Palliative Care Research
Online ISSN : 1880-5302
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症例報告
薬物動態を考慮して薬剤を選択したオピオイドによって疼痛管理が可能となった短腸症候群合併デスモイド腫瘍の1例
佐藤 将之宮森 正服部 ゆかり小柳 純子坂 祥平村瀬 樹太郎石井 信朗西 智弘山岸 正
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2013 年 8 巻 1 号 p. 511-514

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抄録

【症例】40歳代, 男性. 既往に家族性大腸ポリポーシスによる大腸全摘術と腹腔内デスモイド腫瘍に対する腫瘍摘出術, 小腸大量切除の既往がある. 当院受診前まではデスモイド遺残腫瘍による腹痛と短腸症候群による下痢を自覚. 前医でフェンタニル貼付剤100 μg/時を1日5枚同時に使用しても疼痛管理は不良となり, その後はモルヒネ徐放製剤270 mg/日を中心に治療を受けていたが疼痛の訴えは続いた. 当院受診後,モルヒネ水溶液240 mg/日へ変更した結果, 変更同日からNRS 9/10から1/10と疼痛の改善を認めた. 【考察】モルヒネはおもに小腸で吸収される. 本症例は短腸症候群を合併しており, 徐放製剤を吸収する前に下痢としてモルヒネを排泄したため, 十分な疼痛管理が得られなかったと考えられる. 一方, モルヒネ水溶液は, 服用10分前後で吸収が始まるために, 短腸症候群を合併している本症例でも吸収でき, 疼痛管理が得られたと考えた.

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© 2013 日本緩和医療学会
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