Palliative Care Research
Online ISSN : 1880-5302
ISSN-L : 1880-5302
6 巻, 2 号
選択された号の論文の12件中1~12を表示しています
原著
  • 河原 正典, 岡部 健
    2011 年 6 巻 2 号 p. 133-142
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/08
    ジャーナル フリー
    アセトアミノフェン(APAP)は, WHO方式がん疼痛治療法の中で非オピオイド鎮痛薬の選択肢の1つに位置づけられているが, わが国において, その有効性や安全性を検討した報告は少ない. われわれは, 当院で非オピオイド鎮痛薬として, 世界標準量のAPAP (1,800~2,400mg/日)を使用した182例(APAP群)と非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs)を使用した86例(NSAIDs群)を比較することで, オピオイドとの併用も含めたがん疼痛管理における世界標準量APAPの有効性と安全性について後ろ向きに検討した. 疼痛管理状況はAPAP群とNSAIDs群で同等であった. オピオイドなどの併用薬剤についての検討が不足しているものの, がん疼痛治療における非オピオイド鎮痛薬としての世界標準量APAPは, 有効性の点でNSAIDsに劣らない結果が得られた. また, 安全性に関するAPAP群とNSAIDs群の比較では, 嘔気の発現頻度はAPAP群が有意に低く(p<0.01), AST・ALTが基準値の2.5倍を超えた患者の割合は両群同等であった. 有効性と安全性に関する以上の結果から, わが国においても世界標準量APAPは, がん疼痛治療における非オピオイド鎮痛薬の有用な選択肢の1つになると考えられた. Palliat Care Res 2011; 6(2): 133-142
  • 阿部 泰之, 山本 亮, 木澤 義之
    2011 年 6 巻 2 号 p. 143-149
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/17
    ジャーナル フリー
    2008年から緩和ケアの基本的知識・技術を習得することを目的に緩和ケア研修会が全国で行われている. 研修会はがん診療連携拠点病院を中心に行われているが, 研修会運営や教材にどのような問題点があるのかは明らかになっていない. 本研究では緩和ケア研修会の問題点を抽出し, その改善方法を探索することを目的として, 研修会改善のためのワークショップを行った. ブレインストーミングで得られた内容を質的に分析し, 企画運営, および内容・教育マテリアルについてそれぞれの問題点を明らかにした. 問題点は多様で, 計16個のカテゴリーに分類された.研修会開催者の物理的心理的負担が大きいことが明らかとなった. これら問題点の改善のためにはe-Learningを組み合わせたり, プログラムの自由度を拡大するなどして開催の負担を軽減すること, モジュールの拡充を伴う教育マテリアルのさらなる改良, 開催指針の改訂などが必要と考えられる. Palliat Care Res 2011; 6(2): 143-149
  • 内野 慶太, 草場 仁志, 岸本 淳司, 光安 博志, 川嵜 弘詔, 馬場 英司, 赤司 浩一
    2011 年 6 巻 2 号 p. 150-157
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/01
    ジャーナル フリー
    【背景】進行がん患者では疾患や治療に伴う精神的ストレスが大きく, 精神症状を早期発見し, 適切に介入してQOLを向上させることが重要となる. HADSは精神症状発現のスクリーニングとして使用されるが, がん化学療法患者を対象とした報告は少ない.【目的】がん化学療法患者における精神症状とHADSおよびHADS以外の因子との関連性を解析し, 精神症状診断のスクリーニング法としての有用性を検討する.【方法】当科で化学療法を行った入院患者50名を対象とし, 解析因子は病歴より抽出. 各因子の精神科医診断への影響は多重ロジスティック回帰により解析.【結果】HADSのカットオフ値を17点とした場合, 精神症状を抽出する感度73%, 特異度82%であった. HADSとの併用で診断精度向上に関わる因子として「再発がん」が示唆された.【結論】がん化学療法患者における精神症状発現のスクリーニングとしてHADSの有用性が示唆された. Palliat Care Res 2011; 6(2): 150-157
短報
  • 濱田 珠美, 小松 浩子
    2011 年 6 巻 2 号 p. 222-226
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/02
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は, 標準的治療を受けている進行非小細胞肺がん患者の自己の見通しを持つ体験について探求することである. 5名の研究協力者に非構成的面接法を行い, 収集した語りのデータを逐語録として, 現象学的心理学者Colaizziの方法に基づき分析した. 結果, 体験は個別だが, 共通性から5つの意味が見出されたが, 本稿では次の3つの意味を紹介する. (1)生の有限性に気づくからこそ向き合い自分自身の生を志向する, (2)ありのままの自分を評価できるからこそこのままの自分自身を志向する, (3)自分だけだから自分だけではないことを志向する. これらの意味からは, 自己の見通しを持つ体験の意味は自分の死の自覚を契機とし, さまざまに揺るがされた自分自身の存在を探求し, 将来の確かなあり方を自覚するという生の充実への積極的努力と考えられた. Palliat Care Res 2011; 6(2): 222-226
  • 横田 宜子, 上村 智彦, 小田 正枝
    2011 年 6 巻 2 号 p. 227-232
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/26
    ジャーナル フリー
    血液内科病棟では, Jonsen4分割表を用いた臨床倫理症例カンファレンスを多職種で行っているが, カンファレンスにより医師・看護師がどのような思いを抱き, 終末期患者の診療やケアに変化がもたらされたのかを検討した. 医師3名と看護師5名に, 終末期のカンファレンスについて半構成化面接し, 質的記述的にデータ分析した. 〈終末期という時期を意識する〉〈残された時間を考慮したケアへ変化させる〉のサブカテゴリーより《終末期への意識》のカテゴリーを導き出した. 〈チームで共有する重要性を知る〉〈看護師は調整役を果たせる〉〈患者・家族の意思を知る機会である〉のサブカテゴリーより《チームアプローチ》のカテゴリーを導き出した. カンファレンスは, 医師と看護師にとっては終末期を意識し, 情報共有の大切さやチームアプローチの重要性を認識する契機となっており, 看護師が自分の果たすべき役割に気づく機会になっていた. Palliat Care Res 2011; 6(2): 227-232
  • 浅井 信博, 大国 義弘, 山崎 郁郎, 河村 泰孝, 松沼 亮, 中島 啓, 岩崎 拓也, 伊藤 憲佐, 大内 敏宏, 金子 教宏
    2011 年 6 巻 2 号 p. 233-236
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/10/05
    ジャーナル フリー
    【背景】化学療法施行時に血管外漏出は深刻な問題である. 血管外漏出は高齢者, PS不良, 糖尿病の合併や化学療法を繰り返し受けている患者で頻繁にみられる. また, がん患者は治療のために度重なる静脈穿刺を余儀なくされる. 【目的と方法】われわれは化学療法における末梢挿入型中心静脈カテーテル (PICC) の有効性, 安全性を検討するために2008年4月から2010年12月に当院でPICCを用いて化学療法を施行したがん患者を後方視的に検討した. 【結果】本検討で対象患者は10例 (男性4例, 女性6例). 年齢中央値は59歳 (17~69歳)だった. 10症例に計13回のPICCが挿入された. 原疾患は平滑筋肉腫が最多であった (n=3, 30%). 肺がん (n=2, 20%)と血液腫瘍 (n=2, 20%)が次いで多くみられた. 平均のカテーテル留置期間は46日だった. カテーテル感染は2例にみられた (15.4%). 静脈炎, 血栓症は認めなかった. 【結論】PICCは繰り返す静脈穿刺や化学療法に伴う合併症を減少させうる. PICCは化学療法において有用な手段の1つであるといえる. Palliat Care Res 2011; 6(2): 233-236
  • 古村 和恵, 宮下 光令, 木澤 義之, 川越 正平, 秋月 伸哉, 山岸 暁美, 的場 元弘, 鈴木 聡, 木下 寛也, 白髭 豊, 森田 ...
    2011 年 6 巻 2 号 p. 237-245
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/11/16
    ジャーナル フリー
    より良い緩和ケアを提供するために, がん患者やその家族の意見を収集することは重要である. 本研究の目的は, 「緩和ケア普及のための地域プロジェクト」(OPTIM)の介入前に行われた, 進行がん患者と遺族を対象とした質問紙調査で得られた自由記述欄の内容を分析し, がん治療と緩和ケアに対する要望と良かった点を収集・分類することである. 全国4地域の進行がん患者1,493名, 遺族1,658名に調査票を送付し, 回収した調査票のうち, 自由記述欄に回答のあったがん患者271名, 遺族550名を対象とした. 本研究の結果から, がん患者と遺族は, 患者・医療者間のコミュニケーションの充実, 苦痛緩和の質の向上, 療養に関わる経済的負担の軽減, 緩和ケアに関する啓発活動の増加, 病院内外の連携システムの改善, などの要望を持っていることが明らかとなった. Palliat Care Res 2011; 6(2): 237-245
  • 上村 智彦, 鄭 湧, 伊藤 能清
    2011 年 6 巻 2 号 p. 246-252
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/29
    ジャーナル フリー
    【目的】造血幹細胞移植(以下, HSCT)後の口内炎・咽頭食道炎による疼痛に対するフェンタニル持続静注の有用性を検討した. 【方法】粘膜障害による疼痛が出現したHSCT患者15例を対象に, フェンタニル持続静注を12.5 μg/時より開始, 適宜増減して疼痛コントロールを行った. フェンタニル開始時と最大投与時の口腔粘膜障害grade, 疼痛スケール, 含嗽回数や歯磨き回数などのQOL指標を比較した. 【結果】フェンタニル開始の移植後病日は中央値で第7病日, 投与期間中央値は12日間だった. 最大投与量中央値は980 (243.8~3,010)μg/日でフェンタニル開始後中央値は5日目だった. 口腔粘膜障害gradeは投与開始時に比べ最大投与時は有意に上昇していたが, 疼痛スケールはむしろ有意に軽減しており, QOL指標は有意差なく維持されていた. 【結語】フェンタニル持続静注は, 粘膜障害悪化時も疼痛増強を抑えてQOLを保ち, セルフケア維持に寄与した可能性がある. Palliat Care Res 2011; 6(2): 246-252
症例報告
  • 柴原 弘明, 池上 要介, 神谷 浩行, 橋本 良博, 岩瀬 豊, 西村 大作
    2011 年 6 巻 2 号 p. 340-343
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/07/25
    ジャーナル フリー
    症例は70歳代男性, 局所進行膀胱がんで入院中にフルニエ壊疽を発症した. 緩和ケア病棟に入院していたが, 疼痛がきわめて強かったため, 症状緩和を目的とし, 局所麻酔下に陰嚢を切開しドレナージを行った. 術後は創処置時に疼痛を訴えるのみで, 安静時には疼痛の訴えはなかった. また, 患者は誕生日を迎えることができ, 家族と共に穏やかに過ごすことができた. フルニエ壊疽は会陰部・肛門の壊死性筋膜炎で, 急速に炎症が広範囲に至り, 死亡率が高い. がん終末期に発症したフルニエ壊疽に対し, どこまで治療を行うかについては症例に応じた判断に基づくのが現状であろう. 自験例ではドレナージが疼痛緩和のみならず, 患者と家族の精神的ケアにつながった. フルニエ壊疽の局所的ドレナージは緩和治療の1つとして考慮してもよいのではないかと思われる. Palliat Care Res 2011; 6(2): 340-343
  • 蓮尾 英明, 石原 辰彦, 畠 尚子, 三枝 美香, 岡田 美登里, 木村 秀幸
    2011 年 6 巻 2 号 p. 344-349
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/01
    ジャーナル フリー
    今回われわれは, がん性腹膜炎による出血性貧血を併発した症候性むずむず脚症候群に対して, 輸血が有効であったがん終末期症例を経験した. 症例は, 70歳代, 女性, 肝細胞がん. 下肢の異常感覚に対して, 赤血球輸血の施行後に症状の劇的な改善を認めた. がん終末期では, 症候性むずむず脚症候群を合併する頻度は高いと予想され, 積極的な診断と適切な治療が必要であると考えられた. Palliat Care Res 2011; 6(2): 344-349
  • 塚原 悦子, 紀 敦成, 中西 美保, 飯田 温美, 吉矢 生人
    2011 年 6 巻 2 号 p. 350-357
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/21
    ジャーナル フリー
    持続硬膜外注入は局在の明確ながん疼痛に対する有用な鎮痛手段であるが, カテーテル留置期間が長くなれば感染合併の危険性が増す. 対策としてポート使用によりカテーテルおよび薬液注入部を皮下に埋没する方法があるが, 侵襲的であり全身状態の悪い患者への適用には制限がある. われわれは硬膜外カテーテル出口を体幹前面に皮下誘導し, ポートは使用しない方法を積極的に採用しており, 11例, 5~67日の留置においてこれまで感染の合併はない. 今回, 特に感染リスクの高い病態(症例1:腸管皮下交通による皮下気腫, 症例2:皮膚転移部MRSA感染, 症例3:留置後背部皮膚損傷)において本法による持続硬膜外注入を行い, 感染の合併なく留置を続行し有効な鎮痛を得た進行がん患者3症例を経験した. 全身状態の悪いがん患者の疼痛治療において, 本法は有用と考える. Palliat Care Res 2011; 6(2): 350-357
  • 竹井 清純
    2011 年 6 巻 2 号 p. 358-364
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/29
    ジャーナル フリー
    【目的】オピオイド抵抗性の疼痛に対し, バースト・ケタミン療法を施行したところ, 良好な疼痛コントロールが得られた症例を経験したので報告する. 【症例】50歳代, 女性. 中下咽頭がん術後, 遊離空腸間置術後, 永久気管口造設術後, 右胸腔内再発. 右開胸部胸腔内再発に伴う疼痛で経過観察をしていた. 嚥下困難・嘔気で内服困難となり, 疼痛コントロールが不良のため入院となった. その後, オピオイドを増量するも疼痛は改善せず, レスキューの効果も得られなくなったためオピオイド抵抗性の疼痛を疑い, バースト・ケタミン療法を施行した. ケタミンは持続静脈注射で100 mg/日より開始し, 苦痛症状に合わせて24時間ごとに300 mg/日, 500 mg/日と増量を行い, 計5日間の治療の後に中止した. ケタミン投与の経過で, 再びモルヒネの鎮痛効果が得られたのでモルヒネを増量したところ, 疼痛コントロールが良好となり在宅療養が可能となった. 【結論】オピオイド抵抗性の疼痛に対し, バースト・ケタミン療法は有効な治療法になりうると考えられた. Palliat Care Res 2011; 6(2):358-364
feedback
Top