主催: 一般社団法人日本周産期・新生児医学会
会議名: 周産期学シンポジウム
回次: 4
開催地: 東京都
開催日: 1986/01/18
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ここに第4回周産期学会の講演論文集「周産期学シンポジウム No. 4」が発刊されることになった。1984年に本学会創立記念講演集であるNo. 1が刊行されて以来,毎年の学会の講演論文集として刊行され,このシリーズは4冊揃ったことになる。本書を繙くと,周産期学の重要なトピックスについて,小児科側と産科側からそれぞれの専門家によって意見が述べられており,誠に興味深い。本学会は新生児学を専門とする小児科医が胎児医学と胎児管理を知るために,また胎児学を専門とする産科医が新生児学と新生児医療を理解するために,一堂に会してそれぞれの領域の研究成果を発表し,討論するユニークな学会である。本学会も産科と小児科,ならびに関連各科の意見交流の場として定着してきたように思われる。
第4回日本周産期学会ではシンポジウムのテーマとして「羊水に関する基礎と臨床」,「妊娠中期における前期破水の管理」の2題が選ばれた。これらは研究面でも臨床面でもきわめて重要な課題であり,産科医も小児科医も等しく深い関心を持っているところである。
胎児環境としての羊水は物理的に胎児を保護しているだけでなく,母体と羊水,羊水と胎児との間に物質の活潑な交換が行われており,羊水の量および成分の異常は胎児の発育に重大な影響を及ぼす。羊水の研究は古くから行われているが,まだ解明されていないことも多く,最近の検査法の進歩によって,いろいろの新しい知見が得られた。本シンポジウムでは羊水の産生循環動態,羊水中の諸物質とその意義,羊水と胎児肺の発育,羊水量の異常と臨床について興味ある研究結果が発表され,活潑な討論が行われた。
未熟児医療の進歩は極小未熟児,超未熟児のintact survivalをも可能にしたが,胎児にとって子宮内生活は1日でも長いほうが望ましいことはいうまでもない。妊娠中期に前期破水が起こった場合はどうするか,産科医の間でいろいろの議論があり,その取り扱いは胎児の予後に大きな関係があるので,小児科医も注目しているところである。そこで本シンポジウムでは,前期破水の要因と機序,前期破水の診断,前期破水の管理,前期破水と胎児新生児合併症についての研究結果が発表され,意見が交換された。
昭和61年4月8日から11日まで,第4回アジア・オセアニア周産期学会およびプレコングレスセミナーが前田一雄会長,日本周産期学会主催のもとに東京の高輪プリンスホテルで開催された。海外から約200名,国内から約300名の参加者があって非常な盛会であり,海外の多くの研究者と交流をもつことができて大変有意義であった。これから日本周産期学会がますます発展することを祈ってやまない。