主催: 一般社団法人日本周産期・新生児医学会
会議名: 周産期学シンポジウム:母体・胎児・新生児の立場から常位胎盤早期剥離を考える〜母児の予後改善のために〜
回次: 36
開催地: 長野県
開催日: 2018/01/19 - 2018/01/20
p. 27-30
背景
常位胎盤早期剥離(以下早剥と略)の中には,胎児well-beingと母体健康が障害されない慢性に経過する早剥(以下慢性早剥と略)が存在し,診断,管理に悩む症例がある1〜3)。慢性早剥の明確な定義は存在しておらず,本研究では臨床的に早剥が疑われる症例のうち,胎児心拍数モニタリングにて2時間以上胎児心拍異常をきたさないもの。母体にDICを認めないもの。超音波所見があるものは血腫ないしは胎盤剥離部位の増大を認めないもの。上記の条件を満たした早剥を慢性早剥と定義し,胎児心拍異常や母体DICを伴う早剥を急性早剥と定義し検討を行う。
慢性早剥は急性早剥と比較して臨床症状が乏しく,その診断には超音波検査が主となるが,超音波検査による早剝診断は感度が低く,超音波異常がないことでは早剝を否定できない4)。一方で,MRI(Magnetic Resonance Imaging;磁気共鳴画像)検査が早剥に対する高い感度・特異度をもつとの報告がある5)。慢性早剥においても,一部には急性早剥に移行し,胎児機能不全に至る例もあるとの報告もあり慎重な管理を求められる5, 6)。また,中枢神経領域では虚血の診断方法としてMRI検査は確立されており,拡散強調画像(Diffusion Weighted Image;DWI)を使用する例が増えてきた7)。DWIより得られる見かけ上の拡散係数(Apparent Diffusion Coefficient;ADC)を求めて画像化(ADC-map)することができ,産科領域では胎児発育不全の胎盤においてはADC値が低下するとの報告がある8)。