主催: 一般社団法人日本周産期・新生児医学会
会議名: 周産期学シンポジウム
回次: 1
開催地: 東京都
開催日: 1983/01/23
p. 54-58
I 胎生期にみられる血液凝固~線溶
胎生期の血液凝固に関する研究は,その技術的な困難さも手伝ってか,極めて限られているのが現状である。
Wintrobe1)によれば,肝における造血は,胎生の6週からはじまるとされ,また,Zilliacus2)によれば10週頃には血小板も血中にあらわれるという記載もみられる。
人工流産の胎児の末梢血,および臍帯血などを用いて施行したフィブリノーゲン,トロンボテストの自験例と,Bleyer3)のプロトロンビン時間等の成績をまとめて示すと図1のようになる。フィブリノーゲンは,胎生17週頃から1OOmg/dl前後の値が認められ,また,トロンボテストは10%前後の値を示した。
新生児においては,各凝固因子の低下がみられるにもかかわらず,凝固時間はむしろ短縮し,血栓弾性図(TEG. Thromboelastgram)などでは凝固亢進の像がみられるなど,いくつかの条理に反する現象がみられるが,その各々の値を表1に示した。
この表にみる特徴は,次のようにまとめられる。
(1) 凝固系では,第V, 第VIII因子以外の因子は低下している。
(2) 線溶系では,いずれの検査においても亢進している。
(3) 血小板は数においてやや減少,機能において低下を認める。