主催: 一般社団法人日本周産期・新生児医学会
会議名: 周産期学シンポジウム:周産期の輸血療法をめぐって
回次: 25
開催地: 大阪府
開催日: 2007/01/19 - 2007/01/20
p. 85-90
はじめに
周産期・新生児医療の進歩により極低出生体重児の生存率は四半世紀で大きく改善した。Kusudaら1)により日本での全国調査による2003年出生の極低出生体重児の生存率は89%と報告されている。一方,極低出生体重児の輸血についての全国的な報告はない。1990年以降の出生を対象とした欧米の報告では超低出生体重児の赤血球輸血の率は61.9~92.9%と報告されている2~5)。わが国では赤血球輸血率は55.6~75.0%6~8)と報告されており,1995年のエリスロポエチン導入後も超低出生体重児は依然,輸血のハイリスク集団である。さらに,最近のコクランレビューでは極低出生体重児の生後1週以内のエリスロポエチン投与の開始はIII度以上の未熟児網膜症の頻度を増加させることが示され,より早期の使用の傾向に警鐘が鳴らされた9)。
1993年,Kinmondら10)は出生時の循環血液量を増加させる目的で臍帯の後期結紮を行い,早期結紮と比較して有意にヘマトクリット値の高値と輸血量の低下を報告した。
一方,わが国では,1994年に満本ら11)は後期結紮に代えて臍帯のmilkingによる影響を検討し輸血に関しては有意差はみられなかったものの,生後24時間のヘモグロビン値に高い傾向(P=0.054)を報告している。
今回,我々は前方視的に早産児におけるmilkingによる輸血および出生時のヘモグロビン濃度に対する影響について検討したので報告する12)。