周産期学シンポジウム抄録集
Online ISSN : 2759-033X
Print ISSN : 1342-0526
第28回
会議情報

シンポジウム午後の部:周産期医療システムと医療安全
切迫早産例の分娩時期を予測することによるNICU病床の有効活用
米田 哲塩崎 有宏斎藤 滋伊奈 志帆美
著者情報
会議録・要旨集 フリー

p. 99-104

詳細
抄録

 背景

 近年の周産期医療は,施設不足,人員不足により余裕のない現状から母体搬送を受け入れられず,大きな社会問題として取り上げられている。我々が担っている周産期医療における特徴のひとつに,母体搬送,新生児搬送が一刻も早く必要なケースがあり,近隣で受け入れ先がみつからない場合はきわめて深刻である。母体・胎児あるいは新生児の生命を脅かす深刻な問題であり,早急な対策が必要であるにも関らず,安心して医療を行える余裕のある周産期体制を築きあげるには今後多くの時間を必要とする。現在の状況で可能な対応を以下に考えてみた。

 切迫早産は母体搬送のうちでも頻度の高い疾患である。その臨床症状からただちに早産に至り,新生児集中治療室(neonatal intensive care unit;NICU)を必要とする場合もあれば,治療により早急な分娩を回避でき,妊娠が延長可能となればNICUベッドが必要な確率は次第に低下し,正期産まで妊娠が継続すればほぼベッドは不要となることもある。このことから切迫早産の診断で母体搬送を決定する際,分娩時期をおおよそ事前に知ることが可能であれば,効率のよい周産期医療を担えるはずである。現在の限られた周産期医療現場において,切迫早産の分娩時期の予測は,母体搬送の必要性あるいはNICUベッドの早急な確保を考慮するうえできわめて役立つ貴重な情報になりえると考えられる。

著者関連情報
© 2010 日本周産期・新生児医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top