主催: 一般社団法人日本周産期・新生児医学会
会議名: 周産期学シンポジウム:周産期における「遺伝」を考える
回次: 35
開催地: 大阪府
開催日: 2017/02/10 - 2017/02/11
p. 87-92
緒言
わが国は,周産期死亡率,妊産婦死亡率ともに世界有数の低さを誇り,そのことには,洗練された妊婦健診のシステムに代表される妊産婦管理および周産期管理体制が寄与していることは,疑いのない事実である。その一方で,妊婦の高齢化が進むとともに,染色体異常児の出生が増加傾向にあることや,先天性疾患の胎児診断率は必ずしも高くはなく,その発見時期も遅い傾向にあるなど,胎児についての検査・診断体制は,他の先進国に比べて遅れをとっている。
私たちは,2013年9月に,遺伝カウンセリングと胎児検査・診断に特化した医療施設を開設し,通常行われている妊婦健診では十分にカバーしきれていない可能性のある遺伝学的検査や胎児超音波検査を受けることのできる場を提供している。臨床遺伝専門医資格をもつ常勤医2名と,認定遺伝カウンセラー2名を擁するほか,妊娠初期胎児超音波検査のライセンスを取得している非常勤医4名と助産師1名が診療にあたっている。可能なかぎりかかりつけ医と連携し,情報提供を行い,必要に応じて高次医療機関へつなぐ役割を担っている。こういった業務を行うなかで,わが国の現時点での妊婦診療の問題点を整理し,より良い診療に結びつける必要性が実感されるようになった。