Palliative Care Research
Online ISSN : 1880-5302
ISSN-L : 1880-5302
5 巻, 2 号
選択された号の論文の14件中1~14を表示しています
原著
  • 加藤 修一, 小澤 英輔, 島田 宗洋, 黒川 純, 西田 茂史, 笠原 嘉子, 高橋 敬子, 芦谷 知子, 菅澤 佳子, 野村 真悠子
    2010 年 5 巻 2 号 p. 137-144
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/05
    ジャーナル フリー
    筋萎縮性側索硬化症(ALS) 患者7人に対するホスピス終末期ケアについて検討した. 入院理由は, 苦痛症状の緩和と在宅療養の継続困難であった. 患者の苦痛は, 筋力低下によるADL低下(100%), 疼痛(100%), 身の置き所のなさ(100%), 呼吸困難感(71%), コミュニケーション障害(71%), 流涎(43%), 不眠(43%), 寂しさ(43%), 嚥下障害(28%), 歯の噛み込み(28%), 不安(28%), 自分が家族の負担になっているという思い(28%), ALSを患った不条理感(28%), 怒り(14%), であった. オピオイドが呼吸困難感, 疼痛, 身の置き所のなさの緩和に有効であったが, 頻回な体位変換・関節他動運動・マッサージも重要なケアであった. また, 苦痛の緩和に留まらず, コミュニケーションエイドによって会話をなるべく維持しながら, ALSの個々の人と家族の喜びを援助することがQOL向上に重要であった. がんのみならず, ALSを担う人々と家族にもホスピスケアは有用である. Palliat Care Res 2010; 5(2): 137-143
  • 佐藤 浩二, 猿木 信裕, 保坂 尚志, 村上 忠, 高田 由, 松沼 晶子, 鈴木 邦明, 風間 俊文, 湊 浩一
    2010 年 5 巻 2 号 p. 145-151
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/04
    ジャーナル フリー
    進行期肺がんでは, 高頻度に骨転移を認める.骨転移が進行すると激しい骨痛, 病的骨折, 脊髄圧迫や高カルシウム血症などの骨関連事象(skeletal related events; SREs)が発症し, 全身状態を著しく低下させる. 今回われわれは, 骨転移を有する進行期非小細胞肺がん患者120例を対象に, SREsについて検討した. 初回治療開始時に, 32例(26.7%)にSREsの発症が認められた. SREsを発症した症例の生存期間中央値(123日)は, 発症しなかった症例の生存期間中央値(276日)と比べて有意に短かった(p<0.001). 3カ月以上の治療経過が追えた89例のうち, 治療経過中に39例(43.8%)にSREsが発症した. 全身化学療法が施行された74例のうち, 34例(45.9%)に治療経過中にSREsが認められた. SREsの発症は全身状態を悪化させ, 予後不良となる. 全身化学療法だけでは, SREsの予防は不十分であり, SREsを抑制するための新たな治療戦略が望まれる. Palliat Care Res 2010; 5(2): 145-151
  • 小西 洋子, 細川 豊史, 神林 祐子, 藤本 早和子, 岡田 耕二
    2010 年 5 巻 2 号 p. 152-161
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/10
    ジャーナル フリー
    厚生労働省の指針に準拠した⌈がん診療に携わる医師に対する緩和ケア研修会⌋を2008年6月7日, 8日にわが国で最初に京都で開催した. 研修会受講者は, 医師56名のほか, 自由参加の看護師77名, 薬剤師23名およびその他の医療関係者の合計163名であった. 研修会の前後に行ったそれぞれ7つの分野群からなる25問のプレテストとポストテストの結果を解析し, 研修会の教育効果の評価を試みた. ただし, 設問内容は, 医学的知識を必要とするものであったため, 解析対象を医師・看護師・薬剤師に限定した. プレテストの平均正答率は医師87.9%(全体78.9%), ポストテストは医師94.9%(全体89.1%)であった. 成績は有意に上昇し, 研修会は有意義であったと考えられた. しかし, 精神症状に関する設問については, 医師, コメディカルともに, 研修会の前後で最も低い正答率であった. これらの結果は, 今回実施した研修会は十分な教育効果をもたらしたが, 精神症状関連の重点研修が今後必要であることを示している. Palliat Care Res 2010; 5(2): 152-161
  • 新城 拓也, 森田 達也, 平井 啓, 宮下 光令, 佐藤 一樹, 恒藤 暁, 志真 泰夫
    2010 年 5 巻 2 号 p. 162-170
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/07
    ジャーナル フリー
    本研究は, 主治医が終末期がん患者の死亡確認を行うことや臨終に立ち会うことが, 家族のつらさと医師の対応への改善の必要性に影響するかを明らかにすることである. 2007年, 95のホスピス・緩和ケア病棟の遺族670名を対象に質問紙調査を行った. 全体の73%の遺族が回答した. どの医師が死亡確認を行うか, 医師が臨終に立ち会ったかは家族のつらさとは関連がなかった. 一方, 死亡確認と立ち会いは, 医師の対応への改善の必要性とは有意な関連があった. しかし, 医師が「臨終に立ち会ったこと」と, 「立ち会えなかったが, その日は頻繁に部屋に来ていた」ことの間には, 医師の対応への改善の必要度に有意差はなかった. したがって, 家族は主治医の死亡確認や, 臨終の立ち会いを望んでいるが, もし死亡確認や立ち会いができなかったとしても, 心理的なつらさが強まることはなく, 臨終までに頻繁に部屋に行くことで十分な対応であると考えていることが示唆された. Palliat Care Res 2010; 5(2): 162-170
  • 赤澤 輝和, 野末 よし子, 井村 千鶴, 森田 達也
    2010 年 5 巻 2 号 p. 171-174
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/27
    ジャーナル フリー
    緩和ケアの啓発介入として, 地域に一斉配布したリーフレット・冊子・ポスター(啓発用資料)の配布後の実態を明らかにすることを目的とした. 啓発用資料を行政施設104カ所, 図書館21カ所, 医療福祉施設132カ所の合計257カ所に送付した. 送付後216カ所(84%)に訪問し, 133カ所(62%)より調査同意を得た. 啓発用資料のいずれかが設置されていた施設は, 行政施設55%, 図書館100%, 医療福祉施設53%であった. ヒアリングでは, 【目的を理解して設置することの重要性】【配布場所に啓発の対象者がいないことがある】などの7つのテーマが抽出された. 緩和ケアの啓発介入として地域への啓発用資料の一斉配布は, 設置を目的とした場合, ある程度有効である. 効率良く情報を提供するためには, 設置場所管理者に目的を伝えることや対象者がいるか把握することなどが有用である可能性が示唆された. Palliat Car Res 2010; 5(2): 171-174
短報
  • 千葉 健史, 木村 祐輔, 高橋 宏彰, 平舩 寛彦, 長澤 佳昭, 森 薫, 米澤 裕司, 菅原 敦子, 川口 さち子, 川村 英伸, 西 ...
    2010 年 5 巻 2 号 p. 206-212
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    【目的】がん患者における体脂肪量がフェンタニルの経皮吸収量に影響を及ぼすかどうかを検討するため, 体脂肪量の指標として体脂肪率(BFR)および上腕三頭筋下皮下脂肪厚(TSF)に着目し, これらの測定値とフェンタニル皮膚移行率との関連性について検討した. 【方法】対象患者は, がん性疼痛を有し, フェンタニルマトリックス型パッチ(MTパッチ)を初めて使用する入院患者で, かつ文書による本研究への参加同意が得られた患者とした. 各患者のBFRおよびTSFの測定は, MTパッチの初回貼付期間に実施した. BFRおよびTSFの測定には, 体脂肪計およびアディポメーターを用いた. また, 各患者から1枚ずつMTパッチを回収した後, その中に残存するフェンタニル量を高速液体クロマトグラフィーにより測定し, その残存量の値からフェンタニルの皮膚移行率を算出した. 【結果】同意が得られた患者は15名(男性5名, 女性10名)であった. また, 回収された15枚のMTパッチの内訳は12.5mg/h (2.1mg製剤)が9枚, 25mg/h (4.2mg製剤)が6枚であった. 貼付部位は, 胸部あるいは上腕のいずれかであった. BFRおよびTSFは, いずれもフェンタニル皮膚移行率との間に有意な正の相関を示した. 【結論】栄養状態や体脂肪量が低下しているがん患者にDMPが投与されている場合には, 疼痛強度をより注意深くモニターし, 投与量の調節を行う必要があるかもしれない. 今後, 脂肪量の変化を含めた栄養状態および皮膚乾燥に関する詳細な評価を行うとともに, これらの変化がフェンタニル血中濃度に与える影響について検討する必要があると考えられた. Palliat Care Res 2010; 5(2): 206-212
  • 伊勢 雄也, 森田 達也, 前堀 直美, 轡 基治, 塩川 満, 木澤 義之
    2010 年 5 巻 2 号 p. 213-218
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/13
    ジャーナル フリー
    現在, 麻薬及び向精神薬取締法施行規則が改正され, 麻薬小売業者間での麻薬の譲渡/譲受が可能となったが, その制度の問題点については明らかにされていない.本研究は, この制度の普及と運用上の障害を明らかにすることを目的として行われた. 全国3,000施設の薬局の薬剤師に対して質問紙による郵送調査を行い, 1,036施設より回答を得た. 麻薬小売業者間譲渡許可免許を取得することにより麻薬が取り扱いやすくなる, またはなったと回答した施設は全体の20.2%であった. 取り扱いやすくならない, またはならなかった理由として, 手続きの煩雑さに関する問題のほかに, 麻薬の譲渡/譲受の規制についての問題点が挙げられた. 以上の結果より, がん患者の除痛を適切に地域で行えるよう薬局が機能するためには, 他の医薬品と同じように「医薬品販売業者への返品を可能にする」, または「備蓄薬局からの継続的な譲渡を可能にする」などが必要であることが示唆された. Palliat Care Res 2010; 5(2): 213-218
  • 馬場 美華, 後明 郁男
    2010 年 5 巻 2 号 p. 219-226
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/20
    ジャーナル フリー
    【目的】がん疼痛に対するガバペンチンの使用状況を評価する. 【方法】当院 緩和ケア科入院中の神経障害性疼痛を伴うがん患者で, ガバペンチンで痛みが軽減した52名を後ろ向きに調査した. 集計したデータを, ガバペンチンを1日量として1,800mg以上を使用した群(高用量群)と1,600mg以下を使用した群(低用量群)に分け, 検討した. 【結果】高用量群の人数は, 全体の52%であった. 年齢は, 高用量群で有意に低かった. 2群間で併用オピオイドの量, 鎮痛補助薬の薬剤数, および投与期間で有意差はなかった. 高用量群で副作用の発生頻度が増加することはなかった. 【考察】今回の調査から, がん疼痛に対するガバペンチン使用において, 1日量として1,800mg以上を必要とする患者が半数程度あることが分かった. また, 高用量群でより多量のオピオイドを併用していたが, 副作用が増強することなくガバペンチンを使用できていた. これは, 高用量群で年齢が低かったことが影響している可能性がある. Palliat Care Res 2010; 5(2): 219-226
症例報告
  • 舟尾 友晴, 長谷 一郎, 小谷 百合子, 清水 雅子, 中村 武人, 高橋 陵太, 宮田 妙子, 浅田 章
    2010 年 5 巻 2 号 p. 314-316
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/05
    ジャーナル フリー
    【目的】直腸がん術後の旧肛門部の疼痛に対し, くも膜下フェノールブロックと仙骨部神経根高周波熱凝固術が著効した症例を経験したので報告する.【症例】61歳, 男性. 直腸がん再発の旧肛門部の疼痛に対し, オピオイドなどの鎮痛薬が投与されていたが, 疼痛管理が困難な状態であった. これに対し, くも膜下フェノールブロックを施行することでオピオイドを中止できる程度に疼痛が軽減した. しかし, 数週間後, 第3仙髄神経の支配領域である旧肛門深部の疼痛が増悪してきたため, 仙骨部神経根高周波熱凝固術を施行したところ, 疼痛の消失が得られた.【結論】直腸がん術後の骨盤内再発における旧肛門部の疼痛は, くも膜下フェノールブロックのみでは疼痛管理に難渋することがあるが, 仙骨部神経根高周波熱凝固術を併用することで疼痛緩和を得られる可能性がある. Palliat Care Res 2010; 5(2): 314-316
  • 大津 秀一
    2010 年 5 巻 2 号 p. 317-322
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    【目的】ケタミンを在宅で長期間にわたって使用して, 前立腺がんの難治性骨転移痛を緩和している症例について報告する.【症例】50歳代, 男性. 前立腺がん, 骨盤骨転移. 硬膜外カテーテルからの塩酸モルヒネ80mg/dayの投与, 2度の放射線療法などの集学的治療によっても骨転移痛, 特に体動時痛が顕著だった. ケタミンが著効して疼痛が大幅に軽減し, 長期在宅療養が可能となった.【結論】オピオイド抵抗性の難治性骨転移痛の緩和において, ケタミンは重要な役割を担っていると考えられる. ケタミンは在宅でも使用継続可能なことから, 在宅における難治性疼痛緩和の選択肢の1つとして考慮されてよい治療法であると考えられる. Palliat Care Res 2010; 5(2): 317-322
  • 長井 直子, 橋本 和彦, 井澤 初美, 山田 智子, 本多 紀子, 内藤 敦, 井谷 裕香, 佐々木 洋
    2010 年 5 巻 2 号 p. 323-326
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    【症例】40歳代, 女性. 【臨床診断】軽度知的障害を伴う自閉症. 【症例報告】膵臓がんに対し, 膵頭十二指腸切除術を行った. 当初, 基礎疾患に自閉症を有することで医療者と患者・家族間の相互理解の困難さが予想されたため, 臨床心理士が介入した. 介入後, 障害が周術期にどのような影響を与えるか検討したところ, 医療者側に徐々に自閉症に対する認識が深まり, 患者の個別性に配慮したケアを行うことができた. 患者・家族に対しては, 臨床心理士が個別面接を繰り返し家族以外の理解者となるよう受容し, 共感的に支える関わりを継続したことで患者・家族の不安が軽減した. 【結語】臨床心理士の介入が, 患者・家族の精神的安定およびスタッフ教育に一定の効果をもたらした. Palliat Care Res 2010; 5(2): 323-326
  • 杉山 克郎, 石川 暁, 渡辺 正, 高橋 すみ江, 寺島 富美子, 大江 奈美子, 後藤 美紀子
    2010 年 5 巻 2 号 p. 327-331
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/20
    ジャーナル フリー
    非がん疼痛に対するオピオイド鎮痛薬の使用指針としては, 慢性疼痛に対するガイドラインは存在するが, 急性疼痛に対しては確立したものはない. 急性化膿性脊椎炎による疼痛に対して非オピオイド鎮痛薬では困難であったコントロールが塩酸モルヒネで可能であった症例を経験したので報告する. 症例は82歳の男性で, 細菌性化膿性脊椎炎および傍椎体膿瘍で入院した. 腰背部痛に対してアセトアミノフェンや非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs)を投与したがコントロールが困難であり, 塩酸モルヒネを投与しコントロールできた. 嘔気, 便秘, 眠気などの副作用もコントロール可能で, 感染症の治癒とともにモルヒネを漸減, 中止できた. 急性の非がん疼痛におけるオピオイドの使用は, 安全に使用できるものと思われる. Palliat Care Res 2010; 5(2): 327-331
  • 馬場 美華, 西田 真弓, 後明 郁男
    2010 年 5 巻 2 号 p. 332-337
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/20
    ジャーナル フリー
    緩和医療では, 全身倦怠感, 食欲不振, 疲労感, 疼痛などのさまざまな苦痛症状の緩和目的にベタメタゾンが広く用いられている. ステロイド投与中は, その身体的副作用だけでなく, 精神的副作用も注意が必要である. profile of mood states (POMS)は, 対象者がおかれた条件により変化する一時的な気分, 感情の状態を測定できるという特徴を有している. その短縮版は, 質問項目を削減することにより測定時間を短縮し, 対象者の負担を軽減することができる. 今回, 消化管閉塞による消化器症状の緩和目的にベタメタゾン3mg/日を投与し, 症状緩和が可能であったが, 投与開始から4カ月後, 不安, 焦燥感, 不眠をきたしたので, ベタメタゾンから等力価のプレドニゾロンに変更, 変更後3日目より, 消化器症状を悪化させることなく精神症状が改善した症例を経験した. また, 薬剤変更前後での気分, 感情の状態を, POMS短縮版を用いて評価したので報告する. Palliat Care Res 2010; 5(2): 332-337
  • 宮坂 朋恵, 櫛原 秀之, 小林 寛子, 三輪 眞純, 山口 丈夫, 春田 純一, 藤吉 清
    2010 年 5 巻 2 号 p. 338-341
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/20
    ジャーナル フリー
    【緒言】塩酸イリノテカン誘発の下痢は治療の継続や, QOLに影響を及ぼし, 時に致死的なものとなるため, 注意が必要である. その対策には塩酸ロペラミドが有効とされているが, 進行消化器系がんでは経口投与が困難な場合もある. 今回, 消化管狭窄のため経口投与が困難な症例で, 塩酸イリノテカン誘発性下痢に対して酢酸オクトレオチドを適応した. 【症例】61歳, 進行性胃がんの男性で, 塩酸イリノテカン100mg/m²を毎週投与法にて治療を開始したところ10日目に下痢が発現した. しかし, 同時期に消化管狭窄症状が悪化したため塩酸ロペラミドを使用できず, 酢酸オクトレオチドを適応した.適応翌日には下痢回数が1日20回から1日4回へと改善を示した.【結論】塩酸イリノテカン誘発遅発性下痢に対して酢酸オクトレオチドは有効な対処法の1つである. Palliat Care Res 2010; 5(2): 338-341
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