周産期学シンポジウム抄録集
Online ISSN : 2759-033X
Print ISSN : 1342-0526
第1回
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シンポジウム I: 胎児の機能的成熟―超未熟児の成育限界をめぐって
肝の成熟度の指標としての胎児・新生児の血液凝固学的検索
鈴木 重統
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p. 54-58

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抄録

 I 胎生期にみられる血液凝固~線溶

 胎生期の血液凝固に関する研究は,その技術的な困難さも手伝ってか,極めて限られているのが現状である。

 Wintrobe1)によれば,肝における造血は,胎生の6週からはじまるとされ,また,Zilliacus2)によれば10週頃には血小板も血中にあらわれるという記載もみられる。

 人工流産の胎児の末梢血,および臍帯血などを用いて施行したフィブリノーゲン,トロンボテストの自験例と,Bleyer3)のプロトロンビン時間等の成績をまとめて示すと図1のようになる。フィブリノーゲンは,胎生17週頃から1OOmg/dl前後の値が認められ,また,トロンボテストは10%前後の値を示した。

 新生児においては,各凝固因子の低下がみられるにもかかわらず,凝固時間はむしろ短縮し,血栓弾性図(TEG. Thromboelastgram)などでは凝固亢進の像がみられるなど,いくつかの条理に反する現象がみられるが,その各々の値を表1に示した。

 この表にみる特徴は,次のようにまとめられる。

 (1) 凝固系では,第V, 第VIII因子以外の因子は低下している。

 (2) 線溶系では,いずれの検査においても亢進している。

 (3) 血小板は数においてやや減少,機能において低下を認める。

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© 1983 日本周産期・新生児医学会
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