2017年2月10日(金),11日(土・祝)に,第35回周産期学シンポジウムを大阪市のナレッジキャピタルコングレコンベンションセンターにおいて開催いたしました。1,000名以上の参加者をお迎えし,盛会に終えることができました。皆様方には心より御礼申し上げます。
プレコングレスでは,周産期学シンポジウム運営委員会・倫理委員会による共同調査報告を理事長和田和子先生に行っていただきました。さらに,教育講演として「NIPTの遺伝カウンセリングにおける課題と展望」を四元淳子先生に行っていただき,これらの報告によって翌日の議論のもととなる命題が共有できました。会長指定講演として「周産期から見つめ直す児童虐待-愛着形成障害の視点から」を友田明美先生にお願いし,“児童虐待”を科学的エビデンスに基づいた最先端の脳科学の立場からご講演いただきました。この結果,今後の周産期医療においては,良好な愛着形成を目指した子育て支援も大きな課題となっていることが示されました。
プレコングレス後の懇親会は『世界のビール博物館』で行いました。ここにおいても多数のご参加をいただき,交流が深まりました。ありがとうございました。
今回のメインテーマは『周産期医療における「遺伝」を考える』でした。“遺伝”は本シンポジウムにおいては初めて取り扱うテーマでした。大変大きな課題であるものの,実践的議論が行えるのか不安もありましたが,結果はまったくの杞憂でした。
午前の部は【18トリソミーを考える】をサブテーマとし,まず初めにシンポジウム運営委員会委員長の板倉敦夫先生より全国調査の結果が報告されました。この調査は周産期専門医指導医のおよそ90%からの回答に基づいており,現時点のわが国の周産期医療の現状を正確に示していると考えられます。医療人個々の倫理感と患者・家族の幸福追求を推し量れる結果でした。この報告を皮切りに,望月純子先生,長瀬寛美先生,加藤英子先生,井深奏司先生に多方面からご発表いただきました。
ランチョンセミナーは,市塚清健先生,森雅亮先生にご講演いただきました。なお大変盛況であったため,お弁当が不足,お席をご用意できない状況となりましたことをお詫び申し上げます。
午後の部は【遺伝学的出生前診断を考える】をサブテーマとし,鈴森伸宏先生,池田真理子先生,中林章先生,白土なほ子先生,中村靖先生より多方面からご発表いただきました。
総合討論におきましては,若手の先生方からも多数のご討議をいただくことができました。関心の高さと見識の深さを感じさせる議論であったと思います。今後の周産期医療における“遺伝”という課題への認識がいっそう深まったことを実感できました。
本シンポジウムは1年以上の時間をかけて,シンポジウム運営委員会と演者が時にはバトルしながら切磋琢磨して準備するという特徴をもっています。今回もその成果が充分に発揮されたと思います。改めて,関係各位に御礼申し上げます。さらに,学会事務局の皆様,私を支えてくれた多数の方々にも御礼申し上げます。
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