主催: 一般社団法人日本周産期・新生児医学会
会議名: 周産期学シンポジウム:胎児・新生児の予後に影響を及ぼすウイルス感染
回次: 18
開催地: 東京都
開催日: 2000/01/22 - 2000/01/23
p. 101-114
はじめに
新生児期のウイルス感染症では,血小板減少症を時に合併することがある。多くの場合,一過性で軽快するが,一部のエンテロウイルス感染症では重症化し,肝不全・DIC・多臓器不全の末,不幸な転帰に至る。母親からのウイルスの垂直感染でも,無症候性キャリアーで終わるウイルスから,全身型単純ヘルペス感染症のように致死率の高い顕性感染まで多彩な病像を呈する。同じ種類のウイルス感染症であっても新生児の場合,その臨床経過は成人とはずいぶん異なることか多々ある。また,予備能力の少ない新生児期には,ウイルス感染症だけでなく細菌感染症でも,一過性の血小板減少を合併することがある。ただ,出血を伴いやすく新生児にとってはやや侵襲性が高い検査であること,治療によって改善することが多いため骨髄穿刺まで行われる例は少ない。
ウイルス関連性血球貪食症候群(virus associated hemophagocytic syndrome;VAHS)は,ウイルス感梁症をきっかけに高サイトカイン血症をきたし,組織球の過剰な増殖と血球貪食を特徴とする疾患である,自然寛解する場合もあるがDIC・多臓器不全などを合併しやすく死亡率も高い。免疫不全・膠原病・造血器腫瘍のような基礎疾患に続発する場合と基礎疾患のない小児での発症に分かれるが,新生児早期における報告はまだ少ない1~4)。われわれは,母親からのウイルスの垂直感染によって肝機能障害・高LDH血症・高フェリチン血症・DIC・血小板減少症をきたしたVAHS 3例を経験したので報告する。