周産期学シンポジウム抄録集
Online ISSN : 2759-033X
Print ISSN : 1342-0526
第24回
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シンポジウム午後の部
超早産症例の周産期管理
―在胎22週から25週の早産症例におけるFetal inflammationと児の生後24時間の循環動態との関連―
古川 誠志鮫島 浩道方 香織稲森 美香児玉 由紀川越 靖之金子 政時池田 智明池ノ上 克
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p. 89-94

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抄録

 緒言

 近年,出生前の胎児を取り巻く炎症反応と脳性麻痺の関連がクローズアップされている。Murphyらは絨毛膜羊膜炎や前期破水,母体感染があると脳性麻痺のリスクが増すと報告した1)。以後,胎児の炎症と低出生体重児の脳室内出血(IVH)や脳質周囲白室軟化症(PVL)などの脳血管障害との関連が明らかにされてきた2, 3)

 疫学的にはその関連は疑いないが,病因論として胎児炎症が新生児の神経障害を引き起こすメカニズムは必ずしも明らかにされてはいない。現在,炎症による神経障害のメカニズムには,産生された炎症性サイトカインの神経細胞への直接的な作用以外に,循環障害を惹起する経路が想定される。低出生体重児における循環障害はIVHやPVLなどの脳血管障害の発生要因である。特にIVHは600g未満の早産児の死亡原因の約2割を占める4)。病理学的には静脈性の出血を呈し,脳血流の還流異常がその病因と考えられている5)。この還流異常は炎症を発端とする局所性(脳循環)あるいは全身性(体循環)の循環障害が原因である。成人領域でSIRS(systemic inflammatory response)として広く認識されている病態では,感染症やその他の原因で過剰な炎症反応が生じ,全身性の循環障害を引き起こす。しかしながら,胎児の炎症反応が新生児期の循環動態に与える影響はまだあまり知られていない6, 7)。特に,脳室内出血を起こす危険性の高い超低出生体重児を対象とした胎児炎症反応に関する研究は非常に少ない。病理学的検討では妊娠30週以下の早産例の約70%に絨毛膜羊膜炎を認めることからも8),より若い妊娠週数における炎症の新生児循環への影響を評価し,脳血管障害との関連を検討する必要がある。

 そこで今回我々は在胎25週以下の超早産症例を対象に,胎児炎症が新生児期の早期循環,特に体循環に与える影響を後方視的に調査し,胎児炎症症候群のもつ臨床的重要性を明らかにすることを目的とした。

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© 2006 日本周産期・新生児医学会
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