主催: 一般社団法人日本周産期・新生児医学会
会議名: 周産期学シンポジウム:母児の予後からみた娩出のタイミングと方法
回次: 34
開催地: 兵庫県
開催日: 2016/02/05 - 2016/02/06
p. 65-69
背景
産婦人科診療ガイドライン 産科編(2008,2011,2014)(以下「ガイドライン」)1)では,前置胎盤の予定帝王切開は妊娠37週末までに行うことが推奨されている。ガイドライン作成に用いられた根拠論文の一つである米国の報告2)によると,約61,000件の前置胎盤単胎妊娠後方視的コホート研究では,周産期死亡率が最も低かったのは妊娠37週台(0.1%)での帝王切開であり,38週以降では周産期死亡率が増加していた。しかし,わが国の基幹周産期施設における前置胎盤の取り扱いの実態,特に産婦人科診療ガイドライン産科編出版以降の帝王切開実施施行週数などの実態が不明である。そこで,2001年より従来の周産期死亡登録から全数登録に拡張された日本産科婦人科学会周産期登録データベース(JSOG周産期DB)の登録レコードの解析により,後方視的に全国規模での動向調査が可能となると考えられた。JSOG周産期DBの登録施設数は,2001〜2013年にかけて116施設から301施設に増加した。全登録症例数は1,093,632例(全出産の約7%),周産期死亡数は8,980例(全出産の約20%)である。登録施設の特徴としては,ハイリスク症例が集積する2次・3次施設がほとんどで,NICUをもつ施設が約70〜85%,周産期センターが約70%である。このため,登録レコードは施設バイアスを伴っており,population baseのデータとはいえないが,今回の目的のためには利用可能と考えられた。