抄録
【背景】化学療法施行時に血管外漏出は深刻な問題である. 血管外漏出は高齢者, PS不良, 糖尿病の合併や化学療法を繰り返し受けている患者で頻繁にみられる. また, がん患者は治療のために度重なる静脈穿刺を余儀なくされる. 【目的と方法】われわれは化学療法における末梢挿入型中心静脈カテーテル (PICC) の有効性, 安全性を検討するために2008年4月から2010年12月に当院でPICCを用いて化学療法を施行したがん患者を後方視的に検討した. 【結果】本検討で対象患者は10例 (男性4例, 女性6例). 年齢中央値は59歳 (17~69歳)だった. 10症例に計13回のPICCが挿入された. 原疾患は平滑筋肉腫が最多であった (n=3, 30%). 肺がん (n=2, 20%)と血液腫瘍 (n=2, 20%)が次いで多くみられた. 平均のカテーテル留置期間は46日だった. カテーテル感染は2例にみられた (15.4%). 静脈炎, 血栓症は認めなかった. 【結論】PICCは繰り返す静脈穿刺や化学療法に伴う合併症を減少させうる. PICCは化学療法において有用な手段の1つであるといえる. Palliat Care Res 2011; 6(2): 233-236