主催: 一般社団法人日本周産期・新生児医学会
会議名: 周産期学シンポジウム:母児の予後改善を目指した合併症妊娠の管理
回次: 38
開催地: 静岡県
開催日: 2020/01/31 - 2020/02/01
p. 15-18
はじめに
循環器医療や新生児医療の進歩に伴い,先天性心疾患患者の予後が著しく向上したこと,遺伝性不整脈など若年で診断される疾患が増えたこと,母体の高齢化などにより,心疾患合併妊娠数が増えている。妊娠・出産を通じて,母体の循環動態はダイナミックに変化するため,合併症リスクが増加する。ハイリスク合併症妊娠診療の難しい点は,母体と胎児の両方に配慮しなくてはいけないことである。母体の安全最優先が原則ではあるが,母体の薬物治療における催奇形性や胎児毒性について,放射線検査における胎児被曝や造影剤の児への影響について,母体心疾患適応の早期娩出における児の未熟性について配慮が必要である。
「心疾患をもっているから,妊娠・出産は不可能」と,一律に禁止されていた時代は過ぎ,心疾患をもつ女性が豊かな人生を送れるよう,包括的に支援する医療が求められる一方,ハイリスク心疾患合併妊娠は,母体死亡にもつながる高危険性妊娠である。ハイリスク例の周産期診療においては,産科,循環器科をはじめ,関連科が連携したチーム医療が必須である。