周産期学シンポジウム抄録集
Online ISSN : 2759-033X
Print ISSN : 1342-0526
第10回
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シンポジウム B:臨床編:超未熟性と生育限界
胎外生命維持と皮膚
皮膚の成熟は生育限界を規定するか
戸苅 創三宅 能成浜田 実那小田 高也永井 幸代大木 茂加藤 稲子兵藤 潤三宮口 英樹側島 久典鈴木 重澄小林 正紀和田 義郎多田 豊曠
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p. 115-121

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抄録

 はじめに

 皮膚の成熟が果たして生育限界を規定するか否かについて考えるとき,ヒトの皮膚のもつ生理学的機能を考慮しなければならない。そして改めてヒトの皮膚の生命維持としての機能に驚嘆する。

 ヒトにおいて皮膚は人体最大の多目的臓器といえる。その諸機能を表1に示した。いわゆる成熟した皮膚を考えればわかることであるが,まず極めて多彩な感覚(圧覚,温覚,冷覚,痛覚,触覚,深部感覚)をもつ極めて繊細な臓器である。機械的刺激,温熱,寒冷,化学的毒物,微生物,紫外線,液体,ガスなどの体外からの各種の刺激から守るいわゆる対外保護臓器としても無視できない。一方,細網内皮系作用,抗体の産生,あるいは体液の保持など対内保護臓器としてもその機能を発揮している。さらに,皮脂分泌,汗分泌,ビリルビンの分解,老廃物の排泄,ビタミンD3の合成など多くの代謝機能をもついわゆる代謝臓器でもある。その他,体温調節臓器としては,不良伝導体として働き,血管拡張や汗分泌による熱の放散を盛んに行っている。血管収縮による血圧維持臓器としても無視できない。また,水分の保持に関しては,人体の中で筋肉に次いで多量の水を蓄積保持している臓器でもある。

 このように,まさになくてはならない皮膚であるが,未熟児あるいは超未熟児における皮膚の特徴は何であろうか,さらに,在胎何週頃からこれらの諸機能が維持できるだけの成熟化が起こるのであろうか,といった難題について考察することとする。

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© 1992 日本周産期・新生児医学会
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