主催: 一般社団法人日本周産期・新生児医学会
会議名: 周産期学シンポジウム:周産期の炎症と感染〜長期予後改善を目指して〜
回次: 33
開催地: 静県岡
開催日: 2015/01/23 - 2015/01/24
p. 15-25
目的
感染と炎症は,周産期予後を悪化させる因子として広く知られている。絨毛膜羊膜炎(chorioamnionitis:CAM)は早産や前期破水のリスク因子であり,炎症が子宮内や胎児に波及すると胎児炎症反応症候群(fetal inflammatory response syndrome:FIRS)などにより炎症性高サイトカインに暴露されることで,胎児の脳や肺などさまざまな臓器に障害を引き起こすことが知られている。しかし,これらの感染や炎症の程度や胎児への影響を出生前に診断することは困難であり,さまざまな試みがなされているのが現状である。例えばCAMの診断は生後の胎盤及び付属物での病理学的検索により初めて診断が可能である。そのため臨床的CAM(clinical CAM:cCAM)として母体発熱や白血球数などを組み合わせた診断基準が提唱されているが,診断基準に関してもいくつかの報告があり,施設ごとに臨床的にはカットオフ値や項目を柔軟に対応し娩出時期を決定しているのが実情であろう。cCAMと子宮内感染という用語に関しても厳密に区別を行って使用している施設と,同義として使用している施設が存在すると考えられる。また,cCAMと診断しても妊娠の延長を行うか,娩出を行うかの判断は,炎症や感染の程度に加えて在胎週数や推定体重も関わってくるため,治療方針の施設間バリエーションは幅広いものがあると予測される。
今回のアンケート調査では,施設間の診断基準や治療方針のバリエーションを調査すべく,周産期の感染と炎症における産科側因子である「cCAM」に焦点をあて,診断基準,検査項目,カットオフ値,出生後のCAMおよび新生児感染に対する確認試験項目,在胎週数に合わせた娩出基準,炎症及び感染のパラメータや胎児情報による娩出基準などの項目に対して調査を行い,実態を明らかにすることを目的とした。