周産期学シンポジウム抄録集
Online ISSN : 2759-033X
Print ISSN : 1342-0526
第35回
会議情報

シンポジウム午後の部:遺伝学的出生前診断を考える
[関連演題]遺伝カウンセリング・胎児診断に特化した施設の運営経験から見えてきたこと
中村 靖
著者情報
会議録・要旨集 フリー

p. 87-92

詳細
抄録

 緒言

 わが国は,周産期死亡率,妊産婦死亡率ともに世界有数の低さを誇り,そのことには,洗練された妊婦健診のシステムに代表される妊産婦管理および周産期管理体制が寄与していることは,疑いのない事実である。その一方で,妊婦の高齢化が進むとともに,染色体異常児の出生が増加傾向にあることや,先天性疾患の胎児診断率は必ずしも高くはなく,その発見時期も遅い傾向にあるなど,胎児についての検査・診断体制は,他の先進国に比べて遅れをとっている。

 私たちは,2013年9月に,遺伝カウンセリングと胎児検査・診断に特化した医療施設を開設し,通常行われている妊婦健診では十分にカバーしきれていない可能性のある遺伝学的検査や胎児超音波検査を受けることのできる場を提供している。臨床遺伝専門医資格をもつ常勤医2名と,認定遺伝カウンセラー2名を擁するほか,妊娠初期胎児超音波検査のライセンスを取得している非常勤医4名と助産師1名が診療にあたっている。可能なかぎりかかりつけ医と連携し,情報提供を行い,必要に応じて高次医療機関へつなぐ役割を担っている。こういった業務を行うなかで,わが国の現時点での妊婦診療の問題点を整理し,より良い診療に結びつける必要性が実感されるようになった。

著者関連情報
© 2017 日本周産期・新生児医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top