主催: 一般社団法人日本周産期・新生児医学会
会議名: 周産期学シンポジウム:周産期と医療安全
回次: 28
開催地: 京都府
開催日: 2010/01/15 - 2010/01/16
p. 99-104
背景
近年の周産期医療は,施設不足,人員不足により余裕のない現状から母体搬送を受け入れられず,大きな社会問題として取り上げられている。我々が担っている周産期医療における特徴のひとつに,母体搬送,新生児搬送が一刻も早く必要なケースがあり,近隣で受け入れ先がみつからない場合はきわめて深刻である。母体・胎児あるいは新生児の生命を脅かす深刻な問題であり,早急な対策が必要であるにも関らず,安心して医療を行える余裕のある周産期体制を築きあげるには今後多くの時間を必要とする。現在の状況で可能な対応を以下に考えてみた。
切迫早産は母体搬送のうちでも頻度の高い疾患である。その臨床症状からただちに早産に至り,新生児集中治療室(neonatal intensive care unit;NICU)を必要とする場合もあれば,治療により早急な分娩を回避でき,妊娠が延長可能となればNICUベッドが必要な確率は次第に低下し,正期産まで妊娠が継続すればほぼベッドは不要となることもある。このことから切迫早産の診断で母体搬送を決定する際,分娩時期をおおよそ事前に知ることが可能であれば,効率のよい周産期医療を担えるはずである。現在の限られた周産期医療現場において,切迫早産の分娩時期の予測は,母体搬送の必要性あるいはNICUベッドの早急な確保を考慮するうえできわめて役立つ貴重な情報になりえると考えられる。