【目的】がんサポートグループ企画・運営者向けの研修会の有効性を検証する.【方法】2020~2024年度,全国のがん診療連携拠点病院等の医療者583名が受講し,研修効果を研修前,直後,6カ月後で評価した.主要評価項目は研修全体の評価10項目,副次評価項目はファシリテーションスキル8項目とした.【結果】研修全体の評価は,全項目で有意な改善を認め,「ファシリテーターの役割の理解」(η2p=0.52)および医療者とピアサポーターとの「協働方法の理解」(η2p=0.63)で大きな効果量を得た.一方,6カ月後の効果維持率は平均44.8%であった.ファシリテーションスキルにおいては複数項目で有意な改善を確認した.【結論】本研修は,がんサポートグループの理解やピアサポーターとの協働,ファシリテーションスキルの向上に有効である可能性が示唆された.研修効果を維持するための継続的な支援体制の構築が課題である.
Objective: To evaluate the effectiveness of a training program for cancer support group facilitators. Methods: From 2020 to 2024, 583 healthcare providers from designated cancer care hospitals nationwide participated. Effects were assessed at pre-training, immediately post-training, and 6 months post-training. Primary outcomes included overall training evaluation (10 items); secondary outcomes measured facilitation skills (8 items). Results: All 10 primary outcome items showed statistically significant improvements, with large effect sizes for “understanding of facilitator role” (η2p=0.52) and “understanding of collaboration methods with peer supporters” (η2p=0.63). The average 6-month retention rate was 44.8%. Several facilitation skills demonstrated significant improvements. No significant differences were observed by participation format. Occupational group analysis revealed small but significant differences at 6 months, primarily between medical social workers and other health professionals. Conclusion: This training is effective in improving understanding of cancer support groups, collaboration with peer supporters, and facilitation skills. Establishing continuous support systems to sustain training effects remains a future challenge.
がん患者は診断時から身体的・心理社会的苦痛といった複合的な苦痛に直面する1).厚生労働省が策定した第4期がん対策推進基本計画では「がんと診断された時からの緩和ケア」の重要性が強調され,系統的な苦痛スクリーニングと継続的な支援強化が求められている2).
がん診療連携拠点病院は全国的ながん医療提供体制の中核を担うが,心理社会的支援の提供体制には施設間格差が存在することが指摘されている2).近年の実態調査では,院内ピアサポート活動の実施状況に大きな格差があり,多くの施設で人材育成や運営体制の課題が報告されている3).ピアサポートは,同じ経験を持つ人々が互いに支え合う活動であり,心理社会的支援の基盤として位置づけられる.ピアサポーターは,がん患者が悩みを相談する相手として主治医に次ぐ重要な存在となっており,ピアサポートを受けた患者の9割,家族の8割強が満足している4).また,ピアサポーターは医療者と患者,病院と地域社会を結ぶ「つなぎ機能」を有し,患者のエンパワーメントを促進する重要な役割を担っている4).しかし,ピアサポートの普及とともに質の担保が課題となっている.厚生労働省委託事業で策定されたピアサポーター養成研修テキストでは,ピアサポーターが遵守すべき原則が明記されている5).
がん患者にピアサポートを提供する場としてサポートグループがある.グループの運営はファシリテーターが担っているが,ファシリテーター研修の質の高いエビデンスは国際的に不足している.Delisleらの系統的レビューでは9,757件中1件のランダム化比較試験のみが包含基準を満たし,研修効果の標準化された評価方法が確立されていないことが示された6).一方,Mind Over Matterプログラムでは,集団心理教育として患者の苦痛の軽減や身体症状の改善が報告され7),カナダがん協会の研修ではファシリテーターの自己効力感やファシリテーションスキルの向上が報告されている8).
国内では,厚生労働省によるがん相談員研修9)や医師の緩和ケア研修10)が実施されている.中澤らの研究では,看護師を対象としたがん看護研修企画・指導者研修で中程度の効果量(0.43–0.50)が確認されており11),的場らによるがん診療に携わる医師を対象としたスピリチュアルケア研修では,複数回の研修によって大きな効果量(1.2–1.3)が報告されている12).しかし,これらの既存の研修は個別の専門分野に焦点を当てており,がん患者のサポートグループの企画・運営に特化した実践的側面を体系的に学ぶ機会は限定的である.
日本サイコオンコロジー学会では2020年から厚生労働省委託事業「がん総合相談に携わる者に対する研修事業」の一環として,短期サポートグループワーキンググループ(短期サポートグループWG)が「がんサポートグループ企画・運営者のための研修会」を開発・実施している13).本研究の目的は,5年間の実施データを基づき,研修プログラムの有効性を検証することである.
本研究は「がんサポートグループ企画・運営者のための研修会」の効果を検証する前向き研究である.2020年度から2024年度まで短期サポートグループWGが計9回の研修会を開催し,全国のがん診療連携拠点病院等のがん相談支援に携わる医療者を対象とした.累計受講者583名のうち事前課題である研修前アンケートに回答した569名を有効回答とした.
研修プログラムの内容本研修は体系的な知識の習得と実践的スキルの向上を目指して,講義編と実践編の2部構成で実施された(表1).受講者は事前課題として「がんサポートプログラム企画の手引き」13)を参照し,自施設の役割,課題,サポートグループの評価,自己評価をアンケートで提出した.その評価に基づき著者ら(平井,市原,山田)が,各受講者の目標レベルを設定し,該当レベルの目標達成もしくは,一つ上のレベルを目指して受講するよう通知した(図1).参加形式はオンラインと対面のハイブリッド形式であり,第1・2回は新型コロナウイルス感染症の流行期と重なったためオンラインのみ,第3回以降は受講者がいずれかを選択した.
| 内容 | 形式(オンライン/対面) | 時間 |
|---|---|---|
| 【事前課題】 | ||
| がんサポートプログラム企画の手引きの配布(65頁) | 自己学習 | — |
| がん診療における自施設の役割,課題,自己評価,サポートグループの評価を提出※ | 自己学習 | — |
| 【研修日】 | ||
| 研修の目的,目標の説明 | 講義 | 15分 |
| 講義編 | ||
| 1. がん患者に対する心理社会的支援の必要性 | 講義 | 40分 |
| 2. がんサポートグループの方法論 | 講義 | 25分 |
| 3. がんピアサポートを広く推進するために | 講義 | 30分 |
| 実践編 | ||
| 1. 基本的なファシリテーションのスキル | 講義 | 20分 |
| 2. サポートグループ運営の実際 | 講義と動画視聴 | 25分 |
| 3. ロールプレイ説明(実践動画視聴) | 講義 | 10分 |
| 4. ロールプレイ演習 | グループワーク | 80分 |
| 5. 難しい場面でのファシリテーション(実践動画視聴) | 講義と動画視聴 | 20分 |
| 各施設でのサポートグループの現状と課題・情報共有 | グループワーク | 30分 |
| 質疑応答・まとめ | 講義 | 30分 |
| 合計 | 325分 | |
※提出後,研修開催までに各受講者の目標レベルを通知する

受講者の自施設のサポートグループの評価に基づいた研修の目標レベルであり,各レベルの目標を提示したものである.
講義編では,がん患者に対する心理社会的支援の必要性から,サポートグループの具体的な方法論,そしてピアサポートの推進に至るまで,幅広いテーマが網羅された.1. がん患者に対する心理社会的支援の必要性,2. がんサポートグループの方法論(サポートグループの目的,開催形態,基本的なファシリテーションのスキル),3. がんピアサポートを広く推進するために(ピアサポートの利点,サポートグループにおけるピアサポーターの役割,わが国におけるピアサポートの現状と展望)について学習した.
実践編は,講義で得た知識を基に,実際のサポートグループ運営に活かすための演習と情報交換に重点が置かれた.1.基本的なファシリテーションのスキル,2.サポートグループ運営の実際(準備・開始・やり取り・終える・振り返り),3.ロールプレイ説明(実践動画視聴),4.ロールプレイ演習(1セッション10分間:役作り2分,実施5分,振り返り3分を複数回実施),5.難しい場面でのファシリテーション(実践動画視聴)を実践し,グループワークにより自施設の現状と課題を共有した.
講義および実践編の講師(古谷,福井,松向寺,吉田,齋藤),全体統括(平井),受付など事務作業(坂井),グループワークのファシリテーターは著者らが担当した.
評価項目と測定方法評価項目は,がんサポートグループや医療者の実践教育に関する専門書や総説・研究論文を参照し14–18),知識・技術・態度の3領域を基に著者らが独自に作成した.
主要評価項目は,受講者による研修全体の評価であり,サポートグループの理解,運営意欲,自己効力感の3領域,計10項目について5段階リッカート尺度([1:まったくそう思わない]から[5:非常にそう思う])で評価した.具体的には,(1)理解領域5項目:サポートグループの必要性と効果,ファシリテーターの役割,ピアサポーター参加の重要性と協働方法,(2)運営意欲領域4項目:サポートグループの積極的な運営,ピアサポーターとの積極的な協働,自施設の課題改善と他部門への活動の発信,(3)自己効力感領域1項目:運営に対する自信である.測定は,研修前,研修直後,研修6カ月後の3時点で実施した.
副次的評価項目は,ファシリテーションスキルであり,進行技術,参加者への対応,安全な場づくり等,計8項目を5段階リッカート尺度で研修直後と研修6カ月後の2時点で評価した.
統計解析受講者の目標レベル設定には階層的クラスター分析(Ward法)を用いた.クラスター数はデンドログラムの結合距離の急増箇所を基準とし,3クラスターが最も解釈可能かつ目標レベルと整合的であると判断した.研修全体の効果検証には繰り返しのある分散分析を用い,効果量は偏イータ二乗(η2p)で算出し,小効果(0.01–0.06),中効果(0.06–0.14),大効果(>0.14)として評価した19).効果維持率は(研修6カ月後得点−研修前得点)÷(研修直後得点−研修前得点)×100で算出し,研修6カ月後の知識や行動変容の持続度を示す指標とした.ファシリテーションスキルは対応のあるt検定を実施し,効果量はCohen’s dで算出した.参加形式別の比較には対応のないt検定,職種別の比較(看護師・保健師,医療ソーシャルワーカー(MSW),その他の職種)には分散分析およびTukey HSD多重比較(効果量η2)を用いた.統計解析はIBM SPSS version 28.0(IBM, Armonk, NY, USA)を用い,有意水準はp<0.05とした.
倫理的配慮本研究は大阪大学大学院教育学系倫理審査委員会の承認を得て実施した(承認番号:21059).
研修前アンケートに回答した569名の職種は,看護師・保健師が最も多く309名(54.3%),次いでMSW 188名(33.0%),公認心理師・臨床心理士43名(7.6%),医師15名(2.6%)であった.所属部署はがん相談支援センター185名(32.5%),地域連携・総合患者相談支援センター145名(25.5%)が多数を占めた.臨床経験年数は平均19.2年(SD=10.0),がん相談経験年数は平均6.1年(SD=6.1),ファシリテーター経験を有する者は243名(42.7%)であった.参加形式はオンラインでの参加が519名(91.2%)と大多数を占めた(表2).
| n | % | ||
|---|---|---|---|
| 経験年数 | 臨床経験年数 平均(標準偏差) | 19.2 | (10.0) |
| がん相談経験 平均(標準偏差) | 6.1 | (6.1) | |
| 職種 | 看護師・保健師 ※うち専門・認定看護師163名を含む | 309 | 54.3 |
| 医療ソーシャルワーカー | 188 | 33.0 | |
| 公認心理師・臨床心理士 | 43 | 7.6 | |
| 医師 | 15 | 2.6 | |
| がん体験者 | 4 | 0.7 | |
| 事務職 | 3 | 0.5 | |
| その他 | 4 | 0.7 | |
| 無回答 | 3 | 0.5 | |
| サポートグループのファシリテーター経験 | あり | 243 | 42.7 |
| なし | 324 | 56.9 | |
| 無回答 | 2 | 0.4 | |
| サポートグループの目標レベル | I | 288 | 50.6 |
| II | 219 | 38.5 | |
| III | 62 | 10.9 | |
| 所属施設 | 国指定の都道府県/地域がん診療連携拠点病院,地域がん診療病院等 | 420 | 74.1 |
| 都道府県指定のがん診療拠点病院 | 104 | 18.3 | |
| 地域統括相談支援センター | 18 | 3.2 | |
| 一般病院,クリニック | 15 | 2.6 | |
| その他 | 13 | 2.3 | |
| 所属部署 | がん相談支援センター | 185 | 32.5 |
| 地域連携・総合患者相談支援センター | 145 | 25.5 | |
| 看護部 | 51 | 9.0 | |
| 病棟・外来(化学療法センター含む) | 39 | 6.9 | |
| 医療社会事業課 | 32 | 5.6 | |
| がん診療センター | 27 | 4.7 | |
| 緩和ケアセンター | 21 | 3.7 | |
| 精神科・心療内科・心理室 | 15 | 2.6 | |
| 行政・地域統括がん相談支援センター | 15 | 2.6 | |
| 診療科(精神科・心療内科以外) | 4 | 0.7 | |
| 訪問看護ステーション | 4 | 0.7 | |
| その他 | 15 | 2.6 | |
| 無回答 | 16 | 2.8 | |
| がん相談支援センターにおける配置 | 専従 | 198 | 34.8 |
| 専任 | 130 | 22.8 | |
| 兼任 | 127 | 22.3 | |
| 担当でない | 87 | 15.3 | |
| その他 | 27 | 4.7 | |
| 参加形式 | オンライン | 519 | 91.2 |
| 対面 | 50 | 8.8 |
階層的クラスター分析により,レベルI(初心者:基本的なファシリテーションスキルの獲得,ピアサポーター未導入群)288名(50.6%),レベルII(中級者:ファシリテーターのレベルアップ,多様なニーズへの対応課題群)219名(38.5%),レベルIII(上級者:リーダーシップの発揮課題群)62名(10.9%)に分類された.開催回数を前半期(1~3回目)と中半期(4~6回目),後半期(7~9回目)で比較すると,レベルIの割合は前半期47.1%から中半期49.7%,後半期では57.6%へ増加,レベルIIIは13.9%から12.8%,さらに3.5%へ減少し,有意な分布の変化が認められた(χ2(4)=11.96,p=0.018,Cramér’s V=0.10).
研修効果の検証 1. 研修全体の評価研修前,研修直後,研修6カ月後のいずれかの時点で未回答または欠測値があった166名を除外した403名を分析した結果(研修6カ月後の回答率:403/569名,70.8%),すべての項目で有意な時間効果を認めた(すべてp<0.001;表3).医療者とピアサポーターとの「協働方法の理解」(研修前2.89→研修直後4.11→研修6カ月後3.68,η2p=0.63)で最大の効果を示し,「ファシリテーターの役割の理解」(3.31→4.47→4.05,η2p=0.52)においても大きな効果を示した.その他,サポートグループの「効果の理解」(3.72→4.50→4.17,η2p=0.33),「運営に対する自信」(2.30→3.32→2.94,η2p=0.37),「ピアサポーターの重要性の理解」(3.88→4.54→4.22,η2p=0.26),「積極的な運営意欲」(3.78→4.25→3.91,η2p=0.16),ピアサポーターとの「積極的な協働意欲」(3.75→4.24→3.90,η2p=0.27)においても大きな効果を示した.
| 研修全体の評価(n=403) | 研修前 | 研修直後 | 研修6カ月後 | F値 | (df) | p | ES | |||
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| mean (SD, 95% CI) | mean (SD, 95% CI) | mean (SD, 95% CI) | ANOVA | η2p | ||||||
| サポートグループの必要性を理解している(必要性の理解) | 3.97 | (0.80, 3.89–4.05) | 4.57 | (0.55, 4.52–4.62) | 4.28 | (0.65, 4.22–4.34) | 129.38 | (2, 768) | <0.001 | 0.24 |
| サポートグループの効果を理解している(効果の理解) | 3.72 | (0.80, 3.64–3.80) | 4.50 | (0.58, 4.44–4.56) | 4.17 | (0.68, 4.10–4.24) | 200.14 | (2, 769) | <0.001 | 0.33 |
| ファシリテーターの役割を理解している(ファシリテーターの役割の理解) | 3.31 | (0.81, 3.23–3.39) | 4.47 | (0.56, 4.42–4.52) | 4.05 | (0.66, 3.99–4.11) | 440.49 | (2, 737) | <0.001 | 0.52 |
| ピアサポーターが参加することの重要性を理解している(ピアサポーターの重要性の理解) | 3.88 | (0.83, 3.80–3.96) | 4.54 | (0.53, 4.49–4.59) | 4.22 | (0.64, 4.16–4.28) | 143.84 | (2, 743) | <0.001 | 0.26 |
| サポートグループの運営に積極的に関わりたい(積極的な運営意欲) | 3.78 | (0.81, 3.70–3.86) | 4.25 | (0.69, 4.18–4.32) | 3.91 | (0.79, 3.83–3.99) | 77.22 | (2, 804) | <0.001 | 0.16 |
| 医療者とピアサポーターと協働する方法について理解している(協働方法の理解) | 2.89 | (0.90, 2.80–2.98) | 4.11 | (0.71, 4.04–4.18) | 3.68 | (0.77, 3.60–3.76) | 377.38 | (2, 756) | <0.001 | 0.63 |
| 自施設でピアサポーターと積極的に協働したいと思う(積極的な協働意欲) | 3.75 | (0.83, 3.67–3.83) | 4.24 | (0.67, 4.17–4.31) | 3.90 | (0.80, 3.82–3.98) | 73.99 | (2, 804) | <0.001 | 0.27 |
| 自施設のサポートグループの課題改善のために取り組みたい(課題への改善意欲) | 3.96 | (0.79, 3.88–4.04) | 4.30 | (0.68, 4.23–4.37) | 3.96 | (0.76, 3.89–4.03) | 51.11 | (2, 790) | <0.001 | 0.11 |
| 自施設の他部門との連携のためにサポートグループ活動を発信したい(活動の発信意欲) | 3.67 | (0.87, 3.59–3.75) | 4.15 | (0.73, 4.08–4.22) | 3.80 | (0.80, 3.72–3.88) | 61.59 | (2, 778) | <0.001 | 0.25 |
| サポートグループを自信を持って運営できる(運営に対する自信) | 2.30 | (0.90, 2.21–2.39) | 3.32 | (0.76, 3.25–3.39) | 2.94 | (0.89, 2.85–3.03) | 234.74 | (2, 788) | <0.001 | 0.37 |
| ファシリテーションスキル(n=405) | 研修直後 | 研修6カ月後 | t値 | (df) | p | ES | ||||
| mean (SD, 95% CI) | mean (SD, 95% CI) | t-Test | d | |||||||
| 話し合いの目的や方法を参加者に説明できると思う(目的や方法の理解) | 3.44 | (0.89, 3.35–3.53) | 3.37 | (0.73, 3.29–3.45) | 1.42 | (404) | 0.157 | 0.07 | ||
| その日の話し合いを時間通りに進行できると思う(時間通りの進行) | 3.44 | (0.81, 3.35–3.53) | 3.72 | (0.73, 3.64–3.80) | −5.94 | (404) | <0.001 | 0.29 | ||
| 参加者の健康状態に配慮できると思う(健康状態への配慮) | 3.64 | (0.95, 3.55–3.73) | 3.80 | (0.71, 3.72–3.88) | −3.02 | (404) | 0.003 | 0.15 | ||
| 発言の意図や真意を汲み取り共感的に理解できる(発言に対する共感と理解) | 3.54 | (0.86, 3.45–3.63) | 3.67 | (0.69, 3.59–3.75) | −2.57 | (404) | 0.011 | 0.13 | ||
| 参加者の体験を引き出すことができると思う(体験の引き出し) | 3.40 | (0.80, 3.31–3.49) | 3.86 | (0.71, 3.78–3.94) | −9.70 | (404) | <0.001 | 0.48 | ||
| 話し合いに巻き込まれたり感情的になることなく.自分の役割を行うことができると思う(役割遂行) | 3.41 | (0.84, 3.32–3.50) | 3.58 | (0.76, 3.50–3.66) | −3.39 | (404) | <0.001 | 0.17 | ||
| 話しが長い人への対応,沈黙の扱い方,途中退席者がいた場合などの対応方法を理解できる(困難場面への対応) | 3.41 | (0.86, 3.32–3.50) | 3.47 | (0.79, 3.39–3.55) | −1.11 | (404) | 0.267 | 0.06 | ||
| 参加者が発言できるよう気配りし言葉をかけられると思う(発言できるような気配り) | 3.58 | (0.88, 3.49–3.67) | 3.71 | (0.72, 3.63–3.79) | −2.59 | (404) | 0.010 | 0.13 | ||
mean(SD, 95% CI),平均(標準偏差,95%信頼区間);df,自由度;ES,効果量;ANOVA,分散分析
研修6カ月後の効果維持率は全体平均44.8%であった.医療者とピアサポーターとの「協働方法の理解」(64.8%)と「ファシリテーターの役割の理解」(63.8%)が高い維持率を示した一方,自施設の「課題への改善意欲」は0%とほぼ効果が消失していた.
2. ファシリテーションスキルファシリテーションスキル8項目について405名のデータを分析した結果,多くの項目で有意な改善が認められた.とくに「体験の引き出し」(研修前3.40→研修直後3.86,d=0.48)で大きな効果量を示し,「時間通りの進行」(3.44→3.72,d=0.29),「役割遂行」(3.41→3.58,d=0.17),「健康状態への配慮」(3.64→3.80,d=0.15)も有意に改善した(表3).
3. 受講者の特性による研修効果の分析研修全体のすべての評価項目において目標レベル(群)の主効果が有意であり(p<0.001,η2p=0.04–0.13),10項目中6項目で時間×目標レベルの交互作用が認められた.具体的には,サポートグループの「必要性の理解」(F(4,770)=5.46,p<0.001,η2p=0.03),「効果の理解」(F(4,769)=3.24,p=0.013,η2p=0.02),「ファシリテーターの役割の理解」(F(4,733)=2.76,p=0.031,η2p=0.01),「ピアサポーターの重要性の理解」(F(4,748)=3.75,p<0.001,η2p=0.037),「協働方法の理解」(F(4,756)=2.70,p=0.006, η2p=0.018),「活動の発信意欲」(F(4,777)=2.70,p=0.031,η2p=0.013)において交互作用が認められた.交互作用のパターンを検討したところ,研修全体の評価の多くの項目で研修直後にピークを示し,6カ月後で低下する逆U字型の変化を示した.この変化パターンは群間で異なり,レベルII(中級者群)が最も大きな改善幅を示し,レベルIII(上級者群)は天井効果により変化量が小さく,レベルI(初心者群)は改善が限定的であった.なお,交互作用の効果量は小~中程度(η2p=0.01–0.04)であったが,これは3群すべてが改善方向に変化し,その変化の程度の差として交互作用が現れたためと考えられる.
参加形式の比較では(オンラインn=365,対面n=38),主要評価項目のすべての時点において有意差は認められなかった(すべてp>0.05).職種別の分析では(看護師・保健師n=221,MSW n=126,その他n=56),研修前および研修直後においては3群間に有意差は認められなかった(すべてp>0.05).ただし,研修6カ月後においてはサポートグループの「必要性の理解」や「ファシリテーターの役割の理解」「積極的な運営意欲」を含む6項目で有意差があり(F(2,400)=3.16–3.88,p=0.021–0.044,η2=0.016–0.019),MSWがその他の職種よりも6カ月後の評価が有意に低い傾向を示した(Hedges’ g=0.38–0.43).なお,変化量(研修直後−研修前)の職種間比較ではすべての項目で有意差は認められず,研修による即時的な効果は職種によらず均一であった.
本研究では5年間で全国583名のがん診療連携拠点病院等のがん相談支援に携わる医療者が,がんサポートグループ企画・運営者向けの研修会に受講し,がん患者と家族の心理社会的支援の質向上に寄与したことが示された.研修ではサポートグループの理解や医療者とピアサポーターとの協働方法,実践的なファシリテーションスキルにおいて教育的効果を示し,研修プログラムの有効性が統計学的に確認された.
本研究で得られた効果量は先行研究と比較して高い水準を示している.中澤らの研修効果検証では中程度の効果が報告されているが11),本研究では医療者とピアサポーターとの「協働方法の理解」(η2p=0.63),「ファシリテーターの役割の理解」(η2p=0.52),という大きな効果量を得た.これらは的場らの医師対象の専門研修12)と同等の効果が,看護師やMSW,心理職など多職種で実現されたことを示し,汎用性の高いプログラムとしての価値が示唆される.国際的なレビューで質の高いエビデンスが不足する中6),403名の大規模サンプルでの3時点測定は本分野に貴重なエビデンスを提供するものである.さらに,本研修で医療者とピアサポーターとの「協働方法の理解」において大きな効果量が得られたことは重要な成果であると考える.先行研究でピアサポートの質の担保や役割の明確化が課題として指摘されているが3, 4),医療者とピアサポーターが協働する相互支援プログラムでは,患者の自己効力感が高まり,治療生活によりよく適応しquality of life(QOL)を維持向上することが認められている19).ピアサポーターとの協働体制の構築はピアサポーターの「つなぎ機能」をより強化し4),患者への包括的支援の提供において不可欠である.一方,研修6カ月後の効果維持率は平均44.8%であった.医療者とピアサポーターとの「協働方法の理解」(64.8%)と「ファシリテーターの役割の理解」(63.8%)は比較的良好な維持率を示したが,「課題への改善意欲」はほぼ消失した(0%).これは,専門知識や技術は比較的持続されたものの,現場の課題に取り組むための動機づけが低下した可能性を示す.Kirkpatrickの教育評価モデル20)に照らすと,本研修は「反応」「学習」「行動」の各段階で一定の効果が示された一方,行動変容の維持には課題があることが示唆された.動機づけを維持するには,研修後の実践機会の提供や継続的なフォローアップ,ならびに組織的な支援体制の構築の重要性が示された.
本研修の高い効果は,その設計の特徴に起因すると考えられる.研修全体の高い評価やファシリテーションスキルの向上は,講義だけでなく動画視聴やロールプレイ演習,グループワークを組み合わせた多面的なアプローチにより,知識の習得から実践的スキルの体験まで幅広い学習機会の提供により達成された.さらに,医療者とピアサポーターの協働に焦点を当てたことで,従来のがん患者の心理社会的支援に関する研修では十分に扱われていなかった課題に対応した.これは,本研修が単なる理論的知識の習得にとどまらず,がんサポートグループの企画・運営において直面する具体的な課題解決能力の向上を目指した設計の成果と考えられる.
受講者の特性として目標レベル分類でレベルI(初心者)が50.6%を占めた結果は,多くの医療者がサポートグループ運営において基礎的支援を必要としていることを示している.目標レベル別の効果分析では,レベルII(中級者群)が最も大きな改善幅を示した.これは基礎的な知識を有しながらも実践経験が限定的な中級者に本研修の内容が最も適合していたことを示唆している.レベルIII(上級者群)は天井効果により変化量が小さく,レベルI(初心者群)では基礎的な知識・スキルの習得段階にあるため床効果が生じた可能性があり,改善が限定的であったと考えられる.今後は目標レベルに応じたモジュール型研修の開発が望まれる.また,参加形式による効果の差は認められず,本研修はオンライン形式でも対面形式と同等の効果を示すことが確認された.これはプログラムのアクセシビリティを担保する重要な根拠となる.さらに職種別分析では,研修直後の即時効果は職種間で均一であったが,研修6カ月後にはMSWとその他の職種との間に小さな差が認められた.MSWの実践環境においてサポートグループ運営の機会が少ない可能性や,組織的支援の差異が影響していると考えられる.職種特性に応じた継続支援の検討が今後の課題である.
本研究にはいくつかの限界がある.第1に単群前後比較デザインであり,対照群を設けたランダム化比較試験ではない.研修効果をより厳密に検証するためには,対照群を設けた研究デザインが必要である.第2に研修効果は受講者対象のアンケートによる自己評価指標であることから社会的望ましさバイアスが生じる可能性がある.また,客観的評価や患者アウトカムとの関連については検証されていない.今後は,ファシリテーション場面の観察評価や,受講者が運営するサポートグループの参加者満足度,QOL改善効果なども検討する必要がある.第3に研修6カ月後の追跡調査において未回答者が存在したことから,回答者はより意欲の高い受講者であった可能性があり,効果が過大評価されている可能性がある.今後は未受講施設への研修機会拡大と,研修効果を維持するためのフォローアップ研修や症例検討会などの継続的支援体制の構築が重要課題である.
厚生労働省委託事業における「がんサポートグループ企画・運営者のための研修会」は,サポートグループへの理解と医療者とピアサポーターとの協働方法,ならびにファシリテーションスキルの向上に有効である可能性が示唆された.一方,長期的な研修効果を維持するための継続的な教育支援体制を構築することの必要性が明らかになった.今後は,未受講施設への研修参加の機会拡大とともに,患者アウトカムへの影響を検証することが重要課題である.
本研究にご協力いただいた全国のがん診療連携拠点病院等の医療者の皆様に深謝いたします.また,厚生労働省委託事業の企画・運営にご尽力いただいた短期サポートグループWGの関係者の皆様に心より感謝申し上げます.
本研究は厚生労働省委託事業「がん総合相談に携わる者に対する研修事業」の一環として実施された.
平井啓:CoBe-Tech株式会社取締役(役員報酬有,株式22%保有)
その他:該当なし
平井は研究の構想・デザイン・データ収集・解析・原稿起草に貢献;市原,山田,古谷,福井,松向寺,吉田,齋藤は研修プログラムの開発・データ収集・批判的推敲に貢献;坂井は厚生労働省委託事業担当として企画・運営・研究構想・データ解釈・批判的推敲に貢献した.全著者は最終承認および研究の説明責任に同意した.