Palliative Care Research
Online ISSN : 1880-5302
ISSN-L : 1880-5302
8 巻, 1 号
選択された号の論文の17件中1~17を表示しています
原著
  • 奥野 友理, 加登 大介, 長谷川 久巳, 伊藤 忠明, 箕曲 真由美, 山浦 佳子, 岸 一馬, 林 昌洋
    2013 年 8 巻 1 号 p. 101-106
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    【背景】がん終末期患者の睡眠障害はQOLに大きな影響を及ぼす. 緩和ケア病棟(PCU)ではミダゾラムが広く使用されるが, 虎の門病院の一般病棟では従来使用されておらず, 改善が必要であった. 【方法】緩和ケアチーム結成後にミダゾラムを投与した28例を対象とし, 有効性は主観的・客観的記載から3段階評価(good, fair, poor)で, 安全性は呼吸抑制および血圧低下の有無でそれぞれ後方視的に評価した. 【結果】解析対象患者は27例で, 投与期間の中央値は6 (1~151)日間, 開始量の中央値は5.0 (1.8~20.0) mg/夜間だった. 開始日の有効性はgoodが14例, fairが4例, poorが9例だった. 呼吸抑制および血圧低下で投与を中止した例はなかった. 【結論】一般病棟のがん終末期患者の睡眠障害に対して安全にミダゾラムを使用できた. 今後は安全性を保ちつつ有効性を高め, PCUと同等に睡眠障害を管理できるように検討する必要がある.
  • 三浦 智史, 松本 禎久, 沖崎 歩, 大石 麻里絵, 鈴木 時子, 元永 伸也, 坂本 はと恵, 關本 翌子, 阿部 恵子, 木下 寛也
    2013 年 8 巻 1 号 p. 107-115
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
    【背景・目的】国立がん研究センター東病院 緩和ケア病棟(PCU)では, 在宅支援診療所と連携しPCUの急性期運用に努めている. 今回, PCUから自宅への退院の予測因子を探索した. 【方法】当院PCUに入院した患者を対象とし, 入院診療録を後ろ向きに調査した. 2回目以降の入院またはperformance status (PS) 4の症例は解析から除外した. 転帰を退院群と死亡・転院群に分け, ロジスティック回帰分析を実施した. 【結果】2010年10月から2011年9月の1年間に解析対象患者は223名. 退院63名(28.3%), 死亡・転院160名(71.7%)であった. 多変量解析の結果, 自宅からの入院, PS 2以下, Spo2 97%以上, 入院24時間の摂取カロリー450 kcal以上, 呼吸困難なし, 腹部膨満感なしが独立した因子であった. 【結論】今回の結果を念頭に入院時スクリーニングを行うことで, 退院可能な患者を選択しうると考える. 本研究は後ろ向き研究で限界があるため, 今後, 前向き研究で妥当性を検証する必要がある.
  • 森田 達也, 井村 千鶴
    2013 年 8 巻 1 号 p. 116-126
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は, 緩和ケアに関する地域連携を評価する評価尺度の信頼性・妥当性を検証することである. 476名の医療福祉従事者を対象として25項目からなる「緩和ケアに関する地域連携評価尺度」を開発した. 内的一貫性は良好であった. 因子分析により7因子(他の施設の関係者と気軽にやりとりできる, 地域の他の職種の役割が分かる, 地域の関係者の名前と顔・考え方が分かる, など)が同定された. Palliative care Difficulties Scaleの地域連携に関する困難感と有意な逆相関が認められた. 地域連携の全般的評価, 多施設多職種対象の研修会の参加回数, 困った時のサポートとなる人の数, 地域での臨床経験年数との間に有意な関連があった. 「緩和ケアに関する地域連携評価尺度」は, 緩和ケアに関する地域連携を評価する尺度となりうることが示唆された.
  • 安部 正和, 米田 聡美, 久慈 志保, 田中 晶, 高橋 伸卓, 武隈 宗孝, 平嶋 泰之
    2013 年 8 巻 1 号 p. 127-134
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/03/08
    ジャーナル フリー
    【目的】オランザピンは抗がん剤に伴う悪心に有効性が示されているが, 標準支持療法との併用効果は不明である. 本研究の目的は, 標準支持療法抵抗性の悪心に対するオランザピンの併用効果を検証することである. 【方法】標準支持療法を行っても急性期または遅発期にgrade 3の悪心を呈した高度催吐性化学療法20例に, オランザピン5 mgを治療前日から7日間併用した. オランザピン併用による悪心抑制率(grade 0~1)を後方視的に検討した. 【結果】オランザピン併用前の急性期, 遅発期, 全期間の悪心抑制率はそれぞれ, 30%, 0%, 0%であったが, オランザピン併用により95%, 95%, 90%と, いずれも有意に低下した(p<0.001). grade 1~2の眠気を50%に認めたが, grade 3~4の有害事象は認めなかった. 【結論】標準支持療法に抵抗性の悪心に対して, オランザピン併用の有効性が示唆された.
  • 西森 久和, 高下 典子, 西本 仁美, 露無 祐子, 松島 幸枝, 久山 めぐみ, 福武 恵, 井上 佳子, 藤田 百惠, 平田 泰三, ...
    2013 年 8 巻 1 号 p. 135-141
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/03/08
    ジャーナル フリー
    【目的】CVポート留置による合併症を回避することは, 抗がん剤治療, 緩和医療を受ける症例にとって重要である. 【方法】2006年10月~2011年12月に, 岡山大学病院 腫瘍センターでCVポートを介して外来化学療法を施行した大腸がん患者68例におけるCVポート関連合併症を後方視的に検討した. 【結果】CVポート関連トラブルを20例(29.4%) に認め, そのうちルート閉塞または逆血不可を15例に認めた. この15例中, 10例は逆血不可以外の合併症なく, 継続して抗がん剤投与が可能であったが, 残り5例はさらなる合併症のため, CVポートの入れ替えが必要であった. 鎖骨下静脈穿刺・左側静脈穿刺によるCVポート留置が, ルート閉塞のリスク因子であった. 【結論】CVポート関連合併症のうち, 特に逆血不可の症例に関して約1/3は潜在的にCVポートの入れ替えが必要な可能性があることを認識すべきである.
  • 柚木 三由起, 馬場 華奈己, 高下 典子, 市原 英基, 松永 尚, 野上 浩實, 松岡 順治
    2013 年 8 巻 1 号 p. 142-157
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/03/13
    ジャーナル フリー
    【目的】岡山県民の緩和ケアに対する理解度およびその経年変化を知り, 今後の野の花プロジェクトによる緩和ケア普及活動の参考とすることを目的とした. 【対象と方法】岡山県在住で20歳以上の一般県民600人を対象とした電話アンケート調査を2009年度と2010年度に行い, 比較検討した. 【結果】「緩和ケアという言葉を聞いたことがある」人は2009年37.3%, 2010年36.5%と不変であったが, 本人・家族ががんに罹患している場合は41.6%, 43.2%と軽度増加していた. 「緩和ケアについて聞きたい」との回答は2009年87.9%, 2010年86.3%で引き続き関心は高かった. 【考察】2009年度と2010年度を比較し, 岡山県民の緩和ケアへの認知度に著しい変化はみられなかった. しかしながら, 緩和ケアへの関心は高く, 今後も地道に普及活動を継続し, 緩和ケアの認知度を高めていくことが必要と考えられた.
  • 村上 敏史, 岩瀬 哲, 西川 満則, 的場 元弘
    2013 年 8 巻 1 号 p. 158-167
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/04/05
    ジャーナル フリー
    【目的】在宅医療における高齢がん患者の疼痛治療の把握のため, 在宅医療に従事している医師にインターネット調査を行い323名から回答を得た. 75歳以上の高齢がん患者を認知機能低下を伴う(認知機能低下群), 伴わない患者群(認知機能正常群)に分け, 回答の差をχ2検定で検定した. 【結果】「患者はがんの痛みを適切に表現できる」と答えた医師の割合は認知機能低下群で有意に低く(p=0.0043), 「オピオイドの鎮痛効果の評価は困難」「オピオイドの調節は困難」と答えた割合は認知機能低下群で有意に高かった(いずれもp<0.0001). 【考察】疼痛治療は良好と感じている医師の割合は認知機能低下群で有意に低く(p<0.0001), 認知機能低下を伴う高齢者では, 痛みの評価とオピオイドの効果判定が困難であることにより適切な鎮痛が困難であると医師が考えていることが分かり, 認知機能低下を伴う高齢者への適切な対応が重要であることが考えられた.
  • 木内 大佑, 久永 貴之, 清澤 源弘, 安堂 真実, 下川 美穂, 東 健二郎, 志真 泰夫
    2013 年 8 巻 1 号 p. 168-176
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/05/02
    ジャーナル フリー
    【目的】眼瞼けいれんは, 眼輪筋の過度な収縮により不随意な閉眼が生じる疾患である. 研究の目的は終末期がん患者における, 眼瞼けいれんの有病率や重症度, 苦悶様顔貌と眼瞼けいれんや苦痛の関係について明らかにすることである. 【方法】2010年10~12月に, 筑波メディカルセンター病院に入院した全症例に対して前向き観察研究で, 若倉法と瞬目負荷試験による診断, 眼瞼ジストニアの程度分類による重症度評価を行った. 【結果】評価対象51名中診断19名 (37.3%), うち9名は5段階で3以上の重症度であった. 抗精神病薬やベンゾジアゼピン系薬剤を使用中の症例が多く, 薬剤調整した7例すべてで改善がみられた. 診断例では眉間のしわと苦痛の有無に相関を認めず, 終末期がん患者の苦悶様顔貌は苦痛残存以外に表情筋緊張の要素も考慮すべき可能性がある. 【考察】眼瞼けいれんは緩和ケア病棟でも一定頻度みられる病態で, QOL低下につながっている. 見逃さずに評価を行い, 薬剤調整を検討することが望ましい.
短報
  • 長井 直子, 森本 卓, 野村 孝, 佐々木 洋, 本多 修
    2013 年 8 巻 1 号 p. 301-311
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/01/17
    ジャーナル フリー
    【目的】心理的問題を抱えた乳がん患者に対する臨床心理的介入の意味と効果を, 介入内容とその相談内容に基づき分析・検討した. 【方法】対象は, 心理的不安や抑うつを訴え, 主治医または本人からの依頼に基づき臨床心理士が介入した入院または外来通院中の女性乳がん患者20名で, 臨床心理士の介入のみ行った一般症例15名と, さらに精神科治療を要した特定症例5名に分類した. また, それぞれ告知・継続治療症例と病状進行症例に分類を行った. 【結果】一般症例では告知・継続治療症例すべてで介入効果がみられたが, 病状進行症例(6例中2例)では顕著ではなく, 特定症例では告知・継続治療症例(3例中2例), 病状進行症例(2例中2例)ともに臨床心理士の介入が有用であった. 【結論】臨床心理士が介入することで, 一般症例と精神科治療を要する特定症例をアセスメントすることができ, 患者の病状やニーズに応じた介入を行うことができた.
  • 廣岡 佳代, 茶園 美香, 鏡 朋子
    2013 年 8 巻 1 号 p. 312-318
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/06/28
    ジャーナル フリー
    【目的】親の死は, 大人だけでなく子どもにとってもつらく, 悲しい経験である. 本調査の目的は, 親を亡くす子どもに対する看護師のケアを記述することである. 【方法】緩和ケア病棟に勤務する看護師11名を対象に半構成的面接を行った. 【結果】インタビュー内容を分析した結果, 親を亡くした子どもへの関わりとして,【子どもの様子を捉える】【子どもにケアを提供するための基盤をつくる】【子どもが患者と一緒に過ごせるよう調整する】【子どもに親の病状や行っていることを説明する】【他のスタッフと連携する】が示された. 【結論】今後, 看護師を含めたその他の医療者の子どもへの関わりを示すとともに, 家族のニーズや思いなども明らかにし, 終末期の親をもつ子どもに対する支援方法を検討していく必要がある.
症例報告
  • 岡 直子, 田口 奈津子, 小宮山 政敏, 岩崎 寛
    2013 年 8 巻 1 号 p. 501-506
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/03/08
    ジャーナル フリー
    【目的】統合医療が注目されてきている中で植物の療法的効果が明らかになってきたが, 緩和ケアにおいて園芸療法が導入されている例は少ない. 本研究では, 緩和ケアにおいて個人対象の園芸療法を行い, 患者の体験を分析考察した. 【結果と考察】フェイススケールスコアからは園芸療法を実施した日はしなかった日に比べて疼痛が改善することが多く, 発芽や開花, 結実といった植物と触れ合うことの効果が良い影響を与えた可能性が推察された. 看護師日誌の観察記録と園芸療法士の観察記録を比較した結果, 会話の性質が異なり, 双方への患者の対応の違いが示された. 【結論】多分野の関わりが必要な緩和ケアでの統合医療の1つとして園芸療法が有用である可能性が示唆された.
  • 柴原 弘明, 安藤 啓, 西村 大作
    2013 年 8 巻 1 号 p. 507-510
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/05/02
    ジャーナル フリー
    【緒言】従来の一般的な内服や外用薬に対して治療抵抗性の皮膚掻痒感をもつがん患者では, 症状緩和に難渋する. 【症例】72歳, 女性. 肺がん膵転移に伴うがん性疼痛に対してオキシコドン徐放剤を投与し, また閉塞性黄疸に対して内視鏡的胆道ドレナージを行った. 皮膚掻痒感がみられたため, 外用薬・内服(ミルタザピンと漢方)の投与を行ったが改善しなかった. 難治性皮膚掻痒感と診断しプレガバリンを投与した. 低用量で開始後増量し, 投与3日目に改善効果がみられた. 最終的には皮膚掻痒感のNumerical Rating Scaleは投与前8/10から投与後0~1/10となり, 症状緩和が得られた. 【考察】プレガバリンが皮膚掻痒に有効であるという海外の先行研究がみられている. 自験例でも, プレガバリンにより難治性皮膚掻痒感の症状緩和を得ることができた. 【結論】プレガバリンは, 難治性皮膚掻痒感に対する有効な治療の選択肢の1つと考えられる.
  • 佐藤 将之, 宮森 正, 服部 ゆかり, 小柳 純子, 坂 祥平, 村瀬 樹太郎, 石井 信朗, 西 智弘, 山岸 正
    2013 年 8 巻 1 号 p. 511-514
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/06/07
    ジャーナル フリー
    【症例】40歳代, 男性. 既往に家族性大腸ポリポーシスによる大腸全摘術と腹腔内デスモイド腫瘍に対する腫瘍摘出術, 小腸大量切除の既往がある. 当院受診前まではデスモイド遺残腫瘍による腹痛と短腸症候群による下痢を自覚. 前医でフェンタニル貼付剤100 μg/時を1日5枚同時に使用しても疼痛管理は不良となり, その後はモルヒネ徐放製剤270 mg/日を中心に治療を受けていたが疼痛の訴えは続いた. 当院受診後,モルヒネ水溶液240 mg/日へ変更した結果, 変更同日からNRS 9/10から1/10と疼痛の改善を認めた. 【考察】モルヒネはおもに小腸で吸収される. 本症例は短腸症候群を合併しており, 徐放製剤を吸収する前に下痢としてモルヒネを排泄したため, 十分な疼痛管理が得られなかったと考えられる. 一方, モルヒネ水溶液は, 服用10分前後で吸収が始まるために, 短腸症候群を合併している本症例でも吸収でき, 疼痛管理が得られたと考えた.
  • 佐藤 将之, 宮森 正, 小柳 純子, 村瀬 樹太郎, 坂 祥平, 石井 信朗, 西 智弘, 山岸 正, 石黒 浩史
    2013 年 8 巻 1 号 p. 515-522
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/06/07
    ジャーナル フリー
    【目的】脊髄圧迫症状は, がん患者のQOLを大きく低下させる合併症である. 脊髄圧迫症状を合併した患者に対するデキサメタゾン大量療法の有効性や副作用についてレ卜口スペクティブに検討し, 報告した. 【症例】2009年5月から2011年9月までに当院でデキサメタゾン大量療法のみを, 脊髄圧迫症状を合併した8症例に対して行った. 【結果】放射線照射や外科的治療を併用できずデキサメタゾン大量療法のみを行った患者8例のうち, 徒手筋力テストの改善を4例(50.0%)に, 改良Frankel分類の改善を5例(62.5%)に認めた. デキサメタゾン大量療法のみで, 歩行不可能であった7例のうち1例(14.3%)が自力歩行での退院となった. 自験例では重篤な副作用はなかった. 【考察】放射線照射や外科的治療を受けることができない脊髄圧迫症状に対してのデキサメタゾン大量療法が神経症状を改善する選択肢として有用である可能性が示唆された.
  • 柴原 弘明, 世古口 英, 竹下 祥敬, 鈴木 伸吾, 森本 美穂, 稲熊 幸子, 森 陽子, 工藤 壽美代, 太田 由美, 西村 美佳, ...
    2013 年 8 巻 1 号 p. 523-528
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/06/29
    ジャーナル フリー
    【緒言】フェンタニル貼付剤による色素沈着の報告は現在までにみられない. 【症例】43歳, 男性. 直腸がん術後再発に対して, セツキシマブ+イリノテカン療法後, パニツムマブ+FOLFIRI療法を施行した. がん疼痛に対して, フェンタニル貼付剤(フェントス®)投与し, 再発部位に後方からの放射線療法を行った. 経過中, 胸部と腹部のフェンタニル貼付剤の貼付部位に色素沈着がみられた. 貼付中止後, 4カ月でほぼ消失した. 【考察】色素沈着の機序として, フェンタニル貼付剤による接触皮膚炎後の炎症後色素沈着である可能性が高い. 正確な機序の解明のためには, パッチテスト・皮膚生検が望ましい. 【結論】フェンタニル貼付剤投与時には, 色素沈着に留意する必要がある.
  • 鈴木 梢, 黒田 俊也, 嶋津 奈, 藤井 由貴, 宮崎 百合, 前田 隆司, 田中 桂子
    2013 年 8 巻 1 号 p. 529-533
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/06/29
    ジャーナル フリー
    【目的】減圧目的の胃瘻からのバルプロ酸ナトリウム投与により有効な血中濃度が得られ, せん妄と薬剤性錐体外路症状緩和に有用であった症例を経験したので報告する. 【症例】70歳代, 男性. 膀胱がん. がん性腹膜炎による麻痺性腸閉塞のため, 減圧目的の胃瘻が造設されていた. せん妄を発症しハロペリドール持続注射を行ったが, 薬剤性錐体外路症状とみられる振戦により継続困難であった. そのため, 減圧目的の胃瘻からバルプロ酸ナトリウムを投与すると, 十分な血中濃度上昇を認め, 臨床的にも易怒性軽減を認めた. クエチアピンフマル酸塩も併用し, 最終的にハロペリドールは中止可能となり, 振戦も改善した. 【結論】内服が困難な場合, 薬剤が限られ, 症状緩和に難渋することが多い. 本症例から, 他の経路からの薬剤投与が困難な場合に限り, 難治性せん妄に対する減圧目的の胃瘻からのバルプロ酸ナトリウム投与が効果的である可能性が示唆された.
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