抄録
筋萎縮性側索硬化症(ALS) 患者7人に対するホスピス終末期ケアについて検討した. 入院理由は, 苦痛症状の緩和と在宅療養の継続困難であった. 患者の苦痛は, 筋力低下によるADL低下(100%), 疼痛(100%), 身の置き所のなさ(100%), 呼吸困難感(71%), コミュニケーション障害(71%), 流涎(43%), 不眠(43%), 寂しさ(43%), 嚥下障害(28%), 歯の噛み込み(28%), 不安(28%), 自分が家族の負担になっているという思い(28%), ALSを患った不条理感(28%), 怒り(14%), であった. オピオイドが呼吸困難感, 疼痛, 身の置き所のなさの緩和に有効であったが, 頻回な体位変換・関節他動運動・マッサージも重要なケアであった. また, 苦痛の緩和に留まらず, コミュニケーションエイドによって会話をなるべく維持しながら, ALSの個々の人と家族の喜びを援助することがQOL向上に重要であった. がんのみならず, ALSを担う人々と家族にもホスピスケアは有用である. Palliat Care Res 2010; 5(2): 137-143