抄録
【目的】今回, 乳がん患者の難治性腹水に対して皮下埋め込み型の腹腔静脈シャント(PVS)造設を安全に行い, 化学療法から緩和ケアの期間, 腹水はコントロールされ外来通院が可能であった症例を経験したので報告する. 【症例】50歳代, 女性で腹部膨満主訴に受診し, 乳がん, 肝転移による腹水貯留と診断された. 利尿薬, ホルモン療法, 化学療法などを開始したが, 腹水減少はみられなかった. 外来通院治療を希望されていたため, 十分な説明のもとPVS造設を施行した. 周術期に特に合併症はみられず, がん進行後も腹水はコントロールされていた. 【結論】乳がんでは多発肝転移をもつ高度進行例であってもホルモン療法や化学療法によりある程度生命予後が期待できるため, PVS造設により腹水がコントロールできれば外来化学療法や緩和ケアを行い, QOLを維持することが可能と考えられる.