Palliative Care Research
Online ISSN : 1880-5302
ISSN-L : 1880-5302
原著
在宅終末期ケアを担う診療同行看護師の役割と実践—終末期患者と慢性期患者の比較—
奥岡 由美 本田 日奈子古山 悦子清水 伸一澁谷 春美日下 勝博
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2026 年 21 巻 3 号 p. 181-187

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Abstract

【目的】在宅終末期ケアを担う同行看護師が実践する役割の実態を明らかにするため,終末期・慢性期患者および家族への関わりを比較検討した.【方法】機能強化型在宅支援診療所の同行看護師10名を対象に,診療場面/診療以外の場面での看護実践を複数回答可の自記式で調査した.その内容をχ2検定により終末期・慢性期の群間比較でその差を分析した.【結果】調査期間中患者286名(終末期61名,慢性期225名)に対し実践1533件であった.群間比較の結果,終末期の診療場面では「医材・薬剤の準備」「意思決定支援」「診療時の多職種連携・マネジメント」,診療以外の場面では新規患者の「相談」に有意差がみられた.【結論】同行看護師は,とくに終末期患者の訪問診療場面において関わりの特徴があり,医師と患者・家族の間に立って意思決定支援を行い,多職種マネジメントで継続支援,療養環境作り等を担う重要な存在であることが示唆された.

Translated Abstract

Objective: This study aimed to elucidate the roles and actual practices of accompanying nurses engaged in home-based end-of-life care by comparing their involvement with terminally ill and chronically ill patients and their families. Methods: A self-administered questionnaire allowing multiple responses was administered to 10 accompanying nurses working at enhanced-function home care support clinics. Nursing practices were investigated in both consultation settings (during physician home visits) and non-consultation settings. The data were analyzed using the chi-square (χ2) test to compare differences between the terminal and chronic patient groups. Results: During the study period, 1,533 nursing practices were recorded for 286 patients (61terminally ill and 225 chronically ill). Group comparisons revealed significant differences in the terminal group during consultation settings in “preparation of medical equipment and medications,” “decision-making support,” and “interprofessional collaboration and care management during consultations.” In non-consultation settings, a significant difference was observed in “consultations” for newly referred patients. Conclusion: The findings suggest that accompanying nurses have distinctive roles, particularly in home visits for terminally ill patients. They facilitate decision-making by mediating between physicians and patients/families, coordinate interprofessional care management to ensure continuity of care, and contribute to the establishment of a supportive home care environment. These results underscore the critical role of accompanying nurses in home-based end-of-life care.

緒言

近年,超高齢社会の進行に伴い,住み慣れた自宅での看取りを希望する人が増加しており 1,在宅終末期ケアの重要性が高まっている.在宅終末期ケアを担う看護師には訪問看護ステーションなどに在籍する訪問看護師だけではなく,在宅療養支援診療所などの医療機関に在籍し訪問診療に同行する看護師(以下,同行看護師)という存在もある.奥岡らは在宅終末期ケアを担う同行看護師の役割について九つの分類項目を明らかにした 2.その中で,同行看護師は患者と家族支援,さらには患者・家族を取り巻く医師を含めた多職種支援などさまざまな場面で重要な役割を担っていることを示し,同行看護師が終末期患者の訪問診療に携わる意義に関して言及した.

一方,在宅医療の対象は終末期患者に限らず,慢性疾患を抱え長期に療養を続ける患者も含まれる.在宅療養支援診療所で働く看護職の実態および認識調査では,診察介助や採血・バイタルサイン測定などの診療補助業務,症状観察・アセスメント,相談支援,カンファレンスなどを挙げ,連携,患者・家族の支援,患者・家族の代弁,診療の補助など,多職種連携や患者・家族支援への意識の高さが伺える結果が示されている 3.しかし,訪問診療の提供スタイルは各医療機関によって異なり,医師単独や,医師と事務職など,必ずしも同行看護師とともに訪問するという形を取っていない.北海道保健福祉部地域医療推進局地域医療課が実施した調査(2017年)では,看護師が訪問診療に同行する割合について「すべて同行する」という診療所は約50%であったと報告されていた.しかし,その後全国的な調査結果は公表されておらず,現況についての把握が行われることが期待される.

このように,同行看護師は訪問診療において診療補助業務だけではなく,看護師の視点を持って観察・アセスメントを行い,患者・家族支援,多職種連携を実践する役割等に関して認識しているが,その実態に関する定量的なデータは乏しいのが現状である.また,訪問診療に看護師が同行する体制は必須ではなく,実際に看護師が訪問診療に同席せず訪問診療が成立する背景には,提供する医療の内容や対象とする患者層(終末期または慢性期など)の違いも考えられる.慢性期患者に比べ終末期患者は身体的・精神的変化を来たしやすいが,それぞれに対する関わりの実態や役割の実践に違いがあるのかは明らかになっていない.各病期において,同行看護師がどのように役割を使い分け,支援を行っているかを明らかにすることは,限られた医療資源の中で効果的な訪問診療体制を構築するための基礎資料となりうる可能性がある.

さらには,同行看護師の役割は患家での訪問診療場面における患者や家族に対する直接的な関わりだけではなく,患家以外の場,診療所の中での連携・調整業務や訪問診療を円滑に進めるための準備等の業務も多く担っている.そのため,同行看護師による関わりの実態には,患者・家族への対面での支援を示す訪問診療場面に加え,非対面での支援を示す診療場面以外における役割も含めることで,より同行看護師の関わりの実践を明らかにすることができると考える.

そこで,同行看護師が終末期患者および慢性期患者,それぞれの家族に対し実践する関わりや役割の実態を訪問診療場面と診療以外の場面に分けて調査し比較することで,在宅終末期ケアを担う同行看護師という職種特性を背景とした関わりの特徴について検討することとした.

方法

研究デザイン

調査用紙を用いた横断的観察研究(複数回答可の自記式記録調査).

研究対象者

機能強化型在宅支援診療所であるA診療所の在宅看取り実績は年間150件以上で,終末期の訪問診療に注力し,診療には同行看護師が関与している.A診療所に勤務する同行看護師10名を対象とした.

データ収集方法

2024年3月18日~4月19日の期間に調査用紙を用い調査した.調査は患家(施設は除く)へ医師とともに訪問した訪問診療場面と診療以外の場で電話・FAX・メール・対面などで関わった診療以外の場面に分けて行った.調査項目は奥岡らが既存報告にて明らかにした在宅終末期ケアを担う同行看護師の役割9テーマ【診療補助】【医師との連携】【医師の説明に対する理解の促進】【意思決定支援】【患者・家族への直接的ケア】【診療におけるサポーティブな環境作り】【全人的な視点で情報収集・アセスメント】【多職種とのコーディネーション】【多職種に対する終末期・緩和ケア教育】 2を参考に,訪問診療の場面では,1.「侵襲的な処置の介助(医師単独では困難な処置)」,2.「医材・薬剤の準備」,3.「医師の説明に対する理解の促進,補足説明」,4.「意思決定支援」,5.「患者ケア・患者指導」,6.「家族ケア・家族指導」,7.「情報提供」,8.「サポーティブな環境作り」,9.「診療時の多職種連携・多職種マネジメント」,「その他」という項目とし,診療以外の場面では,A.「情報共有」,B.「相談」,C.「(相談に対する)助言」,D.「ディスカッション,カンファレンスの実施」,E.「調整・マネジメント」,F.「連絡」,G.「指導・教育」,「その他」という項目とした.該当する関わりや看護実践を同行看護師自身の実施判断のもと,1行為に1チェックとして,調査期間中は1日ごとに当日の診療場面と診療以外の場面を振り返って,適時迅速に調査用紙に記載し回収した.訪問診療時に該当する看護実践がなかった場合は何もチェックをつけず調査用紙のみ回収とし,訪問した患者数を集計した.なお,本研究は量的研究として,行った行為の重要性や深度は問うていないため,例えば複雑な意思決定支援などが行われた場合でも1チェックとしてカウントが行われている.

本研究における終末期患者とは,がん疾患や老衰過程にあり医師が予後6カ月以内と診立てている者,または,医師から「いつ何が起きてもおかしくない」と家族へ説明されている者とし,それ以外の予後を規定する因子が特定されていない病状にある者は慢性期患者とした.ただし,慢性期患者のうち調査期間内に急変し死亡に至った1名と居住場所が在宅から施設へ変更した1名は集計から除外した.

分析方法

訪問診療場面および診療以外の場面における同行看護師の関わりについて,終末期患者群と慢性期患者群の2群間で各項目の実施頻度を比較した.また,相談内容の内訳についても同様に群間比較を行った.同行看護師の各実践項目(名義尺度:あり/なし)と,患者の病期(名義尺度:終末期/慢性期)の2変数間の関連を検討するために,独立性の検定として統計解析はχ2検定を用い,P値<0.05を統計的有意差ありと判定した.

倫理的配慮

本研究は社会医療法人関愛会江別訪問診療所の倫理委員会の承認を得た(承認日:2024年3月11日,認証番号:EH-02).研究対象の同行看護師には事前に研究内容を個別に説明し,同意文書に署名を得た.

結果

対象同行看護師は10名で平均年齢47.7(範囲36–60,中央値45.5)歳,平均同行看護師経験3.7(1–8)年,うち3名は緩和ケア認定看護師であった.調査期間中に同行看護師が関わった患者は286名で平均年齢83.0(範囲25–106,中央値86)歳(表1),その内訳は終末期61名,慢性期225名であった(表2).調査期間中に同行看護師が患者とその家族,または関係職種に行った関わりや看護実践の総数は1533件で,訪問診療場面では550件でその内訳は終末期195件(12.7%),慢性期355件(23.2%),診療以外の場面では983件で内訳は終末期557件(36.3%),慢性期426件(27.8%)であった(表2).

表1 同行看護師と患者の背景

平均年齢(歳) 
(最小値–最大値・中央値)
同行看護師経験年数(年) 
(最小値–最大値・中央値)
備考
同行看護師 47.7 
(36–60・45.5)
3.7 
(1–8・3)
うち3名は緩和ケア認定看護師
患者 83.0 
(25–106・86)

表2 同行看護師が関わった患者数と看護実践件数

関わった患者数 看護実践件数
n=286人(%) n=1533件(%)
終末期 61(21.3) 診療場面 195(12.7)
診療以外の場面 557(36.3)
慢性期 225(78.7) 診療場面 355(23.2)
診療以外の場面 426(27.8)

訪問診療場面における同行看護師の関わりや看護実践は,終末期・慢性期を問わず8.「サポーティブな環境作り」が約30%と最多であった.終末期では,2.「医材,薬剤の準備」:終末期(16.9%)が慢性期(7.3%)に,4.「意思決定支援」:終末期(9.7%)が慢性期(4.2%)に,9.「診療時の多職種連携・多職種マネジメント」:終末期(9.2%)が慢性期(4.5%)に比べ有意に多かった(表3).

表3 診療場面での同行看護師の関わり

n=550 終末期 慢性期 P値
n=195 (%) n=355 (%)
侵襲的な処置の介助(医師単独では困難な処置) 7 (3.6) 14 (3.9) 0.84
医材・薬剤の準備 33 (16.9) 26 (7.3) <0.001
医師の説明に対する理解の促進,補足説明 27 (13.8) 38 (10.7) 0.27
意思決定支援 19 (9.7) 15 (4.2) 0.01
患者ケア・患者指導 22 (11.3) 35 (9.9) 0.83
家族ケア・家族指導 27 (13.8) 38 (10.7) 0.27
情報提供 14 (7.2) 13 (3.7) 0.07
サポーティブな環境作り 61 (31.3) 100 (28.2) 0.44
診療時の多職種連携・多職種マネジメント 18 (9.2) 16 (4.5) 0.03
その他 9 (4.6) 10 (2.8)

各項目は複数のチェックが可能であるため,合計は100%にならない.

診療以外の場面での同行看護師の関わりや看護実践においては終末期・慢性期を問わずA.「情報共有」が約60%,B.「相談」が約30%と多かった(表4).その中で「相談」の内訳をみると,新規患者に関わる相談について終末期(15.8%)が慢性期(8.7%)に比べ有意に多かった(表5).

表4 診療以外の場面での同行看護師の関わり

n=983 終末期 慢性期
n=557 (%) n=426 (%)
情報共有 322 (57.8) 242 (56.8)
相談 202 (36.3) 134 (31.5)
(上記相談に対する)助言 10 (1.8) 10 (2.3)
ディスカッション,カンファレンスの実施 10 (1.8) 7 (1.6)
調整・マネジメント 115 (20.6) 86 (20.2)
連絡 114 (20.5) 90 (21.1)
指導・教育 2 (0.4) 1 (0.2)
その他 1 (0.2) 2 (0.5)

各項目は複数のチェックが可能であるため,合計は100%にならない.

表5 表4の相談の内訳

n=983 終末期 慢性期 P値
n=557 (%) n=426 (%)
相談 202 (36.3) 134 (31.7)
症状緩和 28 (5) 19 (4.5) 0.93
ケア内容 16 (2.9) 11 (2.6) 0.92
治療方針・指示 61 (11) 39 (9.2) 0.83
介護サービス 4 (0.7) 4 (0.9) 0.55
新規患者 88 (15.8) 37 (8.7) <0.001
その他 22 (3.9) 28 (6.6)

各項目は複数のチェックが可能であるため,合計は36.3%または31.7%にならない.

以上から,訪問診療場面における「医材,薬剤の準備」「意思決定支援」「診療時の多職種連携・多職種マネジメント」において終末期・慢性期との間には統計的有意差が示された.一方で,診療以外の場面では終末期・慢性期を問わず一定の関わりが発生していた.「相談」の内訳をみると,新規患者に関する相談については終末期において,訪問診療導入に至るまでの紹介元病院や在宅で関わる関係職種間での情報共有や調整などが有意に多かった.

考察

同行看護師という存在は日本独自の名称,役割を持った看護師であり,海外において終末期の在宅医療を支える看護師は,district nurseやpalliative care nurseなどが存在している.これらの看護師は症状マネジメントなど幅広い知識を必要とし,患者を中心としたケア全体の調整役を担っていると強調され,役割を果たすうえで,医師がアクセスしやすく,関心を持って継続的に連携が取れることが極めて重要であるとされている 4.さらに,在宅療養者の意思決定支援などを担っていると報告されているが,それらの看護実践は主に診療前後の継続的支援として位置づけられている 5.海外では,在宅医療において看護師が一定の臨床判断やケア調整を担う役割が制度的に位置づけられている国が多い.一方,日本では,看護実践は原則として医師の指示に基づいて行われ,医師との協働関係の中で実践を展開する傾向がある.同行看護師は医師が診療を行うその場に同席し,医師と高い親和性を持って,医学的判断と患者家族の生活や価値観をすり合わせながら意思決定のプロセスを支える,日本独自性が高い役割機能を有する特徴があると考える.加えて,山崎による訪問看護師が捉える医師との連携に関する文献レビューによると,訪問看護師は医師との連絡がとりにくい,積極的に報告・連絡・相談ができないという連携や関係性上の課題があり,医療機関の看護師等が訪問看護師と連携し,医師と訪問看護師の橋渡し役となることが可能となれば課題が解決されると述べている 6.さらにケアマネージャーにとっても最も連携の取りにくい相手は医師であると報告されている 7.同行看護師が医師と行動を共にしていることで多職種にとっては同行看護師を介した医師とのアクセス性が高まると考えられる.結果的に医師と多職種のコミュニケーションが促進されるだけではなく,チームとしても円滑に機能することで多職種それぞれが患家で実践する患者・家族ケアにも同行看護師の存在が寄与していると考える.

本研究は,同行看護師が実践した終末期患者および慢性期患者,それぞれの家族への関わりの比較において,訪問診療場面においてとくに差がみられた.「医材・薬剤の準備」「意思決定支援」「診療時の多職種連携・多職種マネジメント」の項目で有意差が示され,これは病状の変化にも対応できる自宅環境の準備も含めた意思決定支援,そして迅速な多職種支援の調整役としての特徴的な関わりであった.また,診療場面以外では関わりの差がほとんどみられなかったものの,「新規患者相談」においては差があり,終末期患者において訪問診療導入に至るまでの調整に特徴があった.

浦野らが行った訪問看護におけるアドバンス・ケア・プランニングに関する文献レビューの報告において,在宅療養者が人生の最終段階に何を求めているのか,また家族はどのように考えているのかを把握し,医療・ケアの希望,療養場所の選択等の意思決定支援を行うことが重要であると述べている 8.本研究の結果から,同行看護師も同様に訪問診療の中で患者・家族の意思決定支援を行っていることが示された.訪問看護師との違いとして,同行看護師は診療場面で支援を実践していることにある.診療では医師の医学的判断があり,病状や状態に応じて医療・ケアに関する選択肢の提示が行われる.終末期のように不可逆的に変化する病状であれば,患者・家族にとっては悪い知らせや葛藤を生じる場面も多く,医師の病状説明だけでは生活がどうなるのかイメージができないこともありうる.そこで,同行看護師は,医師の医学的判断を生活に意味づけした文脈に置き換えて伝えることで,より患者・家族の理解が促進され,今後の医療・ケアへの希望や意向を医療者に伝えることができる関わりを実践していると考える.

さらに,竹川は,患者・家族の話を傾聴・共感しながら意図的に対話を進める技術を有している看護師のアドバンス・ケア・プランニングにおける役割は大きいと述べている 9.医師の説明をわかりやすく伝えるだけではなく,患者・家族の生活や価値観,感情などを汲み取り,医師が治療判断に活かせる形で言語化し,双方の語りを相互に理解できる形へ対話を進めることで,訪問診療を一方的な医療介入とせず,アドバンス・ケア・プランニングの場として機能させることが可能となる.したがって,同行看護師による意思決定支援は終末期患者と家族にとって重要な支援であり,実践としても示された.

「診療時の多職種連携・多職種マネジメント」についても特徴的な関わりが示された.金田らは医療ニーズが高まる終末期のケアマネジメントを多職種が共有し,自身の専門的役割の付加機能としてケアマネジメント機能を発揮することで,継続性のある統合された円滑なケアの提供につながると述べている 10.同行看護師は診療場面での意思決定プロセスと生活支援を即時に結びつけ,多職種による専門的支援や役割分担等のマネジメントを行う独自の意義があると考える.診療場面で示される医学的判断や患者・家族の反応から,即時に多職種支援を調整する連携の要として機能することで,診療場面の関わりだけではなく患者・家族の生活を支える継続支援へつなげる役割を担っていると考える.

そのほかに,終末期患者が安心して在宅療養を継続するために,入院につながる症状に対応する薬剤を自宅に設置することで,患者が自宅でケアを受けられる期間を延長し在宅看取りを高める可能性があるとの報告がある 11.在宅は病院と異なり医材・薬剤は潤沢ではなく,症状緩和のための薬剤や医材,デバイスの準備がなければ患者の苦痛を緩和することはできない.そのため,同行看護師が医師と連携し,終末期の病状変化と症状緩和方法を予測し,その患者にとって必要な医材・薬剤を準備することで,突発的な有症時にも迅速に在宅緩和ケアとしての薬物療法の提供が可能となる.患者は病状の進行による苦痛の増強があっても速やかな対応を受けることができれば,その後も安心して在宅療養を継続できる.同行看護師は苦痛緩和に対応できる環境を整える役割を実践していると考えた.

「相談」の内訳,新規患者については,終末期患者の退院調整や訪問診療導入は病状的課題や時間的猶予が限られていることから,医療や介護等に細やかな調整が必要であり,かつ迅速さが求められる.河野は在宅療養に向けた終末期退院支援において,単に医療情報の引き継ぎではなく,患者希望・ケア内容・家族支援など多くの調整と連携が必要であることを指摘し,さらに,在宅移行支援の経験や介護保険等在宅サービスの知識が支援に影響を与えると述べている 12.同行看護師が訪問診療導入時の相談窓口となることで,在宅医療の現場で備えた知識と経験を活用し,患者の病状と患者・家族の意向を踏まえ,病院医療から在宅医療への移行調整や在宅サービスを含めた療養環境調整など,円滑な在宅療養,在宅医療への移行支援に寄与していた可能性が考えられた.

終末期と慢性期それぞれに対する関わり・看護実践を比較したことで,終末期であるからこその特徴的な役割が示された.また訪問診療の場面だけではなく,従来見えにくかった診療場面以外についても調査したことで,「情報共有」「相談」「調整・マネジメント」などの業務が行われる頻度を可視化することができた.

本研究の結果から,同行看護師の役割とされる九つのテーマに関わる看護実践について,頻度の差はあるものの病期を問わず実践していることが示された.とくに訪問診療の場面では,患者と家族の緊張感を緩和し,多職種とのコミュニケーションが円滑に図れるよう「サポーティブな環境作り」を終末期・慢性期ともに同程度実施していた.これは関わるすべての患者と家族に対して,同行看護師が役割の実践を認識していたためと考える.

訪問診療以外の場面では,病期にかかわらず「情報共有」や「相談」に関する関わりが多く発生していた.このことから同行看護師が多職種連携の窓口になることで,医師へのアクセスを容易にしている側面があり,医師の方針や指示,見解などを多職種と共有しやすい環境を作り,多職種連携を円滑にしていることが示された.比較的病状が安定している慢性期であっても多職種からの相談や助言のニーズが一定数存在していることが示された.

以上より,在宅終末期ケアを担う同行看護師は終末期患者とその家族に対する特有な役割の実践と病期を問わない包括的な役割の遂行両方を通して,在宅医療における重要な存在であることが示唆された.

本研究の限界

本研究の限界として,以下の点が挙げられる.

第一に,本研究における調査用紙への記入は,これまでの取り組みによる九つのテーマを基に調査項目を設定した.同行看護師の役割に関しての基礎研究および知見は十分に蓄積されているとは言い難く,本研究の調査項目に含まれないその他の役割については検討できていない.

第二に,現場での実装性を優先した自己評価による記載であるためその評価基準の統一化が行われていない.このため,他者評価による調査では,新たな実態が明らかになる可能性がある.今後は他者評価による検証やどの記録者であっても同様の内容で記載することができるよう検討する必要がある.

第三に,本研究は量的研究であるため,その行為がどの程度患者・家族支援となりえたかは患者・家族側からの評価を得ていないため不明瞭である.

第四に,本研究は単一施設におけるものであり一般化可能性が低い.

第五に,本研究における終末期とは,医師が予後6カ月以内と診立てた者,または医師から「いつ何が起きてもおかしくない」と家族へ説明されている者としているが,終末期前期~後期の時期の違いにおいても同行看護師の支援に差が生じる可能性がある.そのため,終末期を定義する際に,Palliative Prognostic ScoreやKarnofsky Performance Scaleなどの客観的指標を用いた設定を検討することも必要である.

第六に,本研究では診療以外の場面における指導・教育の関わりは少なかった.これは,相談と助言に包含された可能性が考えられた.今後は,その内容に依って項目の調整を行っていくことで精緻な分析が可能になると考える.

今後の展望

本研究を通して,在宅終末期患者に対する特徴的な看護実践だけではなく,病期を問わず実践している関わりも明らかになった.今後この結果をもとに同行看護師の標準的な役割や教育プログラム,教育ラダーについての検討が期待される.

結論

本研究により,同行看護師における役割の実践には,終末期患者と慢性期患者の比較において差異があることが示され,終末期患者とその家族への特徴的な関わりが明らかになった.訪問診療の場面では「医材・薬剤の準備」「意思決定支援」「診療時の多職種連携・多職種マネジメント」において,診療以外の場面では「相談」の内訳の「新規患者」の調整において,統計的有意差が示された.同行看護師は医師の診察に同席するという独自性から,終末期患者とその家族,そして医師の間に立ち,意思決定のプロセスをその場で迅速に支援し,希望に沿った安心・安全な療養環境作りや継続支援のための多職種マネジメントや医材・薬剤の準備などの特徴的な役割を担っていた.さらに終末期患者の訪問診療導入時においても,同行看護師が在宅医療の現場での知識と経験を活用し,円滑な在宅移行調整を実践していた.

謝辞

本研究の実施にあたり,ご協力頂きました研究協力者の皆様に心より感謝申し上げます.

付記

本研究は第47回日本死の臨床研究会年次大会(2024年・札幌開催)で発表した(重複投稿なし).

利益相反

すべての著者の申告すべき利益相反なし

著者貢献

奥岡,本田,古山,澁谷は研究の構想およびデザイン,研究データの収集,分析,解釈に貢献し,原稿の起草にも貢献した.清水は研究のデザイン,研究データの分析および解釈,原稿の起草に貢献した.日下は研究データの解釈および重要な知的内容に関わる批判的な推敲に貢献した.すべての著者は投稿論文ならびに出版原稿の最終承認,および研究の説明責任に同意した.

文献
 
© 2026 日本緩和医療学会

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