Palliative Care Research
Online ISSN : 1880-5302
ISSN-L : 1880-5302
7 巻, 2 号
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原著
  • 木澤 義之, 梅田 恵, 新城 拓也, 石ヶ森 一枝, 奥山 慎一郎, 木下 寛也, 白髭 豊, 井村 千鶴, 野末 よし子, 森田 達也
    2012 年 7 巻 2 号 p. 172-184
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/11
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は, 緩和ケアの地域介入で使用された地域共通の緩和ケアマニュアル・パンフレット・評価シートの利用状況を明らかにすることである. 介入地域における配布数, 医師706名・看護師2,236名の質問紙調査, 医療福祉従事者80名に対するインタビュー調査を分析した. 配布数と使用頻度が多かったものは, マニュアル, 看取りのパンフレットであった. 医療者の体験としては, 【経験や職種に限らず地域での共通認識がもてる】【あいまいに経験的にしていたことが自信をもってできる】が最も多く挙げられた. マニュアルは,【必要な項目が網羅されている】【内容が凝集されていて携帯できる】【具体的で実践的である】と評価された. 看取りのパンフレットは【口頭で説明しにくいことが絵で分かりやすい】と評価された. 地域共通のマニュアルと看取りのパンフレットは地域全体で利用可能で, 地域緩和ケアの向上に貢献することが示唆された.
  • 大谷 眞二, 山本 直子, 佐藤 尚喜, 松波 馨士, 岡本 幹三, 黒沢 洋一
    2012 年 7 巻 2 号 p. 185-191
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/18
    ジャーナル フリー
    終末期がん患者における輸液量と呼吸困難・気道分泌との関連性を明らかにすることを目的として後ろ向き研究を行った. 悪性新生物により死亡した138例を対象とし, 死亡前1週の輸液量1,000 ml/日以下の少量群85例と1,001 ml/日以上の多量群53例に分けて呼吸困難と気道分泌の有無を比較した. また, これらの症状に影響のある因子を多変量解析で求めた. 呼吸困難と気道分泌は多量群の64.2%, 52.8%にみられ, 少量群(32.9%, 15.3%)と比較して有意に高値であった. 呼吸困難に関連していたのは肺病変(オッズ比3.55), 輸液1,001 ml/日以上(3.54), オピオイド投与(0.40)で, 気道分泌では肺病変(7.29), 輸液1,001 ml/日以上(4.43), 食事摂取(0.31)であった. 過量な輸液が呼吸器症状に影響を及ぼすことが示唆され, 1,000 mlを超えない輸液が1つの目安と考えられた.
  • 山本 亮, 大谷 弘行, 松尾 直樹, 新城 拓也, 宇野 さつき, 廣瀬 光, 松原 龍弘, 瀧川 千鶴子, 前野 宏, 佐々木 一義, ...
    2012 年 7 巻 2 号 p. 192-201
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/20
    ジャーナル フリー
    【目的】小冊子『看取りのパンフレット』を用いた終末期患者を看取る家族への説明の有用性を評価することを目的とした. 【方法】緩和ケア病棟5施設, 在宅ホスピス4施設, 緩和ケアチーム1施設で, 終末期患者の家族との面談時に小冊子を用いた説明を行い, 死亡後6カ月以上が経過した遺族に対して郵送法による質問紙調査を行った. 【結果】325名に調査票を発送し, 260名(回収率85%)から回答を得た. 81%が小冊子が「とても役に立った」「役に立った」と回答した. 家族の体験として, 「変化の目安になる」(84%), 「症状や変化がなぜ起きているのか分かる」(76%)などが挙げられた. 運用の工夫が自由記述から抽出された. 【結論】『看取りのパンフレット』は, 配布する時期を患者・家族ごとに検討し, 渡すだけではなく十分にコミュニケーションをとることに注意して運用することで多くの家族にとって有用であることが示唆された.
  • 片山 英樹, 青江 啓介, 関 千尋, 阿部 宏美, 三村 雄輔, 上岡 博
    2012 年 7 巻 2 号 p. 202-208
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/08/13
    ジャーナル フリー
    緩和ケア病棟へ入院中の進行がん患者48名の血清マグネシウム値を測定し, マグネシウム製剤の内服の有無や全身状態とその臨床的意義を検討した. 血清マグネシウムの平均値は2.09 mg/dlであり, マグネシウム製剤投与例の平均値は2.17 mg/dlと, マグネシウム製剤非投与例の平均値1.80 mg/dlに比べて有意に高値であった(p=0.006). 基準値(1.8~2.8 mg/dl)を外れた高マグネシウム血症を2例, 低マグネシウム血症を8例に認めたが, 臨床的にマグネシウム異常に関連した症状は認められなかった. また, マグネシウム製剤の投与期間, 投与量と血清マグネシウム値との関連も認められなかった. 今回の検討では血清マグネシウム値の著明な異常は認められず, 臨床的にもマグネシウム異常に関連した症状はみられなかった. しかし, 緩和ケア病棟の患者はマグネシウム異常をきたしやすい状態であり, かつマグネシウム異常に伴う症状はがんの進行時にみられる症状と類似している. そのため, 特に終末期でそのような症状を呈した場合, 血清マグネシウム値の異常についても留意する必要があると考えられた.
  • 森田 達也, 井村 千鶴, 野末 よし子, 鈴木 聡, 渋谷 美恵, 木下 寛也, 原田 久美子, 白髭 豊, 平山 美香, 江口 研二
    2012 年 7 巻 2 号 p. 209-217
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/14
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は, 地域緩和ケアプログラムの参加者にとって「最も大きかった」と体験されたことを明らかにすることである. 緩和ケアの地域介入が実施された地域において中心的に関わった101名を対象としたインタビュー調査を行い, 96名から回答が得られた. 最も大きかったことは, 【ネットワークが増え, 連携の重要性を実感した】(n=61; [つながりができた] [連携の大切さを知った]など), 【緩和ケアの知識と技術が向上した】(n=18; [知識とサポートがあることで自信をもって対応できた]など), 【幅広い体験をすることで自分の役割を見直した】(n=10), 【連携と緩和ケアの知識・技術の両方とも大きかった】(n=4), 【自分の役割に役立つ体験ができたこと】(n=2), 【患者・家族の満足が得られた】(n=1)であった. 地域緩和ケアプログラムの最も大きい影響は連携の促進, 次に, 緩和ケアの知識と技術の向上である.
  • 黒山 政一, 川野 千尋, 平山 武司, 岩佐 元輝, 佐々木 徹
    2012 年 7 巻 2 号 p. 218-224
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/14
    ジャーナル フリー
    【目的】現在, わが国におけるフェンタニルの持続静脈内投与(CIV)と貼付剤(TP)との換算比は, 日本人のデータに基づくものではない. TPの日本人と外国人の血中濃度では大きな差がある. そこで, 日本人を対象に換算比の検討を行った. 【方法】2003年から2008年に北里大学東病院で, CIVとTPのローテーション(RO)が施行されたすべての消化器がん患者を抽出. RO施行後10日以内に, 1日あたりの投与量(基本量)が不変, かつレスキュー回数(1日あたり)の差がRO直前と比べ1回以内である状態を3日間連続した患者を選択. TPはすべてリザーバー型. “CIV基本量”と“TP基本量”の回帰直線から換算比を算出. 【結果】47症例にROが実施され, 11症例を選択. 回帰式はY=1.0227X+0.0103, r²=09188. 換算比はCIV: TP(放出量)=1 : 1. 【考察】日本人のデータに基づいたCIVとTP換算が可能となった.
  • 黄 正国, 兒玉 憲一
    2012 年 7 巻 2 号 p. 225-232
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/10/18
    ジャーナル フリー
    【目的】本研究では, 地域のがん患者会が参加者に及ぼす心理的な影響をコミュニティ援助機能とベネフィット・ファインディングの観点から検討した. 【方法】患者会参加者が体験した患者会のコミュニティ援助機能を問う項目と, がんになったことで心理的に肯定的な変化や意味を見出す体験を問う項目で構成された質問紙で調査を行い, 109名から回答を得た. 【結果】因子分析の結果, 4下位尺度計17項目からなるコミュニティ援助機能尺度が作成された. また, 4下位尺度計12項目からなるベネフィット・ファインディング尺度が作成された. 両尺度得点の間に正の相関がみられ, 両尺度間に関連が確認された. 【考察】がん患者会の援助機能と参加者の心理的健康と関連している可能性が示唆された.
短報
  • 木下 寛也, 松本 禎久, 阿部 恵子, 宮下 光令, 森田 達也
    2012 年 7 巻 2 号 p. 348-353
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/05
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は, 地域緩和ケアプログラムが実施された地域において, 在宅支援の役割を強化した緩和ケア病棟での自宅退院率, 自宅退院した患者の自宅死亡率, 地域のがん患者の自宅死亡合計数に占める割合を明らかにすることを通じて, 緩和ケア病棟の運営方針が地域がん患者の自宅死亡率にもたらす影響に関する洞察を得ることである. 2007年から2010年にかけて, 緩和ケア病棟の自宅退院率は8%から22%に, 自宅退院したがん患者の自宅死亡率は10%から41%に増加した. しかし, 地域のがん患者の自宅死亡率は6.8%から8.1%と増加の程度は全国平均と変わらず, 地域のがん死亡数を母数とした緩和ケア病棟入院患者の割合, 地域のがん自宅死亡数を母数とした緩和ケア病棟を経由して自宅死亡した患者の割合は10%以下であった. 地域全体で在宅療養を支援する体制を構築するためには, 地域全体での在宅で緩和ケアの提供できる医療福祉リソースの拡充が必須である.
  • 和泉 典子, 秋山 美紀, 奥山 慎一郎, 難波 幸井, 柏倉 貢, 冨樫 清, 渋谷 美恵, 鈴木 聡
    2012 年 7 巻 2 号 p. 354-362
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/05
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は, 地域における多施設・多職種デスカンファレンスに参加した地域の医療福祉従事者の体験を探索することである. 地域緩和ケアチームが介入し自宅や施設での療養後に死亡したがん患者3症例のデスカンファレンス参加者のべ56名を対象に質問紙調査を行った. デスカンファレンスの感想と緩和ケアや看取りに関する考えについての自由記載を内容分析した結果, デスカンファレンスの有用性として【多職種との対話による相互理解】【今後の実践につながる気づき】【緩和ケアの学び】などが, 問題点として【多職種との対話における障壁】などが抽出された. 緩和ケアの実践の課題として【緩和ケアや看取りに取り組むための条件】【施設間・職種間連携】が抽出された. 地域の緩和ケア専門家が地域の多施設・多職種との振り返りの場をつくることで, 職種間の相互理解が深まり, 連携の促進と緩和ケアの実践の変化につながる可能性が示された.
  • 鈴木 直, 吉田 彩子, 中川 侑子, 波多野 美穂, 横道 憲幸, 細沼 信示, 吉岡 範人, 大原 樹, 戸澤 晃子, 木口 一成
    2012 年 7 巻 2 号 p. 363-367
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/18
    ジャーナル フリー
    がん疼痛に対するオピオイド鎮痛薬の開始薬として用いられるオキシコドン徐放性製剤は, その副作用である眠気や便秘が特に婦人科がん患者にとって生活の質を低下させる要因となりうる. 一方, フェンタニル貼付薬は鎮痛効力が強く, 副作用が少ないプロファイルを有しているものの, 用法・用量が「オピオイド鎮痛薬から切り替えて使用する」ことになっている. オキシコドン徐放性製剤の副作用発現例からフェンタニル貼付薬へオピオイドスイッチングした婦人科がん領域の臨床研究報告は, わが国には存在していない. それ以前の問題として, 婦人科がん領域における緩和医療の早期導入は十分ではなく, 婦人科がん患者にとって満足の得られる段階には達していない現状がある. 本研究では, 婦人科がん患者に特化した副作用軽減と生活の質向上を目的とした疼痛管理に関する研究を行った結果, 早期にフェンタニル貼付薬へ切り替えることによって, 婦人科がん患者の疼痛, 眠気, 便秘を有意に改善する結果が得られた.
  • 新家 治子, 坂下 明大, 石橋 有希, 太田垣 加奈子, 藤原 由佳, 五百蔵 武士, 田宮 裕子, 小谷 義一, 向原 徹, 南 博信, ...
    2012 年 7 巻 2 号 p. 368-373
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/18
    ジャーナル フリー
    【目的】 日本人がん患者を対象に, 緩和ケアチームの介入効果をQOLの変化によって明らかにする. 【対象と方法】 2009年11月1日から2010年3月30日まで, 神戸大学医学部附属病院 呼吸器内科および腫瘍・血液内科病棟に入院中の患者を対象とし, 緩和ケアチーム介入前後のQOLをアンケート形式で前向きに評価した. QOLの評価は介入時, 介入1週後および4週後にEORTC QLQ-C15-PALを用いて行った. 【結果】 35人の患者をエントリーし, 26人の患者で1週後の評価が, 15人で4週後の評価が可能であった. 1週後に, 15の評価項目のうち, painの改善がみられた(p<0.05). 4週後に, dyspneaとpainの項目で改善が得られた(p<0.05). 【結語】 EORTC QLQ-C15-PAL を用いて緩和ケアチームの介入効果を前向きに検討した. 介入が短期間であっても, 身体症状の改善は得られた.
  • 森田 達也, 秋月 伸哉, 鈴木 聡, 木下 寛也, 白髭 豊, 宮下 光令
    2012 年 7 巻 2 号 p. 374-381
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/31
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は, 専門緩和ケアサービスの利用者の延べ数と重複を除外した利用者数を比較することにより, 全国の専門緩和ケアサービスの利用者数を算出する方法についての洞察を得ることである. 全国4地域の専門緩和ケアサービスごとに患者一覧表を作成し, 研究者が集計した. 利用数の延べ患者数を計算し, 「重複を含めた専門緩和ケアサービス利用数」とした. 性別, 年齢, 原疾患のすべてが一致する患者を同一の患者として除外し, 「重複を除いた専門緩和ケアサービス利用数」とした. 重複を含めた利用数に対する重複を除いた利用数の比は平均0.59であったが, 地域差が大きかった. 重複を含めた利用数は, 重複を除いた利用数に比較して, 年次推移, 地域間差とも同じ傾向を示した. 専門緩和ケアサービスの診療患者の延べ数は簡便に専門緩和ケアサービスの活動をみることができるが, 正確な絶対値を把握するには重複を除いた患者登録が必要である.
  • 森田 達也, 古村 和恵, 佐久間 由美, 井村 千鶴, 野末 よし子, 木下 寛也, 白髭 豊, 山岸 暁美, 鈴木 聡
    2012 年 7 巻 2 号 p. 382-388
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/31
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は, 患者所持型情報共有ツール『わたしのカルテ』の利用状況を明らかにすることである. 配布数, 医師706名・看護師2,236名の質問紙調査, 医療福祉従事者40名に対するインタビュー調査, 事例を分析した. 年間平均1,131冊が配布され, 15%の医師, 16%の看護師が使用した. 医療者の体験としては, 現状として【一部では使われているが全体には広がらない】, 効果として【患者の自己コントロール感が上がる】【医療福祉従事者間の情報共有になる】, 普及しない理由として【患者にとって利益がない・負担が大きい】【関係する地域の職種すべてが使用する必要がある】ことが挙げられた. 11病院で運用が試みられたが, 3年間継続した運用ができたのは2病院のみであった. わが国の多くの地域において, 患者所持型情報共有ツールを短期間に地域全体に普及させることの実施可能性は低いことが示唆された.
  • 白髭 豊, 野田 剛稔, 北條 美能留, 後藤 慎一, 冨安 志郎, 出口 雅浩, 奥平 定之, 安中 正和, 平山 美香, 吉原 律子, ...
    2012 年 7 巻 2 号 p. 389-394
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/08/17
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は, 地域緩和ケアの介入研究が施行された地域において, 各がん診療連携拠点病院から在宅診療への移行率の変化を明らかにし, 病院医師・看護師の在宅の視点との関係を探索することである. 病院医師・看護師対象の質問紙調査を行い, 医師は154名, 看護師469名を解析対象とした. 在宅移行した患者数は, 2007年を100とした増加比で, A病院967%, B病院295%, C病院221%であった. 在宅移行した患者数の増加比が多い病院では, 「がんでも希望すれば最期まで在宅で過ごせると思うようになった」「自宅で過ごしたいか自分から尋ねるようにしていた」「容態が変わった時の対応や連絡方法をあらかじめ決めるようになった」「投薬など, 患者・家族が自宅でもできるように入院中からシンプルにするようになった」などの在宅の視点に関する質問に対して「そう思う」と回答した頻度が有意に多かった.
  • 平舩 寛彦, 高橋 宏彰, 千葉 健史, 菅原 敦子, 木村 祐輔, 工藤 賢三, 若林 剛, 高橋 勝雄
    2012 年 7 巻 2 号 p. 395-402
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/10/18
    ジャーナル フリー
    【目的】本研究では, がん患者の栄養状態とフェンタニル経皮吸収性との関連性について検討を行った. 【方法】栄養スクリーニングツールのMalnutrition Universal Screening Tool (MUST)およびNutritional Risk Screening 2002 (NRS2002)を用いてがん患者の栄養状態を危険度別に分類し, 各群のフェンタニル皮膚移行率(FE)を比較した. 【結果】対象患者24名のMUSTによる分類(低, 中, 高度群)では, 栄養危険度が高い患者ほどFEが低くなる傾向にあり, NRS2002による分類(低, 高リスク群)では, 高リスク群のFEは低リスク群に比べて有意に低かった. 【結論】栄養状態の変化は, FEに影響を及ぼす要因の1つとなることが示唆された. また, 栄養状態が低下している患者では, フェンタニル経皮吸収性が低下している可能性があると考えられた.
  • 森田 達也, 宮下 光令, 井上 芙蓉子, 佐藤 一樹, 五十嵐 歩, 五十嵐 美幸, 山口 拓洋, 橋本 修二
    2012 年 7 巻 2 号 p. 403-407
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/12
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は, 全国4地域を対象とした緩和ケアの普及に関する地域介入研究で取得された実際の死亡場所と死亡数, 遺族調査のデータをもとに, 自宅死亡を希望していると考えられるがん患者数の推定を行うことである. 死亡場所・死亡数のデータは人口動態統計などの資料から収集した. 遺族調査は全国4地域52施設の遺族1,137名を対象として実施された. 「自宅死亡の希望推定数」を, 自宅死亡した患者で遺族が患者はそれを望んでいたと推測した数, および一般病棟・緩和ケア病棟で死亡した患者で, 遺族が患者は自宅で死亡することを望んでいたいと推測した数から求めた. 自宅死亡の希望推定数は, 対象地域ではがん死亡の32.8%[95%信頼区間: 31.7, 33.9]であり, 全国数値に基づくと11.1万人(がん死亡の31.2%[95%信頼区間: 31.1, 31.4])であった.
  • 水上 奈穂美, 山内 正憲, 渡邊 昭彦, 團塚 恵子, 佐藤 明美, 大森 克哉, 中田 英雄, 小池 和彦, 山蔭 道明
    2012 年 7 巻 2 号 p. 408-414
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/12
    ジャーナル フリー
    【目的】頭頸部がん治療中には口腔や咽頭に重症粘膜炎が頻発し, 患者のQOLを損なう. 粘膜炎治療の質の向上のため, がんの部位および照射線量とオピオイド使用量の関係の後ろ向き調査と, 現在使用している薬剤・ケアの満足度調査を行った. 【方法】研究1: 2005~2009年に化学放射線療法を施行した頭頸部がん患者14例を対象に, 照射線量とオピオイド使用量の推移を照射部位別に調査した. 研究2: 2010年に, 放射線によるgrade 3の粘膜炎を経験し, かつ治療を完遂しえた患者を対象に, 使用した鎮痛薬と口腔ケアの満足度を5段階評価で調査した. 【結果】研究1: 照射線量の増加に伴い, 粘膜炎の重症度が上がった. 咽頭がんでは線量増加に伴いオピオイド使用量が著増するのに対して, 口腔がんでは軽度の増加に留まった. 研究2: 鎮痛薬よりも口腔ケアの満足度が高い傾向があった. 【結語】口腔がんでは口腔ケアの患者満足度が高く, 鎮痛薬使用量を軽減できる可能性が示唆された.
症例報告
  • 杉浦 八十生, 井澤 菜緒子, 根本 悦夫, 信田 政子, 加勢田 靜, 井野元 智恵
    2012 年 7 巻 2 号 p. 530-536
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/20
    ジャーナル フリー
    症例は40歳代, 女性. 2011年3月, 胸部圧迫感を訴え, 胸部CTで前縦隔腫瘍, 両肺に多発結節を認めた. 2010年7月のCTでは病変はなく, 2011年1月の胸部X線写真でも明らかな病変は指摘できず, 急速な増大が考えられた. 既往歴に不正性器出血および月経困難症があった. 画像診断において, 骨転移, 子宮頸部および体部に複数の腫瘍が存在した. 前縦隔腫瘍および子宮腫瘍に対して針生検を施行し, 同一組織像であり, 胸腺未分化がん, 多発肺転移・子宮転移・骨転移と診断された. 急速に増大した胸腺未分化がんの子宮・骨転移に対する疼痛管理において, 骨転移に対してはオピオイドが有効だったが, 子宮収縮による内臓痛には無効であった. しかし, 子宮平滑筋への弛緩作用により塩酸リトドリンが著効した1例を経験したので報告する.
  • 三浦 篤史, 山本 亮, 大塚 菜美
    2012 年 7 巻 2 号 p. 537-540
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/08/06
    ジャーナル フリー
    がん性悪臭は患者のquality of lifeを低下させるため, その管理が重要である. がん性悪臭の対策として, 嫌気性菌に抗菌活性を示すメトロニダゾール軟膏, クリンダマイシン軟膏, カデキソマーヨウ素軟膏が使用されてきたが, いまだがん性悪臭の管理が十分とはいいがたく, その改善が求められる. 今回, カデキソマーヨウ素軟膏でコントロール不良であったがん性悪臭の症例に対し, クリンダマイシンとカデキソマーヨウ素軟膏を混合したクリンダマイシン・カデキソマーヨウ素混合軟膏を使用した. その結果, がん性悪臭や滲出液は軽減した. また, 皮膚障害などの有害事象を認めることなく安全に使用することができた. クリンダマイシン・カデキソマーヨウ素混合軟膏は, カデキソマーヨウ素軟膏の単独使用に比べて難治性悪臭に有効である可能性が示唆された.
  • 森川 美羽, 石崎 武志, 高野 智早, 渡辺 享平, 田畑 麻里, 佐藤 義高, 西本 武史, 小坂 浩隆, 片山 寛次
    2012 年 7 巻 2 号 p. 541-544
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/08/21
    ジャーナル フリー
    【目的】がんの診療に伴い, 吃逆はしばしば経験し, 治療に難渋することが多い. 化学療法に伴って出現した持続性の吃逆に対して, プレガバリンが奏効した2症例を経験したので報告する. 【症例】症例は共に進行肺扁平上皮がんであり, 症例1はカルボプラチン+パクリタキセル, 症例2はネダプラチン+イリノテカンの2剤併用化学療法を施行した. 2症例共に抗がん剤の投与に応じて吃逆の出現, 増悪を認めており, 薬剤が誘発したと考えられた. 吃逆はメトクロプラミド, クロルプロマジン, ガバペンチンに抵抗性であり, プレガバリン 150 mg/日の投与によりすみやかに改善した. 【結論】鎮痛補助薬として近年用いられるようになったプレガバリンは, その薬理作用である神経細胞の過剰興奮の抑制により吃逆にも効果がある可能性がある.
  • 山田 秀久, 矢野 智之, 西里 卓次, 長町 康弘, 八戸 マキ
    2012 年 7 巻 2 号 p. 545-549
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/14
    ジャーナル フリー
    進行直腸がん術後の遺残直腸断端再発出血に対して, Mohs軟膏が著効した症例を経験したので報告する. 直腸がん術後に骨盤内再発の遺残直腸断端露出部から出血を認めるようになり, 頻回にパッド交換が必要な状態であった. 対症療法は無効で, 抗がん剤や放射線による治療を拒否していたため, 局所治療としてMohs軟膏による止血を施行した. 処置前にはCTにより周囲組織との位置関係を評価し, 遺残直腸断端に露出した部分は小さく少量の使用で済む点や, 人工肛門のため直腸は使用しない点などから, Mohs軟膏使用の安全性は十分確保できると考えた. 処置時は, 軟膏をガーゼに塗り込むことにより正常部位への流出を予防した. 直腸内にはワセリンガーゼを充填し, 正常直腸粘膜への影響を最小限にするように工夫した. 処置後, 腫瘍部分は白色に固定され止血された. Mohs軟膏の使用工夫により, 深部の再発腫瘍に対しても出血や滲出液のコントロールに有効な場合がある.
  • 白澤 円, 服部 政治, 横田 美幸
    2012 年 7 巻 2 号 p. 550-555
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/14
    ジャーナル フリー
    がん性髄膜炎による頭痛を呈する患者に, 脊髄くも膜下腔カテーテル留置および皮下ポート設置術(以下, カテーテル留置)を行い, 抗がん剤とオピオイドの髄腔内投与ルートおよび髄液採取に用いた. 【症例】50歳代, 女性. 浸潤性乳管がんと診断され, 術前化学療法が行われたが, 頭痛の増悪と痙攣, 意識消失をきたし, 髄液細胞診でがん性髄膜炎と診断された. 抗がん剤の髄腔内注入のため, Ommaya reservoirの代替法としてカテーテル留置が緩和ケアチームに依頼され実施した. ポートより症状緩和目的のオピオイドを持続投与すると共に, 週2回髄注治療が行われ, 一時, がん細胞は陰性化, 症状治療不要となった. その後, 再発し, 全脳照射を必要としたが, 診断から5カ月生存した. カテーテル留置は, オピオイド投与だけでなく, 一般に腰椎穿刺かOmmaya reservoirを介して行われる髄腔内抗がん剤注入経路として有用な可能性が示唆された.
  • 西 智弘, 割田 悦子, 上元 洵子, 小野寺 馨, 山中 康弘
    2012 年 7 巻 2 号 p. 556-561
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/14
    ジャーナル フリー
    緒言】黄疸に合併する掻痒は, 抗ヒスタミン剤無効例が多く, 緩和に難渋する例がある. 近年, 掻痒に対するパロキセチンの効果が報告されているが, パロキセチン無効例への報告はまれである. 今回, パロキセチン無効の掻痒に対してミルタザピンが著効した1例を経験したので報告する. 【症例】56歳, 女性, 膵頭部がん・腹膜播種. 閉塞性黄疸に対してドレナージ術など行うも黄疸が遷延し, NRS (numerical rating scale) 9~10程度の, 抗ヒスタミン剤無効の全身掻痒が続いていた. 当院受診後, パロキセチンへ変更したが, 2週後にも掻痒は改善せず, 黄疸も遷延していた. しかし, ミルタザピンへ変更したところ, 翌日に掻痒はNRS 1となり, その後も掻痒の再燃は認められなかった. 【結語】パロキセチン無効の掻痒に対し, ミルタザピンは選択肢の1つとして重要である.
  • 伊藤 徹, 稲木 英治
    2012 年 7 巻 2 号 p. 562-567
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/21
    ジャーナル フリー
    症例報告】75歳, 男性. S状結腸がん同時肝多発転移にてS状結腸切除術および術後化学療法を施行したが, 次第に病状は進行しbest supportive care (BSC)へ移行した. 壮年時より軽度の内痔核を有したが, がんの悪化に伴う諸条件のため, 内痔核は脱出と疼痛を伴う状態に悪化し, 患者のquality of life (QOL)は著しく低下した. 今回, BSCの一環として通常の手術治療より患者に負担が少ないと考えられるALTA療法を施行し, 良好な結果を得た. 【結論】終末期がん患者の内痔核治療法としてALTA療法は活用できる方法であると考え, これを報告する.
  • 天野 晃滋, 馬場 美華, 杉浦 孝司, 川崎 宗謙, 中嶋 真一郎, 若山 宏, 渡壁 晃子, 国本 弘美, 上森 美和子
    2012 年 7 巻 2 号 p. 568-574
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/26
    ジャーナル フリー
    われわれ医療者は緩和ケア病棟で患者を亡くす中で, 患者が安らかに最期を迎えられなかった場合, 無力感, 敗北感や後悔の念を抱く. しかし, 日々の業務でこのような感情を表出できないことも多く, 繰り返すうちに自己効力感は低下し, バーンアウトにつながりかねない. 今回, 肝がん患者を褥瘡に起因する壊死性筋膜炎で亡くし, われわれの精神的ダメージが大きくデスカンファレンスを実施した. 直接患者に関わった者はケア中に生じた疑問, 葛藤などを話し, 表出できなかった気持ちを伝えることで, その他の者は肯定的な意見を述べることで, (1)相互理解, 信頼関係が深まり, (2)緩和ケアに対する意識が向上し, (3)ストレスコーピングとバーンアウト予防になった. これらがチーム力強化とより良いケアの実践につながるものと思われた. デスカンファレンスでの発言は, 前半では自責の念, 治療方針・主治医に対する疑問, 無力感・敗北感というカテゴリーに分かれ, 後半では肯定的評価が主であった.
  • 山田 秀久, 矢野 智之, 西里 卓次, 長町 康弘
    2012 年 7 巻 2 号 p. 575-580
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/26
    ジャーナル フリー
    目的】今回, 乳がん患者の難治性腹水に対して皮下埋め込み型の腹腔静脈シャント(PVS)造設を安全に行い, 化学療法から緩和ケアの期間, 腹水はコントロールされ外来通院が可能であった症例を経験したので報告する. 【症例】50歳代, 女性で腹部膨満主訴に受診し, 乳がん, 肝転移による腹水貯留と診断された. 利尿薬, ホルモン療法, 化学療法などを開始したが, 腹水減少はみられなかった. 外来通院治療を希望されていたため, 十分な説明のもとPVS造設を施行した. 周術期に特に合併症はみられず, がん進行後も腹水はコントロールされていた. 【結論】乳がんでは多発肝転移をもつ高度進行例であってもホルモン療法や化学療法によりある程度生命予後が期待できるため, PVS造設により腹水がコントロールできれば外来化学療法や緩和ケアを行い, QOLを維持することが可能と考えられる.
  • 梶野 友世, 柳田 京子, 吉田 憲生, 滝本 典夫, 榊原 隆志, 牧野 雅子, 高木 麻利名, 三浦 政直, 中村 不二雄
    2012 年 7 巻 2 号 p. 581-584
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/12
    ジャーナル フリー
    【緒言】ALアミロイドーシスは, アミロイド蛋白が全身諸臓器に沈着し臓器障害や末梢神経障害など多彩な症状を呈するが, その終末期に発症した外陰部関連痛にケタミンが有効であった症例を経験した. 【症例】72歳, 男性. 原発性全身性ALアミロイドーシスの終末期に日に4回程度, 1回に数十秒から3分間の激烈な外陰部突出痛を発症した. 陰部局所に異常所見はなく, 排便や腹膜透析液の充満が誘引となり, 陰茎亀頭部が陰茎内に強く牽引され激烈な痛みを生じていたことから, 骨盤神経叢を介した関連痛と考えた. すぐにケタミンで鎮痛を開始し, 50 mg/日の持続静注で痛みは消失し, ケタミン開始後17日目に永眠した. 【結論】比較的少量のケタミンが有効であった理由として, 中枢神経が1度感作されたとしても感作前の状態に戻すことができるといわれるケタミンのNMDA受容体拮抗薬としての作用が有効に働いた可能性があると考えた.
  • 栗山 俊之, 上山 栄子, 温井 由美, 中村 真理, 石徹白 しのぶ, 月山 淑, 西川 光一
    2012 年 7 巻 2 号 p. 585-590
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/12
    ジャーナル フリー
    【緒言】オピオイドによるせん妄と痛みのコントロールに難渋したため, くも膜下ポートを留置し, 在宅療養へ移行できた症例を経験したので報告する. 【症例】70歳代, 男性. 肺がん右骨盤骨転移による右下肢臀部痛のコントロール目的で痛みのコントロールを行っていたが, オピオイド増量に伴う不穏症状がみられ入院した. 【経過】入院後, 塩酸モルヒネ持続皮下注射によってオピオイド用量調節を試みたが, 不穏症状はさらに悪化した. 抗精神病薬増量と複方オキシコドン注射剤へオピオイドローテーションを行ったが, せん妄のコントロールが困難であった. 入院7日後, 硬膜外持続鎮痛を開始したところ, 痛みとせん妄は劇的に改善した. 入院15日後くも膜下ポートを留置し, 入院28日後に退院した. 【考察】本症例では, くも膜下ポートを留置することによってせん妄・痛みのコントロールが可能となり, かつ在宅療養へ移行できたものと思われた.
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