥当性の検討として,間接評価項目の探索的因子分析(最尤法・プロマックス回転)を行った.標本妥当性はKaiser-Meyer-Olkin(KMO)法およびBartlett球面性検定で確認した.因子数は先行研究 13やI-CVIによる検討にて6因子とし,因子負荷量が0.40未満の項目は削除とした.因子分析後に全体および因子ごとのα係数を算出した.直接評価項目を除いた理由として,直接評価項目と間接評価項目との関連が一旦確認できた後は,研修などの介入プログラム等の開発において各因子が目標の明確化に役立つなど,間接評価項目がより重要視されるためである 17

既知集団妥当性の検討は,「もしも」のときの医療・ケアにおける話し合い経験の有無(n=859)による本尺度の各因子,直接評価項目および全体評価項目の平均値の比較(t検定,効果量の算出)を行った.効果量(Cohen’s d)の大きさは,小(0.20),中(0.50),大(0.80以上)とした 22.併存妥当性の検討は,ACPES日本語版の合計点および因子別の得点と本尺度の各因子,直接評価項目および全体評価項目との相関係数を算出した.

本尺度の各因子と直接評価項目および全体評価項目との相関係数を算出し,項目間の関連性を確認した.

倫理的配慮

埼玉県立大学倫理委員会の承認を得て実施した(No. 21057).

結果

対象者の特性

対象者の特性を表1に示した.有効回答数は860であり,性別および年代の比率は同値であった(中央値49.5).世帯状況は独居が最も多かった(25.9%).対象者の80%以上は健康状態を「よい」または「まあよい」と回答した.死について考えた経験を持つのは64.9%,かかりつけ医が「あり」と回答したのは43.8%であった.話し合いの経験があるのは29.7%であった.代理意思決定者を決めているのは31.5%であり,自身の意思を書面に記載しているのは8.0%であった.

表1 対象者の特性

ACPES日本語版の平均値は1.84~1.88(SD, 0.78~0.83)であった.

項目分析

各項目の平均値は2.64~4.16(SD, 0.87~0.91)の範囲を示した(表2).行動意図を示す全体評価項目は2.64(SD, 0.87)であった.天井効果により5.0以上の項目と要因間で対となる2項目を削除した(No. 5, 20).床効果では削除対象となる項目は認められなかった.I-T相関は,0.3未満の3項目と対となる2項目を削除した(No. 6, 21, 27, 33, 7).項目分析により,全体評価項目は1項目,直接評価項目は3項目,間接評価項目は26項目を採用した.

表2 話し合い行動意図尺度原案の記述統計量,項目分析および再テスト法による級内相関係数(n=860)
表2 続き

信頼性・妥当性の検討

1. 信頼性の検討

再テスト法(n=665)によるICC(95%信頼区間)は0.54(0.46–0.60)~0.77(0.74–0.81)の範囲を示した.項目削除後のα係数は0.96~0.97を示した.

2. 構成概念妥当性の検討

KMO(0.96),Bartlett球面性検定(p<0.001)を確認後,探索的因子分析を行った.1回目の因子分析にて因子負荷量が基準値に満たない項目と対となる項目を削除し(No. 22, 28),最終的に6因子24項目の尺度とした(表3).因子名は([ ]で示す)計画的行動理論の因子を参照し,[結果評価],[影響感],[コントロール信念],[遵守意思],[規範信念],[行動信念]と命名した.尺度全体のα係数は0.96,各因子では0.83~0.94であった.因子間相関は0.49~0.81,共通性は0.43~0.83の範囲であり,累積寄与率は77.3%であった.

表3 話し合い行動意図尺度の探索的因子分析(n=860)

既知集団妥当性の検討では,話し合い経験あり群(n=255)の本尺度の各因子,直接評価項目および全体評価項目は,3.09~4.35(SD, 0.74~0.97)であり,経験なし群(n=604)と比較してすべての項目にて高値であった(効果量,0.27~0.77)(付録表1).

3. 併存妥当性の検討

ACPES日本語版の合計点と本尺度の各因子,直接評価項目および全体評価項目との相関係数は0.21~0.44の範囲を示した(表4).「レディネス」と本尺度の相関係数は0.17~0.36,「自己効力感」と本尺度の相関係数は0.21~0.42であり,いずれも有意な正の相関を示した.

表4 ACPES 日本語版の合計点および因子別得点と話し合い行動意図尺度との関連(n=860)

4. 各因子と直接評価項目および全体評価項目の相関係数

本尺度の各因子と直接評価項目の相関係数は,[行動信念]および[結果評価]と『態度』は0.73~0.66,[規範信念]および[遵守意思]と『主観的規範』は0.56~0.44,[コントロール信念]および[影響感]と『行動コントロール感』は0.56~0.55であった.各因子と全体評価項目の相関係数は0.29~0.42であり,有意な正の相関を示した.

考察

研究対象者の特徴

対象者の多くは健康状態がよく,「死」について考えた経験があると回答した者は60%を超えていた.その一方で,話し合いの経験,代理意思決定者の選定や書面の記載など意思表明に関する項目の割合は40%に満たず,厚生労働省の国民調査の結果 23や高齢者を対象とした先行研究 24の結果と同様の傾向を示した.これらは,全体評価項目の平均値が他項目よりも低値であること,さらに,ACPES日本語版の平均値が65歳以上の高齢者を対象とした先行研究 8の結果より低値を示したことにも関連すると考える.本研究の対象者は,「死」についての関心や考える経験を有していても,死への切迫感や意思表明に関する準備性がないため,話し合いの行動の時期や相手を明確に決められないことが背景にあると推察される.

信頼性および妥当性

1. 信頼性

ICCの結果では3項目が0.50~0.60とやや低い値を示したものの,項目削除後のα係数,因子分析後の尺度全体および因子別のα係数は基準を満たしており 25,概ね内的整合性は保たれていると判断する.

2. 内容的妥当性

終末期医療やケアに精通した臨床家や研究者に対し,I-CVIを用いたことで安定かつ客観性を担保した内容を作成できたと考える.

3. 構成概念妥当性

探索的因子分析における因子数の決定基準として重要な点は,抽出された因子の解釈可能性の確保である 26.本研究では,計画的行動理論を理論枠組みとし,行動意図を六つの側面から測定しており,回転後の得られた結果は解釈可能性を十分支持するものである.

因子分析の結果にて削除した項目(No. 22, 28)は,行動を実行するために必要な要因(必要性の理解)への思いを問う内容であった.これは他の設問と比較して,やや抽象的表現であることが因子負荷量に影響している可能性がある.

探索的因子分析の結果,6因子構造が確認された.[結果評価]は,話し合いの実行がもたらす結果に付随する価値への認識を表しており,話し合いの効果に関する内容と解釈される.自身の思いや考え,医療やケアに対する選好を他者と共有することはACPの目標 1に共通していることから,行動意図に影響を与える項目として妥当であると考える.[影響感]は,ある要因が話し合いの実行を容易にするかどうかの思いを測定する.これまでも終末期医療の話し合いの関連要因として,死について深慮する機会や良好な家族機能 27,意識的な家族間コミュニケーション 3が報告されており,行動を促進する要因が生じる可能性があるかどうかについての信念である[コントロール信念]とともに,話し合いの実行の促進に必要な内容の項目で構成されることは行動意図を高める要因として適切であると考える.[遵守意思]は,話し合いの実行に対する重要他者の考えに従おうとする意思であり,その程度が高いほど,ポジティブな主観的規範を持つ.重要他者の意見や考えを自身の意思決定や行動に反映させることは行動に移行させる動機となる.[規範信念]は,重要他者が話し合いをするという行動を支持するかどうかに対する思い(主観)を評価する内容である.国内外の高齢者において,医療に対する自律性と医療従事者,家族の関係は重要と考えられている 28.加えて,本尺度では世の中の動向に従うかどうかに対する信念や動機に関する項目が抽出された(No. 15, 37).本人にとっての重要他者はメディアを含む場合もある 29.医療制度の発展や技術革新,経済状況によって医療を受ける環境も変化することから,世の中の動向に関心を寄せることは意思表明への動機づけとなる.[行動信念]は,話し合いを行うことがポジティブな結果と関連するという思いを測定する.死への準備行動を促進するためには,自身の将来像のイメージの仕方が影響する 30ことから,話し合いの実行がもたらす結果は肯定的な将来へのビジョン形成につながる.

既知集団妥当性の検討では,話し合い経験あり群の平均値は,経験なし群に比較してすべての下位尺度の項目において有意に高い値を示し,効果量は中程度であることから,概ね区別されたと考える.

4. 併存妥当性

ACPES日本語版の二つの因子のうち,本尺度と「自己効力感」は,中程度の相関を示した.自己効力感は自身が実施しようとする行動に対する遂行可能の信念であることから 31,本尺度との併存妥当性は確認されたと考える.しかしながら,「レディネス」との相関は低値を示した.ACPES日本語版に含まれる準備性は,医師と話し合う準備や書類作成への心構えを問う内容を含む 8.一方で,本尺度は行動意図に対する信念や価値,コントロール感といった行動の先行要因を評価する内容であるため,外的基準との差異が生じた可能性があるが,適切な外的基準の選定についても議論を重ねる必要がある.

尺度の汎用性

本尺度は因子ごとの平均値を算出し,その得点が高いほど,行動意図が高いことを示す.加えて,行動の基準を示す全体評価項目の得点との関連性を分析することで,本人にとってどのような信念や動機が重要であるか,いつ頃話し合いをするつもりがあるか理解できるため,行動意図を高める具体的な支援を検討できる.終末期医療の希望に関する情報の伝達は,記録よりも会話を通して行われることが多いことから 32,本尺度はACP支援の教育プログラムの評価に活用することも可能である.

本研究では,間接評価項目と直接評価項目との関連性が確認できたため,直接評価項目の測定は省略可能とする.

研究の限界と今後の課題

本研究の対象者はインターネットを習慣的に使用している者が多く,選択バイアスが生じている可能性がある.また,話し合いの頻度や医療従事者の介入などは考慮していない.今後,各年齢層における分析,異なる健康段階の対象者,地域性,疾患の有無などを考慮した一般化可能性の検討および確証的因子分析を用いたモデルの適合度を検討する必要がある.

最後に,行動は行動意図の影響を受けるが,行動意図があっても行動を起こすことは容易ではなく,その間にギャップが存在する 33.そのため,行動意図と行動の間に介在する要因についても明らかにする必要がある.

結論

本研究は,計画的行動理論を参考にした話し合い行動意図尺度を開発し,その信頼性と妥当性を明らかにした.その結果,信頼性および妥当性は概ね確認された.因子名は,[結果評価],[影響感],[コントロール信念],[遵守意思],[規範信念],[行動信念]と命名した.

謝辞

ご協力を賜りました皆様に深謝いたします.

研究資金

JSPS科研費(課題番号21057)および埼玉県立大学研究開発センターの助成を受け実施した.

利益相反

すべての著者の申告すべき利益相反なし

著者貢献

山口,山岸,會田は研究構想とデザイン,データ収集,分析,解釈,原稿の起草に貢献した.畔上,河村,星野はデータ収集,分析,原稿の起草に貢献した.浅川,佐瀬,島田は研究データ解釈,原稿の重要な批判的推敲に貢献した.すべての著者は投稿論文,出版原稿の最終承認,研究の説明責任に同意した.

References
 
© 2023 日本緩和医療学会
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