主催: 一般社団法人日本周産期・新生児医学会
会議名: 周産期学シンポジウム:母児の予後改善を目指した合併症妊娠の管理
回次: 38
開催地: 静岡県
開催日: 2020/01/31 - 2020/02/01
p. 48-52
背景・目的
バセドウ病合併妊娠では,母体血中の甲状腺ホルモン(free T4)や甲状腺刺激ホルモンレセプター抗体(thyroid stimulating hormone receptor antibody; TRAb)が経胎盤的に移行し,胎児の甲状腺機能に影響を与える。過剰な甲状腺ホルモンは流産や死産の増加1),胎児期を含めた児の発育不全2〜4),児の中枢神経や神経筋機能の障害5)を生じることが報告されている。そのため,バセドウ病合併妊娠では母体甲状腺機能のコントロールが重要となる。症例により,バセドウ病合併の妊婦へ抗甲状腺薬の投与が必要になる。その薬剤も経胎盤的に移行し,胎児の甲状腺機能に影響を与える。
バセドウ病合併妊婦から出生した児のなかには,甲状腺腫や頻脈を示す新生児甲状腺機能亢進症が1〜5%に発生する6)と報告されている。出生後の児の甲状腺機能異常は,無治療の場合は児の発育や発達に影響を与えうるため,バセドウ病合併妊婦から出生した児の甲状腺機能を適切に評価することは重要である。そのような臨床背景のなかで,出生後に甲状腺機能異常(亢進・低下)に対して薬物療法を要する児の割合,および周産期における予測因子はまだ十分には明らかになっていない。
本研究の目的は,バセドウ病合併妊婦から出生した児において,薬物療法を要する甲状腺機能異常が出現する頻度およびその予測因子を明らかにすることである。