抄録
本研究の目的は, 地域緩和ケアプログラムが実施された地域において, 在宅支援の役割を強化した緩和ケア病棟での自宅退院率, 自宅退院した患者の自宅死亡率, 地域のがん患者の自宅死亡合計数に占める割合を明らかにすることを通じて, 緩和ケア病棟の運営方針が地域がん患者の自宅死亡率にもたらす影響に関する洞察を得ることである. 2007年から2010年にかけて, 緩和ケア病棟の自宅退院率は8%から22%に, 自宅退院したがん患者の自宅死亡率は10%から41%に増加した. しかし, 地域のがん患者の自宅死亡率は6.8%から8.1%と増加の程度は全国平均と変わらず, 地域のがん死亡数を母数とした緩和ケア病棟入院患者の割合, 地域のがん自宅死亡数を母数とした緩和ケア病棟を経由して自宅死亡した患者の割合は10%以下であった. 地域全体で在宅療養を支援する体制を構築するためには, 地域全体での在宅で緩和ケアの提供できる医療福祉リソースの拡充が必須である.