主催: 一般社団法人日本周産期・新生児医学会
会議名: 周産期学シンポジウム:中枢神経系の発達障害からみた周産期医療
回次: 13
開催地: 東京都
開催日: 1995/01/21
p. 17-26
序言
過去12年間に府立母子医療センター新生児科に入院した28週未満489名の生存率を検討すると,1986年以降には25週以上の生存率が90%を超えて安定した(図1)。大きな進歩であるが,成熟児に比べて危険率が大きいことに変わりはない。本稿でこれを解析する対象は学齢期に達した超低出生体重児で,生存率が安定化する1986年までの子供である。超低出生体重児生存児の3歳の予後をみると,軽い発達障害を含めると約24%に問題がみられる(表1)。そのうち重い障害の頻度は約13%である。医療が進歩して生存率が改善しても,その結果生存する子供には発達障害を残すという考え方があるが,それは正しくないことが年次推移の検討から明らかになっている。
本稿に与えられた課題は,この子供達が小学生になったときの発達を評価して,周生期の要因との関連性を検討することである。超早産で出生した子供が生存し成長する過程の解明はまだ研究途上にある。学齢期の予後とは,子供の現状を評価することであるが,学齢期になって初めて評価可能になる項目や,そのころに顕在化する問題が中心課題になる。こうした点についての研究を進めることによって,今われわれが進めている医療へフィードバックが可能になり,医療の改善に役立つ情報を得ることが可能になると思われる。